※この作品は魏endで一刀が"完全"に消滅した事を前提としているため、
記憶が戻るとかは無いので御容赦下さい。
後、オリジナル設定もあり、登場人物の行動や言動が原作と一致しない場合も
多々ございますので、その点も御容赦下さい。
千人足らずの小さな村に総勢一万もの軍勢が押し寄せる。
絶望────
黒い神事服の女は一人小高い丘でその様子を眺めていた。
クスクスクスクスと笑いながら。
これから起こるであろう虐殺、略奪、陵辱を想像するだけで絶頂に達しそうだった。
「これで邪魔な孫権様が消える・・・と」
クスクスクスクス・・・。
村の防壁の門は未だ塞がれた様子も無く、防壁の上を忙しなく走り回る兵の姿だけが見える。
どうやら弓の用意をしているらしい。
「諦めず戦うのかしら。フフフッ・・・何処まで戦えるか、楽しみだわぁ・・・」
唇を妖しく歪めて嗤う女は、北郷一刀というイレギュラーの存在を未だ知らずにいた。
「・・・?」
ふと、村に向かう『にゃあ黄巾党』の少し前に一頭の馬が見える。
その背には子供だろうか。外套を羽織った小さな姿があった。
「あらあら。こんな時にこの村に来るなんて、なんて運の無い子・・・クスクスクス」
女はその笑いを残してスゥッと消える。
その時馬の上に乗っていた子供のフードが外れ、緑髪が風になびいた。
村へ向かう『にゃあ黄巾党』の先遣隊は破壊された門を目掛けて只管に馬を走らせる。
先遣隊の人数はおよそ700人。
一番乗りをした者がそれだけ取り分が増えるとあって、馬上の男達は危険など恐れなかった。
例え矢で100人が倒れたとしても、残りの600人で兵を殲滅すれば後は自由だ。
これまでの攻撃では門が邪魔をし、攻めあぐねている間に建業から軍隊が来て敗退するしか
無かったが、今はその門が破壊されている。
さらには約一万という人数だ。
負ける要素は無く、そしてこの村には若い女が多いという。
そしてもう矢の射程距離の筈だが、それが飛んでくる気配は無い。
諦めたのだと思い、男達は笑いが止まらなかった。
「ぎゃっははははははは!!!行け!!行け!!行け!!」
「今夜は宴だ!!!」
「殺せ!!殺せ!!奪え!!奪え!!」
男達は口々に下卑た言葉を並べ、門へと向かう。
そしてその少し前を走る旅の子供を行きがけの駄賃とばかりに付け狙った。
頭のフードが外れ、その顔があらわになると一部の男が熱狂する。
「女だ!!ガキだが女だ!!」
「そいつは俺がもらうぞ!!」
ギャハハハと笑いながら、狩りをするかのごとく緑髪の少女を追いかけていた者達の一人が
防壁の上から放たれた何かを見つけた。
矢かとも思ったが、大きさが違いすぎる。
それはヒュウウウウウと風を切る音と共に緑髪の少女の後ろにいた男達に向かって降り注ぐ。
「あ・・・?」
それが先頭にいた男の最後の言葉だった。
防壁の上から放たれたのは数え切れない程の、矢とほぼ同じ長さの竹槍。
その内の一本が地面に突き刺さり、先頭を走っていた馬が突き刺さった竹槍に引っかかって転倒する。
馬に乗っていた男は悲鳴を上げる間も無く倒れた馬の下敷きとなり、後に続いていた者達も同じように
転倒する馬に巻き込まれた。
中には竹槍が刺さった者もいる。
竹槍の雨はさらに後から続こうとした者達の足も止め、落馬した男達の悲痛な絶叫が響くが、その絶叫
を頼りに矢が射掛けられる。
「止まれ!!止まれぇぇぇぇ!!!」
その光景を見た一人の男が慌てて後ろに続く者達を止めようとしたが、門に殺到しようとしていた
者達が急に止まれる筈も無く次々と竹槍に引っかかって転倒し、転倒した者達は間も無く矢によって
止めを刺された。
完全に射程距離に入った彼らは動けない的。
それを冷酷なまでに次々と射抜いていく有様に彼らは恐怖を感じて足が止まり、緑髪の少女の乗った馬は
その隙を突いて壊れた門より中に招き入れられた。
その姿を防壁の上から見ていた一刀が安堵の溜息をつく。
「みつか・・あ、いえ。一刀様。間も無く第一作戦が終了しますが、第二作戦の準備は整っております。
それと第四の準備がやや遅れているので急がせています」
明命が敬礼をしながら報告してくるのに頷き、門の側で作業している者達を見れば荷台を運ぶ者達の
姿が見える。
(半分・・・という所か)
第四作戦の進行状況をそう判断し、明命にいくつか指示を出して他の場所を指揮している者達へ
の伝令を頼む。
今は正面を一刀と蓮華、左右を蓮華の直属の兵達が。そして後方を白蓮が指揮し、なぎは白蓮に
おんぶされていた。
「それにしても、さすがですね」
報告を終えた明命が次の作戦の連絡に走り去った時、横にいた蓮華が一刀に話しかけた。
「そうでもないよ。あるものを利用しただけに過ぎないし、失敗は許されないからね」
蓮華の言葉にそちらを見れば、
「う・・・」
キラキラと目を輝かせて身を乗り出す蓮華の姿があった。
「戦える三百では無く、戦えない七百を使うとは・・・」
つくづく感心したような蓮華に愛想笑いで返すしかない一刀だった。
一刀が見つけた物、それは竹と木材の山。
この村は竹簡と木簡の生産地だったのだ。
そこで第一作戦として竹簡として使う予定だった竹を番え、一斉に放つ事で先遣隊の足を足止める事にした。
その間に竹と木材、そして大量に作られている紐を利用して五人がかりで引く弩を作る作業を進めている。
弩から放たれるのは数本のやや長い竹槍。
だが命中精度は一切必要とせず、とにかく前に放てさえすればいいものを作らせている。
何しろ直接当たらなくても地面に突き刺さるか、最悪道に転がってくれても馬の足を止める事が出来るからだ。
これを村の周囲にばら撒く事によって馬の機動力を失わせる作戦だった。
これは戦えない老人や女子供でも作ることが出来、これを放つのもまた彼らである。
これなら戦える三百は弓で動けなくなった者を狙い撃ちするだけでいいのだ。
急ピッチで進められている作業だが、すでにいくかは完成して三方に配置されつつある。
『にゃあ黄巾党』の中にはその意図に気付き、馬を降りて向かってくる者達もいた。
「第二作戦を始める!」
一刀の号令に伝令の兵が一斉に走り出す。
凛々しいその姿を蓮華は羨望の眼差しで見つめていた。
(一刀兄さま・・・ふふふ・・・兄さま・・・ふふふふ・・・兄さま・・・ふふふふふふふふふふふふ)
一刀の背筋がゾクッとしたが、あえて知らない振りをして更なる作戦を進める。
冷や汗だけは誤魔化せなかったが・・・。
一刀は作戦を進める中で奇妙な感覚を感じていた。
人を殺す・・・それは何があっても絶対にやってはいけない事。
だが、『にゃあ黄巾党』を人と思う事が出来なくなっているのだ。
"呉の民が理不尽に殺されている"そう思うだけで怒りが込み上げ、何があっても守らねばならない
とすら思い始めていた。
そしてそれに対する作戦が湧き出るように閃く。
まるで・・・誰かに囁かれている様に。
────まかせろ、北郷────
それは幻聴か、風の囁きだったか分からない。
だが確かにその声の中に暖かい物を感じてフッ・・・と笑い、空を見上げた。
雨が降る様子は全く無く、空気は乾いている。
そして放たれる竹槍の数本にはある仕掛けが施されていた。
(火矢には、最適だな)
一刀の思いに、誰かが頷いたような気がした。
思春は伝令の傍ら二人の様子をチラチラと盗み見て
(マズイ・・・これは本格的にマズイな・・・子供を不幸にするわけには・・・しかし、蓮華様の想いは
・・・そもそも兄妹で・・・しかし、この御時勢それもまた・・・いや、だが・・・)
余計な事で悩んでいた。
お送りしました第18話。
さあ、謎の人物達が出てきました。
緑髪の少女とは誰か、一刀に囁くのは誰か・・・。
バレバレですけどねw
しかし・・・何か予定より蓮華デレてる気がするぞ?
思春もオチ要員になりつつあるような・・・
ちょっと暴走気味の気が・・・まぁ・・・いいか。
早く雪蓮と冥琳に会わせたい今日この頃。
では、ちょこっと予告。
「第三作戦、発動」
ではまた。
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真・恋姫無双の魏end後の二次創作SSになります。
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