No.179726

真・恋姫呉√アナザー~戦場に響く二つの鈴の音~第十九話前編

秋華さん

最近コタツを出した秋華です。
まぁまだ電源はつけていませんが…

実は今回ビックリした事があります。
それは私が作った作品がいつの間にか支援数100を突破していた事です。

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2010-10-22 17:25:45 投稿 / 全22ページ    総閲覧数:9400   閲覧ユーザー数:7245

軍議から戻った三人は早速そこで決まった事を集まっていた皆に話した。

そのあとは…まぁ想像通り皆怒り心頭で、武器を持ち出して袁紹の首を取りにいこうとする者まで現れた。

ちなみにその者は皆で拘束…もとい止めてこれからのことを話すのだった。

 

思春「んーーー(何で私はこんな風に縛られているのだ!!)」

 

一刀「皆…さすがにひどいと思うんだけど…ほら思春、縄切るからちょっとじっとしてて」

 

思春「ん/////んっ(あまり引っ張るな…だめだ…そこは…)」

 

一刀「思春動くなって…」

 

祭「なんじゃ。もうほどくのか…つまらんのう」

 

一刀「つまらんじゃないでしょ。…というか雪蓮もちゃんと止めようよ!」

 

雪蓮「いやだって…凄い剣幕でここを出て行こうとするんだもの…それぐらいやらないと…」

 

一刀「だからってこれは無いよ。」

 

蓮華「そうですお姉様!これじゃ思春がかわいそうじゃないですか!」

 

雪蓮「貴方も一緒にやってたでしょうが…」

 

蓮華「そ…それは…」

 

つまりはそういうことなのだ………。

しばらくして思春が解放されると、皆あからさまに真剣な表情になってこれからの事について話し合いを始める。(決して先ほどのことを無かった事にしようとしているわけではない!!)

 

冥琳「さて…。思春も解放された事だし話を進めたいと思う。穏この先はどうなっている?」

 

穏「え~とですね…。まずこの先に汜水関という大きな関がありますね~。他にもいくつか洛陽にいける道はありますが…この状況だとそこを越えて行くしかないと私は思います。でもかなり厳しい所みたいですよ~」

 

蓮華「厳しい…どういうことなのだ?」

 

穏「え~簡単に言いますと汜水関と言うのは崖の間に関が出来てまして、攻略するにも真正面から戦わなくてはいけない所です。しかも先ほど放った斥候からの報告によりますと…そこにいるのは猛将と噂されている華雄将軍と神速の張遼将軍だそうです。」

 

冥琳「なるほどな…。これは確かに一筋縄じゃいかないようだ。」

 

そう冥琳が呟くと皆苦い顔をする。

策を立てているのはいつも冥琳か穏なのだが、その二人がそろって厳しいという事はよほどの事だと皆分かっているからだった。

すると、晴歌が意見を言う。

晴歌「そんなに厳しいならさ、さっき言ってた他の道にいけばいいんじゃないのか?」

 

冥琳「普段ならそれも考えるだがな…先ほど穏が言ったようにこの状況下ではそれは選べん。」

 

蓮華「どうしてなの?」

 

穏「それはですね~。この連合が集まるまでにただでさえ時間が掛かったのに、良く分からない軍議でさらに時間が掛かりました。しかもこの大人数では行軍速度もかなり遅くなります。そうなると董卓軍にとってはとても有利になるんですよ~。」

 

晴歌「時間が掛かると董卓軍に有利……んー一刀どういうこと?」

 

一刀「そうだな…まずこっちはただでさえ大人数で遠征しているんだ。その分持ってきた兵糧も速く減る事になる。まぁほとんどがそれを見越して多く持ってきているとは思うけど…それでも兵糧は有限だからね…。時間が掛かりすぎると多分兵糧不足で兵の士気はものすごく下がって最後には動く事も出来なくなる。最悪撤退する事態にでもなったら世間の評判がかなり悪くなるし…こっちにとってはいいことなんて何もないんだよ。逆に董卓からしたら戦わずして勝ったようなもんだからこれほど嬉しい事は無いだろうね。」

 

冥琳「そういうことだ。だからこそ素早く汜水関を落とす事が望ましいのだが…」

 

晴歌への説明聞いて他の皆も”うんうん”と頷いていた。

冥琳も同じことを考えていたようで一刀の説明を肯定して、これからの事について唸っていると…近くにいた雪蓮が話しだした。

 

雪蓮「ねぇ祭?確か華雄って私の母様が昔叩き潰した人よね?」

 

祭「そうじゃの。華雄と言う名前が他に無いのであればそうじゃろうて…しかし董卓に仕えていたとはな。」

 

雪蓮「じゃ別に華雄は気にしなくていいんじゃない?昔逢っているはずなのにあまり覚えていないってことはそんなにたいした人物じゃないわよ。それよりも…まだこの眼で戦い方を見ていない張遼の方がよっぽど怖いわ。」

 

冥琳「そう言われればそうかもしれんが…。雪蓮何か策でもあるのか?」

 

雪蓮「もっちろん♪」

 

冥琳「ほう…なら聞かせてもらうか?」

 

雪蓮「全員火の玉になって突撃する!!」

 

祭「うむ。賛成じゃ!!」

 

その瞬間雪蓮と祭以外の時間が止まり…皆口をあけてぽかんとした。

冥琳「……さて先ほど誰かが何か喋ったが気にしないで話を続けようか?」

 

雪蓮「ちょっと!!何でそんな反応なのよ!!」

 

冥琳「あたりまえだ!!今お前が言った策など策と呼べるものではないしそれが出来るのであればこんなに悩んだりはせん!!今の一言は袁紹と同じことを言っているようなものだぞ!?」

 

雪蓮「!!!!そ…そんな…私と袁紹が同じだなんて…うそ…よ…」

 

冥琳の一言に地面に手をついてまるでこの世界に絶望したような表情をする雪蓮。

その気持ちはわかる……だってあの馬鹿の代名詞になりつつある”袁紹”と同じと言われたのだ…しかたがない。

でもそれぐらい雪蓮が言った事はひどかった。

今だ絶望している雪蓮を皆が見て見ぬふりをしていると…何かを思いついたのか一刀が話す。

 

一刀「……そうだ。さっき雪蓮がいった事が本当ならそれを使って華雄を関の外におびき出せないかな?」

 

冥琳「挑発すると言うのか?」

 

一刀「うん。ねぇ穏?華雄の人となりって何か分かってる?」

 

穏「あや?え~とたしか…華雄さんは猛将と謳われているように、武に絶対の自信を持っているそうです。それとこれは黄巾党の戦いの時に董卓側に放った斥候の話ですが…聞く限りかなりの猪さんみたいですね~。ほとんど…と言うよりもほぼ確実に突撃しか仕掛けてなかったそうですよ。」

 

一刀「だったら大丈夫そう…かな?」

 

穏「は~い。私も一刀さんの策は良いと思いますよ~」

 

冥琳「…そうだな。多少不確実かもしれんが、それでいくとするか。だが挑発は良いとしてその後はどうするのだ?」

 

一刀「冥琳……大体予想はついてるんだろ?」

 

冥琳「一刀の策が聞きたいのだよ」

 

一刀「はぁ…。えーとまず華雄がでてきたら俺の隊の虎砲隊で一斉射撃。その後他の隊で包囲する。あと誰か華雄さんの相手をして欲しいんだけど…」

 

そう一刀が辺りを見渡すと、まず雪蓮はいつの間にか立ち直っていてこっちを見て目で何かを訴えて来た。

次に祭さんだが、これも雪蓮と同じように目をキラキラさせて訴えてくる

後は思春と明命だが…二人ともチラッ…チラッ…とこっちを見ては何か期待しているような感じをかもし出していた。

一刀(はぁ…皆そんなに華雄と戦いたいのか?)

 

あまりにも正直すぎる武官達に頭を抱えそうになったが…それを何とか我慢した。

そして華雄と一騎打ちする人を発表する。

実を言うなら一刀の中で最初から決まっていた。

 

一刀「………思春頼めるか?」

 

思春「!!!ああ任せておけ。」

 

一刀が思春の方を向いてそう告げると最初呼ばれてビックリしていたが、すぐさま嬉しそうな顔になり一刀にそう答えた。

 

雪蓮「ちょっとー!何で私じゃないのよー!」

 

祭「ワシでは力不足とでもいうんかい?」

 

明命「あう…うらやましいです。」

 

まぁ想像通り呼ばれなかった三人は皆そろって抗議の声を上げる。

 

一刀「いや…だってさ。」

 

雪蓮・祭・明命『説明を要求する(わ)(ぞ)(です)!!』

 

一刀「はぁ…まず雪蓮だけど、大体どこに王自らいきなり一騎打ちするように言うやつがいるんだよ。元からダメだよ。だけど雪蓮には最初華雄をおびき出す時に話してもらうからそれで我慢して?堂々とした雪蓮が見てみたいな?」

 

雪蓮「/////も…もう。しかたがないな~」

 

一刀「次に祭さんだけど…祭さんには多分釣られて出てくる張遼をお願いしたいんだよ。祭さんならちゃんと張遼を止めてくれると信じているから頼みたいんだ。だって俺の師匠は天下無双だろ?」

 

祭「/////む…むう。そこまで信用されてはしたがないのう…」

 

一刀「最後に明命だけど、明命には俺達を守って欲しいんだ。いつどこで敵が現れて俺達を襲ってくるかもしれない。でも明命なら俺達に刃が届く前に仕留められるだろ?これは明命にしかできない事なんだお願い!!」

 

明命「/////も、もちろんです!必ず一刀さまを守って見せます!!」

 

一刀は困ったような顔をしながらもそう答えると皆言葉では仕方がないといった感じだったがとても嬉しそうにしていた。

すると思春が近づいてきて袖を引っ張る。

思春「…な…なぁ…私には何も無いのか?」

 

一刀「そんなことないよ。思春の実力は一番俺が知ってる。だからこそ華雄と戦って欲しいんだ。思春なら絶対に華雄なんかには負けない。俺はそう信じている…いや知っているかな?」

 

思春「//////あ…安心して見ていろ。必ず華雄は私が倒すから…な?」

 

一刀の言葉で一斉に武官達が桃色になっている頃…話に出てきてない人達はと言うと…

 

蓮華「……ねぇ冥琳。私やるわ!誰にも負けない武を身につけてやる!!そして一刀と…/////」

 

冥琳「お付き合いしましょう。…戦う軍師というものに私が初めて成って見せます!」

 

穏「あや~さすがにこれはうらやましいですね~。////だったら私は一刀さんの隣でずっと一刀さんを支えてみせますよ~」

 

晴歌「絢音?分かってるよね?」

 

絢音「あ…あたりまえでしゅ!!だれよりも一刀しゃまの信頼に答えているのはこの私達だということをこの戦いで皆に教えてあげるでしゅ!!そ…そして私は…一刀しゃまと…あっ…まずは唇に~/////////」

 

 

その光景を見ていたほかの将達は一斉に笑い出す。

その笑い声を聞いて様子を見に来た兵も笑い出した。

いつしかそれは伝染し、孫呉の陣営には大きな笑いが起こっていた。

これから命の危険がある戦場へ行くというのにこの雰囲気は一体なんなんだろうか?

そう他の陣営は思ったに違いない。

だがこれでこそ孫呉なのだ。

いつもは陽気に笑い声が絶えない孫呉だが、ひとたび戦場に立てば他の隋をゆるさないほどの力を発揮する。

 

笑顔こそ我ら孫呉の力

 

だからこそこんな時でも笑っていられるのだ。

戦場の怖さを紛らわせるために…

また皆でこの時間を過ごす為に…

 

軍議から一夜明けて雪蓮達は予定通り汜水関へと軍を進めた。

汜水関に行くまでの間、もしかしたら伏兵がいて襲ってくるかもしれないと警戒をしていたのだが…特にそういったことも無くあっさりと汜水関の前に兵を展開する事が出来き、雪蓮達は少々驚いていた。

 

冥琳「もしかしたら襲ってくるかもしれないと思っていたが、案外あっさりとたどり着けたものだな…」

 

雪蓮「そうね~。普通なら一回ぐらいは戦いに来ると思ってたんだけど…どうしたのかしら?」

 

冥琳「ふむ。…大方下手に戦いを仕掛けて兵を死なせるのを嫌がったという所だろう。まぁ其方の方が私達としてもうれしいのだがな…。」

 

雪蓮「そうね。この戦いで死ななくちゃいけない人は少ないほうがいいわ。本当に董卓が暴政してたら話は別だけどね…冥琳?この戦いを仕掛けた奴の事は何か分かった?」

 

冥琳「いや…残念ながらまだ何も分かっていない。…だが、たぶん袁紹の仕業ではないかとは思っているがな…」

 

雪蓮「私も同じ感じね。私の勘でも袁紹が怪しいんだけど…でももっと別の人がいるような気もするのよ。」

 

冥琳「もっと別か…それはありえそうだな。」

 

そう言って二人ともうーんと唸った。

この連合に参加すると決めた時からいろんな所に斥候を放って雪蓮達はこの戦いの黒幕を掴もうとしていた。

しかし今の所有力な情報は手に入れておらず、袁紹についても盟主と言う点と性格を考えてそう思っているだけで確証は無かった。

 

一方その隣では、一刀達がいろいろと話し合っていた。

 

晴歌「しっかしさ…実際に見てみると凄いな…汜水関って。これ正面から落すのは嫌だ…ていうか無謀だろ?」

 

絢音「私もそう思うよ。本当なら軍議でその事を話し合わなくちゃいけなかったんだけど…聞いた話だと軍議と言うかただ袁紹の独演会だったらしいから…そうですよね?一刀さま?」

 

一刀「そうだね…正直あれは軍議って言葉に失礼なぐらいひどかった。」

 

穏「まぁ~袁紹さんですから~。あの人は見得とわがまま、それと自意識過剰が八割ぐらいを占めて後二割が悪知恵って感じですので、仕方がないと思いますよ?」

 

蓮華「穏……」

 

穏「はい~?」

 

蓮華「……悪知恵は一割ぐらいじゃないかしら?後一割は前向きだと思うの。」

 

明命「前向きですか?」

 

蓮華「そうよ。あそこまで自分に都合がいいようにしか考えられないのは、前向きって言葉以外考えられないもの。」

 

穏「あはは~♪それはそうかもですね~」

 

蓮華の一言でそこにいる兵達まで笑い出してしまう。

それを見ていた思春はため息をつく

思春「はぁ…これから戦いが始まるというのに…何でこんな会話をしているのだろうか?」

 

祭「なんじゃ?思春はこういう雰囲気は嫌いじゃったかの?」

 

思春「いえ…嫌いではないですが…戦う前にこれはあまりにも…」

 

祭「まぁ思春が言っておる事も分かるんじゃがな?今はまだ戦闘も開始されておらんし良いのではないか?ずっと緊張しっぱなしなのも疲れてしまうからの。」

 

思春「そんなものですか?」

 

祭「そんなもんじゃよ。」

 

そう思春に答えると豪快に笑い出した。それを見て思春も笑みをこぼし始める。

そしてそれは段々兵達にも広まっていき、その事でどうしたと聞いてきた雪蓮達にも事情を説明すると雪蓮は予想通り大笑いをし、珍しく冥琳まで吹き出していた。

 

この様子を城壁から見ていた董卓軍はというと…

 

華雄「なんだあの孫呉の軍は我々をなめておるのか!」

 

張遼「いや~なめとるわけやないと思うんやけど…いややっぱりなめとんのかなぁ?」

 

華雄「~~~~っ//////もう我慢が出来ん。今すぐ出て行ってあの笑い声を悲鳴に変えてやる!!」

 

張遼「あ゛~あかんって!うちらの目的はここを守り抜く事やろ!?でてったら守れんようになるって!!」

 

華雄「ぐっ…し…しかしだな!」

 

張遼「しかしもかかしもあるかい!とにかくうちらはここに篭って、あっちが攻めて来たら応戦すればいいんや!!わかったな!!」

 

華雄「う…うあああぁぁぁぁ…」

 

張遼(あ~あかん。このままじゃ華雄が出て行ってまうのも時間の問題かも知れん。…これも孫呉の軍師周瑜の策のうちかい)

 

言わなくても分かると思うがこれはけして冥琳の策などではなく、ただ偶然…いやいつもの孫呉の姿が出てしまっているだけなのだが…そう考えてしまうのも仕方が無いのかもしれない。

何せこれから命を落すかもしれない戦場に身を投じるというのに、まったく緊張感と言うものが雪蓮達には感じられないからだ。

こうしてまだ戦いが始まってもいないというのに、華雄は顔を真っ赤にして頭に血が上りはじめ、張遼はそれを何とか抑えながらも勝手に深読みをして、余裕が無くなってしまうのだった。

しばらくして…先ほどまで笑っていた雪蓮が真剣な表情になり皆に聞こえるように話す。

 

雪蓮「さて…。そろそろ始めましょうか?」

 

その言葉で皆の顔から笑顔が消えて真剣な顔つきになる。

冥琳「そうだな…。一刀準備は出来ているな?」

 

一刀「大丈夫だ。」

 

冥琳「そうか…しくじるなよ?穏全体の指揮は私と雪蓮がするから細かい所の補助を頼む。」

 

穏「は~い。」

 

冥琳「蓮華様は後ろに下がって兵達を指揮してください。」

 

蓮華「え!!私も前に出て戦うわ!」

 

冥琳から後ろに下がれと言われ蓮華が抗議する。

それを見ていた雪蓮が蓮華を見つめて話す。

 

雪蓮「蓮華?貴方は次期王なのよ?貴方が死んだらどうするのよ。」

 

蓮華「でも!それを言うなら現王のお姉様こそが後ろに下がられては…」

 

雪蓮「私は大丈夫。そこら辺の奴らなんかには絶対に負けないから♪いい?貴方は後ろにいて私達の戦いを良く見ていなさい。そして学びなさい。今の内しかたぶんこういったことは今しか出来ないと思うからこの機会を無駄にしないでね?」

 

蓮華「…っ。はいわかりました。」

 

雪蓮「いい子ね♪」

 

悔しそうな顔をしながらもしぶしぶと言った感じで返事をする蓮華。

それを見て雪蓮は少し苦笑いをしながら優しく蓮華の頭を撫でた。

雪蓮に頭を撫ぜられると蓮華は顔を赤くしながらその手を払いのけて文句を言っていたが、それを見て雪蓮は嬉しそうにまた笑うのだった。

 

冥琳「ん…。雪蓮、蓮華様と仲良くするのはそれくらいにしてくれ。話が進まん。」

 

雪蓮「あれ~?もしかしてやきもち?」

 

冥琳「知らん!!…おほん。祭殿は張遼達の事をよろしくお願いします。」

 

祭「おう。任された。クククッ…噂の張遼の実力楽しみじゃのう…」

 

冥琳「はぁ…やりすぎないでくださいよ。思春はいつでも戦えるように準備をしていてくれ。華雄が出て来たら…頼んだぞ?」

 

思春「御意!!」

 

冥琳「頼もしいな。明命は雪蓮の護衛の後、周辺を警戒して我々を遠くから狙ってくるものを始末してくれ。」

 

明命「は!雪蓮様には指一本触れさせません。」

 

冥琳「たのんだぞ?…さて雪蓮始めるぞ?」

 

雪蓮「ええ…。それじゃ行ってくるわね?明命…ついてきて頂戴。」

 

明命「は!」

 

冥琳が指示を出すと、その指示通りにしていく一刀達。

それを確認した後、雪蓮と明命は前に出て汜水関に声が届く所まで歩き出す。

 

そして声を張り上げて叫ぶ。

これが戦いの狼煙だと言わんばかりに…

 

雪蓮「我名は江東の虎と呼ばれた孫堅が娘、孫伯符である!汜水関に篭って震えている華雄よ。以前母に完膚なきまでに叩き潰されたようではないか?今その悔しさを晴らす機会がやって来たと言うのにそこから出て来ないのか!?そうか出て来ないか…よほど孫家が怖いと見える。猛将と呼ばれていると聞いていたが、それは自ら言わせていただけであろう。どうだ?負け犬華雄よ?ここまで言われてもまだ出て来ないのか?そうか…ならばもう用は無い。じっと関に篭って震えているがいい!さらばだ負け犬華雄よ!!」

 

雪蓮がそう言うと、関に背を向けて歩きながら兵がいる場所へゆっくり戻っていく。

 

華雄「うがあぁぁぁ…孫伯符め~今そこで待ってろすぐにお前を母親の元へと送ってやる!!」

 

張遼「あ~あかんて!あんなのどう考えてもただの挑発やんか!!悔しいのはわかる。だけどここは我慢せんとあかんて!」

 

華雄が怒るのも無理はないと思いながらも、何とか関から出て行こうとするのを止める張遼。

だが華雄は何故止めるといわんばかりに睨んでくる。

 

華雄「黙れ!!あそこまで言われて黙ってはおれん!!私は出る!!」

 

張遼「……分かった。でもうちらは引かせてもらうで?このこと詠達にも伝えなあらへんし、この後も戦いは続くんやでな。」

 

華雄「勝手にしろ!!……華雄隊出るぞ!!」

 

華雄はそう兵達に言うと城門の方へと歩いていった。

それを見ていた張遼隊は動揺して騒ぎ始める。

兵「張遼様……」

 

張遼「あんた等は今すぐ虎牢関まで退却しいや。」

 

兵「は!…張遼様はどうするのですか?」

 

張遼「うちはここに残る。」

 

兵「!!何を仰るのですか!?それならば我々も…」

 

張遼「アホ抜かすな!!お前らはさっさと退却してこの事態を詠に伝えに行け!!それに別にうちは死にに行くわけやあらへん。ある程度たったらここを放棄して華雄と逃げるためや。だから心配いらん。」

 

兵「……わかりました。ご武運を…。」

 

張遼「あんたらもな。」

 

張遼隊の兵達は張遼に一人づつ礼をして行くとすぐさま退却する準備を始めた。

それを見て張遼は一安心すると前に展開する雪蓮達の軍をにらみつける。

 

張遼(まったく自分でも損な性格やと思うけど…しゃーないな。あんな猪でも一緒に酒飲んで飯食った”友”やもんな…。見捨てる事なんて出来ん。それに大陸一と言われる孫呉の兵とも戦ってみたいしな…。ははっ…これじゃ華雄の事なんも言えへんなぁ…)

 

張遼自身いけないと分かっていてもこればかりは抑える事は出来なかった。

”強者と戦うことが喜び”それは武に覚えがある者は当然の感情なのだが、張遼はそれが誰よりも強い。

その証拠に…華雄をなだめようとした時から体がうずきだしそれを止めるので必死になっていたぐらいだった

だがそれを止めるのももうしなくていい。

さっきまでの張遼は将としての張遼だったが、これからは一武人としての張遼になれるのだから…

 

張遼「クククッ…あかん。こんな状況なのに楽しゅうなってきたわ♪…うちも暴れさせてもらうでぇ~」

 

もうほとんど兵達が居なくなっていた城壁の上で張遼は静かにそう呟くのだった。

 

 

一方その頃、挑発を終えた雪蓮は明命と一緒に敵に背を向けて本陣に歩いていた。

その姿は一見隙だらけに見えるのだが、それはわざと見せているだけで意識はしっかりと敵が出てくるであろう城門に向けていた。

 

明命「…本当に華雄達は出てくるでしょうか?」

 

雪蓮「まぁ…私なら横に冥琳や一刀が居なければ確実に出て来てるんだけどね♪」

 

明命「はぁ…」

 

さすがにそれはやめて欲しいと思いながらも返事をする明命。

その表情を見て雪蓮は何か悟ったのか笑いながら話す。

雪蓮「大丈夫よ。そもそも私の近くに冥琳や一刀が居ない状況なんてめったに無いわよ♪それと華雄についてだけどもうすぐ出てくるわよ?だってほら…いつの間にか城壁にいた兵が少なくなってるし、なにやら関の方が騒がしいわ。きっと準備でもしてるんじゃない?」

 

明命「はうあ!!確かに言われてみればそうなのです。…!!ってこれって今私達はかなり危険じゃないですか!?」

 

雪蓮「あ~そうね~♪」

 

明命「あ~そうね~♪じゃないです!早く戻らないと…」

 

雪蓮「大丈夫よ。そうなる前に一刀の軍が華雄達の足を止めるわ。その隙に走って戻れば間に合うわよ。それに華雄がこっちに向かってくるまで私達がエサになっていないとうまく誘い込めなくなっちゃうでしょ?」

 

明命「それはそうですが~うう゛…雪蓮様をお守りする私としては気が気じゃないですよ~」

 

雪蓮「あははっ…頑張ってね明命?」

 

明命「他人事なんですか~!?」

 

すぐ後ろに危険が迫っているというのにまったく緊張感が無い二人…というよりも雪蓮が勝手に明命をからかって緊張感を無くしているだけなのだが…

ともかく!そう言い合いながら歩いていると、後ろから雄叫びの様な歓声が上がり雪蓮達が振り向くと門が開いておりその中心には先ほど挑発した華雄がいた。

 

華雄「きけぃ我兵達よ!私はあそこまで言われて黙っている事などできん!!我武は無双…そしてその調練を受けたお前達もまた無双だ!ならば恐れる事など何もない。我々をなめきっているあそこの孫家の小娘に我らが恐ろしさ見せてやれ!!……全軍突撃ぃぃ!!!」

 

華雄がそう叫ぶと近くに居た兵達もそれに呼応するように雄叫びを上げ、華雄を先頭にし雪蓮めがけて突撃を仕掛けてきた。

しかし、その突撃を見た雪蓮と明命はと言うとそれに対して多少驚きを見せたが(実際驚いていたのは明命だけなのだが…)策が成功した事を確信するとその場から駆け出し本陣へと戻っていくのだった。

 

華雄「なんだ!?あれだけ私を馬鹿にしておいて逃げるのか!?お前の方が私の武を恐れているでは無いか!?それでも江東の虎と謂われた孫堅の娘か!!」

 

雪蓮達が華雄に背を向けて走っているのを見て華雄はそう吼える。

しかし言われた雪蓮達はというと、まるでそんな言葉を気にする様子も無く背を向けて駆け出していた。

それを見て華雄は鼻でそれを笑うとその奥に待ち構えているであろう孫家の軍を見た。

すると驚いた事に孫家の軍は今向かっている所からどんどん兵が居なくなり横に移動をしているではないか!?

これを見て華雄は”今になって我武が怖くなったのだな?”と勘違いをしてさらに突撃の速度を速めるよう自分の隊に声をかける。

 

華雄「見よ!!先ほどまで我々をけなしていたあやつらは、いざ我々が出てきたら恐れをなして逃げている。これは好機だ!このままさらに速度を速め孫呉の軍を粉砕するのだ!!」

 

華雄がそう叫ぶと兵達はさらに速度を速め今にも孫家の軍にぶつかろうとしていた。

それこそが雪蓮達の狙いでもあり、華雄達にとっての死地である事も知らずに…

 

華雄達がもうすぐ孫呉の軍にぶつかりそうという所でいきなり声が上がった。

 

一刀「虎砲隊。一斉発射!!前から突撃をしてくる華雄隊の数を一気に減らすぞ!!」

 

それは一刀の掛け声であった。

一刀の掛け声により、横に逃げているはずだった兵達が華雄に向かって一斉に撃つ。

すると先ほどまで突撃を仕掛けていた華雄の兵が次々と倒れていった。

それを見た華雄は自分の目が信じられなかった。

 

華雄「何!!なぜいきなり兵達が倒れるのだ!!盾が前にあるだけで他には何もないではないか!!」

 

それは城壁の上で戦局を眺めていた張遼も驚いていた。

 

張遼「何や!?何でいきなり華雄達がぼろぼろになってるんや!?それにこれは……ちっ!!そうか…そういうことかいな。」

 

何かに気付いた張遼はもうこの勝敗は見えたとばかりに急いで華雄を助けるために動く。

 

張遼「あかん…。あのわけが分からん攻撃で華雄達もだいぶ混乱しとる。そして極めつけは…あの陣形や。華雄が突っ込んだ場所から兵が居なくなっていた不自然さの時から気付くべきやった。たのむ…まにあってや。」

 

張遼は最初から孫策軍に対して何処か不自然さを感じていた。あの勇猛な孫策軍がいくら猛将と名が売れている華雄の突撃だからといってそう簡単に逃げ出したりするものか?と…だが挑発した孫策達が出て来た華雄を見た瞬間逃げ出したのを見て、不自然さを感じてもそれを深く考える事はしなかった。

しかし今の状態を見てその不自然さを何故もっと考えなかったのかと後悔する。

そして華雄達が無事な事を祈らずにはいられなのであった。

さて、ここで今回一刀達がおこなった策について少し話したいと思う。

 

まず最初はなんと言っても華雄の挑発である。

これには二つの意味を持っており、まず一つはもちろん華雄達を関から出て来るように仕向ける事。

そしてもう一つに、雪蓮達に目を向けさせる事によって自分達がどういう状況に置かれているか正常に判断させないためでもある。

もちろん華雄自身の性格も考えて頭に血が上っている状況にもしているのだが、もしかしたら兵の中でも怪しむ人が居るかもしれない為、わざと隙を作って雪連達に向かうように仕向けているのである。

 

次に華雄が向かってくる所の兵を少なくした事についてだが、これは華雄達をそこにおびき寄せるためでもあり、効率よく敵を倒すための準備でもある。

 

自分達が突撃している所の兵がどんどん少なくなれば、大体の将は自分に恐れをなして逃げているものだと勘違いをする。

するとどう考えるか?

ほとんどの将達がそこに突撃をしかけ、兵を分断…または陣形を崩そうと考えるだろう。

その考えはけして間違っている事ではなく、当然の行動と言える。

そこで一刀はその当然の行動を…相手の考えを逆手に取ったのだ。

 

まず知って欲しいのが、突撃する兵達の長所と短所である。

 

長所はまさにその突破力と攻撃力が上げられるだろう。

いくら盾などで防ごうとしても、勢いのついた兵達はなかなか止められない。

むしろ突破されてしまう可能性があるのだ。

そうなった場合こちらが反撃する前に、通り抜けてしまいまた突撃を仕掛けてくる。

そうなるともはや陣形など関係なくずたぼろになるだろう。

 

しかし、その長所は短所でもある。

突撃の短所とは急に止まれない…つまり一度速度がついた突撃はぶつかるか、ある程度離れていないと方向転換がしにくいという事だ。

そのためその場にとどまらず突っ切るか、ぶつかって乱戦に持ち込むのが理想なのだ。

 

以上のことを踏まえて一刀はそれを利用し相手に大打撃する策を思いついた。

それはわざと兵達が逃げているように見せかけおびき出しそこをつく…言ってみれば誰でも思いつきそうな策なのだが、実際にこれを実行しようものならかなりの度胸と覚悟…そして攻撃力が必要となる。

なぜなら、もし突撃を止める事ができなかったらそのまま仕掛けられて策も何も無くなってしまうからだ。そのため普通ならこの策を考え付いても使わないであろう…

 

だが、虎砲隊がいる一刀達ならそれは実現可能となる。

 

理由はもちろん…虎砲隊の最大の特徴である弩である。

虎砲隊の弩は他のものとは違い威力が段違いに強い。そしてその威力ゆえに敵を貫通するのだ。

さらに備え付けてある弓と併用すれば、何の知識や情報を持ってなく装備も無い突撃など簡単に止めてしまうであろう。しかもどうやって攻撃を仕掛けていたか知っていないと妖術などと勘違いをして混乱に陥るのは想像するに容易い。

まさにこれこそが虎砲隊の真骨頂である。

 

そして忘れてはいけないのは、今回の策のキモである陣形だ。

 

今回の策では突撃してくる場所の兵を少なくし敵を誘い込み、両側から攻撃を仕掛けるという事になっているが、これは一歩間違えば同士討ちしてしまう可能性があるのだ。

その理由もまた虎砲隊の弩にある。

先ほども言ったようにその威力は絶大で敵を貫通していくのだが、対角線上に配置してしまうとあまりの威力に矢が味方にまで向かってしまう可能性がある。

そのため、けして対角線上に配置してはいけない。

だが敵に大打撃を与えようとするなら密の高い矢の弾幕をしなければならない。

そこで一刀達がとった陣形と言うのが、左右で放たれる矢が敵の中心で交差するように虎砲隊を配置することである。

これは現代でも銃を扱う時の基本として行っている事だが、この時代では考えられないものである。

と言うよりも考える必要がないのだ。

一刀達のいる世界では飛び道具と言えば弓が普通であり、たとえ弩を使うとしてもその威力は所詮人が反動を気にせず扱えるぐらいのもので敵など貫通するほどの威力は無い。なのでこういった心配などはほとんど無いのだ。

 

次に他の隊はどうしているのかだが、先ほども言った通りまず一番敵に近いところに虎砲隊を配置し敵の突撃を止めるのと同時に、敵の兵力を削れるようにする。

その間他の隊は後ろに移動しそこで待機し、虎砲隊が攻撃を仕掛けるのを待つ。

そして攻撃が始まると後ろで待機していた隊は、兵が少なくなっていた所の補助に向かう隊と敵の退路を防ぐ隊に別れ敵を囲うように動く。その際退路を断っている隊は後から助けに来るかもしれない敵の隊の警戒もする。(今回はここに祭さんと明命が配置されている)

そして敵を囲終えると、どんどん敵の中心によっていき殲滅していく。

 

これが今回一刀が思いつき、冥琳と穏が仕上げた策の全貌である。

策が見事に決まり一斉に活気付く孫呉の兵達、それを見て一刀達はこの戦いの勝利を確信した。

すると、自らエサとなって敵を釣った雪蓮と明命が一刀達の所にやってくる。

その姿を見る限り怪我などまったく無く無事だったようだ。

 

冥琳「雪蓮、明命!無事か?」

 

雪蓮「もっちろん♪全然平気だったわ。やっぱ一刀の隊の威力は凄いわね~」

 

明命「ホントです。威力もそうでしたが…あそこまで兵の練度が高くなっているなんてビックリしました!」

 

一刀「そう言ってもらえるのはうれしいけど…それは後でまた聞きたいな。」

 

冥琳「そうだな。…雪蓮さぁ最後の詰めをするぞ。」

 

雪蓮「えぇ…分かってるわ。きけい勇敢なる孫呉の兵達よ!たった今愚かな華雄達は我策によって混乱している。今こそ好機!徹底的に敵を倒し我らの強さを天に見せ付けるのだ!」

 

雪蓮の掛け声によりさらに士気が上がる兵達。

兵一人一人が腹のそこから声を出し一気に決着をつける為に動き出す。

 

雪蓮「思春!」

 

思春「は!」

 

雪蓮「いってきなさい!多分この状況下でも華雄はピンピンしていると思うわ。私達を差し置いて戦うんだから絶対に勝ってきなさい!!」

 

思春「御意!」

 

近くに控えていた思春に雪蓮が叫ぶ。

それを聞いて思春は敵と味方が入り乱れている戦場へと向かう。

だがその前に思春はふと後ろを振り返り一刀の顔を見た。

それに気付いた一刀はニッコリ笑って思春に声をかける。

 

一刀「かっこいい所期待しているよ。頑張って思春!」

 

思春「////////まかせておけ」

 

一刀の言葉に顔を真っ赤にした思春は凄い勢いで戦場に入っていく。

その後姿はとても浮かれているように見えるのだが、その動きはとても素早かった。

しかしその光景を見た他の人は面白くなかった。

 

雪蓮「…やっぱり私が戦いたかったわ。」

 

冥琳「…ブツブツ」(私が一刀にこう言われる為にはどうしたらよいか…)

 

明命「つ…次こそは私が!!」

 

穏「私には言ってくれないんですか~!」

 

それを見た一刀は引きつった笑いをするしかなかった。

一刀達がそんな話をしていた事など知るよしも無く、先ほど戦場に入っていった思春は一刀に頼まれた通り華雄と一騎打ちするために戦場を駆けていた。

 

思春「この混乱の中探すのは一苦労だな…」

 

そんな事を呟いていると、いろんな声が飛び交っている戦場で誰よりも大きな声で叫んでいる人を見つけた。

その者は手には身の丈と同じぐらいの大きな斧を持っており、偉そうに叫んでいた。

実は思春…と言うか孫家の中でも華雄と姿などを正確に知っているものはいなかった。

昔戦った事がある、祭や雪蓮までがいまいち思い出せないと言っていたのだからそれは仕方が無い事なのだろう(現に董卓を調べていた時でも華雄と言う名前は一度も出てこなかったぐらいなのだから…)

 

華雄?「貴様ら落ち着け!!私の命令を聞かんか!!」

 

その言葉を聞き、たぶんこの人物が華雄なのだろうと決め付けると思春はその人物に近づいた。

いつもなら殺気や気配などを殺して近づくのだが、一騎打ちをするためにわざわざ隠さずに近づく。

すると華雄と思われる人物もこちらに気付いたようで殺気をぶつけてくる。

 

華雄?「貴様…多少武の心得があるようだが…私ほどではない。死にたくなかったら今すぐ消えうせろ!」

 

思春「フッ…」

 

華雄?「なぁ!?何を笑っている!!」

 

思春「ん?…あぁすまん。あまりにも滑稽なのでな…」

 

華雄?「なん…だと!?」

 

思春「私ほどではない?消えうせろ?まさかいきなりあった私にそんな事を言うとは…自分の武に自信が無いのではないか?やはり雪蓮様が言っていた事は本当だと言う事だな。」

 

華雄「キサマ……もうただでは済まさんぞ。我名は華雄!最強の武を持つ者なり!その武を持って貴様を屠ってやる!」

 

思春「……我名は甘寧。その言葉本当かどうか私が確かめてやる!」

 

華雄「くっ…な、なめるなーー!!」

思春の言葉でさらに頭に血が上ったのか…華雄は真っ赤な顔をしながら思春に向かって斧を振り下げてくる。その勢いはさすが猛将と言われていることはあり、風を切る音がその威力を教えてくれていた。

 

ブオン……ズーーン!!

 

華雄「避けるなー!!」

 

華雄はきっと受け止めると思っていたのだろう…。思春がその一撃を避けると、思春に向かってそう叫んできた。

 

思春「……避けるに決まっているだろう。別に受け止めないといけない訳が無いからな。」

 

そう冷たく言い放つと、その態度が気に入らないのかさらに華雄の顔が赤くなった。

あくまで冷静に…そしてなんてことはないように話している思春だったが、内心はまったく違っていた。

 

思春(くっ…さすがは猛将華雄と言った所か…力はあきらかにあちらのほうが上だな。祭殿に教えてもらっていなければもしかしたら……)

 

そう思ってしまうのも仕方がない事なのかもしれない。

怒りに任せて太刀筋が単調だからこそ簡単に避けられる事が出来たが、その一撃はまさに激烈と言うに相応しく、その打ち込みの凄さは、先ほど自分が居た場所の地面は割れて辺りには砂埃が舞っている事からも安易に想像が出来てしまう。

もしこの一撃が避けられず受け止めようとするならば、私などきっと吹き飛ばされてしまうだろう…

それ位の威力が華雄の一撃にはあった。

 

思春がそんな事を思っていると、華雄がこちらに向かって話してくる。

その顔を見るに少しは落ち着く事が出来たのか、少し笑っていた。

 

華雄「先ほど私に”武の自信が無いのでは?”といったが貴様こそ自信が無いのではないか?」

 

思春「…ならば見せてやる。我武の力その身で味わうがいい!!」

 

華雄「こい!」

 

すべて受けきってやると言わんばかりに武器を構える華雄に、思春は細く息を吐き攻撃をを繰り出す。

 

ヒュッ…キキキキキン!

 

それは一息で五つの斬撃を繰り出す思春にしか出来ない高速の連撃。

速さと手数を追い求めていた思春の武の結晶とも言える五連撃であった。

華雄はその速さに少し驚いたようだったが、なんとかすべてを受けきる。

華雄「くっ…。たしかに言うだけの武は持っているようだが…そんなものでは私には勝てん!そんな力なき斬撃など私には通じんわ!!受けて見よ!これが本物の一撃と言うものだ!!」

 

先ほどの攻撃の返礼だと言わんばかりに、近づいた思春めがけて華雄の一撃が襲う。

 

ブオン……

 

しかしその一撃を思春は難なく避ける。

 

思春「これが本物の一撃か?笑わせてくれるな。貴様より強い一撃を私は見たことがあるぞ?それと私の斬撃に力が無いか…なるほど。なら見せてやる。私が持つ最高の一撃…貴様ごときが防ぎきれると思うなよ!」

 

そう思春が言い放つと先ほどまで後ろに構えていた剣を前に出して、剣を持っている右手首に左手を添えて構える。そして目を閉じて意識を集中し始めた。

まるで今戦場にいることも忘れているかのように…

 

一方思春と対峙している華雄はその光景を見て背筋に嫌なものが走るのを感じていた。

 

華雄「くっ…」(何だと言うのだ。何故私は動けぬ!奴は隙だらけで今斬り込めば簡単に首が取れるはずなのに…なぜ私が斬られる事を想像してしまう。…この私が臆しているとでも言うのか!?)

 

すると、思春がまるで自分に言い聞かせるように呟く。

 

思春「すべては民の為…未来の為…我誇りの為…そして私を信じる愛しき人の為!この思いを剣に乗せ我力と成る!」

 

そう言い終わると目をゆっくりと開き、先ほどと同じように…いや先ほどよりも姿勢を低くしてまるで虎が獲物に襲い掛かる前のようになる。

そして視線を華雄に向けると、先ほどよりも数倍濃い殺気と、圧力が思春から溢れ出した。

あまりの変わりように華雄は思わず息を呑む。

体中に緊張が走るのを感じ、先ほどの嫌なものが前進を駆け巡る。

そして…気付いた時にはまるで何かに押されてしまったかのように後ろに引いていた。

 

…………ジリッ……

 

華雄「!!なんだと。この私が…この私が引いたと言うのか!?認めん!我武は無双。あんな小娘ごときに恐れを抱くわけが無い!!」

 

まるで自らを奮い立たせるように叫び、まるで目で殺してやるとでも言わんばかりににらみつけてくる。

しかし当の思春と言えばいくら華雄ににらみつけられても、表情を変えることなくジッと華雄が動くのを待つ。

二人は互いに睨み合ったまま動かない。

周りでは多くの兵達が激しく動き回っていたが、二人の気迫に圧倒されその場に近寄る事さえできずまるでその二人の所だけこの戦場から切り離されたようになっていた。

 

しらばくそんな状況が続いたが、痺れを切らしたのか、それとも我慢が出来なくなったのか…華雄が叫ぶ。

 

華雄「く…くそっ…私は認めん!我名は華雄…万夫不当の将なり!!」

 

そう言い放つと先ほどまで動かなかった華雄が、戦斧を振り上げて思春に向かって走り出す。

それに呼応するように思春もその場から飛び出した。

 

華雄「我戦斧の血錆となれぇぇぇ……!!」

 

思春「……この鈴の音と共に繰り出される我一撃を黄泉路への手向けと心得よぉぉぉ…!!!」

 

 

 

ガキイィィィン…………ドサ……

 

 

 

二人の体が一瞬重なったかと思うと、次の瞬間には華雄の手元には戦斧は無く、少し離れた所に落ちていた。

 

華雄「な…何だと…」

 

そう呟くと華雄は信じられないと言った表情で自分の手元を見つめていた。

思春は少し服が切れただけで特に怪我などは無く、それを確認し終えると華雄に近寄って声をかけた。

 

思春「…勝負あったな。我主の所へ来てくれるか?悪いようにはしない」

 

華雄「ふざけるな!!私は董卓の将だ!投降など絶対しない。たとえ手元に武具が無くとも最後まで抗ってやる!!」

 

思春の言葉にそう返すとその場からバッっと飛び退いて拳を握る。

その目から強い拒絶のを感じた思春は、決して表情には出さなかったが心では感心し…そして悲しかった。

 

思春(董卓への忠義見事と言う他ないな…。だからこそこんな形で戦いたくなかった。そして出来れば私達に下って欲しいが…これでは無理だろう。)

 

思春「そうか…ならば後顧憂いを絶つためにもここで首を貰う。」

 

本来思春達の目的は董卓を助ける事にある。

しかし今の状況では信じてもらえるとも思えないし、何より剣を突きつけている状況でそれを言ってもまったく説得力が無いだろう。

 

だから今思春ができる事といえばここで始末するか…それとも人が来るまで待ち捕縛するかであったが、いつ敵が襲ってくるか分からない状況では人が来るのを待っているわけにもいかず、始末するほか選ぶ道など無かった。

 

思春「さらばだ華雄…貴方は最高の将であった。」

 

心の動揺が悟られないように冷たい声色で言い放つと、華雄に向かって剣を振り下ろした。

 

ヒュッ…………ガキィィン

 

しかしその剣は華雄の前に出された偃月刀によって防がれる。

 

張遼「…すまんな。本当なら手だしたらあかんと思うんやけど、今ここで華雄がやられるわけにはいかんのや」

 

思春がその防いだ相手を見ると、そこには聞きなれない言葉遣いをしている青い髪の女が馬に乗って思春の剣を防いでいた。

 

思春「誰だ貴様は…」

 

張遼「ん?うちか?うちの名前は張遼っていうねん。よろしゅうな♪」

 

思春「な!?張遼だと…何故貴様がここにいる!?」

 

張遼「そうやな…確かにここまで来るのはかなり大変やったでぇ…一人じゃなかったら絶対無理やったわ。」

 

思春「ひ…一人だと。」

 

張遼「そやで♪大変やったわ~」

 

この状況でも笑っていられる張遼にも驚いたが、その後に言ったあまりにも信じられない言葉に一瞬あっけにとられてしまった思春。

その隙を張遼が逃すわけが無く、近くにいた華雄を素早く馬に乗せて(と言うよりも荷物のように担いで)その場からすぐさま立ち去った。

 

張遼「卑怯やけどすまんな。これでお暇させてもらうわ~」

 

思春「……はっ!!ま…まて!!」

 

張遼「いや~待てといわれて待つ奴なんておらんと思うで~♪」

 

そんな捨て台詞を残した張遼はもう姿が見えなくなっていた。

 

思春「くっ…私とした事が…」

 

そう呟いて悔しがっていると、少し遠くから声がかかる。

 

祭「思春!無事か!?」

 

思春「祭殿…。私は無事ですが…華雄を取り逃がしてしまいました。」

 

祭「そうか…。ワシのほうもすまんかった。張遼を止めきれんかったわ。」

 

思春「そんなに手ごわかったんですか?」

 

先ほど張遼がいたのだからそれは知っているのだが、それでも信じられなかった。

なぜならあの祭殿が遅れを取るなどと想像できないからである。

だから思春は祭に尋ねたが、聞かれた祭といえば少し難しそうな顔をしながら答えた。

 

祭「そうじゃな…。少なくとも個人の武は相当のものじゃろうな。」

 

思春「少なくとも?」

 

祭「そうじゃ。まぁ…そこら辺は皆が集まっている所で話すとしよう…。多分これからの事を考えても軍師殿たちに何か策を考えてもらわんといかん。」

 

思春「そうですか…」

 

祭「そっちのほうはどうじゃ?取り逃がした事は聞いたが、華雄には勝てたのか?」

 

思春「はい…。正直何とかといった所ですが…」

 

祭「はっははは…何とかでも勝ちは勝ちじゃ。もっと胸をはれ!」

 

思春が勝った事に大喜びする祭。

それはまるで自分のことのように喜んでくれるのだから思春は恥かしいやら嬉しいやら…で複雑な気持ちになっていた。

でもその気持ちは決して悪いものでは無く、むしろ心地よいものだった。

 

思春「はい。」

 

祭「それじゃ帰るとするかの。多分もう戦いは終わっているじゃろうがな。」

 

思春「そうですね。」

 

祭がそう言って歩き出すと思春も一緒に歩き出す。

すると雪蓮達がいる方から歓声が上がり、関に立っていた董卓の旗は降ろされて孫家の旗が立った。それはすなわち自分達が勝った事を表していた。

関に篭っていた華雄と張遼は逃してしまったが、この戦いは孫家の大勝利で終る。

その結果はすぐさま袁紹達がいる本陣へと伝わる事となり、その報告を受け皆が孫呉に賞賛を送る。

 

しかしただ一人を除いてだが…

 

袁紹「な…なんてことですの。本当に落すなんて…」

 

最初袁紹が考えていたのは、孫策達が何も出来ず悔しそうな顔をしながら袁紹に助けを求め、それを袁紹は”仕方がありませんわね”と言いながら仕方が無く自ら戦場に赴いて戦い大勝利を収める。

しかもこれを気にナマイキな北郷をあわよくば自分の下におくとまで考えていたのだが…

実際起こっている事と言えば、孫策達だけで汜水関を落とし名も実もとってしまった。

当然こんな事認めたくなかった袁紹は、自分が独断で先鋒にしたにも拘らず”何故私を差し置いて…”と思い孫策達に怒りを覚えた。

 

袁紹「絶対に許せませんわ…こうなったら…」

 

何かを思いついた袁紹は兵を呼びある人物をここに呼ぶように命令を下した。

そして兵が去った後、袁紹はここにいるはずの無い人達に向かって叫ぶ。

 

 

袁紹「おーっほっほっほ…この袁紹を敵に回したことを後悔するといいですわ!」

 

皆が勝利に喜んでいるさなか不吉な笑い声が袁紹の陣から鳴り響くのだった。

 

 

 

孫策の大勝利により活気付く連合軍。

だがその大勝利の中不穏な空気が流れ始める。

それが最悪の事態を引き起こすなど今の雪蓮達には気づけるはずが無かった…

 

今回何故か残り三行に数時間かけてしまった秋華です。

 

思春「今回私の強さが際立ってうれしい思春だ。」

 

まぁそれはそうでしょうよ。なんて言ったって一騎打ちするんですから…それ相応の書き方をちゃんとしますよ。

 

思春「まぁまだまだ未熟だとは思うけどな…」

 

それは誰よりも私がわかってますよ!!

それでは今回のお話はいかがだったでしょうか?

 

思春「ん?前回言っていた袁術の話はどうなったんだ?」

 

それについてですが、それは次回へまわしました。

其方の方が自然だと思ったので…

 

思春「なるほどな。あとは……あー長いからどこを話していいか分からん!!」

 

う゛…最初はこんな長くなる予定は無かったんですけどね…いつの間にかどんどん膨らんでこうなってました。

 

思春「やはり、少し国語…と言うよりも小説の書き方でも勉強するんだな。」

 

今でもやってますって!!

 

ふぅ…えーと気を取り直しまして次回ですが、

 

汜水関の戦い中編といった所です

 

思春「それだけか?」

 

んーそれだけにしないと、次回予告にならなくなります。

 

思春「そうか…そこら辺も勉強しないとな…」

 

そうですね…さてお待たせしました。今日の思春ちゃんのお時間ですが…その前に紹介したい人がいます。

そのお名前は”そ”さんです。

 

この方私と同じ思春が嫁の人なんですが、かなり素晴らしい思春イラストを書いておりまして…今回連絡を取って了承がでましたので、そのイラストを元にお送りしたいと思います。

 

思春「”そ”さん…私を嫁と言ってくれて…そして私を書いてくれて…あ、ありがとう/////」

 

はい。いきなり思春のデレを貰った所で今日のお題発表です!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思春のお尻は孫呉の秘宝?(イメージイラスト”そ”さんの臀部より)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これでいきます。

 

思春「…わ…私の尻が秘宝だと////そんなことあるはずが無い!!」

 

まぁまぁ…とにかくお願いしますね。これ…台詞です。

 

思春「いや…話を…////」

 

すべてはその台詞で理解してもらえると思うので…ではまた次回逢いましょう。

あでゅー♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思春「!!こ…こらぁ…何見てる!!/////いや尻と正直に言われてもだな…な!?////何が孫家の秘宝だ!!大体私の尻のどこが秘宝だというのだ!!え…私が心を許している人しか見れないからだって…こ…この…ばかものがぁ////だ…だが覚えておいてくれよ?この秘宝を見れるのはそうかもしれないが…手に入れられるのは……お…お前だけなんだからな////」

 

”そ”さんありがとうございました。そしてご馳走様でした!!

 

思春「いや…だから私の尻など…////」

 

秘宝だって!!それはゆずらないですよ!!!!

 

思春「う゛うぅぅぅぅ…//////」(は…恥かしい/////)

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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