・・・・・・・・・・・・・・・・・・・森だな。
目の前には森が広がっていた。
まずは五体満足か確認。
両手・・・よし。 両足・・・・・よし。
・・・・・・・・・大丈夫だ、問題ない。
「次は位置確認だな」
出来れば曹操がいるであろう魏の近くではないことを願いたい。
いきなり会ってゲームオーバーじゃ余りにも酷い。
幸い俺が出現した森は手入れされてない場所ではなく申し訳程度に整備された道だ。
このまま道を辿って行けば何処かには着くだろう。
まずはひたすら歩こう。
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貂蝉の気遣いだろうか。 大した距離を歩くことなく人の気配がある場所まで着いた。
しかしあまり平和的なものではなかった。
断末魔の叫び
金属がぶつかり合う音
空を真っ黒に覆う煙
遠目で見るとどうやら盗賊と兵士がぶつかり合っているようだ。
ここからじゃよく見えない。もっと近くに行こうっていうか助けよう。
手近にある情報源を消されてたまるかコンチクショー!
酷い有様だ・・・・・・・・。
沢山の死体が至る所に転がっている。
兵士は頑張っているが盗賊に押され気味だな。
「何だテメーは?」
おや、見つかってしまったか。盗賊の一人に話かけられた。
何だと言われてもなぁ・・・・。
記憶を探しに来ました・・・・・とか? いや、それはないな。
「ただの旅人ですよ」
まあ間違ってはないしこれでいいだろう。
「そーか、旅人か。兄ちゃんも運が悪りーな。行き着いた先が盗賊に荒らされてたなんてよ」
「まあ不幸中の幸いならぬ幸運中の不幸だな」
「あ? 何ワケわかんねーこと言ってんだ?」
「軽いジョークだよ」
「じょーく?」
「ん? 通じてないのか」
どうやら通じる言葉と通じない言葉があるみたいだな。
「グダグダ言ってねーでくたばれやぁ!!」
そう言って男はいきなり俺に斬りかかってきた。
遅い
始めは実戦を経験してないから少し不安だったけど、今ので確信した。
この男程度なら簡単に殺すことができる。
・・・・次の瞬間には男は血を流して絶命していた。
「・・・・・ふぅ」
一つため息をすると
「クッ! これではキリがない!」
凛とした女の人の声が聞こえた。
声が聞こえた方を見ると綺麗な黒髪をなびかせて舞うように敵を薙ぎ払う少女がいた。
あの人、凄く強い。
だがあれだけ敵を圧倒しているのにあの余裕の無さは何だろう?
それにさっきから受ける必要のない攻撃まで受けている。
しばらく観察すると理由が分かった。
「なるほど、子供を庇いながら戦っているのか」
おそらく逃げ遅れた子供だろう。
子供を逃がそうにも完全に足が竦んで動けなくなっている。
このまま行くと少女は大丈夫だろうが子供はどうなるか分からない。
さて、することは決まってる。
その為に付けた力なんだろうし、ここで使わなければ意味が無い。
まずは道を切り開く!!
少女に群がっている盗賊の集団目掛けて一気に加速して盗賊達を切り飛ばした。
そして直ぐに子供を背に少女の隣に立つ。
「何者だ!?」
少女は俺の突然の乱入に警戒をする。
「ただの旅人です」
とりあえず敵意抱かせないよう笑顔で返す。
「今は喋ってる暇はないだろう?」
「・・・・・助太刀感謝する!」
言葉と同時に少女は盗賊を吹き飛ばす。
「さて、子供は目を瞑ってなよ。こんなとこ見せたらPTAに叱られる」
ってもう言わずとも目を瞑ってるか。
さーて、初かどうかは分からんが実戦だ!
これで何人目だろうか?
俺の足元には死体が無数に転がっている。
実際にやってみないと分からないものだ・・・・・・・。
最初は人を殺したという事実に自分の心は壊れてしまうんじゃないかと思っていたが、思った以上に俺は平然としていた。
現在進行形で人を切り殺し続けている。だが心は割と平然としている。
前此処に来た時に沢山の死を目にしたからだろうか?
肉を切る感覚はまったくの未知のものだったが、「見る」ことに関してはどこか慣れている自分がいる。
気付けば敵はもういなかった。
残った者は恐れをなして何処かに逃げたのだろう。
村は現在復興作業中だ。
俺は今怪我人の介抱しながら色々なことを聞いて回っている。
分かったことはここは蜀にある小さな村であること。三年前に戦乱の世が終わって三国が手を取り合っていること。そして天の御使いこと北郷一刀が戦乱の世の終結と共に天に帰ったこと。
話を聞いてると自分は相当凄い奴だったみたいだ。しかし「魏の種馬」って何なの?俺そんな節操無しだったの?
村人から話を聞いているさっきの黒髪の少女が近付いて来た。
「旅の御仁、助太刀感謝します」
「いや、俺は当然のことしただけだから」
「ご謙遜なさらないでください。もっと自分を誇ってください」
「んー、まあ有り難く言葉を受け取っておくよ」
「しかし旅人と言いましたが何処かで武官をしていた経験がお有りで?」
「いや、無いよ」
実際のところは分からないがとりあえず否定しておこう。
っていうか天の御使いって具体的に何やってたんだろう?
「それにしては随分と落ち着いてらっしゃいましたね。敵との間合い取りも完璧でしたし」
あー、この流れはマズイな。話を逸らそう。
「えーと、それよりさ、名前を聞いてもいいかな?」
「これは失礼、忘れておりました。私は関雲長と申します」
関羽・・・・・ね。
武将がみんな女の子とは聞いてたけどやっぱり驚きは隠せないな。
「あの、難しい顔してないでそちらにも名乗って頂きたいのですが・・・・・」
「あ、ああ、ごめんごめん 俺は・・・・・」
やっぱり本名はマズイよなぁ。
こんな小さな村にまで広がっているんだし、本名を名乗ればこれからの旅に支障が出るかもしれない。
んーーー、曹操。曹操といえば覇王らしい。覇王・・・・・そうだ、いい名前が思いついた。
「俺は織田信長だ」
うん、我ながらナイスアドリブだ。信長公、しばらく名前をお借りします・・・・・。
「織田、信長ですか。変わった名前ですね。ここの国の出身ではないのですか?武器も見たことがない形状ですし」
「うん。えーっと、ここからはるか東にある島国から旅から来たんだ」
あまり大きな嘘をつくとボロが出るかもしれないから微量に本当の事を混ぜて会話したほうがいいな。
「織田殿はこれから行く宛はあるのですか?」
「いや、まったくないよ。ただ放浪するっていうのが今回の旅の理由だし」
「よければ蜀の都に来ませんか?今回の礼をしっかりとしたいので」
礼はともかく蜀に案内して貰えるの美味しい話だ。
ここは素直について行こう。
「うん、蜀に行きたかったしお言葉に甘えようかな」
「はい、ではこの村の復興が終わったら向かいましょう!」
旅の始めは順調に進みそうだな。
「んー・・・・・・・」
気が付くと関羽さんが目を細めて俺の顔を見ていた。
「あの、何か俺の顔に付いてます?」
「織田殿、私達以前何処かでお会いしてませんか?」
ギクッ・・・・・
「アハハー、き、気のせいじゃないかな?」
「ふーむ・・・・・・」
まだ釈然としてない顔だがとりあえず納得してくれた。
イカンイカン、今度からは顔出しは極力NGでいこう。
他国といえど油断できん。
それにこっちは記憶がないから知り合いかどうか全然予測がつかん。
「じゃあ介抱してくるからまた後で!」
これ以上顔を見られるのはマズイから戦略的撤退をした。
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真・恋姫†無双 記憶の旅 3です
さぁー、書けるうちにサクサク行こう!
とりあえず今日中に3つ上げれたなぁ