第三話「小覇王」
巴郡を出て数日。思春の事甘寧は、母の待つ建業の近くの邑へ後数里の所まで来ていた。
「母上は喜んでくれるだろうか?」
一刀から買ったお酒を落とさないように持ちながら馬を急がせた。すると目の前に女の子が賊に襲われている所に出くわし。思春は馬から降りてそこへ向かった。
「ちょっと。シャオに触らないでよね。あなた達シャオが誰だかわかっているの?」
「わかってなきゃ、貴様を誘拐なんてしねえよ」
「さすがアニキ。作戦が見事と的中しましたね」
「当たり前だ。俺様が立てた計画だ、失敗するはずが無い」
チリ~ン チリ~ン
「全く。こんな連中がいるからこの国は良くならないんだ」
「「!?」」
「(ドス!ドス!)」
「げぇ・・(バタン)」
「うっ・・(バタン)」
思春の声で振り向いた二人の賊を一撃で倒した後、思春は女の子に近寄った。
「大丈夫か?」
「あなた、たいした武ね。いいわ、あなたシャオの家来にしてあげる」
「いえ。私はこれから家に帰るので」
「なによ。シャオの言うことが聞けないの?」
「聞くも聞かないも、私はただ実家に帰る途中だったので」
「なら、シャオも行く。そしてご両親に許可を貰う」
「いや、あの~~」
「そうと決まれば、急ぎましょう」
女の子は思春の乗っていた馬に跨り思春を、待った。
「はぁ~~~」
「まさか、孫策様、孫権様、周瑜様直々に来て頂けるとは」
思春の母はピンクの長髪の孫策と孫権。眼鏡を掛けた黒髪の周瑜にお茶を出した。
「すまぬな、甘慧殿。私達が突然押し入ったのに。本来なら土産の一つは出さないといけないのはこちらなのだが・・・」
「なによ。私が悪いって言うの」
「あたり前だ!なにが『今日は必ず帰ってくるわ』だ。蓮華様を連れて行き成り出て行きやがって。少しは仕事しろ」
「うぅ~~~。蓮華、冥林が虐める~~」
「姉様。甘慧殿の前なので少しは黙っていてください」
自分の後ろに逃げた孫策を孫権は捕まえて
椅子に座らした。
「それで、どうして孫策様達は私の娘に用があるのでしょうか?」
「あぁ。実は蜀の地方にいる鈴の三人集の一人が甘慧殿の娘の甘寧だとわかりましてな。我々にとっては是非孫呉の武将になって頂きたくこちらを訪問したわけです」
「そうですか。最近噂になっている鈴の三人集の中に私の娘が・・・」
「呉の武将になったら蓮華の護衛役になって貰おうかしら」
「そうだな。蓮華様は次の呉の王になるお方だ。甘寧が付いていれば安心だろう」
「姉様も冥林も、それは甘寧が呉の将になってからでしょう。もし断れればどうするつもりですか」
「そうね。その時は、無理や引っ張って行こうかしら」
「お姉様!!」
「冗談よ。まずは、理由を聞こうかしら」
「「はぁ~~~~」」
孫策らが甘慧の家に来てから半刻後。家の前に一頭の馬が止まった。
チリ~ン チリ~ン
「母上。ただ今戻りました」
「お帰りなさい。思春。あなたにお客様が来て・・・その子は?」
「この人は孫呉の姫君、尚香様です。ここに来る途中、賊に襲われているのを助けたのですが、私を家来にすると言って付いて来たのです」
「初めまして、シャオは孫尚香。孫家の姫だよ」
「はぁ~~~」
「なによ。その反応は?」
「実は、先ほどから孫策様、孫権様、周瑜様がこちらで思春をお待ちになっていたのでして」
「「えぇぇぇ!!」」
「母上。それは本当なのですか?」
「本当です。早くお会いに行きなさい」
「は、はい」
思春は急いで家に入り三人に挨拶した。
「姓は甘、名は寧。字を興覇と申します。長い間お待たせしまして申し訳ありません」
「いいのよ。私達も行き成り来てしまったのだから。それにしても良い音色ね。その鈴」
「ありがとうございます。それで、私になんのようですか?」
「う~~んとね。単刀直入に言うと・・・あなた、内に来ない」
孫策はさっきまでの顔と打って変わって真剣な眼差しで思春を見つめた。
「知っていると思うが、今の孫呉は袁術に領土を取られている。しかし、我々とてこのままで終わるとは思っていない。いつか必ず孫呉を復興させる、そのために貴女の力が必要なのよ」
「尚香様よりも納得いく言葉ですが・・。しかし、私には私の帰りを待つ友がいます。彼らに必ず帰ってくると約束しました。ですので、今ここで返事をする事はできません」
「そう。ならしかたがないわ。けど、一つだけ教えて。友とは鈴の三人集の残りの二人?」
「はい。私と共に武を競い合っている最高の友です」
「わかったわ。冥林、蓮華帰りましょう。シャオもいいわね」
「は~~い」
孫策達が椅子から立ち上がり立ち去ろうとする。すると思春が持っていたお酒を盃に入れて孫策達に渡した。
「鈴の三人集の一人が作ったお酒です。どうぞ飲んでいってください」
「あら。なら一杯だけ。うっく・・・・。ぷはぁ~~~、美味しい」
「うむ。口に入れた途端に広がるほのかな甘味がなんとも」
「こんな美味しいお酒初めて飲んだわ」
「ねぇ、ねぇ、甘寧。このお酒『三人集の一人が作った』って言っていたけど。蜀に行けばこのお酒どこでも飲めるの?」
「いえ。このお酒はそいつが作って販売しているものですので、巴郡に来ていただければ購入可能ですが」
「販売?どうゆうこと」
「つまり酒屋を経営しているのです」
「ふ~~ん。ねぇ、冥林。このお酒巴郡から取り寄せましょうよ」
「確かに、このお酒ははまるな。祭殿にも飲ましてやりたい」
「あら、冥林がお酒にはまるなんて珍しいじゃない」
「私だって、お酒を飲む時があるのだけど」
「なら、早く商人に言って取り寄せてもらいましょう」
「そうだな」
「あの~~」
「どうした?甘寧殿」
「実はそのお酒。取り寄せ不可能なんです」
「「「!?」」」」
「どうして?」
「彼がそういうのを嫌っていまして。前に取り寄せに来た貴族から雇われた商人を追い返しています」
「そう。残念だったな。雪蓮」
「なら、その残りのお酒でも」
「雪蓮。はしたないぞ」
「そうですよ。姉様」
「うぅ~~~~。だって~~」
「すみません。これは母上のお土産として私が買った物ですので」
「え!!友なのに買ったの?」
「はい。しかしこのお酒は私が頼んだ物とは違います。多分母の土産と聞いて、私が頼んだ物よりはるかに良い物を入れてくれたようです」
「はぁ~~。なら、仕方が無いか。でも忘れないで、私はまだあなたを諦めて無いから」
言いたい事を言った孫策は孫権達を連れて建業へ帰った。
「母上。お騒がせしました」
「いえ。あなたにも胸を張って言える友が出来て私は嬉しいです」
甘慧は思春を抱き寄せ微笑んだ。
第三話 完
「第三話終了。一日に二つはさすがにしんどいですな」
「そう思うなら止めたらいいだろうが、莫迦者が」
「だって読んでくれている皆さんに早く続きを読んで欲しかったから」
「おまえいつか過労死するぞ」
「・・・ひどい。酷すぎるぞ、思春。それは言ってはならない言葉」
「それで、次はどうなるんだ?」
「一刀。今は私がこいつと話をしている途中なのだが」
「そうですね。次は焔耶視点ですね」
「ワタシか!!」
「えぇ。一刀、思春と来たら次は焔耶でしょう」
「そ、そうか・・・」
「なに、あかくなってるんだ」
「ワタシは別にあ、あかくなぞなってないzそ」
「焔耶。その言葉遣いでは紅くなっていると言っているのと同じだよう」
「!?」
「え~~~と。焔耶が目を開けたまま気絶しましたので、今日はこれまでとします。それでは皆さんまた会う日まで。BY]
「BY]
「バイ」
「・・・(パタパタ)」
「気絶してても、最後はきっちりしてるんだな。焔耶」
「莫迦者が」
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里帰りに出た思春のもとに孫家がやってきた。もちろん狙いは思春の武である。はたして思春はどう返事をするのか?