この小説は、北郷一刀、呉の主要キャラほぼ全てと華陀に
いろいろな設定を作っていますので、キャラ崩壊必死です。
その点を踏まえて、お読みください。
~建業・仕官試験会場~
例の部屋の中で、三人が向かい合っていた。
二人は試験監督として、もう一人の人物に質問を繰り返していた。
そして暫く経った後、試験監督の一人である蒼里が笑顔でこう言った。
「はい、合格です。 陸遜さん」
「うむ。 御前ほどの知ならば、我が孫呉に欲しい」
「よろしくお願いしますぅ。 其れと、穏でかまいませんよぉ」
そうほんわかした感じで言う、陸遜こと穏に二人も表情を崩す。
「では、私のことも蒼里で構いませんよ。 穏さん、よろしくお願いします」
「うむ。 私のことも冥琳で構わん。 しかし、この卵の難問を我等以外で解くとはな」
そう、勿論この陸遜もあのコロンブスの卵を成功させたのだ。
「アレは難しかったですね~。 ちなみに、考えたのって何方なんですかぁ?」
「今は居ぬ、江東の白虎よ」
「! ……すいません」
「構いませんよ」
そう言って、なんでもない風を装う蒼里だが彼女の表情には、寂しさがありありと浮かんでいた。
「(一刀、御前はこんなにも慕われているのだ。 早く帰って来い、一刀。)」
窓を開けた冥琳は、何処までも続く蒼い空の下のどこかに居るであろう一刀に思いをはせた。
彼女達と旅をする事になって、1週間ほど。
一刀達は、現在三つ目の邑に入り昼食を取っている所だった。
「はぐはぐ……で、1週間経ったけど路銀は大丈夫なのか?」
「一応、まだ平気ですね」
そんな話をしていると、なにやら舟をこいでいる風の姿が目に映った。
「……ぐぅ~」
「風! 食事中に寝るな!!」
「おお!」
最初は、少し驚いたが、見慣れれば雪蓮と冥琳がじゃれ合っているのに似ている気付いて、微笑ましくなる。
そんな事を考えていたからか、隣に座っている星が奇妙な視線を向けて来た。
「如何した星? 俺の顔に何かついてるか?」
「いや、二人を見る目が何か懐かしい物でも見る様な感じに受け取りましてな。」
まさか感じ取られてしまうとは思わなかった。
黙っているわけにもいかず、少し間を置いて答えた。
「俺には妹が三人居るんだ。
そんで二人のじゃれ合いが、一番上の妹が妹の親友とじゃれ合っている姿と重なっちまったんだよ。」
「そうですか。」
その時の一刀の顔は、三人から見てもとても優しい顔をしていた。
「大切にされておられるのですね一刀殿。」
「ふむぅ……このさいですから、風はお兄さんと呼ぶ事にしましょうか。」
「いや、どのさいだよ?」
「おうおう、兄ちゃん其れは聞かぬが花って奴だぜ?」
と話していると、行き成り風の頭の(太陽の○?)人形が喋り出した。
「これこれ、宝慧行き成り喋り出してはお兄さんが驚いてしまうではないですか。」
「こりゃあすまねえ。 オイラは宝慧ってんだよろしくな、兄ちゃん。」
「お、おう。 よろしく宝慧。」
と結局、風からはお兄さんと呼ばれるはめと成った。
食事を終え、今夜の宿を探そうと街中を歩いていると、
二人の妙齢の女性と蓮華より少し年上ぐらいの少女の姿が目に映った。
ちなみに、彼女たちを一番最初に見たときの心の中で第一声。
「(でっけぇ……祭姉ちゃんとか美蓮母さんクラスだなアレは……。)」
ナニを見てそういう観想を言ったのかは、さておき一刀の視線の先に居る女性達は、
一人は紫色の髪に大胆にスリットの入っていて、胸元の開いた服を着ており、
もう一人は、浴衣の胸元を大きく開かせ、少し着崩したような感じの服装で、イメージするなら花魁だろうか、
最後の一人は黒を基調とした服に、ホットパンツをはいてる。
そして、付け足すなら、三人とも美人で"お胸様"と言う事だろうか。
だがその二人の表情は思わしくない。
一刀自身、そんな表情の人を見てほおって置けなかった。
呉でしていた事と同じだと思えば良い。
一刀は、三人に宿の事を頼み、女性達の方に向かった。
「どうかなさったんですか?」
~side女性~
「如何なさったんですか?」
不意に掛けられた声に、私は振り返った。
其処に居たのは、黒く長い髪に碧眼の青年だった。
表情や声色から、自分達の事を軟派しに来たことでは無いと分かる。
「なんだ、貴様は?」
「失礼、俺は旅の者で白虎と言うもんなんだけど。
なにやらお困りのようで……。 俺でよければお手伝い致しますが?」
「……ありがとうございます。 実は、―――。」
私はしばし悩んだ後、この青年、白虎さんを信じる事にした。
隣で見ていた友も異論は無い様で、私は事情を話した。
~side一刀~
一刀は二人に話しかけ、事情を聞いた。
二人の名前が黄忠、厳顔、少女が魏延と言うのを聞いて、内心物凄く驚いていた。
まぁ、祭がアレだけ若いのだから二人が若くてもそう言えばそうか程度にしか思わなかった。
そんな事はさておき、二人の話を聞くと、黄忠さんの娘さんがどこかに行ってしまって、
見つからないと言うのだ。
ふと見ると、女性の手にリボンが握られていた。
「其れは?」
「娘の愛用している髪留めですわ。」
愛用していると言う部分を聞いて、一刀は何かを閃いた。
「愛用して居ると言う事は、かなりの時間身に着けていたと言う事ですよね?」
「そうじゃな。 其れがどうかしたのか?」
不思議そうに問う厳顔さんの言葉に、一刀は頷き黄忠に言った。
「少し其れを貸していただけませんでしょうか。」
「? 構いませんが……如何するのですか?」
「娘さんが愛用していたと言う是に付着している氣を追います。」
そう言って、其れを受け取ると、一刀は己の氣を集中し、
その髪留めについている黄忠と似た氣、娘さんの氣を探る事した。
愛用していたのなら、その僅かに体から噴き出ている氣が、
その髪留めに付着しているのではなかろうか、と思ったのだ。
~side厳顔~
儂は息を呑んだ。
この青年が今やって居るのは、己の氣で、璃々の微弱な探っていると言うのだ。
その証拠に、璃々の髪留めを持っている掌に美しい純白の氣が集まっている。
隣の親友も、驚いている。
焔耶は氣というものが珍しいのか、覗き込むように見ているがあんまり分かっていないようだ。
しかし、儂等にはわかる。
こんな事、並み大抵の氣の使い手では到底出来ない。
暫し時が立った後、彼が目を開けて口を開いた。
「この町には居ません。 きっと、あちらの林の方に居ると思います。
(あそこから、氣が途切れているな。)」
そう言って、歩き出した。
「お、おい! 待てよ!」
驚いて固まっていた儂と紫苑を戻らせたのは、焔耶の声だった。
儂等も其れにつられるように慌てて着いて行った。
~side一刀~
「なぁ、本当にこんなところにいるのか?」
「ご心配無く、だんだん近づいてる」
一刀は、森の中に入って黄忠の娘の氣を追った。
微弱すぎて、時々見失いそうにもなったが何とか追って行く。
そして、追って行くと崖のところで氣は消えていた。
「おい! 崖に出たじゃないか! こんな処に璃々がいるわけ無いだろう?」
魏延は無駄足をしたと思ってガッカリと落胆した表情を見せる。
しかし、俺は聞いた。
「……た……て……す……け……たす……て!」
微かに耳に触れる幼い声を――。
~side out~
「!!」
すぐさま崖の下を見る、一刀のその行動に三人は触発されるように崖下を覗くと、
驚きの光景が飛び込んできた。
なんと、崖に生えている木に女の子がギリギリぶら下がっていたからだ。
「璃々!!」
黄忠がそんな様子の自分の娘を見て悲痛な叫びを上げた。
「くそっ、こうなれば、私が……なっ!?」
「え?」
「――――っ!?」
気付くと、一刀が崖から飛び降りていた。
『!?』
そして3人は見逃さなかった、彼の右手についている純白に輝く籠手を。
彼の長髪で隠れて見えなかった、背中の孫の文字も。
そんな彼女等の事はお構いなしに、一刀は崖を落ちる。
そして、少女と距離が近くなると、崖に籠手をしている方の手を突き刺した。
ギャリギャリギャリィィ!!!!
少女のぶら下がっている、木の所で止まる。
「っぐ!! 何とかとまったぁ……。 御嬢ちゃん大丈夫かい?」
「う、うん。 お兄ちゃん、璃々のこと、助けに来てくれたの?」
一刀の言葉に震えた声で少女に答える。
「うん。 君の声が聞こえたからな。 よく諦めずに頑張った、ほら、掴まって」
「う、うん」
もう大丈夫と、安心させるように左手をその娘に伸ばす。
璃々は、おっかな吃驚掴まる。
掴まったのを確認すると、自分の方に抱き寄せる。
「きゃっ」
「しがみ付いてろよ、はっ!!」
そして、腕の力を抜かないように、あまり力まない様に気を付けながら、一気に崖を上った。
「いよっと! ほら、お母さんだよ行きな。 んで、お母さんに心配かけてごめんなさいって、な?」
「うん、あり……がとう、お兄ちゃん……ひっく……」
しゃくり上げながら、一刀にお礼を言って黄忠の方に走って行った。
「璃々!! ああ、良かった……」
「ひっく……おかあさん、ご、ごめん……なさい……ふぇぇぇん!! 怖かったのぉぉ!」
黄忠はにを歩かせていってやる。
「良かったな、璃々ちゃん」
感動の親子の再開を邪魔せぬように一刀は、其処から退散しようとしたが、
「何処に行かれる、白虎……いや」
「『江東の白虎』殿」
「……やはり、気付きましたか」
と、厳顔と魏延が一刀に声をかけ、足を止めさせた。
一刀が暫し足止めをしていた間に、娘との再会を終わらせた黄忠も此方に来て、
一刀の事を白虎ではなく『江東の白虎さん』と呼んだ。
一刀は溜息をつき、
「戻りましょう。 あそこに、俺の旅の友達が居ますの」
そう言って、元来た道を戻った。
彼女達も、一刀に着いて行く。
一刀は道の途中で、彼女達に問うた。
「何故、俺が『江東の白虎』だと?」
「『白銀に輝く爪』……。 貴殿の着けてるその籠手に氣が籠められた瞬間だ」
「そして、飛び降りたときに、髪が舞い上がって今まで隠れて見えなかった背に負う『孫』一文字。
これらが全てにおいて決定的な証拠じゃよ」
「それに貴方の名前は、江東のみならず我々の方まで響いてきましたわ、
だから貴方の戦場での姿も此方でも有名なのよ。
此方でも、貴方の武勇に憧れを抱くものは少なくないわ」
三人の答えに一刀はなるほどと思う。
そして思う、自分の名前は、自分が思っているより中々に重いと――。
「孫江殿、江東に戻らぬのか? 私は余所者だが、今の江東は貴殿を必要としていると思うが?」
「ああ、俺は絶対に戻る。 でも、今は時ではない、と思っているのですよ」
その一刀言葉に、一同は「は?」と間抜けな返事を返してしました。
そんな二人の事など、無視してさらに言う。
「俺が……"江東の白虎"が呉に舞い戻るのは、まだ先だ。
なぜなら、それは"孫呉復活の狼煙"だからだ……!」
『!?』
「っ!?」
一瞬、その言葉と共に一刀の放つ覇気に黄忠と厳顔は思わず見惚れ、魏延は圧倒された。
特に黄忠と厳顔は、まるで女として強い雄に魅せられる、と言う様な本能的なモノが働いた感じであった。
そして、一刀は其れを言い終わると二人の方を振り返り微笑む。
「ま、そんな気難しい話は、其処までにしましょう。
俺は旅の友が心配しますので、宿に行きます。 また、縁が有りましたら会いましょう」
そう言って踵を返す一刀に、二人は待ったをかけた。
「まだ、娘を助けてくれた礼を言っておりませんわ。
ありがとうございます、次に会いました時には私の真名、紫苑を及びください。」
「御主ほどに、面白い御仁は中々居らん。
それに儂の親友の娘を救うてくれたし、今度会ったら儂の事も桔梗と呼ぶが良い。」
「……孫江殿、すまん。 本当は此処で私も真名を預けるべきなのだろうが、
私の家訓である条件を満たしてなければならない……すまん」
三人のその様子に、少し面食らいながらも一刀は笑みを返してこう言う。
「いや、構わないよ。 んじゃ、二人は俺のことも一刀と呼んでください。
又会いましょう、紫苑さん、桔梗さん、魏延」
「はい。 又会いましょう、一刀さん」
「うむ。 その時は共に飲もうぞ一刀殿」
「次に会った時は、私と手合わせ願う」
「バイバイ! お兄ちゃん!」
そう言って四人は、己の還る場所へ。
一刀は旅の仲間が待つ宿に向かって、歩き出した。
~side another~
去り行く一刀の背中を見送った後、焔耶―魏延―は先ほどから震えて止まない自身の手を見つめた。
「あら? 焔耶ちゃん?」
「ん? どうしたんじゃ焔耶?」
いつもの焔耶らしくない表情と行動に、桔梗と紫苑は疑問を抱いた。
「……桔梗様、私は自分の武は接近戦に持ち込めば、
桔梗様ともいい勝負ができると、正直、力のみなら上回っているとも思っていました。
自分の武は、ある程度上位の部類であると自負していました」
そう言って、焔耶は目をつむる。
『俺が……"江東の白虎"が呉に舞い戻るのは、まだ先だ。
なぜなら、それは"孫呉復活の狼煙"だからだ……!』
先ほどの一刀の姿が、覇気が、言葉が、脳裏に焼けついて離れなかった。
「……生まれて、初めてでした。
覇気だけで、姿だけで、言葉だけで、こんなにも気圧され、自分との実力の差を思い知らされたのは……」
「……それで?」
「……」
そんな焔耶の様子に、桔梗は嬉しそうな視線を向け、無駄な口を挟まず焔耶にその先の言葉を促した。
紫苑もその様子を黙って見届ける。
「今の私では、足元にも及ばない。
だから、私はもっと上を目指すために、強くなろうと思います。
いつか、孫江殿に勝てるぐらい強く……!」
「(ほう!)」
「(まぁ!)」
そう言って拳を握り、顔を上げた焔耶の眼を見て桔梗と紫苑は嬉しくなった。
最近の焔耶は、天狗になっている節がちらほらと見受けられた。
桔梗は自分ではあまり治りそうに無さそうだから、紫苑あたりにしばき倒してもらおうと思っていたのだが、
まさか一刀を見ただけで、こんなにもなってしまうとは思っていなかった。
「(まったく、一刀殿には本当に感謝しきれんのう) そうか」
「はい!」
「イイ顔ね、焔耶ちゃん」
焔耶の変化に、紫苑と桔梗は本当にうれしそうだった。
おまけ
「ところでのう焔耶よ。 そう言えばさっき、儂に接近戦なら勝てる等とほざいておったな?」
「……ゑ?」
少しドスを利かせた声でそういう桔梗。
焔耶はそんな恐れ多い事を言ったかと思って、先ほどの自分の言葉を脳内で再生させる。
『私は自分の武は接近戦に持ち込めば、
桔梗様ともいい勝負ができると、正直、力のみなら上回っている』
「(……しまった、勢い余って言っていた。 しかも、かなりはっきりと)
き、桔梗様? あ、あれは言葉の綾と言うやつででしてね?」
しどろもどろになりながら、焔耶はその場を取り繕おうとしている。
「ふふ、そんな謙遜するな。 帰ったらしっかり、みっちりと儂が接近戦(殴り合い)を教えてやるからの♪」
「(今、桔梗様の言った接近戦が、殴り合いに聞こえたのは気のせいだろうか?)」
だが、焔耶の努力空しく、桔梗は笑っていない笑顔で焔耶の言葉をバッサリと切り捨てた。
考えても見てほしい、自分の鈍砕骨並の重さの武器をもって、
自分より軽やかに動き回り、武器に備え付けられている杭を発射し、
それから生まれる反動を連射しても耐えられる、握力、腕力を持ち、長年の戦のカンもある桔梗と、
最近まで、殆ど戦に出た事もなかったひよっこの自分が戦って勝てるのかと。
答えは否だ。
「い、いえ! し、暫くは自分なりの鍛え方をしてから教わりたいなぁ、なんて」
だから、焔耶は表面上は遠慮がちに、内心は必死にそう言って断ろうとした。
「遠慮するな。 そこら辺も踏まえて儂と殺り合おうではないか♪」
だが、やはり容赦なくバッサリと切り捨てられた。
しかも、焔耶の耳には今の言葉は副音声で全く違う次の言葉に聞こえていた。
「うるさい。 つべこべ言うな黙って儂に殴られろ」
閑話休題
「あ、あははは……はぃ。 (私は、明日の日を拝めるのだろうか……)」
「ねぇ、おかあさん、焔耶お姉ちゃん、真っ白になってるよ?」
「あらあら、焔耶ちゃんも大変ね♪」
「ふふん、楽しみじゃのう♪」
桔梗の言葉を聞いた焔耶は真っ白になっていて、
そんな焔耶を見て璃々は不思議そうな視線を向け、紫苑は何ら楽しそうだった。
このしばらく後、城に戻ってすぐに焔耶は桔梗にまるでボロ雑巾の様になるまで、
しばき倒されていたのが偶々通り掛った兵に目撃された。
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ちわっす!
タンデムです!
今回は行き成り関係無い三人を出しました。
だって、あの三人って呉とかかわる時って、
赤壁のときしか無いんですもん!!
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