真・恋姫†無双~赤龍伝~第4話「赤斗 対 祭(稽古編)」
中庭で赤斗は久しぶりの鍛練を行っていた。
赤斗「ふぅ~~………」
深呼吸で息を整えて、目を瞑り静かに気を高める。
傷痕は残っているものの左肩の傷も癒えていた。傷が癒えたことにより、ようやく藍里から鍛練のお許しを貰えたのであった。
赤斗(やっぱり身体が鈍っているな………はぁ……この一週間、勉強ばかりだったからな)
赤斗は傷が癒えるまでの一週間、諸葛瑾と陸遜にこの世界のことや兵法等について教わっていたのである。
赤斗(穏の癖には驚いたけど…………いけない、集中集中)
陸遜と兵法の勉強をした時のことを思い出していたが、集中するため無理矢理頭の中から追い出した。
赤斗「一つずつ復習をした方がいいみたいだな。よし…………“月空”」
そう言って自分が持っている奥義を発動した。
奥義の発動と同時に、後方から小石が飛んできた。
赤斗「おっと!」
後頭部に小石が当たる寸前で赤斗は首を少しだけ動かして小石を避けた。
小石が飛んできた方向を見ると、黄蓋が立っていた。
祭「ほう。よく避けたな」
赤斗「偶々ですよ」
祭「偶々のぅ……」
黄蓋は小さな笑みを浮かべていた。
赤斗「それより、祭さん酷いじゃないですか」
祭「すまんすまん。お主が鍛練を始めたと藍里から聞いての。見に来たのじゃが、ついお主がどんな反応をするか試してみたくなったのじゃ」
子供のように笑いながら黄蓋は答える。
赤斗「なったのじゃって…当たったらどうするつもりですか?」
祭「えーい!! 避けられたのじゃから良いでわないか。しつこい男じゃ」
赤斗(逆ギレだ……“月空”を使っていなければ当たっていたんだけどな)
“月空”気を自分の周りに張り巡らせレーダーのような役割をする奥義を使っていたことは、黄蓋には内緒にしておくことにした。
祭「それよりも風見よ。儂が稽古をつけてやろう♪」
先程までの逆ギレは何処へ行ったのか。黄蓋は次の話に移った。
赤斗「いきなりですね」
祭「何じゃ、儂では不満と申すか?」
赤斗「いいえ…………よろしくお願いします」
祭「うむ。良い面構えじゃ」
黄蓋のような強い武将自らが稽古をしてくれるというのだ。こちらにとっても願ったり叶ったりだった。
祭「よし♪ ほれっ」
黄蓋は持ってきていた練習用の模擬剣を投げ渡す。
赤斗「これ真剣ですか?」
受け取った剣の重みを感じる。
祭「心配するな。ちゃんと刃引きはしてある。怪我をするとしても骨が折れるくらいで済むだろう」
赤斗「重いな……」
祭「怖気づいたのか?」
赤斗「まさか」
剣を抜き正眼に構える。
赤斗「行きます」
祭「おう。どこからでもかかってくるが良い」
ニヤリと笑った黄蓋は、特に構えを取るわけでもなく、握った剣の先を地面に向けたまま、ゆらゆら揺らしている。
赤斗「はっ!」
祭「ふんっ」
剣を持っている手の逆側をの肩口を狙ったが、瞬間的に跳ね上がった切っ先に、赤斗の一撃は防がれてしまう。
祭「刀にまるで力がこもっておらん。手先だけで振るでない。しっかり踏み込まんか」
赤斗(やっぱり祭さんは強いや。ならば、これなら)
気を取り直して攻撃を繰り出した。
赤斗「はぁーーー!!」
祭「先ほどよりは良い。だが、まだ脇が甘い」
赤斗「くっ」
またしても赤斗の一撃は防がれるのであった。
赤斗と黄蓋の稽古を少し離れた場所から見ている者たちがいた。
火蓮「祭に手も足も出ないようだな」
燃えるような赤い髪の孫堅が冷静に分析する。
雪蓮「赤斗ったら、この前の強さはどうしたのよ」
ヤキモキしたように隣にいる孫策は言う。
藍里「赤斗様は本調子ではないので、思うように身体が動かせないのではないでしょうか?」
金髪ポニーテールの諸葛瑾が赤斗のことをフォローとしようとする。
火蓮「違うな。少なくとも雪蓮と闘った時は、今よりも身体は弱っていたはずだ……」
即座に諸葛瑾の言葉を否定する。
火蓮(どうした赤斗? 私をがっかりさせないでくれよ)
雪蓮「そうだ! もしかして!!」
孫策は何かを思い出すと走り出して行った。
藍里「しぇ、雪蓮様?」
火蓮「雪蓮どうした?」
雪蓮「すぐに戻るわ」
そう言って孫策は姿を消した。
残された二人は再び赤斗と黄蓋の方に目を向けた。
赤斗「はぁ……はぁ……」
一週間。いや、この世界にきてからの二週間弱。鍛練を行っていなかったからか、身体が重かった。
“浮葉”を使えばもっとマシに戦えるだろう。しかし“浮葉”は回避技。せっかくの稽古だ。受けには回りたくなかった。
祭「何をしておる! 自ら膝をつくなど勝負を捨てた者のすることぞ! しっかり立ってみせい!」
赤斗「はぁ……はぁ……」
“浮葉”は使わない。しかし、奥義を使わなければ勝ち目はない。ならば答えは簡単だ。
祭「どうした! 策殿と闘った時の力は何処へやった!」
赤斗「………行きます。“流水”」
祭「ふっ。そうこなくてはな」
赤斗「はぁーーーーーー!!」
深く踏み込んだ一撃を赤斗は放つ。この一撃は受け止められるだろう。
でも、それでも構わない。分かっていることだ。
赤斗は黄蓋がするであろう行動、出来るであろう行動を頭の中で幾通りも想い描いていた。
想い描くことにより黄蓋の動きを事前に察知して、その動きに対して最良の行動を赤斗は行おうとしているのである。
“浮葉”が相手の“今の流れ”を読み、相手の攻撃を躱す奥義なら、“流水”は相手の“先の流れ”を読み、攻撃の主導権を握る奥義だった。
祭「甘いわっ!」
予想通り、赤斗の一撃は受け止められた。
次に黄蓋は剣を跳ね除けようとするだろう。
赤斗(その前に祭さんに一撃を入れる!)
受け止められた剣を自ら引いて、黄蓋の剣をすかす。
そして、赤斗の一撃が黄蓋の胴に決まるはずだった………。
赤斗「なっ……!」
黄蓋「良くやった、と言っておこう」
赤斗の一撃を黄蓋は剣で受け止めていた。
赤斗「くっ……」
すぐに赤斗は後方に飛び、黄蓋との距離をとった。
赤斗(本当なら一撃入っていたはずなのに。速い……いや、僕が遅かったんだ………)
赤斗「はぁ…はぁ…やっぱり、不慣れな武器だと駄目かな」
そう言いながら手に持っている重い剣に目をやる。
その時だった。
雪蓮「赤斗ーー! これ!!」
いきなり孫策が現れ、手に持っていた細長い袋を赤斗に投げ渡してきた。
赤斗「え……!」
赤斗は剣を落として、反射的に両手で抱え込むようにして袋を受け取った。
赤斗「雪蓮、いきなり何を?」
雪蓮「それ、赤斗のでしょ。わざわざ持ってきてあげたんだからね。感謝してよ♪」
赤斗「えっ、これって……」
袋を開けてみる。そこに入っていたのは、二振りの日本刀だった。
赤斗「もしかして、これって“花天”と“月影”か? ……何で?」
赤色の柄で赤銅の鞘に納まっている“花天”。
黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっている“月影”。
愛刀がこの世界にあることに赤斗は驚いた。
雪蓮「赤斗が倒れていた場所のすぐ側に落ちていたの」
赤斗「ありがとう。雪蓮」
雪蓮「どういたしまして♪ それより赤斗。それで祭に勝ちなさい!」
礼の言葉に満足して、孫策は勝つように命ずる。
赤斗「勝ちなさいって。これは刃引きをしていないから……」
祭「儂は構わんぞ。それより、いつまで待たせるつもりだ?」
赤斗「あ……ごめん。だけど……」
祭「儂は構わんと言っている」
雪蓮と話している間、退屈そうにしていた黄蓋が不機嫌そうな声で答える
赤斗「わかりました。それなら」
二振りの日本刀“花天”と“月影”を袋から出して、腰に差しこむ。そして、抜刀する。
“花天”を右手に、“月影”を左手に持ち、二刀流として構える。
雪蓮「じゃあ、頑張ってね赤斗♪」
そう言って孫策は孫堅と諸葛瑾のいる場所へ戻っていった。
祭「それがお主の本来の得物か?」
赤斗「はい」
祭「そうか。これからが本番というわけじゃな」
黄蓋は嬉しそうに言うと、この稽古が始まってから、初めて自分から攻撃を仕掛けた。
雪蓮「ただいまー♪」
笑顔で孫堅たちの元に帰ってきた。
藍里「お帰りなさいませ。雪蓮様」
火蓮「あれを赤斗に届けるために、わざわざ取りに戻ったのか?」
雪蓮「そうよ♪ 私と闘った時も木の棒を両手に持って闘っていたでしょう? だからね♪………それに」
火蓮「それに?」
雪蓮「私と闘った時はあんなに強かったのに、祭と闘っている時は弱いなんて、嫌だったのよ」
火蓮「はっはっはっはっ………」
孫策の子供っぽい理由に孫堅は目に涙を浮べながら笑ったのだった
祭「くっ」
黄蓋は驚きを隠しきれなかった。
祭(先ほどまでとは動きがまるで別人じゃ!)
先手を仕掛けたはずの黄蓋が、いつの間にやら攻守交代をさせられていた。
赤斗が持つ日本刀は二振り共に“小太刀”といわれる攻撃より防御に優れた刀だった。
赤斗は“二刀小太刀”と“流水”によって黄蓋に先手を取らせないのである。
次第に赤斗は黄蓋を追い詰めていく。そして………。
赤斗「はぁーーー! これでお終いです。“爪牙”」
“二刀小太刀”による超速十連撃の秘技“爪牙”が黄蓋に決まる。もちろん峰打ちだ。
祭「くっはぁっ」
“爪牙”を受けた黄蓋は地面に片膝をついた。
火蓮「勝負あり! ……だな」
赤斗「火蓮さん!?」
いつの間にやら近くまで来ていた孫堅に気がついた。
孫堅の後ろには、孫策と諸葛瑾も一緒にいた。
雪蓮「やったじゃない赤斗♪ 祭に勝つなんてね」
藍里「凄いです。赤斗様♪」
赤斗「ありがとう二人とも。それより…」
赤斗は黄蓋に目をやる。
火蓮「大丈夫か? 祭」
祭「んっ……大丈夫じゃ」
孫堅の差し出された手を掴み黄蓋は立ち上がった。
祭「完敗じゃな」
黄蓋がそう呟くと赤斗が駆け寄ってきた。
赤斗「祭さん、大丈夫ですか?」
祭「ああ、大丈夫じゃ。そんな心配そうな顔をするでない」
赤斗「ありがとうございました」
黄蓋「うむ♪」
赤斗は黄蓋に頭を下げて礼を言う。そして、バタンッと、その場に力尽き倒れてしまった。
雪蓮「ちょっ、ちょっと赤斗!」
藍里「赤斗様!」
火蓮「どうやら、限界だったようだな」
祭「まったく、仕方がない儒子じゃな」
そう笑顔で言って黄蓋は、気持ち良さそうに寝息を立てている赤斗の頭を撫でるのであった。
つづく
~あとがき~
呂です。今回は赤斗と祭の対決をお送りしました。
真・恋姫†無双~赤龍伝~に出てくるオリジナルキャラクターの紹介
オリジナルキャラクター①『風見赤斗』
姓 :風見(かざみ)
名 :赤斗(せきと)
字 :なし
真名:なし
武器:武器:花天と月影 二振りの日本刀(小太刀)。赤色の柄で赤銅の鞘に納まっているのが“花天”で、黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっているのが“月影”。
本編主人公の少年。
この外史では“北郷一刀”が主人公ではありません。
古武術を学んでおり、その奥義を使えば恋姫の世界の武将とも闘えることができる。
今回はその内の2つの奥義“月空”と“流水”と秘技“爪牙”を使用。
“月空”気を自分の周りに張り巡らせレーダーのような役割をする奥義。最大範囲は半径5メートル。
“流水”相手の先の“流れ”を読み、攻撃の主導権を握る奥義。
相手がするであろう行動、出来るであろう行動を頭の中で幾通りも想い描くことにより、
相手の動きを事前に察知して、その動きに対して最良の行動をすることができる。極度の集中力が必要なため、消耗が激しい。
“爪牙”二刀小太刀による超速十連撃。奥義ではない。
能力値:統率?・武力4・知力?・政治?・魅力?
オリジナルキャラクター②『孫堅』
姓 :孫
名 :堅
字 :文台
真名:火蓮(かれん)
武器:南海覇王 やや長めの刀身を持つ、両刃の直刀。派手な装飾はないものの、孫家伝統の宝刀。
孫策(雪蓮)たちの母親。
身長173㌢。腰まで伸びる燃えるような赤い髪の持ち主。
血を見ると雪蓮以上に興奮してしまう。
この外史“赤龍伝”では孫堅は死んでいない。
能力値:統率5・武力5・知力3・政治4・魅力5
オリジナルキャラクター③『諸葛瑾』
姓 :諸葛
名 :瑾
字 :子瑜
真名:藍里(あいり)
武器:不明
諸葛亮(朱里)の姉。
諸葛亮(朱里)とは違い、長身で胸も大きい女性。髪は金髪でポニーテール。
温厚で気配りのできる性格で、面倒見も良い。赤斗の世話役として補佐につく。
政治、軍事、外交と様々な仕事をこなすが、朱里には僅かに及ばない。
能力値:統率3・武力1・知力4・政治4・魅力4
Tweet |
|
|
35
|
6
|
追加するフォルダを選択
真・恋姫†無双の二次創作の小説です。この作品には主人公も含めて、オリジナルのキャラクターが存在します。その事をご了承の上、ご覧ください。