真・恋姫†無双~赤龍伝~第5話「江東の赤龍」
赤斗「藍里、何処まで行くの?」
藍里「もうすぐですよ♪」
黄蓋との稽古の後、力つきて部屋で休んでいた赤斗のもとに、金髪ポニーテールの諸葛瑾がやってきて赤斗を何処かへと案内していた。
暫く城内を歩いていると、他の部屋とは違う厳かな雰囲気を持つ扉の前で立ち止まった。
どうやらここが目的地のようだ。
赤斗「ここは?」
藍里「玉座の間です」
質問に笑顔で答える諸葛瑾。
赤斗「玉座!!」
藍里「はい。玉座です」
驚きの声にも諸葛瑾は丁寧に答えた。
赤斗「どうして玉座に?」
今まで来たことがない玉座に急に呼び出されたことに驚き、赤斗は思ったことを口にする。
藍里「ふふっ……入ればお分かりになりますよ」
そう言って諸葛瑾は玉座の扉を開く。
諸葛瑾に促され玉座の間に足を踏み入れる。
赤斗「……この臭い」
玉座に入ってすぐに場違いであるはずの臭いに気づいた。
赤斗「これは酒の臭いか?」
臭いの正体に気がついた赤斗の後ろから、諸葛瑾が続いて玉座の間に入ってきた。
藍里「赤斗様が来る前に始めてしまったんですか?」
諸葛瑾が臭いのもとに向かって言う。
よく見れば玉座の下で孫堅、孫策、周瑜、黄蓋、陸遜が宴会を開いていた。
雪蓮「だって、待ち切れなかったんだもの♪」
祭「早くしないと無くなってしまうぞ」
二人はすでに結構な量の酒を飲んでいるようだ。
火蓮「来たか。ほら二人もこっちに来て座れ」
孫堅が赤斗と諸葛瑾を手招く。
赤斗は孫堅と孫策の間に、諸葛瑾は陸遜と黄蓋の間に座った。
火蓮「ほらほら、お前も飲め飲め」
孫堅に杯を渡され、酒を注がれる。
赤斗「ここって玉座ですよね。こんな所で酒盛りなんてしていいんですか?」
困惑した顔で尋ねる。
雪蓮「良いの♪ 良いの♪ ほら赤斗も飲んで飲んで♪」
酒臭い孫策に促され、杯に注がれた酒を飲んだ。
火蓮「ほう。良い飲みっぷりだ」
孫堅は嬉しそう言って、再び赤斗の杯に酒を注いだ。
赤斗「あの…もう少し弱いお酒はありませんか? これはちょっと強いみたいです」
火蓮「何だ。この程度できついのか。まあいい、これならどうだ?」
孫堅は違う酒を勧めてくれた。
赤斗「これなら何とか飲めそうです」
先程より弱い酒だったので赤斗は飲むことができた。
火蓮「そうか。それは良かった。これは赤斗の歓迎会だ。主役が飲まないとつまらんからな」
赤斗「僕の歓迎会………」
雪蓮「そうよ、赤斗の歓迎会♪ だ・か・ら♪ もっと飲みなさい」
孫策が再び酒を飲むように促してきた。
赤斗「ふう~」
雪蓮「はい、赤斗」
空になった赤斗の杯に雪蓮が最初に飲んだ酒を注いだ。
赤斗「だから雪蓮、この酒はきつくて僕は飲めないんだよ」
雪蓮「大丈夫よ。飲んでいるうちに慣れるから♪」
赤斗「雪蓮、酔ってるな」
雪蓮「酔っていないわよ。これくらいで私酔わないもの」
赤斗「酔払いは皆、そう言うんだよな」
雪蓮「赤斗ひど―い」
周瑜、諸葛瑾、陸遜の三人は、赤斗たちのやり取りを見ていた。
穏「雪蓮様と赤斗さん、楽しそうですね~」
藍里「火蓮様も楽しそうです」
冥琳「風見の歓迎会を開いて正解だったようだな」
赤斗、孫堅、孫策の三人が楽しそうにしていたのが嬉しかった。
穏「それにしても~藍里様、赤斗さんが祭様に勝ったって本当なんですか?」
陸遜が諸葛瑾に尋ねる。
藍理「本当ですよ穏ちゃん。信じられないとは思いますが」
穏「人は見かけによりませんね~」
孫策に加えて黄蓋にも絡まれだされた赤斗を見て、穏は素直な感想を言った。
冥琳「武は予想以上。知識の方はどうだった?」
この一週間、この世界の文字、兵法や政治等を教えてきた二人に周瑜は尋ねた。
藍里・穏「…………」
二人は無言で答えない。
冥琳「どうした? 学問はそれ程でもなかったか?」
穏「いいえ。それが……」
藍里「……予想以上でした」
冥琳「ほう」
穏「文字にしろ、兵法にしろ、覚えるのが信じられないぐらいに早いんです。一週間前までは文字すら読めなかったのに」
藍里「今は孫子の兵法書が読めるまでになっています。それ以上に……物の見方が異常です」
周瑜は驚いた。諸葛子瑜と陸伯言の様子が只事ではなかったからだ。
冥琳「異常だと……?」
藍里「私たちとは物の見方が違うのです。私たちが常識だと思うことを赤斗様は違う側面から見ています」
穏「おそらく、天の国でも日常的に学問を学んでいたんでしょうね~」
藍里「その学問も非常に高度なものだと思います」
冥琳「そうか……では使えそうか?」
二人の報告を聞いて、周瑜は孫呉のために赤斗の知識が役に立つものなのか確認する。
藍里「はい。必ずや孫呉の力になるでしょう。しかし……」
冥琳「しかし?」
諸葛瑾の様子がおかしい。何か怯えているようだった。
藍里「………私は……時々私は赤斗様が怖くなります。私たちとは違う考え方を持つあの方を……」
穏「そうですか~? 私は一緒にお勉強ができて楽しかったですよ~」
暗い顔の諸葛瑾とは逆に、陸遜は明るい顔でいつもの呑気な声を出す。
穏「確かに覚えはとても早いですし、私たちとは違う考え方を持っていますけど、赤斗さんは赤斗さんですよ。とても良い人ですよ~」
藍里「あっ……」
諸葛瑾は一緒に赤斗の才能を見ていたはずの陸遜の言葉にハッとする。
どんなに自分たちとは違う考え方や知識を持っていても、それを活かすのはその人である。
諸葛瑾は赤斗のことを思い出す。この一週間世話役をしていて分かった。この人はとても優しく、とても繊細なのだと。
そんな赤斗を自分たちとは違う考え方や知識を持っているという理由で、恐れていたことを諸葛瑾は恥ずかしく思った。
藍里「……そうですね」
そう言って諸葛瑾は笑顔を取り戻した。
藍里(ホント、私の周りは才能に恵まれている人が多いですね)
そう思いながら、周瑜。陸遜。赤斗。そして、妹の諸葛亮のことを思い出していた。
祭「ほれほれ、飲め」
空の杯に新しく酒が注がれた。
赤斗「もう僕は……」
すでに結構な量の酒を飲まされていた赤斗が言う。
祭「何じゃ、これくらいで。情けない奴じゃのぅ」
雪蓮「もっと飲みましょうよ」
赤斗「本当に勘弁して」
普段は飲めない酒を自分の歓迎会だとあって飲んでいた赤斗であったが、さすがに限界だった。
火蓮「ふっ、勘弁してやれ、雪蓮、祭」
孫堅が助け船を出してくれた。
雪蓮「ちぇー」
祭「仕方がないのぅ」
孫堅に言われ、孫策と黄蓋は二人で飲み始めた。
赤斗「助かった……」
火蓮「無理をさせてしまったようだな」
赤斗「そんなことないですよ。歓迎会なんて嬉しかったですから」
正直な感想を孫堅に言う。
火蓮「喜んでくれたなら何よりだ。それにしても……赤斗は強いな。感心したぞ。雪蓮も祭も強いのだがな」
赤斗「先生に鍛えられましたからね」
火蓮「先生とやらは赤斗よりも強いのか?」
赤斗「強いですよ。十回手合わせして、一回でも一本取れれば良い方ですから」
赤斗はどこか誇らしげに自分の先生の強さについて話した。
火蓮「そんなに強いのか? 一度手合わせ願いたいものだ」
赤斗を鍛えた先生とやらに興味を抱きつつ次の質問に移った。
火蓮「祭との稽古中。雪蓮が刀を持ってきた直後から急に動きが変わったな。使い慣れた得物を手にしたこともあるだろうが、それだけではないだろう。あの時、何をしたんだ?」
興味津津と孫堅が聞いてくる。
赤斗「“流水”といって、うちの流派にある奥義の一つです」
火蓮「奥義か。他にもその奥義とやらはあるのか?」
赤斗「色々ありますよ。先生曰く、全ての奥義を極めしとき、その身に龍の力が宿る。だそうです」
火蓮「龍のぅ……」
孫堅は赤斗の話を聞いて何やら考え始めた。
雪蓮「赤斗は全部の奥義を極めているの?」
祭「お主もその龍の力とやらを宿しておるのか?」
いつの間にやら孫策と黄蓋が話に加わってきた。
赤斗「まさか。全ての奥義は一応知っているけど、極めてなんかいないよ」
雪蓮「なんだ、つまんないの」
面白くなさそうに孫策は言う。
祭「他にはどんな奥義があるのだ?」
赤斗「“流水”以外には、“疾風”“浮葉”“月空”“烈火”“絶影”“龍鱗”がありますね」
あと一つだけ奥義は残っていたが、その奥義については話さなかった。
祭「ほお。お主はどこまで極めておる?」
赤斗「“疾風”“浮葉”“流水”は極める程ではありませんけど結構使えます。“烈火”“絶影”“月空”“龍鱗”はあまり得意じゃないですね」
祭「なるほどのぉ……」
孫堅に続いて黄蓋も何やら考え始めた。
赤斗「……?」
雪蓮「二人ともどうしたの?」
赤斗と孫策は黙って考え込む孫堅と黄蓋を不思議そうに見た。
火蓮「よし!」
急に孫堅が大声を上げた。
雪蓮「母様どうしたの? 黙り込んだと思ったら、急に大声出して」
火蓮「いやな、赤斗のことを考えていたんだがな」
赤斗「僕のことですか?」
火蓮「そうだ。色々考えてみたんだが、赤斗!」
赤斗「はっ、はい」
孫堅が考え込んでいた原因が自分にあることには気づいていたが、急に自分の名前を呼ばれ赤斗は驚いた。
火蓮「赤斗、今日から“江東の赤龍”と名乗れ!!」
赤斗「えっ?……天の御遣いじゃなかったんですか?」
突然の孫堅の言葉に赤斗は不思議そうに尋ねる。
火蓮「もちろん、天の御遣いとも名乗ってもらう。それとは違う異名を、この一週間ずっと考えていたんだが、先程の龍の力が宿るという話を聞いて思いついた」
赤斗「ちょっ…ちょっと待って下さい。龍の力が宿るというのは全ての奥義を極めてからであって………僕にはそんな力は」
祭「なければ、その力をつければよかろう」
孫堅と同様に黙って考え込んでいた黄蓋が話に入ってきた。
祭「堅殿に付けられたもう一つの異名に恥じないだけの実力をつけよ。儂もお主が全ての奥義を極められるように力を貸そう」
赤斗「祭さん……」
雪蓮「ようするに、赤斗が名前負けしないぐらいに強くなれば良いんでしょ♪ 私も力を貸すわよ」
赤斗「雪蓮……」
火蓮「“江東の赤龍”が嫌なら“江東の種馬”というのもあるんだがな」
黙って赤斗、孫策、黄蓋のやり取りを見ていた孫堅が意地悪な笑みを浮かべて言う。
雪蓮「あー! それ良いわね♪」
祭「堅殿も意地悪じゃのぅ」
孫策と黄蓋も意地悪な笑みを浮かべる。
赤斗「……それだけは勘弁して下さい」
火蓮「何だ“江東の種馬”が良かったか?」
孫堅は楽しそうにわざと間違える。
赤斗「……“江東の赤龍”でお願いします」
“江東の種馬”そんな異名をつけられてはたまらなかった。
火蓮「ふっ、決まったな」
孫堅は満足したように笑った。
赤斗「“江東の赤龍”の名に恥じないように頑張らないとな………」
正直、全ての奥義を極める自信はなかった。だが、やれるだけやってみようと心に決めた。
火蓮「その意気だ。雪蓮、例の物を」
雪蓮「分かったわ」
火蓮に言われ、雪蓮は何やら箱を持ってきた。
雪蓮「はい♪ 赤斗これあげるわ」
雪蓮から箱を赤斗は受け取った。
赤斗「この箱は?」
火蓮「開けてみるが良い」
赤斗は促され箱を開けた。
赤斗「これは…」
箱に入っていたのは服。
模して造られたのか、基本的な服の作りは高校の制服と一緒だった。だが服の丈は長くコートを思わせるものだった。
しかし、何より目を引いたのは服の色である。その服は燃える炎のように赤かった。
雪蓮「いいでしょ♪ 赤斗のために作ったのよ」
火蓮「赤斗が着ていた服を参考にして作らせた。中々良い出来だろう?」
赤斗「…………」
赤斗は嬉しくて声が出なかった。
雪蓮「赤斗?」
反応がない赤斗の顔を雪蓮が覗き込んだ。
赤斗「あ…ありがとうございます。本当に嬉しいです」
火蓮「ふっ」
火蓮は小さく笑う。
雪蓮「ほらほら、早く着てみて」
孫策は赤斗に服を着るように急かす。
赤斗「ああ、そうだね」
赤斗は今まで着ていた借物の服を脱いで、新しい服に袖を通した。
祭「ほぉ」
冥琳「これは……」
藍里「赤斗様お似合いです。」
穏「これは、これは」
雪蓮「カッコいいわよ赤斗♪」
火蓮「思った通りだ。よく似合っているぞ」
いつの間にやら軍師三人も加わり、服を着た赤斗の姿を見て感想を述べた。
こうして“江東の赤龍”は誕生したのである。
つづく
~あとがき~
呂です。歓迎会は次回にも続きます。そして孫権が登場予定です。
真・恋姫†無双~赤龍伝~に出てくるオリジナルキャラクターの紹介
オリジナルキャラクター①『風見赤斗』
姓 :風見(かざみ)
名 :赤斗(せきと)
字 :なし
真名:なし
武器:武器:花天と月影……二振りの日本刀(小太刀)。赤色の柄で赤銅の鞘に納まっているのが“花天”で、黒色の柄で黒塗りの鞘に納まっているのが“月影”。
本編主人公の少年。
この外史では“北郷一刀”が主人公ではありません。
古武術を学んでおり、その奥義を使えば恋姫の世界の武将とも闘えることができる。
学んでいる流派には、『全ての奥義を極めしとき、その身に龍の力が宿る。』という伝承がある。
奥義には“疾風”“浮葉”“流水”“月空”“烈火”“絶影”“龍鱗”などがある。
あと一つ奥義があるのだが、赤斗本人はその奥義を使うどころか、語ろうとすらしない。
能力値:統率?・武力4・知力4・政治?・魅力?
オリジナルキャラクター②『孫堅』
姓 :孫
名 :堅
字 :文台
真名:火蓮(かれん)
武器:南海覇王……やや長めの刀身を持つ、両刃の直刀。派手な装飾はないものの、孫家伝統の宝刀。
孫策(雪蓮)たちの母親。
身長173㌢。腰まで伸びる燃えるような赤い髪の持ち主。
血を見ると雪蓮以上に興奮してしまう。
この外史“赤龍伝”では孫堅は死んでいない。
能力値:統率5・武力5・知力3・政治4・魅力5
オリジナルキャラクター③『諸葛瑾』
姓 :諸葛
名 :瑾
字 :子瑜
真名:藍里(あいり)
武器:不明
諸葛亮(朱里)の姉。
諸葛亮(朱里)とは違い、長身で胸も大きい女性。髪は金髪でポニーテール。
温厚で気配りのできる性格で、面倒見も良い。赤斗の世話役として補佐につく。
政治、軍事、外交と様々な仕事をこなすが、朱里には僅かに及ばない。
能力値:統率3・武力1・知力4・政治4・魅力4
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真・恋姫†無双の二次創作の小説です。この作品には主人公を含めて孫堅や諸葛瑾などのオリジナルのキャラクターが存在します。本来の作品のイメージを大切にしたい方はご覧にならない方が良いかもしれません。基本的には呉の√にそっていきます。