No.175986

真・恋姫†無双 悠久の追憶・番外編 ~~蜀の日常 其の五~

jesさん

何とか一週間で間に合いましたww

さて、前回のあとがきに書いたように引き続き拠点話です。

今回はせっかくオリキャラとして登場したので雪メインの話を書いてみました。

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2010-10-02 19:02:57 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:2327   閲覧ユーザー数:2053

 

 

 

 

注: この話はオリキャラがメインになります。 一応次のページにキャラクター紹介はありますが、この話から初めて読まれるという方は、先に本編の方を読んでいただくことをオススメします。

 

 

 

 

オリジナルキャラクター紹介

 

  性:馬(ば)

  名:謖(しょく)

  字:幼常(ようじょう)

 真名:雪(ゆき)

 

   

白い髪に白い眉を持ついつも笑顔の明るい少女。 昔ある事件がきっかけで故郷の村を追われ、朱里や雛里と同じ水鏡塾で暮らしていたことがる。 そのため朱里と雛里とは仲がよく、特に朱里のことは「先生」と読んで慕っている。 武の実力は愛紗たち五虎将と同等か少し劣る程度だが、生命の危険を感じたときや感情が高ぶると「雪白(せっぱく)の鬼人」と呼ばれる半狂戦士状態になり、その実力は、星に「自分でも勝てない。」と言わせるほど。 ちなみにこの状態の雪は基本的に敵・見方という概念を持たず、豹変の原因となった相手をターゲットとする。

もうひとつ彼女には特徴的な秘密があるのだが、それは本編で・・・・

 

 

 

 番外編・蜀の日常 ~~其の五 鬼の目にも涙?~~

 

 

 

この日はめずらしく雨。

 

しかし天気が変わっても、朝は同じようにやってくる。

 

・・・・・というのは、何か予想外の事が起きなかった場合の話だ。

 

 

 

「・・・・こういうのをデジャヴっていうのか・・・・?」

 

寝台に座って首をかしげながら、一刀は小さく呟いた。

 

その目線の先にある光景は、確かに少し前に見たことがあるような気がする。

 

 

 

ちなみに、その少し前の出来事については、「蜀の日常 其の一」を読んでいただきたい。

 

 

 

ついさっき雨が窓を打つ音に目が覚めて、まだ重い瞼をこすりながら身体を起こした。

 

まだ頭の方は起きないまま、今日の予定を整理しつつ寝台から降りようとすると、ふと隣に人のいる気配。

 

そして自分の隣に目を向けると、案の定そこには来客が居た。

 

 

前回と違いがあるとすれば、となりで眠っている少女がつややかな黒髪ではなく、透き通るような白色の髪の持ち主だと言うことくらい。

 

 「・・・・・・・・・・雪?」

 

もう一度自分に問いかけるように口にするが、間違いない。

 

この日一刀の隣で静かに寝息を立てているのは、愛紗ではなく雪だった。

 

 「はぁ~。 愛紗の次はお前か・・・・」

 

 「ん~・・・・・むにゃ・・・・」

 

困惑の表情でため息を吐く一刀などお構いなしに、何か良い夢でも見ているのか、雪は気持ちよさそうな表情。

 

彼女の自慢の白い髪は、こうして近くでみると “キラキラ”光って見える。

 

愛紗の黒髪も美しいが、雪の白髪も負けないくらいの輝きだ。

 

こうしておとなしい雪の寝顔を見ていると、いつもの元気すぎる彼女の姿は想像できない。

 

 

 「まったく・・・・・こうしてる分にはただの可愛い女の子なのにな。」

 

本人に聞かれていたら確実に怒られるので、聞こえないように小さな呟き。

 

眠っている雪の姿は、本当に人形のようで、許されるならこのままずっと見ていたいとさえ思えた。

 

 「スー、スー。」

 

 「・・・にしても、本当に気持ちよさそうに寝てるな。」

 

人のベッドでよくもまぁ・・・・・とは内心思いつつも、こんなに無防備な雪はなかなか見ることができない。

 

“スヤスヤ”と眠る雪の横顔を見ていると、ちょっとだけいたずらしてみたくなった一刀だった.

 

 “プニプニ”

 

 「ん~・・・・」

 

 「お、動いた。」

 

人差指でほっぺをつついてやると、少し嫌そうに眉をひそめた。

 

 「なんか、マシュマロみたいだな・・・」

 

 “プニプニプニ”

 

 「ふぅ~・・・ん・・・っ」

 

こうして雪の顔に触れるなんて、普段なら絶対にできはしない・・・というのは、例の『アレ』があるからだが、その『アレ』については分からない人も多いと思うので後で説明しよう。

 

予想以上の雪のほっぺの触り心地に、一刀はついつい調子に乗ってしまう。

 

 “プニプニプニプニプニプニ”

 

 「ん゛~~~~・・・・・っ!」

 

 「あははは。」

 

さすがに雪の声にも、徐々に怒りの色があらわれて来た。

 

ここでやめておけば良いものを、一刀がお構いなしにつついていると・・・・

 

 「ふにゅ・・・・・」

 

 “パチッ”

 

 「あ・・・・」

 

 

今まで閉じていた雪の目が、静かに開いた。

 

すぐ目の前には、自分のほっぺをつついている一刀の顔。

 

しかしすぐには状況を整理しきれていないようで、一刀と雪はお互いに顔を見合せたまま時間が止まったようだった。

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 「お・・・・おはよう・・・・・・雪。」

 

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!」

 

苦笑いで苦し紛れに声をかけたとたん、雪はやっと頭の整理がついたように目を見開いた。

 

他の女の子ならここで悲鳴を上げてビンタ一発という場面・・・・・しかし雪の場合はこの後どうなるのか、それは一刀自身が一番良く知っている。

 

そして案の定・・・・・・

 

 

「“ガブッ!!”」

 

「ぎゃあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!」

 

静かな朝の城に、一刀の悲鳴が響き渡った。

 

 

知らない方のために説明しよう。

 

これこそがさっき言っていた『アレ』。

 

彼女・・・雪こと馬謖幼常は、怒ったときや恥ずかしい時に相手に噛みつく癖のようなものがあるのだ。

 

 

 「ご主人様のヘンタイっ!!」

 

噛みついていた一刀の手を離した雪は、顔を真っ赤にして怒鳴る。

 

初めて雪に噛みつかれた時も、確か全く同じことを言われた。

 

顔を赤くしている理由が怒りなのか恥ずかしさなのかは分からないが、どちらにせよ噛まれた一刀としてはそんな事はどうでもいい。

 

身に覚えのない罪で噛みつかれたうえにヘンタイ扱いではたまったものではない。

 

 

 「待て、話を聞け!」

 

 「うるさいっ! よらないで!」

 

くっきりと雪のきれいな歯形が残る手をさすりながら弁解する一刀だが、雪は聞こうとしない。

 

まるで怒った犬のように“う゛~”とうなって、今にももう一度噛みつきそうな勢いだ。

 

 「だいたい、なんでご主人様が私の部屋にいるのさ!? はやく出てってよ!」

 

 「はぁ!? 何言ってんだ、ここは俺の部屋だぞ!」

 

 「うそだ! そんな訳・・・・・・・・あれ?」

 

どうやら自分が一刀の部屋に居ると言う自覚が無かったらしく、一刀の一言で雪は急に大人しくなって部屋の中を見渡す。

 

 「ここ・・・私の部屋じゃない・・・・・」

 

 「はぁ~・・・・だからそう言ってるだろ。」

 

やっと自分の間違いに気付いた様子の雪に、一刀もほっとため息。

 

ちなみに、さきほど雪に噛まれた手はまだ“ヒリヒリ”と痛む。

 

 「えっと・・・・なんで私ここにいるの?」

 

 「・・・それは俺が聞きたいよ。 おおかた寝ぼけて部屋を間違えたんじゃないのか?」

 

『愛紗みたいに・・・・』と付け加えようとしたが、雪に言ったことが愛紗にバレたら命が危ないのでやめておいた。

 

 「う~ん・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ。」

 

頭に手を当てて一刀の部屋に居た理由を考えていた雪は、どうやら心当たりがあるようで“ポン”と手を打った。

 

 「・・・・寝ぼけたんだな?」

 

 「えへへ・・・・」

 

 「笑ってごまかすな!」

 

 「いや~、まぁ誰にでも失敗はあるし。」

 

 「問答無用で俺に噛みついたのはどこの誰だ?」

 

 「あはは・・・・」

 

呆れた様子の一刀の言葉に、雪はバツがわるそうに頭をかく。

 

 

 「はぁ~、まあいいや。 とりあえず朝メシにするけど、一緒に食べるか?」

 

 「うん♪」

 

これ以上言っても雪には効果がなさそうなので、諦めて笑顔言うと、雪も満面の笑みで頷いた。

 

噛みつくのはただの癖で、雪は別に一刀の事が嫌いなわけではないらしい。

 

 「んじゃ、いくか。」

 

 「うん・・・・・あ、ねぇねぇご主人様。」

 

 「ん?」

 

朝食のために部屋を出ようとしたところで、雪が何かに気づいたように一刀を呼びとめた。

 

 「この刀ってご主人様の?」

 

雪が指さしているのは、壁に立てかけてある一刀の刀、『緋弦(ひげん)』だ。

 

一刀の刀といっても、いまだにちゃんと扱うことはできないが。

 

 「ああ、緋弦っていうんだ。 丁度お前と初めて会った日に、蔵の整理をしてたら見つけたんだよ。」

 

 「へぇ~。 でもさ、私が絡まれてるのを助けようとした時も持ってたよね? なんで使わなかったの?」

 

 「素手の相手に真剣抜けるわけないだろ? それに、俺は護身用で持ってるだけでちゃんと使えないんだよ。」

 

 「使えないなら持ってる意味無いじゃん。」

 

 「う゛・・・・・」

 

まったくもってその通りだった。

 

 「い、良いだろ別に。 そのうち使えるようになるさ。」

 

 「ふ~ん・・・・・あ、そうだ。 ねぇ、私蔵の中ってまだ見たこと無いんだけど。」

 

 「え? ああ、そういえばそうだな。」

 

確かに、まだこの城に来て間もない雪は蔵の中に入る機会は無かっただろう。

 

 

 「見たいなら、あとで連れてってやるよ。」

 

 「ほんと? 見たい見たい。」

 

一刀の提案に、雪は期待に目を輝かせている。

 

もちろん今日も仕事は山積みだが、雪に蔵を案内するくらいなら一刀の息抜きとしても丁度いい。

 

 「まぁとりあえずは朝飯が先だ。 蔵はその後な。」

 

 「は~い。」

 

こうして、上機嫌の雪をつれて一刀は朝食を食べに向かった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 「うわ~、結構いろんな物があるね。」

 

雪は蔵の中をぐるりと見渡して、少しはずんだ声で言った。

 

中にあるもの自体は前回一刀と朱里が入った時から変わっていないが、さすがに一度整理しただけあって中は見違えるようにきれいになっている。

 

降っている雨が、古い木製の屋根を打つ“ガタガタ”という音と、その屋根からところどころ雨漏りしているのは気になるが、それはあとで愛紗にでも言って修理の手配をしてもらうことにしよう。

 

 「せっかく整理したんだからあんまり散らかすなよ?」

 

 「分かってる分かってる。」

 

明らかに声だけの返事をして、雪は上機嫌で中の物を見て回る。

 

雪なら問答無用で高価な品を壊しかねないので、一刀としても気が気ではない。

 

 

 「え~っと・・・なんか面白いものないかな~。」

 

あちこちの棚を物色する雪は、まるで子供のように興味しんしんと言った様子。

 

 「ねぇねぇ、何か良いものあったらもらっちゃってもいいかな?」

 

 「う~ん・・・それは桃香に聞いてみないとな。」

 

まぁ桃香の事だ・・・・たいていの物は一刀の時と同じように笑顔で承諾してくれるだろう。

 

 「だいたい、雪が気にいるのってどういうものなんだ?」

 

 「え? まぁ・・・・綺麗なものとか、カワイイものとか?」

 

 「・・・・ぷっ」

 

予想外の答えに、思わず吹き出してしまう。

 

 「あ、なんで笑うのさ!」

 

 「いや、ごめんごめん。 雪も女の子なんだなと思ってさ。」

 

 「・・・・・噛むよ?」

 

 「ごめんなさい。」

 

一刀にとってはどんな脅迫より効果がある一言だった。

 

しかし怒りながらも少し顔を赤くしている雪は、ちょっと可愛い。

 

・・・・なんて言うと今度は警告なしで噛まれるので、口には出さなかった。

 

 「まったく・・・ご主人様は女心が分かってないね。 そんなんで愛紗に愛想尽かされても知らないよ?」

 

 「なっ・・・なんでそこで愛紗が出てくるんだよ!」

 

意地悪な笑みを浮かべながらの雪の言葉に、一刀の顔は少し赤くなる。

 

 「だって、好きなんでしょ?」

 

 「う゛・・・・・好きだけど・・・・」

 

我ながら即答すぎるような気もするが、この気持ちばかりは嘘をつけない。

 

 「ふ~ん・・・・そっか~♪」

 

顔を赤くして答える一刀を見ながら、雪は“ニヤニヤ”と笑っている。

 

 

 「な、なんだよ! お前が言わせたんだろ!」

 

自分が口にした一言を思い出すと、今更になって恥ずかしくなってきた。

 

怒鳴る一刀を見ながら、雪は更に笑みを浮かべる。

 

 「あはは、ご主人様も結構可愛いとこあるね~♪」

 

 「お前なぁ、いい加減に・・・・・・」

 

 “バタン!”

 

 「!?」

 

 「え?」

 

突然後ろから聞こえた大きな音と同時に、それまで外から差し込んでいたはずのわずかな光が消え、蔵の中は暗闇に包まれた。

 

振り向くと、さっきまで開いていた扉がしっかりと閉じていた。

 

 「なんだ、扉が閉まっただけか・・・・。」

 

外からの光がないと不便なので、もう一度扉を開けようと手をかける。

 

 ”ガチャガチャ”

 

 「・・・・・・あれ?」

 

 「ご主人様・・・どうしたの?」

 

 「・・・・・開かない。」

 

 「えぇーーーーーーーーっ!?」

 

どうやら何かの拍子で扉を支えていたくいがはずれ、其の振動で外から鍵がかかってしまったらしい。

 

 「そんな、どうにかしてよご主人様っ!」

 

 「どうにかって・・・・外から鍵がかかってるんじゃどうしようもないだろ?」

 

 「そんなぁ・・・・」

 

出られなくなったという事実に、雪は白い眉毛を下げて落胆の表情。

 

 「大丈夫だよ。 そのうち俺たちがいないことに気づいて誰か探しにくるさ。」

 

まぁその間仕事はできないが、それは事情を話してわかってもらうしかない。

 

 

 「うん。 でも・・・」

 

 「なんだ雪、もしかして暗いのが怖いのか?」

 

 「そ、そんなんじゃないもん! 暗いのは全然平気だけど・・・・その・・・・」

 

 「?」

 

大声で怒鳴ったかと思えば、雪は戸惑いながらなぜか壁にある明り取りの向こうに目を向けた。

 

 「・・・・なんでこんなときに雨なんか・・・・・」

 

 「・・・雨がどうかしたのか?」

 

 「え!? ううん、別に?」

 

 「?・・・・そうか。 まぁとにかく、誰かが来るまで待つしかないな。」

 

 「・・・・・うん。」

 

こうして、一刀と雪は暗い蔵の中でしばらく過ごすことになった。

 

 

 

 

二人は蔵の壁によりかかり、並ぶようにして座り込んでいた。

 

静かな蔵の中には、外で降っている雨の音だけがやけに響く。

 

明かりといえば壁にいくつかある小さな明り取りだけで、この天気ではそこから入る光もわずかなもの。 

 

しかしそれでも次第に目は慣れてきて、周りの状況が分かる程度にはなってきた。

 

 「はぁ~・・・まさかこんなことになるなんて・・・」

 

一刀の隣で膝を抱えている雪は、ため息混じりに愚痴をこぼす。

 

 「文句言ったって、こうなっちゃったモンは仕方ないだろ?」

 

 「それはそうだけど・・・・あ、そうだ。 私が扉を壊す!っていうのはどう?」

 

 「却下!」

 

 「ちぇっ。」

 

 

確かに雪ならそれは簡単だろうが、そんなことをしたら後で愛紗から何を言われるか分かったものじゃない。

 

 「別にそんなに急ぐことないだろ? 待ってればそのうち出れるんだから。」

 

 「それは分かってるけど・・・・・」

 

 「ん?」

 

さっきと同じ。  

 

雪はまた明り取りの方へと目を向けて、不安そうに眉をひそめる。

 

 「・・・・なぁ雪、俺に何か隠してるんじゃないか?」

 

 「べ、別に何も隠してなんかないよ!?」

 

そうは言ってみても、動揺しているのは明らかだ。

 

 「ふ~ん・・・・」

 

さっきのお返しとばかりに、意地悪な笑みを浮かべてみせる。

 

 「な、なによその目は?」

 

 「別に~。」

 

 「あのねぇ、私は別に・・・・・」

 

”ドォ゛ーン!!”

 

 「!?」

 

 「きゃっ!?」

 

突然すさまじい爆音と共に、明り取りから強烈な光が差し込み、蔵の中はほんの一瞬だけ昼間のように明るくなった。

 

一刀は立ち上がり、明り取りから外を覗き込む。

 

 「雷か・・・・結構近かったな。」

 

光と音の届く時間の短かかったことを考えると、落ちた場所はどうやらそう遠くないようだ。

 

 「びっくりしたな、雪。」

 

 「・・・・・・・・・・・・・」

 

隣に座っている雪に話しかけるが、なぜか返事は返ってこない。

 

 

 「・・・・・雪?」

 

 「う゛~・・・・・」

 

気になって目を向けると、雪は体を小さく丸めて、頭を抱えるように耳をふさいで”ブルブル”と震えていた。

 

 「おい、雪?」

 

 ”ポン”

 

 「ひゃあっ!?」

 

声は聞こえてないようなので軽く肩をたたくと、雪は相当驚いた様子で”ビクン”と跳ねた。

 

 「な、何!? どうしたの!?」

 

雪は怯えていたことを必死に隠そうと平静を装っているが、どう見ても動揺しているのはバレバレだ。

 

そもそも普段なら肩に触れただけで噛み付かれているはずなのに、今はそんな余裕すらないらしい。

 

 「お前、もしかしなくても・・・・・雷が怖いのか?」

 

 「こ、怖くないもん!」

 

必死に否定するが、目の恥に涙を浮かべた状態でそんなことを言われても信じろというほうが無理だ。

 

これで、雪がさっきから窓の外を気にしていた理由がはっきりした。

 

 「ほんとに?」

 

 「本当だもん! 別に雷なんて・・・・」

 

 ”ドォーン!!”

 

 「きゃあ!?」

 

再び響いた轟音と強い光に、雪はまた悲鳴を上げ、その場にうずくまる。

 

 「あはは、やっぱり怖いんじゃないか。」

 

そんな雪の様子がおかしくて、からかうように言う。

 

しかし今度は、雪から反抗の声は上がず・・・・・・

 

 

 

 「・・・・ひっく・・・・・ひっく・・・ぐすっ・・・」

 

 「!・・・・お、おい・・・・・雪?」

 

 

静かに聞こえてきた嗚咽に、一刀の表情から笑顔が消えた。

 

うずくまって肩を震わせる雪の顔を覗き込むと、その青い瞳からは確かに、一筋の涙が伝っていた。

 

 「雪、お前・・・・・・」

 

 「ひっく・・・・・ごしゅじっ・・・・さま・・・・・ひっく・・・・・」

 

雪は涙を流しながら一刀の制服の裾を”キュッ”と握った。

 

普段の雪なら、自分から一刀に触るなど絶対にありえない。

 

震えながら自分の顔を見つめてくる雪を、一刀は優しく抱き寄せ、そっとその白色の髪を撫でた。

 

 「ごめんな。 そんなに怖かったなんて・・・・・」

 

 「・・・・ぐすっ・・・・・ひっく・・・・・・・」

 

一刀の腕の中で、雪はその見た目よりずっと小さな体を振るわせる。

 

 「大丈夫だよ・・・・俺がそばにいるから。」

 

 「・・・・ぐすん・・・・・・・うん・・・・・」

 

それからしばらくは、外に降る雨の音と、一刀の腕の中から漏れる雪の小さな泣き声だけが、蔵の中に響いていた――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 「う゛~・・・・・まさかご主人様に知られるなんて・・・・・」

 

一刀に背を向けるようにして、雪は膝を抱えて座っていた。

 

まだ涙の後が残るその顔は、恥ずかしさからか少し赤い。

 

すでに雷も通り過ぎ、雨も少しずつ勢いを弱めていた。

 

 「まぁそう気にするなって。 俺は別になんとも思ってないから。」

 

 「ぜっっっったい誰にも言っちゃダメだからね! まだ朱里先生も知らないんだから!」

 

 「はいはい。」

 

あの朱里のことだ、雪が雷が怖いのを知ったところで何も変わらないとは思うが、本人が言うなと言うならわざわざ教えることもない。

 

何より、もし話したことが雪にばれたら、そのときは噛み付き程度ではすまないだろう。

 

 「いや~・・・でも、あれだな。」

 

 「へ?」

 

 「さっきの雪は、なかなか可愛かったぞ。」

 

 「~~~~~~~~~っ」

 

  ”ガブッ!!”

 

 「だぁ゛ぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」

 

 

他人に話そうが話すまいが、どうせ最後はかまれる運命なのだと悟った一刀だった。

 

  

 

 

 

ちなみに、このあと蔵に来た愛紗によって無事に外に出られた二人だが、『あんなところで二人で何をしていたのですか?』という冷たい笑顔の愛紗の追求を受け、誤解を解くのに必死だったという。

 

 

 ~一応あとがき~

 

以上、オリキャラメインの拠点話第五弾でしたww

 

個人的には、雪のすこし可愛い姿を書きたくて考えた話です。

 

雪は一応この物語の主役の一人なので、これからもちょくちょくメインで書いていきたいと思います。(もちろん愛紗も)

 

さて、本編のほうですが、申し訳ないことにまだ話が固まっていないので、もう一回くらい拠点話をはさみたいと思います。

 

予定では愛紗メインの話になるはずなので、次回また読んでやってくださいノシ

 

 

 

 

 

 


 
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