No.174536

恋姫異聞録86

絶影さん

今日も暇が無いです><

会社にて

「この4tフォークすごいよぉーっ!さすが1tフォークの

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2010-09-25 04:05:42 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:10892   閲覧ユーザー数:8381

目の前には弓を引き、俺を睨みつける黄忠。その瞳の周りは濃い隈が出来ており

彼女が娘と離れてから一睡もしていない事が窺える。彼女の頭の中は娘のことで一杯なのだろう

 

だがそのせいで娘が怖がってしまっている事に気が着いていない、血が上って周りが見えていない

目には怒りの色だけ、まるでこの間の俺だ

 

「引渡しのはずだったが、俺の思い違いか?」

 

「私は貴方の恐ろしさを知っている、むき出しの獣の如き怒りをもつ人」

 

身体を入れ替え俺の盾になるように前へ出ようとする秋蘭を俺は手で押さえ、秋蘭は俺の腕をぎゅっと握り締める

翠は直ぐに黄忠に背を向け、涼風を守るようにしてくれた

 

目の前に立つ黄忠殿の瞳は燃え盛る炎のうように燃え盛り、構える矢は俺が少しでも動けば即座にその手を離れ

俺の心臓へと突き刺さるだろう。本来は端整な顔立ちの美しい女性なのだろうに、歯をむき出しに食いしばり

俺を一瞬たりとも視界から離さぬ様、目を見開き睨みつける

 

「紫苑、御兄様は信頼できる人だ。心配いらない、その矢を放てば璃々が戻らないどころかこの場で戦う事になるぞ」

 

「翠ちゃん、貴方の言う事は信じられる。でも私はその人を信じる事は出来ないわ」

 

「何故っ!」

 

「忘れたの?私達は定軍山であの人の妻を罠にはめてるのよ、意趣返しとしては絶好の機会。ここで璃々を使って

私を捕縛する事も、降れと迫る事も考えられる」

 

「御兄様はそんな小さな男じゃないっ!あたしの父、馬騰が認めた男だっ!」

 

「私には信じる事は無理よ、あれ程の怒りをもつ人が私に何もしない訳が無い。定軍山で私がしたように私の前で

璃々を傷つけるかもしれない」

 

「紫苑・・・」

 

「私にはもう璃々しか居ないのよっ!璃々を失ったら私には何も残らないっ!璃々を失い捕縛されるくらいならっ」

 

黄忠殿の必死の声に翠は何か感じるものがあったのだろう、翠もまた父を亡くし、血の繋がる人間は

フェイしか居ないのだ。もし逆の立場ならと拳を握り締め顔を伏せる

 

俺はそんな翠の頭を優しく撫でる。お前には俺も居ると

 

頭を撫でられる翠は俺に視線を向けて小さく頷く、たとえ敵同士だとしても兄妹である事は代わりが無い

黄忠殿はその動きを見て、やめろと言わんばかりに声を叩きつけるように叫ぶ

 

「動かないでっ、璃々を返しなさい」

 

「何もしないさ、璃々ちゃんはちゃんと返す。俺も貴方の怒りは解る、何故か解るだろう?」

 

「黙りなさい、貴方のことなど何も解りはしないわ。知ろうとも思わない」

 

「・・・そうか」

 

どうやら頭に血が上り過ぎている様だ、恐らく普段は冷静な人なのだろう。そうでもなければこれほど

頭に血を上らせ、盲目になってしまう事は無い。普段周りが見え過ぎるほどの人間だからこそ

自分の一番大事な事になればその視界は一気に収束、真直ぐな道しか見えなくなる

 

いや・・・母だからこそか、そうでもなければ此処まで取り乱しはしないだろう

 

俺は向けられる矢を無視し、しゃがみこんで璃々ちゃんと目線を合わせる。今までに見た事の無い母の姿に

すっかり脅え、俺を見る眼が涙で少し歪んでいた。だから俺は出来るだけ笑顔で、璃々ちゃんを安心させるように

話しかけた

 

「お母さん沢山沢山、心配してるみたいだよ。璃々ちゃんのことが物凄く大切なんだね」

 

「お母さん・・・」

 

「小父ちゃんが璃々ちゃんに悪い事をしてるって思ってるみたい、だからあんなに必死なんだよ」

 

「うん、でも小父ちゃん悪くないよ」

 

「有り難う、でもお母さんは璃々ちゃんが大事だから、沢山心配してたから仕方が無いんだよ。今だってそうさ」

 

「璃々どうしたら良い?」

 

「お母さんの所に行ってあげて、そしてお母さんを安心させてあげて。そうすれば何時もの優しいお母さんに戻るはずだよ」

 

俺の言葉に服の裾を握り締め力頭良く頷く璃々ちゃん、俺は笑顔で返す

 

「璃々から離れなさいっ!!」

 

「お母さんっ!」

 

意を決して必死の形相の母の元へ走り出す璃々ちゃん、その姿に黄忠殿は少し安心したのだろう構える弓を

蒲公英の手につかまれ下げた。どうやら無事に璃々ちゃんを返す事が出来そうだ

 

その時、俺の視界に入る微かな光。遠くで地に身体を伏せ、構える鏃に反射する光

走る璃々ちゃんに向けられる矢、俺は走り出していた

 

「やはりっ、このっ!」

 

瞬時に放たれる三本の高速の矢を男は眼に突き刺さる前に左手で掴む。そして更に心臓に向かう一本を右手で掴み取り

残りの一本、喉へと真直ぐに向かってくる矢を犬歯で噛み砕くようにガリガリと音を立て噛み付き止める

 

ドスッ!

 

男は守るように璃々の身体に覆いかぶさり、魏の一文字が描かれた背中に別方向から飛来した矢が突き刺さる

 

「なっ?!」

 

驚く黄忠をよそに、既に秋蘭は男が駆け出すと共に矢を放った者へと報復の矢を放ち、更に矢を番え走りだしていた

 

口から矢を吐き出し、男の握り締める矢がバキリと音を立てて折れ拳が震える

 

「翠っ、涼風を俺の後ろへ!蒲公英、俺の刀を使え!」

 

腰から抜き出した一本の刀を蒲公英へ投げ渡し、男の後ろへ涼風を置いた翠にも更にもう一本の刀を投げ渡す

敵へと走り出す翠と蒲公英、その後ろではどっしりと腰を落とし、ただ静かにまるで空を覆う雲のように立つ男

 

腰から宝剣を抜き取り守るように十字に構え、更に定軍山で見せた分厚い盾の気迫

いきなりの事に驚き男の後ろで足にしがみ付き隠れるように翠達の方を窺う子供達

 

「黄忠殿、皆の支援を頼む。敵を逃がす訳にはいかない」

 

「えっ、あっ」

 

突然のことに動きが止まってしまっていた黄忠は男の声にビクリと身体を震わせると

翠を追いかけて弓を構え走り出した

 

矢を止められ逃げ出す賊に秋蘭の矢が突き刺さる、正確に敵の足を大地に縫いつけ、その場に居た数人の

賊を翠と蒲公英は刀の峰で叩き伏せていく

 

黄忠もまた矢筒から素早く矢を抜き取り、逃げ惑う賊の足へと正確に矢を放ちその場へと縫い付けていく

 

「殺すなよ、素性を調べねばならん」

 

「解ってるよ、アンタもやりすぎるなよ夏候淵」

 

「フッ、誰に言っている」

 

まるで初めてとは思えないほどピッタリとあった連携で賊を無力化していく。そんな中、始めに矢を放った男が

秋蘭に射抜かれた手から矢を無理矢理引き抜き、仲間を盾に秋蘭達の視界から隠れにげ出そうとする

 

「此方には誰も居まいっ、俺だけでも逃げねば!俺はこんな所でっ!」

 

「ここにいるぞーっ!」

 

いきなり目の前に現れた蒲公英が「とりゃっ!」と気合と共に振り上げた刀の峰を男の顔に振り下ろし

めり込む鉄刀【桜】。鼻血を出しながらそのまま崩れ落ち、気絶した男の頭に足を乗せて手を組み喜ぶ蒲公英

 

「召し取ったりー」

 

「調子に乗るな、まったく」

 

「ええー御手柄だったんだから褒めてくれたって良いのにー」

 

「まぁ、賊の頭っぽいからな。良くやったよ」

 

一人残らず気絶、もしくは腕や脚を打ち抜かれ、動く事が出来ない敵を秋蘭は着ている服を利用し

縛っていく。一人が逃げ出そうとすれば他の皆が重しになり逃げる事ができないように

 

「へぇ、器用なもんだな」

 

「昭は警備隊も受け持っているからな、こういった事は見ていて自然と覚えてしまうのさ」

 

「フェイから聞いたよ、前に見たときは警備隊巻き込んで追いかけっこしてたって」

 

「許昌でやった鬼ごっこか?新城の時も同じようなものだったが、あれも楽しかった」

 

「城外でやったって聞いたけど、凄かったらしいな。町の人も混ざってたんだろ?」

 

「魏に来れば混ぜてやっても良いぞ」

 

「あははっ。遠慮しとく、曹操に仕える気は無いからな。アンタが御兄様と蜀に来なよ」

 

「二君に仕える気は無い、残念だな」

 

笑いあう翠と秋蘭、その隣で秋蘭の真似をしながら賊を縛り付けていく蒲公英

構えた弓を下ろし、一気に気が抜けてしまった黄忠は腕をだらりと下げる

 

「・・・はっ、り、璃々っ!」

 

思い出したように振り向けば、背中に矢を刺したまま男が子供二人を抱きかかえて黄忠の元へと歩み寄ってきていた

そして黄忠はまた弓を構えようとするが、その手は矢を番えるだけで引く事が出来ないで居た

 

男の顔を直視する事が出来ず、美しい顔を曇らせただ顔を伏せてしまう

 

「さぁ、お母さんが待ってるよ」

 

「うん、お母さん!」

 

璃々をゆっくり下ろすと走り出し、母の足にしがみ付く璃々

 

黄忠は顔を歪め、璃々を優しく強く抱きしめると静かに泣いていた

璃々も母にしがみ付いて泣いていた

 

「有り難う、御兄様。璃々が巴東に入ってないって解ってから紫苑はずっと夜も寝れないほど心配していたんだ」

 

「良いさ、俺も親だから気持ちは解る」

 

璃々ちゃんも我慢していたのが一気に噴出したか、しかし本当に良かった。

子はやはり親と共にいる事が一番だ、などと思っていれば、秋蘭は相変わらず解りずらいが

少し怒って俺から涼風を取り上げる

 

「な、おい」

 

「だめだよ御兄様。矢を背中に受けたでしょ!」

 

背中に飛びつき、頸に腕を引っ掛けて俺を無理矢理地面に座らせる蒲公英も少し怒っていた

どうやら心配させてしまったようだ。

 

涼風はあぐらをかく俺の膝に重石のように座り、秋蘭は俺の背中に刺さる矢を見て安心したように息をもらす

 

「どうやら深くは無いようだ、抜くぞ」

 

刺さった矢を一気に引き抜き、外套と上着を脱がされる。秋蘭は素早く腰に携える竹筒に入れ手おいた消毒用の

液体で傷口を洗い、練薬を傷口に擦り込んでいく

 

「いたたたっ、何だそれ?」

 

「お前が怪我ばかりするから華佗と美羽に頼んで作ってもらった物だ。炎症を抑え傷が早く塞がるらしい」

 

翠と蒲公英は鮮やかに糸と鍼で傷口を縫合する秋蘭の処置を感心しながら、そして興味深々に見ていた

 

「凄いねお姉さま、あっという間に塞いじゃった」

 

「ああ、というか御兄様の怪我を見て納得した。良く見れば体中傷跡だらけじゃないか

あまり無理しないでくれよ御兄様」

 

可笑しなことを言う、戦場に立てば傷なんて幾らでも出来るというのに

 

不思議に思った俺は頸を傾げると、翠は「まったく」と言って呆れたように腰に手をあて俺を見下ろしてくる

 

「戦場の話じゃないよ、その傷それ以外でも受けたりしたものだろう?さっきみたいに誰かを庇ったりしてさ」

 

「そういう意味か、だがそれは無理だな。体が勝手に動く」

 

「奥さんの手際が良いのはそういう理由なんだね。蒲公英は御兄様のような人、旦那様にもらいたくないなぁ」

 

「酷いこと言うな、そんなに情けないか俺?」

 

「違うよー、何時も怪我ばかりで気が休まらないもん」

 

俺は蒲公英の言葉でギクリとなってしまう

良く考えたら俺は秋蘭に何時もそういった心配をかけているんだと改めて認識してしまった

 

後ろをゆっくり振り向けば、傷口を縫った糸を歯で切った後の秋蘭と眼が合い、無言でその蒼い瞳が訴えていた

 

【蒲公英の言うとおりだ】と、相変わらず俺は心配ばかりかけているようだ

 

定軍山で少しはマシになったと思ったのは俺だけか・・・

 

「あの・・・」

 

声をかけられ、其方に眼を向ければ心底申し訳なさそうな黄忠殿が璃々ちゃんと手を繋いで此方を見ていた

どうやら此方に近寄りたいようだが、先ほどのことで足が進まないらしい

 

「お母さん、小父ちゃん優しいから大丈夫だよ」

 

「でも」

 

「間違ったらちゃんと御免なさいしなきゃ駄目なんだよ」

 

璃々ちゃんから出てきた言葉はそんな言葉、俺はなんと利発な子供なのだろうと感心してしまった

涼風の友達になってくれて良かった。この大陸が平和になった後、御互い生きていれば良い関係を築いてもらいたいものだ

 

「そうね・・・無礼をお許しください、二度も璃々を助けてくださってなんとお礼を言ってよいか」

 

「いいえ、親ならば無理も無い反応です。もし私が逆の立場であったらば同じ行動を取ったでしょう」

 

「・・・御見苦しい所を。このお礼は必ずお返しいたします」

 

「礼は既に頂きました」

 

「えっ?」

 

深々と頭を下げて俺に謝罪を述べる黄忠殿、慌てて涼風を抱き上げて立ち上がり首を振る

そして礼をと言う黄忠殿に返した言葉で何のことだ?と黄忠殿は驚き頸をかしげてしまう

 

「義妹と蒲公英の事ですよ。久しぶりに戦場ではない場所で会う事が出来た」

 

「御兄様・・・」

 

笑顔で翠の頭を撫で、翠も嬉しそうに笑う。蒲公英の頭も撫でてやれば、同じように俺に笑顔を向けてくれた

こんな事でも無ければなかなか義妹に会う事は出来ない、陣営がちがうのだから余計にだ

 

「・・・翠ちゃん、貴方の御兄様は素敵な人ね」

 

「ああ、自慢の兄だよ」

 

 

 

 

嬉しそうに笑う翠を見ながら黄忠殿は弓に矢を番え、空高く翠達が来た方向に構え矢を放つ

引渡しに選んだこの場所は開けた場所で、隠れるなら賊がしたように地に伏せ、土でも被るしかない

だがはるか後方は木々に囲まれ、兵を隠すには絶好の場所

 

「あっ・・・紫苑、もしかしてっ!」

 

声を荒げて振り返る翠、矢は後方の何かに当り、カーンといい音を立て、その後に数等の馬の鳴き声が聞こえてきた

 

「本当に御免なさい、此処を囲むように兵を」

 

「くっ、幾ら仲間でも許せない」

 

「まってお姉さまっ!」

 

眼を伏せる黄忠殿に掴みかかろうとする翠を男は腕を掴み引きとめ、頸を振る

 

「俺は何も見てないし聞いていない、此処は戦場ではない、せっかく義妹に会えたんだ。笑顔で分かれたいよ」

 

「御兄様・・・くっ、ホントに御父様みたいなんだから、何時かそれで危ない時が来るぞ」

 

「それはそれで仕方ない、家族が守れればそれで良い」

 

「はぁ、銅心小父様もそれで苦労してたって言うのに」

 

呆れ顔で疲れたように肩を落とす翠、良かったと胸をなでおろす蒲公英、そんななか黄忠殿は歩を進め此方に近寄り

俺の手を握ってもう一度頭を下げてきた。

 

「璃々を、娘を保護して頂、本当に有り難うございました。心より感謝いたします」

 

「いえ、その感謝は璃々ちゃんを守り通した勇敢な女性に言ってあげてください」

 

懐から取り出したのは璃々ちゃんを身体を盾にして守りとおした侍女の指輪、そして彼女が着ていた服の切れ端

文様が独特のものを着ていたから直ぐに解るだろうと遺品として端を切り離してきたものを手渡すと

手に平に乗せて悲しげに見詰め、大切に胸に抱きしめる

 

彼女の友だと璃々ちゃんから聞いていた、きっととても仲が良かったのだろう

その仕草だけで十分に伝わってきた

 

「彼女は巴東に逃げる際に賊に襲われ、最後まで璃々ちゃんを守り通しました。我が王、華琳も勇敢な女性で

あると称えていました」

 

「そうだったのですか」

 

「彼女の遺体は新城に丁重に葬ってあります。黄忠殿が魏に入る事は出来ませんが、翠に確認させ報告させましょう」

 

「そこまでして下さったと言うのに、私は」

 

「御気になさらずに、それよりも璃々ちゃんは良い子でしたよ。私の娘とも遊んでくれましたし」

 

終始柔らかい笑顔で放す男は、いきなり話を変え黄忠は困惑するが、子供の話しとなれば男も黄忠も子を持つ親

直ぐに二人は互いに笑顔になり話しも弾みはじめる

 

「へぇ、だから弓が巧いんですね。そういえば璃々ちゃんは好き嫌いとかあります?」

 

「野菜に嫌いなものが何点か、子供は鼻が良いですから、直ぐに皿から弾いてしまって」

 

「なるほど、すりつぶしたりして解らないように食べさせるのが良いらしいですよ」

 

「それが試してみたのですが、やはり匂いで解ってしまうようで」

 

「ならば匂い消しに薬味などを使うか、もしくは・・・」

 

などと話しは止まらなくなっていく、さらに御互いに御互いの子供を褒めあい、そして自分の娘を自慢する二人の親

翠と蒲公英はそんな二人の会話に次第に呆れ、詰まらなそうな璃々と涼風の手を引いて子供の持つ弓で遊び始めてしまった

 

「やはりこうなったか、馬超は馬騰に似てると言ったが似ているのは曹騰様にだ。あの方は誰とでも打ち解けてしまうからな」

 

呟きながら秋蘭は縛り付けた賊一人一人の顔を確認していく、今まで見た事は無いか、敵国の人間であるのならば

その証拠となるものは無いか、最後は男が尋問することになるのだが、その前に解る事があるならばと

男の負担を減らす為に注意深く確認していく

 

「む、こやつは・・・」

 

眼に止まったのは蒲公英が取り押さえた賊の頭らしき人物

男なのにも関わらず綺麗な顔立ちをしており、笑顔で話しかければ町女などは頬を染めるであろう優男

 

秋蘭は男の胸倉を掴み、確認するように引き寄せれば、はだける胸元には美しく輝く白い布地が覗く

 

「昭、こっちへ」

 

「そうなんですよ、六韜の第二十選将篇を覚えさせて・・・ってどうした?

 

一人だけ繋がれた衣服を解き、引きずり男の前へ投げ捨てるように優男を突き出す

 

「なるほど、そういう事か。凪達の報告書に賊と舞神教の繋がりを示したものがあったが」

 

蒲公英の一撃で気絶していた優男は身体を突き刺すような威圧感に驚くように飛び起き、頬を触れば大量の汗が伝っていた

何事かと周りを確認すれば仲間は全て衣服を結ばれ身動きが取れず、目の前には恐ろしい怒気を放つ男が一人

 

その男の姿は何処かで見たことがあり、震える手で前のように頬を押さえかすれた声をあげる

 

目の前で立つ男とはそう、新城で舞を舞ったときに華琳の刃から守り、己を殴った恐ろしき殺気を放つ男

 

「ヒ、ヒイイイィィィィィッ」

 

「貴様の眼を見れば解る。俺と華琳に対する恨みを黄忠殿の娘、璃々ちゃんを射殺す事で返そうとしたな」

 

わざわざ己の恨みを晴らすためだけに此処まで着いてきたのか、風に賊の露払いをしてもらっていて良かった

子供達が居る時に襲われていたら・・・

 

ギシリと音を立て握る拳に力がこもる

 

璃々ちゃんを殺せば黄忠殿は俺達が賊をけしかけ殺したと向かってくるだろう

そうすれば俺達はこの場で戦わなければならない

それどころかその戦いはどちらが勝っても恨みを残し、膨れ上がり国家間の戦になる

 

そうなればどれだけの人が死ぬ事になるか、恨みと憎しみで戦いは終わる事が無い

たとえ魏が勝ち追い詰めても最後まで牙を剥くだろう、大陸を制した後でも元蜀の民から内乱と言う形で火は残る

 

そこまで考えているのか、いや考えてはいまい。己の怨みが晴らせれば良いと

殺し合いをさせその後に残る弱者から利を吸い取ることだけを考える目だ

 

「生命とは生きて命を伝えるモノだ。それが伝える事もせず、己の悦に浸り奪う者に生きる資格など無い」

 

「あっ、がああっ」

 

優男の悲鳴に男の口がゆっくりと開き、犬歯がまるで牙のように

 

脅える優男の顔に男の五指が突き刺さり、メキメキと音を立てて頭ごと持ち上げ

その眼からは刃こぼれを起こし、ボロボロになった切れ味の悪い刃を連想させる殺気が発せられる

 

刃は切れ味が悪いほどに傷を残すと言わんばかりに優男の心を削り、恐怖に優男は失禁してしまう

 

「己の性を呪え」

 

「待て、昭」

 

腰から宝剣を抜く男の腕を秋蘭は掴み、優男の頭を握り潰してしまいそうな手を止める

 

「何故止める?」

 

「子供達が居る」

 

その一言で男の顔からまるでつき物が落ちたかのように怒りの表情どころか殺気までが削げ落ちる

急に手から解放された優男は地面に尻餅を着き、逃げ出そうとするが翠と蒲公英に刀を向けられ

動きが止まってしまう

 

「おとうさん・・・」

 

「うん、怖かったな。ごめんな涼風」

 

消え入りそうな声に後ろを振り向けば最愛の娘が珍しく涙ぐんで男の脚を掴んでいた

男はニッコリと笑顔を向けて抱き上げ、安心させるように頭を優しく撫でる

 

「その男に見覚えが?」

 

「ええ、璃々ちゃんを守った侍女殿を殺した賊の頭ですよ」

 

「な・・・」

 

驚く黄忠殿の後ろでは璃々ちゃん悲しく、そして怒りをもった瞳で翠と蒲公英に衣服で足を縛られる姿を

睨んでいた。黄忠殿も鋭く優男を睨みつけ、弓を握る手は微かに震えていた

 

「我等が仕組んだ罠、演義とは思わんのか」

 

「秋蘭」

 

表情を少しも崩さない秋蘭は、黄忠殿に対しそんな言葉をさらりと言うが、黄忠殿はクスリと笑って

秋蘭を見据える

 

「娘と翠ちゃん達が信じる人ですもの、もし演義だとしたら御二人とも役者だったと諦めるだけ」

 

「フッ、そうか。どうやら頭は完全に冷えたようだな」

 

どうやら試したようだ、黄忠殿の心が落ち着いているかどうか、俺と秋蘭をこの場でどれだけ信用しているのかを

そして黄忠殿の反応は秋蘭の満足するものだったようだ、脱がせた上着と外套を着させ弓を仕舞い、腕を絡めてくる

 

「賊はどうする、お前達が裁くか?」

 

「・・・いいえ、夏候昭様にお任せします」

 

「それは全て昭の判断に任せると言う事か?」

 

「ええ、貴女の旦那様ならきっと誠意のある対応を取ってくださるはず」

 

口元に指先を当てて柔らかく微笑む、優しく暖かい雰囲気、之が彼女の本来の姿なのだろう

きっと蜀でも彼女の作り出す雰囲気に癒されているものは多いだろう、蜀の母と言った感じなのだろうか

 

「では賊は此方で引き受ける。どういった処置をしたか後で木管をよこす、受け取りは馬超で良いか?」

 

「ええ、翠ちゃん宛てで結構よ」

 

そういってまた柔らかく微笑む、普段はこんなに余裕のある人物なのか

眼の奥に感じるものは大きく深い海、器ではない彼女の心の深さ、優しさの深さだ

母で在るからこそ娘の危険にあそこまで・・・という事は秋蘭もきっと同じ立場ならきっと

 

いつの間にか俺は黄忠殿と話す秋蘭の横顔をじっと見ていたらしい、気が付いた秋蘭は俺の頬をふにっと摘む

 

「私はお前がどうにかしてくれると信じているから、同じようにはならないさ」

 

「・・・ああ、勿論だ。必ず涼風は守り通す」

 

俺達のやり取りを微笑み、何か懐かしむように見ているのを見て俺は直ぐに眼を逸らした

きっと自分の夫のことを考えているに違いない、彼女の大切な思い出に土足で踏み入るわけにはいかない

 

視線を逸らす俺に黄忠殿はまたクスリと柔らかく笑うと深く頭を下げて

「私は之で失礼します。娘を本当に有り難うございました。必ず何かしらの形で礼をいたします」

と言うと翠に笑顔を向け、璃々ちゃんを抱き上げ置いてきた馬のほうへと歩き出す

 

璃々ちゃんは涼風に「また遊ぼうね」と言ってずっと手を振っていた

涼風も返すように元気よく手を振り返事を返していた

 

「御兄様、あたしたちもこれで行くよ。今回は我儘を聞いてくれて有り難う」

 

「いいや、俺も自分の我儘を通しただけだ。それにお前の顔が見れたことが嬉しい」

 

「うん、有り難う・・・そう言えば桃香の真名を受け取らなかったんだって?」

 

「ああ、俺の真名は魏の皆が大切に思ってくれているからな」

 

「蜀に入ってその話をしたら桃香と愛紗達に驚かれて、その後はずっと質問攻め。うんざりだったよ」

 

あー、それは大変だっただろうな。ピリピリしている時に良く解らない質問攻めで、銅心殿が居なければ

もしかしたら暴れだして呉に行っていたかもしれない。あの時の翠にそんな余裕は無かっただろうし

 

「蜀に、劉備殿に仕えるのか?」

 

「うん、多分そうなっちゃうだろうな。小父様が居たから客将だったけど、あたしと蒲公英じゃ涼州は取り戻せない

けどフェイが涼州を治めてるって聞いたから、盟主はまた馬家になる。だからあたしはあたしの戦いを始めるよ」

 

「そうか、俺としては」

 

言いかける俺の口を翠は手で押さえてしまう。聞きたいけれど聞きたくは無いと

 

「あたしも同じ、御父様が認めた御兄様だから。でも戦う理由は御兄様とは違う」

 

「また来い、新城で待ってる」

 

「うん。それと中々伝えられなかったんだけど、御父様のこと真名で呼んであげてくれないかな」

 

「良いのか?」

 

「良いよ。きっと真名で呼んで欲しいと思っているだろうからさ」

 

俺は頷くと、翠は頬を染め照れたように笑い刀を俺に渡しクルリと踵を返して走って黄忠殿の後を追う

 

「蒲公英、翠を頼む。支えてやってくれ」

 

「うん、勿論だよ!叢雲御兄様、蒲公英は御兄様の名前は語らない、でも蒲公英も家族だよね?」

 

「ああ勿論だ。俺の名は面倒を引き寄せるだろう、魏で王と同列の者の真名を語るのは翠だけでいい」

 

「解ってる。今のお姉さまなら語ることが出来るほど強いもん。蒲公英は影で支えるよ」

 

俺は蒲公英から差し出される刀を受け取り、頭を撫でる。今の翠ならば誰にも屈する事は無いだろう

そして父鉄心の如き強さもある。もう一人の義妹には翠を支える銅心殿のようになって欲しいと願う

 

「御兄様、夏候淵またなーっ!蒲公英、置いてくぞーっ!」

 

「ちょ、待ってよお姉さまーっ!またねー御兄様と御兄様の奥さんーっ!」

 

娘と共に馬に跨る黄忠に追いつくと、翠と蒲公英は素早く馬に跨り、此方を見て手を振り見送る俺たち

二人の視界から見えなくなるまで手を振っていた。器用なものだ、此方を見ながら馬を操るとは

 

「行ったな、無事に済んで良かった」

 

「そうだな、さて・・・春蘭っ!」

 

後ろを振り向き大声で義姉の名を呼べば、後方の木々の陰からスッと姿を現す

此処についてからずっと居ただろうというのは解っていた。だが何処に居るかは解らなかったが

先ほど賊との戦いで後ろの木陰から動く影が視界に入った

 

その動きは良く知る荒々しくも洗練された春蘭の戦場での動き

 

「やはりばれていたか、賊が良くなかったな」

 

「来るのは解っていたよ。でも俺の眼に捉えられないように動くなんて」

 

「姉者、やはり来ていたのだな」

 

少しばつが悪そうな顔をして視線を逸らす春蘭、そっけない態度を取っていても我等の姉なのだ

この場に必ず現れると、付いてきていると解っていた。春蘭は優しい姉なのだ

 

「賊を武都へ連れて行くのだろう?手伝おう、二人では心もとない」

 

「有り難う、お願いできるか」

 

「では私は後方を受け持つ、姉者は先頭を、昭は中央で全体を見てくれ」

 

馬に涼風を乗せ、引きながら一直線に並ばせた賊を歩かせ武都まで進む。優男は馬に縛りつけ、逃げ出さないように

荷物のようにはこび、途中で何度ももがいていたが春蘭の鋭い闘気に気圧され身を震わせていた

 

「来てくれて有り難う、姉者」

 

「・・・フンッ」

 

近くによって感謝を述べれば、顔を耳まで真っ赤にして顔を逸らしていた

我等の姉は秋蘭の言うとおり可愛い人だと思い、つい笑顔になる

だが姉にはそのことが気に入らなかったらしく、無言で俺は脚を踏まれ悲鳴を上げていた

 

 

 

 

夕暮れに武都に着くと、賊を兵舎へと送り、秋蘭に涼風を任せ、稟へ事情を説明し賊への処罰へと素早く移行した

まだこの武都に残っていた霞の副官、無徒を従え兵舎へと入る

 

目の前には身体を縛られ、地に座す賊の頭領

恐怖で優男の仮面はすっかり崩れ、いくらか老けたかのようにも見える

 

「はっ・・・はっ・・・はっ・・・」

 

小さく息を吐き、今から言い渡される事に鼓動は早くなっているようだ、顔も脂汗を流しポタポタと地面を濡らす

 

「此れより刑を執行する。俺は魏王、曹孟徳様より許昌の警備隊長を、また魏国内全てにおける刺史と同じ権限を

有する事も許可されている」

 

つまり魏、国内全ての土地で警備隊長と同じ権限を持ち、刑を執行できるという事だ

それを理解したのか、優男は小刻みに震え始める

 

「罪状を挙げよ」

 

「は、宗教家を装い民を扇動し民を騒がせた罪、英霊の魂を侮辱した罪、私兵を率い弱き者から搾取した罪

無抵抗な侍女を私欲で惨殺した罪」

 

次々に上げられる罪状に優男の顔は益々老いさらばえ、まるでやせ細った病人のようになって行く

しかし無表情に漆黒の外套に身を包み、腕を組み視線を逸らさず重圧感のある気迫を纏う男は立つ

 

「以上の罪により斬首が妥当であります」

 

斬首、無徒の口からそう言い渡されると、優男は必死に地面に頭を擦りつけ命乞いをする

かつてあった人を垂らしこむような顔の美しさは消え去り、ただただ助かりたい一心で

 

「どうか、どうか御慈悲をぉぉぉっ。戦が続き、家族も食に困り果て、宗教で身を立てようにも思うように行かず

このような事をっ」

 

男は目の前で泣き叫び、懇願する優男を冷たい瞳で見下ろす

その瞳は全てを見通し、虚偽を許さぬと無言のまま言っていた

 

「貴様は華琳の剣の届く範囲内で最も許されざる三つの罪を犯した」

 

冷たい瞳を地面に頭を擦る着ける優男に向け、優男は顔を上げられずに居た

顔を上げれば己はきっと見下ろす男の怒りにふれ、即座に殺されるであろうと

頭の中はいかに生き残るか、しかしそんな心を男の眼は冷酷に見抜いていた

 

「一つは弱気者を己の悦で弄び、殺した事。もう一つは勇敢なる英霊を穢した事。最後の一つは・・・」

 

男の瞳は紅蓮の怒りに染まり、噛締める歯はバリバリと音を立てる

周りで賊たちを囲む警備兵たちは唾を飲み込み、優男に付き従った賊は身を震わせ己の所業を呪った

 

「幼き国の宝を、貴様のクソッタレな欲と怨みの為に消そうとした事だ」

 

「どっ、どうかお許しをっ!舞王様は慈悲深いお方と聞いております。曹操様は我等のような賊を受け入れていると

我等も曹操様の民にっ!」

 

優男の言葉に男の眉がピクリと動き、目からは怒りの色が消えうせ、賊たちもその姿に安心したのか

溜息を吐き、同じように頭を地面に擦り付けて懇願を始める

 

「良いだろう、斬首は取りやめよう」

 

「あ、有り難うございますっ!」

 

「だが罪は罪だ、無徒よ罪状全てで何打擲が望ましい?」

 

男の声に賊は凍りつく、よく見れば男の瞳は燃えるような紅蓮の色から全てが凍てつくような氷の色を称え

その身体に纏う気迫は凍傷を起してしまうかと感じるような冷たい空気を纏う

 

「は、全ての罪状をあわせまして七百打が妥当でございます」

 

「ならばそれに幼き子を殺そうとした罪を合わせ千打を妥当とする。見事耐え切り曹操様に対する誠意を示してみよ」

 

ガバッと身体を起し、驚く優男は男の眼を見て凍りつく

己が幾ら弁解弁護しようともこの男の心を変える事などできはしないと

だが優男は必死に声を上げる。何でもいい、自分の命をつなげようと

 

「そ、曹操様が仰った賊を受け入れると言う事は嘘なのですか?魏王は嘘をつかれるのですかっ!?」

 

「華琳は嘘など言わぬ、此れは俺の意志で決めた事だ、それで華琳が俺の決断を否定し殺すと言うのなら従おう

生抜く事が魏の誇り、だが生き抜くとは己がすることを守る為にある。事の大小は関係ない、命を賭して決断する

それが魏の精兵だ」

 

【無駄、無慈悲】その言葉が優男の頭に響く、茫然自失の状態の優男の耳に「台へ移動しろ」と無徒の低い声が響き

力なく台に押さえつけられ、歯を食いしばる為にある取ってに顔を押さえつけられ、気が付いたように悲鳴を上げる

 

「た、助けてくれッ!助けてくれぇっ!!」

 

「同じ言葉を口にした者にお前は何をした?」

 

凍るような視線で睨みつける男、その口から放たれる鉛のように思い言葉に叫び声は止まり

優男の脳裏に今まで殺してきた者の姿が蘇る

「助けてくれ」「殺さないでくれ」そう懇願する人々

 

その中で、無言で剣を受け抱える幼子に笑顔を向ける女性の姿が濃く写る

同じようなことをされる今、あれほどのこと己は出来ないと

 

「あぐっ」

 

無徒の腕に強引に押さえつけられ、取っ手を噛締めると現実に戻され必死に台にしがみ付く

 

「始めっ!」

 

男の声を皮切りに五彩棒を振り上げ鈍い音が響き渡る

無徒は棒を振り上げ、兵に抑えられる優男の背中に力の限り振り下ろす

何度も、何度も・・・

 

「む。昭様、絶命いたしました」

 

「・・・では次に移る」

 

男は表情を崩さず、次々に賊に刑を言い渡し全員を裁き終えると日が昇っていた

 

「生存者はおりません、以上にて刑を終了いたします」

 

「ご苦労、刑の報告は全て木管に詳細に記載し、華琳とフェイに送れ」

 

拳包礼をして返事をする無徒はすばやく警備兵に指示し、片付けと処理をし

それを見届け男は踵を返し、兵舎から出て誰も通らない裏通りに入り、壁に寄りかかり腰を下ろす

 

「・・・・・・」

 

「終わったのか?」

 

見上げれば其処には秋蘭がいつの間にか立っており、男の横に静かに腰を下ろす

 

「涼風は?」

 

「姉者と寝ている。それよりも疲れただろう」

 

「うん」

 

男の寄りかかる壁は背中から滲む血で微かに赤く染まっていた

刑を見続ける男は、覚悟を決めていた分酷くは無いが背中を染めるほどに血を流していた

 

秋蘭はそれを少し悲しそうに見ると、男の頭を抱き寄せ撫でる

 

「帰ろう」

 

「うん」

 

「大丈夫か?」

 

心配する秋蘭の腰に腕を回し、立ち上がると同時に抱き上げる

そして下から笑顔を向けた

 

「こうして支えてくれるから、俺は幾らだって強くなれるよ」

 

「そうか」

 

笑顔は弱弱しいものから何時もの笑顔に変わり、秋蘭を下ろすと手を繋いで歩き出す

秋蘭は男を信じ、少しでも力を与え支えられるようにと手を強く握り、柔らかい笑顔を向けるのだった

 

 

 

 


 
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