No.173417

天女光臨 後編

ふぉんさん

「天女光臨 前編」の続きとなります。

前作upしてから書き始めてもう終えてしまった……。
これなら分けなくても大丈夫だったなぁと自己嫌悪。

続きを表示

2010-09-19 04:52:42 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:9779   閲覧ユーザー数:7968

華琳から逃げ、俺は今東屋の影に隠れている。

少し時間を置けば、華琳もすぐいなくなって部屋に戻れるだろう。

石段の上に座り休む。

 

そういえば偽名を戯志才と名乗ったのはまずかっただろうか。

星、風、稟の三人に名が知れれば、明らかに不審がられるだろう。

一度名乗った以上通すしかないが……

 

チョンチョン

 

うーむそれなら先手をうって三人に会うか?

事情を話せば多少からかわれようとも傷が広がるのを防げそうだ。

いやしかしこの姿で探し回るのは自殺行為ではないだろうか。

兵装してるわけでもない。見覚えの無い自分が城をうろついていたら誰にでも不審がられるだろう。

 

チョンチョン

 

兵装することは着替えることになるんだろうか……なるんだろうな。

そもそも女兵なんてうちの隊には無い、この胸だと鎧の下だろうがばれてしまうだろう。

これ……でかいなぁ。触ってみたけど感触も本物と相違ないし、ご丁寧に突起もついている。

だが肩に掛かって固定されてるため、重い。

紫苑とか桔梗とか祭さんとか、これ以上だもんなぁ。

こんなものをつけて、彼女達は何故あんな人間離れした動きができるのだろうか。

 

チョンチョン

 

「……ん?」

 

袖を引かれた。

思考を中断し見てみると、恋が俺の袖を持ちながら不満そうな顔をしている。

 

「……ご主人様、やっと気づいた」

 

「え?あぁ……ごめんごめん、ちょっと考え事してた」

 

悪い事したなぁ。

……ってあれ?

 

「すごい綺麗」

 

「って恋、俺の事分かるの?」

 

首を傾げ、?を浮かべる。

あぁ相変わらず可愛いなぁ。なんだこの生き物。

 

「ご主人様はご主人様。どんな姿してても同じ」

 

「……やば、ぐっときた」

 

感極まって恋を抱きしめる。

不思議そうにする恋だったが、すぐに背に手を回してきた。

あぁ、幸せだ。

 

ドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

 

「ち・ん・きゅぅぅぅぅ………っ!」

 

こ、これはっ!

 

「きぃぃーーーーーーーーーーーっく!」

 

ドカーン!!

 

「げはぁっ!!」

 

脇に突き刺さる陳宮キック。

抱き合ってるのに器用に俺だけ蹴りやがった!

 

「恋殿を誑かす愚か者め!この陳宮が成敗してやるのです!!……って」

 

「いたたた…………」

 

俺の姿を見て慌てた顔を浮かべるねね。

 

「こら……」

 

ぽかりと恋がねねの頭にゲンコツを与える。

毎度のやり取りだな、ねねの姿は親に怒られた子供みたいで少し和む。

 

「も、申し訳ないのです……。てっきりまたあの変態ち○こが恋殿を誑かしたのかと……」

 

変態ち○こってお前……。

ふふ、ねね、お前は俺を怒らせた。

恋に耳打ちして俺の正体を隠してもらう。

そして少し怒った顔でねねと対峙した。

 

「いきなり蹴りつける何てひどいですよ。痣になったらどうするんですか……」

 

「本当に申し訳ないのです……ですが、何故恋殿と抱擁されていたのですか?」

 

「そんなの、恋ちゃんが可愛かったからに決まってるじゃん」

 

「なんと!もう真名を呼ぶような関係でしたか!!それについては同意せざるを得ませんです」

 

「ふふふ、で、陳宮さんには是非御詫びをしてもらいたいなーって……」

 

「分かりましたなのです。この陳公台、誠心誠意詫びさせてもらうです!」

 

「決まりだね。じゃあちょっと一緒に茂みの奥に行こうか」

 

「……ふぇ?ちょ、ちょっと待つのです……」

 

ねねの腕をがっしり掴み茂みの奥へ行く。

え?何をするかって?ナニをするのさ。

 

 

 

 

 

 

「や、やめるです!こんなところで服を……こらぁ……」

 

 

 

 

「んぅ……っ、ん、ちゅ、ちゅぅぅ……ぁ、は、や、やめる……ですぅ……」

 

「もっとしてあげるよ」

 

「……そ、そんな、の……いらな……ちゅ、んちゅぅぅ……っ、ふあぁぁ!」

 

 

 

「だめ……なのです……っ。ふぁあぁあっ、もう……もう……」

 

「ひぁあああああああああッ!!!!!」

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「おかえりなさい」

 

石段で待っていた恋に挨拶。

俺の横にはべそをかいているねねが居た。

 

「ねねは……ねねは汚されてしまったのです……」

 

よよよ。と泣き崩れるねねを恋はよしよしと慰めている。

発端である俺はというと大満足だった。

ちなみに本番はしていない。ばれたくないので。

 

「ところで恋は何の用事だったの?」

 

「ご主人様と、買い物行く」

 

どうやら一緒に買い物がしたかったらしい。

今日はこの姿だけど……まぁいいか。どうせばれないだろう。

と、ねねがぷるぷる震えながらこっちを見ていた。

 

「れ、恋殿、今、何と仰いましたか?」

 

「……買い物行く?」

 

「その前です!」

 

「ご主人様」

 

あ、やべ

 

「……な、なんですとぉおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 

 

 

真・恋姫無双~萌将伝~

「天女光臨 後編」

「いたたたた……容赦なさすぎるだろ……」

 

「ふんっ!お前が悪いのです!!」

 

再び戻ってきた大通り。

恋、ねねと一緒に下りてきたのだ。

 

あの後即座に蹴りかかってきたねね。

今度は恋の仲介も無くぼこぼこにされてしまった。

加えて変態だのの罵詈雑言を受けた後、ようやく許しを得たのだった。

 

ちなみに女装する羽目になった経緯も話し終えている。

 

「もきゅ……もきゅ……」

 

「ほら、頬についてるよ」

 

「もきゅ……もきゅ?」

 

「……はあぁぁ……恋殿ぉ……」

 

頬についた餡を布で拭う。

リスの様に頬張りながら肉まんを食べる恋は、とてつもない破壊力があった。

 

「おや?恋では無いか」

 

前方からかけられた声、愛紗と星が二人で歩いてきた。

これは……星に話をつけるチャンスか?

 

「む、見ない顔だな。どなたかな?」

 

「は、私は御遣い様の侍女を勤めさせてもらう事になりました、戯志才と申します。御遣い様を探していた所を、恋様に誘われまして……」

 

星の問いに、挑むような瞳で合わせる。

一瞬、訝しそうな表情を浮かべたが、すぐに理解したように笑みを浮かべる。それはもう、悪餓鬼が悪戯を思いついた様な。

 

「なるほど……。恋、あまり侍女を困らせるな。お前の立場上、侍女は何事も頼まれたら断れないのだぞ?」

 

「……もきゅ??」

 

「……はあぁぁ…………」

 

愛紗が何処か行ってるうちに、星とこっそり話を進める。

 

「主、如何にしてその様な格好を?」

 

「やっぱり気づいてたか。いや実はさ……」

 

今までの経緯を簡単に説明する。

 

「なるほど、朱里も粋な事をする」

 

「何処がだよ!こっちは大迷惑なんだぞ」

 

「まぁまぁ。主のその姿、正直同姓でも見惚れる程ですぞ?」

 

「…………そんな事言われてもうれしくないよ」

 

やばい、ちょっとうれしくなり始めてる自分がいる。

 

「とりあえず、この事は黙ってて欲しいんだ。後、風と稟にも話をつけといてほしい」

 

「ほほぅ。主はこの様な面白い事を誰にも言わずに過ごせと?そう仰るか」

 

……流石星、すんなりと会話が進まない。

 

「もちろん、それなりの報酬はある」

 

「む?」

 

「特上メンマ」

 

「むぅ……もう一声」

 

「特上メンマと祭さん選りすぐりの老酒」

 

「いいでしょう。この趙子龍、主の為にこの任、必ずや遂行して見せましょう」

 

まったく現金な奴だ。

まぁでもこれでだいぶ心配が無くなった。

 

「……はっ!いけないいけない……戯志才。恋の真名を受け取っているとなると中々の人物なのだろうな」

 

「いえ、私など……」

 

「謙遜するな。天下に名を轟かせる飛将軍呂布の真名を授受されたのだ、それに恥じぬ様仕事に励むがよい」

 

「ありがたき御言葉……感激の極みでございます」

 

「うむ、では私はこれで……と、戯志才。お主、御使い様の侍女と申したか?」

 

「はい、その通りでございますが……」

 

何だ?不審がられてるのか?

愛紗は眉を寄せ、思念している。

 

「むぅ……この様な美しい者がご主人様の侍女となると……手を出しかねない……」

 

「関羽様?」

 

「あ、あぁすまない。私は少々用ができた。これで失礼する。星、行くぞ」

 

「それではな、恋、ねね、戯志才殿」

 

やけに早歩きで城へ戻る愛紗。

どうしたのだろうか……

 

チョンチョン

 

「ご主人様、あっち」

 

恋が指差す先はラーメン屋台。

あんなに手に持っていた肉まんは、既に消えていた。

 

「ほら、早く行くのですよ」

 

笑顔の二人に手を引かれ屋台へ向かう。

現状を忘れて、ちょっと幸せになれた。

「私は帰ってきた!!!」

 

思わず某名台詞が出てしまった。

漸く部屋に戻れたのだ。

もう太陽は沈み月が外を照らしている。

 

恋とねねとの買い物という名の屋台巡りは、つい先程恋がやっと満足して終わりを告げた。

 

さて、時間も遅いしもう着替えても大丈夫だろう。

 

「ご主人様?」

 

と、扉の外から紫苑の声。

主犯の一人が何の用だろうか。

 

「開いてるよ」

 

「失礼します。…………これは……近くでお伺いすると、まったく違います……」

 

こちらに歩み寄り、もう少しでキスが出来てしまうほど寄ってきた。

 

「本当に……美しい……」

 

華琳とまったく同じ状態になっている。

身の危険を感じ後ずさる。

 

「やっぱり監視してたのって、紫苑だったんだ」

 

「はい。朱里ちゃんと一緒に計画してたのですが……ここまでの成果がでるとは思いませんでした」

 

「まったく……いい迷惑だよ」

 

「ふふ、良いではないですか。ご主人様も満更では無くなってたのでは?」

 

う……強くは否定できないのが悲しい。

 

「ではご主人様、次はこちらを着て見ましょう」

 

「えっ」

 

紫苑の手はどこから出したか分からないほどの服で埋め尽くされていた。

まずい、このままじゃ……

 

「あ、俺ちょっと用事があったんだった」

 

「その様な姿で用事なんてあるわけ無いじゃないですか」

 

肩に手を置かれる。それだけで、俺はそこから一歩も動けなくなった。

 

「では、失礼します」

 

「あ、ちょっとまって紫苑!服に手を……あっ…止め……」

「いやぁああああああ!!!」

 

 

 

それからはもう、日が明けるまで紫苑の着せ替え人形にされていた。

終始恍惚の表情を浮かべていた紫苑は、漸く満足したのかやっと戻っていった。

開放され、顔だけでも洗い音を立ててベットに倒れこむ。

意識は数秒で闇に落ちていった。

 

 

 

 

次の日、前日の疲労と寝不足で仕事が手につかなかったのは言うまでもない。

ちなみに紫苑はまったく支障は無かったようだ。

どうなってるんだ……

おまけ1

 

 

 

「雛里!ご主人様の侍女の件で話がある!」

 

「ふぇ!?どうしたんですかぁ……?」

 

「ご主人様の侍女に最近、戯志才とかいう者をつけただろう。その者についてだが……」

 

「愛紗さんもですか……?」

 

「む?」

 

「実は、華琳さんからもその話をされたのですが……戯志才なんて人、このお城にはいらっしゃいませんよ?」

 

「何?」

 

「そもそも、ご主人様の侍女は月さんと詠さんがいるので、増やす予定なんてありません」

 

「むぅ……ではどういうことだ!?」

 

「あわわ……曲者かもしれません……」

 

「いや、それはないだろう。あの恋が真名を預けたのだ。よからぬ事を企む者であれば、ありえないだろう」

 

「恋さんがですか?なら放って置いてもいいのでは?」

 

「そうだ!恋に聞けばいい!!恋ーーーー!!!」

 

「あわわ……行っちゃった……」

 

「雛里ちゃーん!!」

 

「あ、朱里ちゃん」

 

「真桜さんに頼んでたもの、完成したよー!」

 

「本当!?」

 

「うん!いくよ……『雛里、愛してるよ……』」

 

「ひぁぁ…………すごい、すごいよ朱里ちゃん!!」

 

「うん!真桜さん作『隊長変声機』。素晴らしいです!」

 

「朱里ちゃん朱里ちゃん、もっと言って」

 

「ダメ!今度は雛里ちゃんが言って」

 

「じゃあ順番だよ?」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恋!ようやく見つけたぞ!」

 

「?」

 

「戯志才という者を覚えているか?」

 

「?知らない」

 

「ほら、お前が一緒にと買い物を頼んだ侍女の事だ!」

 

「恋、知らない」

 

「ねねは覚えていないか?」

 

「む~……恋殿の命令とはいえ、ねねは口惜しいのです……」

 

「何を言っている。覚えているのか?いないのか?」

 

「……ねねも知らないですよ」

 

「そうか……むぅぅ~~!!あやつは一体何者なんだーーーー!!!」

おまけ2

 

 

 

「戯志才……何者なのかしら」

 

「華琳様、こちらが例の書簡となります」

 

「ありがとう桂花。あなた、戯志才という名を聞いた事はあるかしら?」

 

「戯志才、ですか?存じません」

 

「そう……容姿はこのような感じなのだけれど……」

 

「…………この方は!?」

 

「あら、知ってたの?」

 

「いえ、先日本屋で一度だけ会った事がありまして……名前を伺ったのですが、お答えされませんでした」

 

「……へぇ、貴女がそんな顔をするなんて、少し妬けちゃうわね」

 

「そ、そんな!私は華琳様一筋です!!」

 

「ふふ、いいのよ。あの子の容姿は私も見惚れるほどだったわ……何としても手に入れたいわね……」

 

「華琳様と戯志才様に板ばさみ……はぁぁ…………」

 

「そうね……桂花!」

 

「はい!」

 

「あなたに戯志才の調査を任せるわ。何か解ったらすぐに報告なさい」

 

「御意に!」

 

「戯志才……待ってなさい!」

 

 

 

 

 

 

ぶるるっ!

 

「うぉっ!」

 

政務に励んでいると、急に凄まじい寒気がした。

何だろうか……

それにしてもこの前の女装問題は大変だった。

未だにばれずにすんでいるが、星への手見上げで俺の財布は超軽量化してしまった。

その上、目の前には体調不良のせいで手付かずになっていた書簡の数々。

 

「……はぁ」

 

再び筆を進める。この書簡が全部片付くのは一体いつになるのだろう。

俺は溜め息を禁じ得なかった。

あとがき

 

 

 

半端ない、長くなるから前後分けるとかいっておいて、もう終えてしまった。

まぁでもやる気があるうちに書いたほうがいいですよね。

 

さて今回は最後までばれずに落ちが弱かったですね。

ですがこれは布石……というより、ここでばれてしまうとこのネタが終わってしまうので、もったいないかなぁと思いこんな感じになりました。

気が向いたら色々な人を戯志才に会わせたいですね。

 

さて最近、魏アフター物を書きたくてしょうがないんです。

でも自分長編書くと必ずといって良いほど途中で投げ出してしまいます。

なのでこんな感じで短編を書いてるのですが……

まぁこれも気が向いたらですかね。ゆっくりと書いていけたらなぁと思います。

ちなみにプロットはできてるんですよね。あとは書く気力だけです。

 

次回作、恐らく好きなキャラクターの話になると思います。

といっても大体のキャラは好きですがね。

一番?もちろん一刀さんです(キリッ

 

ではまたの機会にお会いしましょう。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
67
7

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択