No.172292

Phantasy Star Universe-L・O・V・E EP05

萌神さん

EP05【唯一の番人】
SEGAのネトゲ、ファンタシースター・ユニバースの二次創作小説です(゚∀゚)

【前回の粗筋】

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2010-09-13 20:31:25 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:575   閲覧ユーザー数:571

四人はレリクス内部に設けられたフォトンチャージャーで、PPの補給を行い休憩を取る事にした。

『……』

会話は無い。

先程のヘイゼルの態度も有り、気まずい空気が一同の間に流れていた。

「あれ……? そう言えば……」

その空気の中、アリアがふと思い出したように呟いた。

「レリクス内部には『スタティリア』が居るって聞いてたから警戒してたんだけど……影も見えないじゃない」

「『スタティリア』? ……って何ッスか?」

ユエルが小首を傾げる。ヘイゼルが呆れて溜息をつきながら答えた。

「レリクスを守る番兵の事だ」

気まずい空気が徐徐に変わろうとしていた。

「おそらく此処の目ぼしい『スタティリア』は回収済みなんだろうさ」

アリアの質問に答えたビリーの間に、再びユエルが割って入る。

「番兵を……回収ッスか?」

ユエルは記憶喪失で世上に疎いのだ。ビリーはユエルに向き直り答える。

「そう、レリクスは今まで管理されてたからねぇ」

「誰にッスか?」

「……エンドラム機関だよ」

 

『エンドラム機関』

 

同盟軍内に設立されていた、レリクス保全を目的とする特殊部隊の名称である。

責任者は機関の名称ともなったエンドラム・ハーネス。

作戦遂行の為なら超法規的手段を取る事もあった、同盟軍でも特に異端とされた部隊で、SEED襲来までその存在が明るみになる事は無かった。

しかし、先のSEED騒乱の際には部隊長、レンヴォルト・マガシが暗躍し、結果、エンドラム・ハーネスは拘束、機関は解体されている。

「スタティリアの動力源は先史文明が造った超小型の『AFリアクター(A・フォトンリアクター)』だ。知ってると思うが、現在の科学技術はスタティリアに搭載できるような小型のAFリアクターを造るまでには至っていない。機関の目的の一つに、太古の科学遺産である、このAFリアクターの回収もあったんだろう」

「でも、スタティリアを破壊せずに、AFリアクターを回収するのは大変なんじゃない?」

アリアが不思議に思う。

「だからこそ、この遺跡は最適だった筈なんだぜ」

ビリー先生の解説は続いた。

「スタティリアが稼動するようになったのは、SEED襲来の影響で、レリクスが自体が稼動するようになってからだ。それ以前に発見され調査されていた、この遺跡のスタティリアは、稼動する前……戦闘で破壊する事無く、完全な形のままで回収できていた筈なんだぜ」

「既に回収されている……此処のレリクスにスタティリアは居ないって事なの?」

「Oh Yeah!」

ビリーがアリアを『正解』と言いたげに指を向けた。

「だからこそ、お前がこのミッションを選んだんだろう? そろそろ行くか」

ヘイゼルが休憩を終えて立ち上がり、三人も彼の後に続いた。

休憩を終え、レリクス深部へ進む四人だったが、その後の道程は実に順調で、原生生物との戦闘も起こらなかった。

「……地図によると、ここが最後のブロックなんだぜ」

マップをチェックしたビリーが皆に告げる。

四人は遂に最後のブロックへと辿り着いた。

最後の区画は縦長の広間となっていた。この先の通路が湖畔公園近くの遺跡へ繋がっている筈だ。

いや、湖畔公園側の遺跡からのエントランスと言った方が正しいだろうか? ともかく広々とした空間で、部屋の中ほどに、石柱のような構造物が崩れて山になっている物がある。

広間を進み奥へ向かい、部屋の中ほどにある石柱の残骸に近づく。黒々とした瓦礫の塊は、片膝を付いた石像を連想させ……る……?

突然、アリアが小さな悲鳴を上げた。

「何だっ!?」

驚いた三人の視線がアリアに集まる。彼女は瓦礫を指差し叫んでいた。

「こ、こ、これ! ス、スタティリア……スヴァルタスじゃ!?」

「!?」

ヘイゼルとビリーの間に緊張が走る。確かに黒々とした瓦礫の固まりかと思われたそれは、片膝を付いている『スタティリア』遺跡の守護者『スヴァルタス』だった。

 

自律防衛兵器(スタティリア) 『スヴァルタス』

 

遺跡を守護するスタティリアの中でも、人型を持つ自律兵器である。

「いや、よく見るんだぜっ!」

ビリーの言葉に目を凝らす。

そのスヴァルタスは、片膝を付いた状態で活動を停止していた。

この遺跡のスタティリアは、エンドラム機関の手によって回収されていると、ビリーは言った。

見たところ、このスヴァルタスは完全な物ではなく、この様に侵入者が来ても起動しない。経年劣化も酷く、回収の必要性が無いと判断され放置されたのだろう。

「脅かしてくれる……」

ぼやきつつも緊張を解いたヘイゼルの耳に、ユエルの声が届く。

「ヘ……ヘイゼルさ……ん……」

只事ではない調子の声にギョッとし、ヘイゼルはユエルに目を向けた。

「どうした!?」

「いきなり……胸が……く……苦しく……」

ユエルが胸元を押さえ苦しみ喘いでいた。彼女の上半身を覆う外装パーツの胸元には、シールドラインの表示板があるのだが、それが不安定に明滅している。

生体パーツを生かす為に、体液を循環させているキャストであるが、実際にキャストを動かしている動力源はフォトン・リアクターである。そのリアクターが何らかの不全を起こしているのか?

「くぅ……あぁ……っ」

ユエルが胸元を掻き毟り膝を落とす。

「おい! 大丈夫なのか、しっかりしろ!」

ヘイゼルは慌てて、崩れるユエルを抱き止めた。顔を覗くと彼女の額には冷や汗が浮かび、顔は苦しそうに歪んでいた。

「ヘイゼル!」

アリアの叫び声がする。

(今度は何だ!?)

ヘイゼルが顔を上げると、ビリーとアリアの視線が朽ちたスヴァルタスに向けられていた。ヘイゼルも目を移すと、スヴァルタスの胸の間から青白い燐光が湧き上がっている。

「A……フォトンリアクター……?」

その輝きを見つめながらビリーが呆然と呟く。

ビリーの予見通り、それはスヴァルタスが持つ、AFリアクターが生み出すフォトン粒子の輝きだ。

苦しみに額に玉の汗を浮かべるユエルも、スヴァルタスに目を向けた。

次第に強くなっていくフォトンの輝きと共に、スタティリアの身体を走るフォトンラインにフォトン粒子が流れ始め全身が輝き始める。積年の流れの中でスヴァルタスの表面を覆っていた埃が振動に舞い始めた。

「動いている? まさか……起動したって言うのか!?」

しかし、何故今頃になって!?

遂にスヴァルタスは立ち上がった。

悠久の時を経て最後に残された、この遺跡、"唯一の番人"が起動したのだ。

ビリーとアリアが後退る。ヘイゼルもユエルを少し離れた位置まで連れて行った。呼吸はまだ荒いが、どうやら症状は落ち着いてきているようだ。

「すみません……ッス……よ」

「そんな事は良い、お前は少し休んでろ……アリア!」

謝るユエルを座らせると、ヘイゼルはアリアの名を呼んだ。

「ユエルを看てやってくれ!」

「え、えぇ!?」

ヘイゼルに呼ばれ、駆けつけたアリアだったが戸惑っている。

「良いけど……レスタとかレジェネで何とかなるの? リアクターの故障なんて専門外よ……!?」

「ビリー、俺達はスヴァルタスを仕留めるぞ!」

「了解なんだぜ!」

ヘイゼルとビリーは二人でスヴァルタスに挑みかかった。

稼動したスヴァルタスだったが、その左腕は根本から欠落し、身体を走るフォトンの流れも安定していない、正常ではなさそうだ。動きも心なしか鈍い。

「所詮はガラクタか……そのまま、寝とけよっ!」

ヘイゼルが擦れ違い様にデスダンサーで斬りつけると、脆くなっていたスヴァルタスの外装が剥げる。

(脆いな、これなら……!)

攻撃に移ったスヴァルタスが、ヘイゼルに向けて大剣を振り下ろす。圧倒的なパワーの打ち下ろしに、衝撃波すら発生するが、ヘイゼルは余裕で間合いから逃れている。鈍重な動きは避けやすい。

「デカイしな、良い的だ。寝てても当てれるぜ!」

スヴァルタスの巨大な図体は、ビリーにとって格好の的でしかない。

「二人でも何とかなりそうね……」

とりあえずユエルの傍らに就いているアリアが、二人の戦い振りに安心したように胸を撫で下ろしていた。

「あ……アリアさん、アレは……」

ユエルが突然指差した方向に目を向ける。どこに潜んでいたのか、三体のゴルモロが姿を現していた。

「スヴァルタスと一緒なら襲撃し易いと考えたか? 下等な原生生物風情が……姑息なっ!」

ヘイゼルが苦い顔をする。スヴァルタスとゴルモロが連携する事は無いだろうが、同時に相手にするのは厄介だ。

「ば、馬鹿! ヘイゼル!」

ビリーの焦りの声にヘイゼルが我に返った。スヴァルタスが大剣を水平に構えている。

しまった! これは横凪の体勢だ。回避は……間に合わない! ヘイゼルはデスダンサーのフォトンエッジで、スヴァルタスの巨大な剣を受け止めた。

「くっ!」

凄まじい衝撃がヘイゼルに襲い掛かる。交差した剣で防御はしたが、衝撃エネルギーを相殺しきれず、デスダンサーの刃を構成していたフォトン粒子が一瞬消失した。

「ぐあっ!?」

相殺できなかった一撃がヘイゼルを襲う。圧倒的な質量にヘイゼルが中を舞い、部屋の壁際まで吹き飛ばされる。全身がバラバラにされたような衝撃。シールドラインの反発力がなければ全身が砕けていただろう。あまりの衝撃に束の間、身体が動かなくなる。

「がっ!……おぉぉ……ごふっ!」

内臓も傷ついたのか、ヘイゼルは血反吐を吐いた。

「ヘイゼルッ!」

アリアが慌ててヘイゼルに駆け寄り、長杖を振り上げ、回復テクニック『レスタ』を発動しようとする。しかし、彼女がレスタを発動する前に、ヘイゼルの身体をレスタの効果がもたらすフォトン粒子反応が包んだ。ヘイゼルの身体から痛みが消えていく。

(え? 私はまだ……!?)

「大丈夫ッスか、ヘイゼルさん?」

アリアの僅かに後方で、ユエルが片手杖を振るっていた。ヘイゼルを癒したレスタを発動したのは、ユエルだったのだ。

(私より早い!?)

アリアが驚きに目を見開く。

テクニック発動用の片手持ちデバイス(ウォンド)は、法撃出力こそ両手持ちデバイス(ロッド)に劣るが、取り回しは優れている。

効果の範囲がアリアより広かったのも、先に発動できた要因だろう。

レスタの熟練度はユエルの方が上だったのだ。

熟練度の差があればこそ、精神力が低いユエルでも、精神力が高いアリアのアドバンテージに劣らない、レスタ効果が発揮できたのだ。

「ユエルちゃん、身体は大丈夫なんだぜ!?」

「もう治ったみたいッスよ!」

ゴルモロを迎え撃ちながら、ユエルの身を案じるビリーにケロッと答え、彼女はスヴァルタスに近づいて行く。

「おい……何をする気だ!?」

ふらつきながら立ち上がったヘイゼルが、無謀な行動を取るユエルに慌てて声を掛けた。

「手強い敵なら足を止めるッスよ!」

ユエルはウォンドを振り上げ、その先端をスヴァルタスに向けた。ユエルの周囲に一瞬、青白いフォトン粒子が輝くと、ウォンド先端から凄まじい凍気が発生し、周囲を凍りつかせた。

氷系法撃術の一つ『ダム・バータ』である。

スヴァルタスの足元が凍気により凍り付く。その余波を受け、ユエルに飛び掛かろうとしていたゴルモロが一緒に巻き込まれ凍り付いた。ユエルは至近からのダム・バータで、スタティリアの動きを封じたのだ。

先程の戦闘で、腰が引けていたとは思えない胆力である。

危機的な状況で、吹っ切れたような行動が取れるとは、肝が座っていると言うか何というか……。

ヘイゼルは呆れていた。

しかし、スヴァルタスの脚力は強く、動きを止める凍結効果もすぐ破壊され、ゆっくりとではあるが動いている。

「ダメッスか!? でも……っ!」

ユエルは諦めずに、意地でもダム・バータを使い続ける気だ。

「だったら、止め続けてやればいいんだぜ!」

凍結の散弾がスヴァルタスに炸裂する。

ビリーがテノラ製のショットガン『シッガ・ビネス』で凍結属性の散弾を撃ちまくっている。彼が撃ち出す光弾にも、対象を凍結させる効果があるのだ。

「私も居るわよ!」

負けじとアリアもバータを発動させ、スヴァルタスに放っていた。

三人の凍結攻撃により、スヴァルタスの動きは封じられた!

「ヘイゼル!」

ビリーが叫ぶ。

「解ってる!」

ヘイゼルは巨大な戦斧を手に構えていた。

テノラ製の戦斧『アンク・ピコラ』

重量の分、取り回しは悪く、扱いは難しいが、一撃の攻撃力は大きい武器である。

狙っているのは、一撃必殺のフォトンアーツ、『アンガ・ジャブロッガ』!

「一撃で仕留める!」

アンク・ピコラのフォトンリアクターがフルドライブし、フォトン粒子を生み出す。フォトンエネルギーが、アンク・ピコラのフォトン・エッジに集束されていくが、スヴァルタスの封殺もそろそろ限界だ。

「まだか、ヘイゼル!?」

シッガ・ビネスの残PP量も後、僅かしかない。焦れたビリーが叫んだ。

『FULL CHRAGE』

合成音声がフォトンエネルギーのチャージ終了を告げる。

「待たせたな……」

小さく告げると、ヘイゼルは戦斧を振り上げ地面を蹴った。溜め込んでいたフォトンエネルギーの爆発的な力で大きく跳躍し、スヴァルタスの頭上を取る。

「終わりにしようぜ、"唯一の番人"!」

ヘイゼルは振り下ろした渾身の一撃をスヴァルタスの脳天に叩き込む。溜め込んだフォトンエネルギーが衝撃となり、スヴァルタスの身体を頭頂から打ち砕く。

音を立てて崩壊していくスヴァルタスの身体が崩れるように床に倒れ、全身を走るフォトンラインからフォトンの輝きが消えていく。

胸の中で一際輝いていたAFリアクターからも灯が失せ、スヴァルタスは遂に完全に活動を停止した。

舞い上がる埃の中から、ヘイゼルが姿を現す。

ヘイゼルは持っていた戦斧を一振りすると武器を収めた。戦斧が、フォトンの粒子に変わり、ナノトランサーに変換され収納される。

「よっしゃぁぁぁぁぁぁっ! 勝ったぜぇ!」

ビリーも銃を収めガッツポーズをとった。アリアもヘイゼルの無事に安堵の息をつく。

「ヘイゼルさ~ん!」

戦闘を終えたヘイゼルにユエルは駆け寄って行く。

「お疲れ様でしたッスよ! 身体はもう痛くないッスか?」

ユエルはヘイゼルに労いの言葉を掛けると、怪我の具合を心配し尋ねた。

「ああ、俺は大丈夫だ……お前の方こそ、身体は大丈夫か?」

「私も平気ッスよ!」

ユエルは先ほどの苦しみ様が、冗談と思えるほどの元気に満ちている。

「そうか……お前も良く頑張ったよ……有り難う……」

礼の言葉と共に、ヘイゼルの右手が優しくユエルの頭に置かれる。

「ヘイゼル……さん?」

ヘイゼルの意外な言葉と態度に、ユエルは不思議そうにヘイゼルを見上げた。掌で隠された視界、その隙間から僅かに覗くヘイゼルの口元は微笑んでいる?

「ヘイゼ……ル……?」

ヘイゼルの元に駆け寄って来ていたアリアの足が不意に止まる。

ユエルは今度はアリアに目を向けた。やはり彼女の顔の上半分は見えない。だが、アリアの口元が悔しげに引き結ばれるのが見えた。

何故? その表情の機微が持つ意味は、ユエルには解らなかった。

「見放され、放置され、それでも与えられた目的の為に動き出す……か。忠節と言えば聞こえは良いが……哀れと言えば、哀れな物なんだぜ……」

感慨深げに独り語ち、ビリーは戦いの終わった戦場を見渡していた。

半壊したスヴァルタスと、彼が仕留めたゴルモロの死体が二体……。

ビリーが違和感に眉根を寄せる。戦闘の中、出現したゴルモロの数は確か……三体だった筈だ!?

「Shit! ヘイゼ―――ル! まだ終わってないぜぇぇぇぇぇぇっ!」

切羽詰ったビリーの叫び声が上がる。

それからの出来事を、ヘイゼルが後から思い返してみると、まるで変性意識状態であったかのように、起こった全ての事象をスローモーションで理解していたように思う。

破壊した筈のスヴァルタスが一瞬動いた。

いや、違う! スヴァルタス自身が動いているのではない。

破損したスヴァルタスの瓦礫の中から、何かが勢い良く飛び出した。

これは……ゴルモロ!?

そうか、ユエルがダム・バータでスヴァルタスの動きを封じていた時に、捲き込まれて凍結していた奴だ! 死んではいなかったのか!

瓦礫を押し分けて飛び出したゴルモロは、ヘイゼル達の数メートル手前に着地した。

まずい……この距離、奴等にとっては攻撃の範囲内だ!

ナノトランサーから武器を転送し迎え撃つか? いやダメだ、転送のタイムラグがある、間に合わない!

一瞬早く事態に気付き、反応したビリーの両手にフォトン粒子の輝きが見える。銃を転送させているようだが、奴でも間に合わないだろう。

今、武器らしい物を持っているのはユエルだけだが、彼女が手にしているのは片手杖である。どうにか出来るとは思えない。

獲物に飛び掛かる直前の肉食動物のように、ゴルモロが僅かに腰を落とし力を溜める。

この位置取り、狙われているのは……ユエルか!

だが、彼女は咄嗟の出来事に反応しきれていない。……と言うか、呆けた表情をしている。

気を抜きすぎだ! お前はアタッカーだろう!?

ゴルモロが床を蹴って飛び掛る。

くそっ! 迎撃は不可能だ!

思ったヘイゼルは肉感の無い、ユエルの胸を突き飛ばしていた。

ユエルがバランスを崩し後方によろける。しかし、今度は勢い余ったヘイゼルが、ゴルモロに無防備な背中を晒してしまっていた。

直撃進路!? この体勢では防御も出来ない!

シールドラインの防御力に賭けるしかないが、どこまで耐えられるかは解らない。

(祈るか、信じてもいない星霊とやらに?)

「ヘイゼルさんっ!?」

ようやく事態を理解したのか、ユエルが悲鳴に近い調子でヘイゼルの名前を呼ぶ。

全ては手遅れだ。

ヘイゼルが覚悟を決めた次の瞬間、目も眩む白い閃光が彼の視界を焼き尽くした。


 
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