雪蓮は軍議を開いたがそこにはレイと思春の姿はなかった。
「策殿…まだそろってない者がいるのじゃが」
その言葉に雪蓮,蓮華はうつむいた。
「そうだぞ…思春は分かるがレイはどうした…誰か」
「いいの…今から始めましょう」
雪蓮は軍議の開始を急かした。
「……わかった…今曹操軍は」
冥琳たち事情の知らない者は不審に思いながら軍議を開始した。
軍議も終盤になった所でおもむろに雪蓮の口が開いた。
「みんな…今回の戦いレイを外すわ」
この発言に冥琳たちは異議を唱えた。
「いきなり何血迷った事を言っている雪蓮!」
「そうですよ~ただでさえ思春ちゃんが出れないのに~」
「そうじゃ策殿!それじゃあ曹操軍に勝てませぬぞ!」
みんなの言っている事は理解できる…そして本来ならそうすべきだという事も雪蓮にはわかっていた…
でもあの光景を見ていたせいでどうしてもそっとしておきたいと思った。
「…………泣いてたから…」
「は…?ハッキリ言え雪蓮!」
「レイが泣いていたから…そっとしておきたいの」
みんなは訳がわからなかった。
「雪蓮それはどういう事なの?」
「私をかばったのよ……暗殺者の毒矢から守るために」
「「「「!!」」」」
事情を聴いていた蓮華以外は絶句した。
冥琳はすぐ正気に戻した。
「!!…それで暗殺者は…」
「ちゃんとしとめたわ…曹操軍の兵だったわ。それに毒矢もあったしね……」
「そうか…レイは毒矢の苦痛で泣いているのか…」
「違うわ…刺さらなかったのよレイには………」
「なにをいっとるんじゃ?意味がわからんぞ!」
「レイも守られたのよ……………思春がかばってね……」
「「「!!」」」
「私がしとめて戻った時…思春を抱きしめながら泣いてたのよ……だから…御願い………」
事の次第を言い終わると雪蓮は頭を下げた。
内容を聞いた冥琳たちも納得せざるおえなかった
「……そう事なら………しかたかない…のう」
「……そう……だな…」
「思春ちゃん…ところでレイさんは…」
「とりあえず思春を医者に見せたかったから自室にいるわ」
「そうか………でもどうやって曹操軍と戦う…レイの部隊が使えないのはかなり痛いぞ」
「蜀に頼みましょう…将さえいれば兵は問題ないから」
「確かにそうだな…すぐ蜀に依頼しよう…誰かある!」
冥琳はすぐ蜀に援軍の依頼する為に使者を出した。
そし雪蓮はすぐに軍を出せるよう指示を出した。
しかしこの話をレイが聞いていたとは誰も知らなかった…。
レイside
俺は部屋にいた
雪蓮が部屋に押し込んだから…
でもそのおかげで少し落ち着き冷静になった
あらためて思い知らされた
俺がやってきた行為がどれだけ愚かな事かに
もし思春が死んでしまったら…
俺はどうすればいい……
………わからない
どうやって謝ればいい…
どうやって償えばいい…
………わからない
だけど……
このまま何もできないで別れるのだけはいやだ
今は思春の傍にいたい
思春にどう思われても…
ソールイーターを使った時からきっと…
でも俺の中にはカスミがいた…
いつの間にか同じぐらい思春が心の中にいた…
だから逃げた…
その結果が今の状況…
思春を追い込んだ…
そして傷つけた…
気がつくと思春の部屋に向かってた
傍にいたいから…
途中誰かの声が聞こえた…
「私をかばったのよ……暗殺者の毒矢から守るために」
雪蓮の声だ…
きっとあの時の話か…
「!!…それで暗殺者は…」
「ちゃんとしとめたわ…曹操軍の兵だったわ。それに毒矢もあったしね……」
曹操…
確か雪蓮が今回の戦いは俺を外すと部屋に押し込んだ時言っていた…
曹操軍が呉に攻めていると蓮華が言っていた…
「曹操…」
思春ごめん…
ちょっとやる事が出来た…
もし死んでしまったらすぐ後を追うから
だからちょっと待ってて…
俺は自室に戻った
数日後曹操軍が雪蓮たちのいる城まで攻めてきた。
雪蓮たちは城門前に軍を展開した。
そして雪蓮は舌戦をする為両軍の中央に行った。
その時雪蓮はある物が入った袋を持っていった。
曹操はすでにいた。
「久しぶりね…孫策。英雄同士の戦い楽しみにしているわ」
「曹操…お前が英雄を名乗るとは…愚かな」
「何を言ってるの」
「これを見なさい」
雪蓮は持ってきた袋を曹操に見せた。
曹操は袋の中を見て唖然とした。
「!!…これは」
袋の中には兵士が使った鎧と弓矢が入っていた。
「この意味わかるわよね…曹孟徳!」
「暗殺……!!!申し訳ない!今すぐ軍を引く!そして弔問の使者を送「そんな物不要だ!」」
暗殺で曹操は思い出した。
夏候惇たちですら言う事の聞かない一団がいた事を…。
曹操はその一団に監視をつけたがそれより先に行動していたのだった。
すぐ軍を引こうとしたが雪蓮はそれを許さなかった。
「確かに私は無事だった…しかし我が家臣が犠牲になったのは事実………その罪、命と引き換えに償うがよい!」
そう言うと雪蓮は軍に戻り突撃の指示を出した。
カスミside
私は走っていた。
数日前に呉の使者が来たからだ
内容は武官を一人貸して欲しいというもの
それを聞いて私が行くといった
みんなは反対したけどその反対を押し切った
レイさんと一緒にいたかったというのもある
けどそれ以上に呉には恩があったから
それを返したいと思った
だから反対を押し切って呉に向かった
一分でも早く行く為走っていた
戦場に近づくに連れ違和感を感じる
鉄どうしのぶつかる音が聞こえない
人の声が聞こえる
悲鳴に近い声が聞こえる
嫌な予感がする
でもそれはない
レイさんはこの世界ではソールイーターを使ってないから
レイさん自身も言っていた
戦争ではこれは使いたくないと…
無作為に人を殺したくないと…
戦場に着いた時見てはいけない物を見てしまった。
「嘘…………」
その瞬間何かが壊れた
そしてすぐ蜀に帰った
思春side
「ここは……」
私は森にいたはず
レイを守ったはず
だけどここは…
見慣れた天井…
なぜ…なぜ部屋にいる
矢で負った傷も無い…
夢だったのか?
又あのレイに会わなくてはいけないのか…
……わからない
とりあえず部屋を出た
外にいた女官がびっくりしてた
「甘寧様…もう大丈夫なのですか?」
「……………どういうことだ」
どうやら数日寝ていたらしい…
それにしても静かだ…
みんなどうしたんだ…
いつの間にかレイの部屋の前まで来ていた
…懐かしい
前は一緒に寝てた
前は一緒に食事をしてた
前は………
「甘寧様!ご無事でしたか!」
甘寧隊の兵に声をかけられた
兵と話すのも久々だな
「ああ…」
「レイ様見ませんでしたか?」
レイ…
会いたい…
この部屋に入れ……
?なにかおかしい
「なに?」
「あの…レイ様見ませんでしたか?」
見ませんでしたか…と言っている
見ているわけがない
それにこの部屋にはいないという事か…
どこかに行ったのか…
「見てないぞ…それがどうした」
「そうですか………部屋にいるようにって孫策様に言われてたはずなんです」
どういう事…
「ただでさえ今曹操軍が攻めて来てるのに…スイマセン甘寧様」
嫌な予感がする
レイ…
部屋に戻り鈴音を手にした
急いで外に出た…
戦っている
でもおかしい
なにもしてないのに人が倒れていく
普通あり得ない…
でも私は知っている
一度だけ見た事がある
レイはこの中にいる…
私は走った
途中蓮華様や祭殿などに見つかり止められた
でもそれを振り切って私は走った
愛しい背中が見えた…
「好きになった人を……思春を殺した罪…その命で償え!ソールイーターよ!主より命じ!!!」
嬉しかった…
好きと言ってくれて
でもこれ以上人を殺して欲しくない
そう思った私はある行動に出た
雪蓮の部隊に一人だけフードをかぶった兵士がいた。
「やっと動ける…………思春…すぐ終わらせるからちょっと待っててね…」
そう呟くとその兵は一人敵軍に突撃した。
「ちょっと何やってるの!すぐ戻りなさい!」
それに気付いた雪蓮がその兵に注意をしたが全く聞かなかった。
「……うるさい!」
兵はフードを脱ぎ捨てた。
「「「「「レイ!!」」」」」
雪蓮たちはレイの姿を見て驚いた。
「レイ!戻りなさい!動けるならすぐ部隊を率いなさい!」
「邪魔だ!これは俺一人でけりをつける!手出しするな!」
雪蓮はレイの言葉に何も言い返せなかった。
そして動く事も出来なかった。
レイはどんな時でも優しい感じがあったのに今はそんな物がまったく感じられなかった。
逆に恐怖を与えるくらい恐ろしい雰囲気を出していた。
レイは敵軍に近づくと右手をかかげた。
「ソールイーターよ主より命じる!冥府!」
レイが唱え終わると曹操軍の約三割の兵が意味もなく倒れ込んだ。
曹操軍は突然の事に戸惑った。
曹操は開戦後すぐ撤退命令を出していた。
曹操軍は混乱しながらも着実に撤退していた。
しかしレイの攻撃により曹操軍は大混乱に陥り動けなくなってしまった。
「何なんだ」「殺される…」「助けて~」
許しをこう曹操軍の前にレイは続けざまに紋章を発動させた。
「非道な行いをした罪…その命で償え!ソールイーターよ主より命じる!冥府!」
紋章の発動により曹操軍の兵が倒れ込んだ。
しかしここまでしてもまだレイは紋章を発動させようとした。
「好きになった人を……思春を殺した罪…その命で償え!ソールイーターよ!主より命じ!!!」
レイの口はなにか柔らかいもので塞がれてしまった。
「レイ…」
「!!……思春!」
塞いでいたのは思春の唇だった。
唇を放した思春はレイを抱きしめた。
「私はもう大丈夫……だからもうやめろ」
「思春……ごめん…」
レイは思春を見て泣いてしまった。
「泣くな…レイ……」
「ごめん…ごめん………」
「レイ……いいよ…もう謝らなくて」
「うん……」
「もう溜めこむな…レイ」
「うん……」
「もしカスミの事が好きならそれでもいい…」
「……」
「それでも…私は……レイの事が………好きだ」
「思春…」
「レイ…」
二人の唇が重なりあった。
そして二人は手を繋ぎながら雪蓮たちのもとに戻って行った。
曹操軍は今が好機と思い生存兵を引き連れ撤退して行った。
雪蓮のもとに帰った二人は雪蓮と冥琳にこっぴどく叱られた。
「レイ!どうして私の言う事を聞かなかったの!」
「ごめんなさい…」
「そうだぞレイ!今回は訳のわからない事が起こったからよかったものの…レイ、もしおまえがやったとしたら今後それは使用禁止だ!」
「はい…」
「それと思春!貴女も起きてすぐ戦場に来るなんて!」
「……はい」
「蓮華様たちに聞いたら静止を振り切ってきたらしいな!」
「……はい」
「全く二人とも………そっか冥琳」
「ふっ…そうだな」
雪蓮と冥琳はあろことに気付いた。
「……罰として二人は一か月仕事を取り上げるわ」
「それとだ…あとレイの護衛だが思春にやらせる!レイ…嫌だと言っても聞いてやらんぞ」
「「……はい」」
二人は怒られている間もずっと手を繋いでいた。
「さてと…説教も飽きちゃったし、曹操も逃げちゃったし……祝勝会ね」
「全く…そうだな」
そう言うと雪蓮たちは城に戻って行った。
「だって…思春」
「そうだな……戻るぞレイ」
レイと思春も雪蓮たちの後を追って城に戻って行った。
つづく
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6章後編です。
やっと終わったかな。
あらすじはレイが暴走します。
後は明るい話になるかな?