No.169654

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 拠点・袁術、政務に励むのこと

狭乃 狼さん

荊州編拠点、その弐ー。

アンケートのご協力ありがとうございました。

一番多かった、美羽・七乃編をお送りします。

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2010-09-01 10:36:59 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:13359   閲覧ユーザー数:11339

 「七乃~。こっちの書類は終わったのじゃ~。後は耕作地のやつをこっちに回してほしいのじゃ~」

 

 長沙城の袁術の執務室。竹簡の山に囲まれ、必死に政務をこなす袁術の姿がそこにあった。

 

 「はいは~い。それとお嬢さま~?ついでにこっちのもお願いしますね~」

 

 どさっ、と。

 

 袁術の前にさらに大量の竹簡を積む張勲。

 

 「あぅ」

 

 ひくっ、と。口元が引きつる袁術。

 

 「……え~い!こうなったらどんどん持ってくるのじゃ!これ位でへこたれてたまるかなのじゃ!」

 

 「よっ!かっこいいぞお嬢さま!どっかの自称名門とは大違い!にくいね、このこのっ!」

 

 「ぬははははは!もっともっと褒め称えるのじゃ~!」

 

 上機嫌で、次々と書類を片付けていく袁術であった。

 

 ところがある日、

 

 

 

 「で、頑張りすぎてこうなった、と」

 

 「はぅ~」

 

 過度の激務がたたったのか、政務中にばったりとぶっ倒れた袁術。すぐに医者に見せたところ、軽い熱中症とのことだった。

 

 「ここ最近暑かったですしね~」

 

 「そうね。うちのところでも、暑さにやられて倒れるものが続出してるし」

 

 張勲の言葉に同調する、孫策。

 

 長沙との貿易に関わることを、袁術と話し合いうために三日ほど前から、この地を訪れていた。

 

 「なにかしら対策を講じませんとね~。今後もまた倒れかねませんから~」

 

 袁術の額の手ぬぐいを取り替えつつ、孫策にそう話す張勲。

 

 「な、七乃~。しょ、書類を~」

 

 「美羽さま……。夢の中でまでお仕事をなさるなんて、……なんていじらしいんでしょう」

 

 袁術のうわごとに感心し、悦に浸る張勲。が、

 

 「しょ、書類を~、はちみつで~、いっぱいにして~、凍らせて食うのじゃ~」

 

 『……』

 

 うわごとの続きを聞いて、あきれる張勲と孫策。

 

 「……ま~。お嬢さまらしい夢ですね~」

 

 「……けど、蜂蜜で凍らせる、か。あは、それいいかも」

 

 「え?」

 

 袁術のうわごとで、何事かを思いついた孫策。

 

 「あの、孫策さん?今の時期じゃ氷なんて手に入りませんよ?ましてや凍らせるなんてこと」

 

 「それが手に入っちゃうのよね~」

 

 「ほんとですか?!」

 

 孫策の言葉に驚く張勲。

 

 「幽州から来る商人たちの中にね、時々小さい氷を持ってる人たちがいるのよ。なんでも、氷ってのは雪でくるんだ後、わらか何かで保護してやると、結構長持ちするんですって。ただ……」

 

 「ただ?」

 

 「そんなに大量には運んだことは無いそうなのよ。だから、どれくらいの手間がかかるか、わからないと思うわ」

 

 はるばる幽州から、大量に氷を運ばせるとなると、相当な手間賃がかかるであろうことは、想像に難くなかった。

 

 

 

 「か、かまわんのじゃ」

 

 「おじょうさま?!大丈夫なんですか?」

 

 いつの間にか目を覚ましていた袁術が、手ぬぐいを押さえながら上体を起こし、孫策に声をかける。

 

 「妾はともかく、民たちもこの暑さで相当まいっておるそうじゃ。民のためになるのであれば、多少の出費は仕方ないのじゃ。何なら妾の小遣いもすべてつぎ込んでもよい。孫策よ、頼まれてくれるかや?」

 

 真剣な表情で孫策を見据える、袁術。

 

 「……わかったわ。一月、いえ、半月で運ばせるから、任せておいて」

 

 「頼むのじゃ。……ふにゃ~」

 

 再び横になる袁術。

 

 (……人間、変われば変わるものね)

 

 あのわがまま放題だった袁術が、自身より民のことを優先して考えている。そのことに改めて感心する孫策であった。

 

 

 それから半月後。

 

 孫策の言葉どおり、大量の氷を積んだ船が、長沙の港に到着した。

 

 その氷を、袁術は無償で民に振舞った。

 

 「氷を買った金は、もともと民の金じゃ。なのにまた金を取るのも、おかしな話であろ?」

 

 それが袁術の言葉であった。

 

 そして、

 

 

 

 「来たのじゃー!きーん、と来たのじゃー!」

 

 こめかみを押さえて悶絶する袁術。

 

 「一気にかき込むからですよ~。はい、ちょっとぬるめのお茶ですよ~」

 

 「んぐ、んぐ、んぐ。ぷは~。……おお、一瞬で痛みが引いたのじゃ!どれ、もう一口」

 

 袁術が食べているもの。それは氷を砕いて細かくしたものを、さらに包丁などでさらさらになるまで削ったものに、蜂蜜をかけたもの。

 

 つまり、”カキ氷”である。

 

 「よ~し、元気が出たのじゃ!七乃!どんどん書類を持ってくるのじゃ!」

 

 「ああん、もう。お嬢さまってば現金なんですから!じゃ、頑張ってくださいね!」

 

 どかどかっ!

 

 「ぬおっ!な、なんでこんなにあるのじゃ!?」

 

 自身の前に、子供の背丈ほどはあるかという竹簡の山を積まれ、驚く袁術。

 

 「そりゃ~、お嬢さまが休んでおられた間にたまった分ですよ~。さ、張り切っていきましょう!」

 

 ニコニコと笑顔の張勲。

 

 「……うう~。七乃が鬼に見えるのじゃ」

 

 「何か言いまして?お嬢さま?」

 

 にっこり。

 

 「な!なんでもないのじゃ!」

 

 半分泣き顔で、竹簡の山に立ち向かう袁術。

 

 そんな袁術を見て、

 

 (ああん、もう!必死になってお仕事する美羽さまは、なんて愛らしいんでしょう!このために、わざとお仕事ためた甲斐があったというものですね~)

 

 悦に浸ってどっか逝ってしまっている張勲であった。

 

 「七乃~!見てないでそなたも手伝うのじゃ~!」

 

 「はいは~い!」

 

 

 長沙もまた、平和なのでありました(マル)。

 

 

 

 

 「てなわけで、荊州拠点、長沙編でした」

 

 「あとがきコーナーでございます。進行は私、輝里と」

 

 「由でございます」

 

 作者です。まずは皆様、アンケへのご協力、ありがとうございました。

 

 「やっぱり美羽ちゃんをご希望が多かったですね。後は雛里たちが次点」

 

 「ハム姉妹は二票ぐらいは入ってましたっけ?」

 

 

 さて、今回の拠点。美羽と七乃の掛け合いだったんですが、

 

 うまく表現できてましたでしょうかね?

 

 「性格の根っこは変わってないけど、まじめになった美羽ちゃん。

 

  やっぱりむずかしい?」

 

 というより、七乃さんのほうが難しかった。

 

 「あの人天然の悪魔だもんね~。しかも自覚なし」

 

 

 さて、次は次点だった、命と雛里のお話の予定です。

 

 アップ自体は、早ければあさって、三日の今頃かと。

 

 「私たちの出番は?」

 

 拠点終了まで無し。

 

 「ほう」

 

 「いい度胸ね、作者」

 

 輝里は入蜀に付き合うことになるし、蜀では由に活躍してもらう予定なんで、

 

 今のうちにゆっくり休んどいてね。

 

 「……まあ、そういうことなら」

 

 「大目に見ましょっか」

 

 

 ではまた次回。

 

 「コメント等、お待ちしてますね~」

 

 「支援もひとつよろしく~」

 

 『再見~!』

 

 


 
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