第二十章「罪と罰」
反董卓軍も解散し陳留に帰ってきた華琳達は、さすがに疲れたのか全員そのまま自分達の部屋に向い静かに眠った。
次の日
「霞と恋には騎馬隊を率いてもらうわ。いいわね」
「いいんか、ウチらは投降兵やでいきなり隊なんて率いて」
「構わないわ。折角騎馬隊を扱える将がいるのに使わないのは私の本意に反するもの」
「なら、やらせていただきますよ。華琳」
「(コクリ)・・・わかった」
「以上よ。あと一刀と秋蘭は残っていなさい」
「解散」
一刀と秋蘭だけを残して、各将はそれぞれの持ち場に向かった。
「俺は何で残されたんだ。華琳」
「一刀。あなた前に秋蘭を泣かした事を覚えているでしょう」
「あぁ、働きすぎと怒られた時のだろう」
「一刀。あなたには今日だけ、秋蘭の部下になりなさい」
「えっ?」
「秋蘭には絶対服従よ。わかった」
「いや、だから・・・」
「わかった」
「・・・はい」
「なら、あとは秋蘭に任せるは」
「はっ」
「行きなさい」
「行くぞ。一刀」
「あぁ・・・」
秋蘭と一刀は玉座を出た。
「桂花」
「ここにいます。華琳様」
「今日の閨はあなたが来なさい」
「はい」
「・・・」
「・・・」
「あの~~、秋蘭」
「なんだ、一刀」
「その~~。俺にも仕事がありまして」
「今は私の部下だろう。私の言う事を聞いとけばいい」
「・・・はい」
「まずは、政務からだ」
「了解」
秋蘭の執務室に行き、机の上に置かれている竹間に二人は手をつけた。
「一刀様」
「お兄さん。どこですか?」
「一刀様~~」
「皆さん。どうしたのですか?」
「あっ、流琉。一刀様見ませんでしたか?」
「兄様ですか。確か朝議のあと、秋蘭様と一緒に残されていましたが」
「そうですか。風、万里行きますよ」
「秋蘭ちゃんの所ですね」
「えぇ。多分そこに一刀様がいらっしゃる」
稟、風、万里はいそいで秋蘭の執務室に向かった。
「秋蘭。元董卓軍の振り分けはこれでいいかな」
「ふむ。霞と恋の部隊はそのままで、華雄の隊は三つに分けるのか」
「そうした方がいいと思って、あと秋蘭に回す人達は出来るだけ弓の扱いに長けている人にするよ」
「すまないな、一刀」
「いいよ、別に。俺は秋蘭の部下なんだから」
「そうだな」
「さて、一段落付いた事だし。椿」
「はっ」
一刀に呼ばれて椿が一刀の前に現れた。
「稟、風、万里に見て欲しい竹間は昼までにここに持って来るように伝えといて」
「わかりました」
椿は一刀の伝言を、伝えに部屋を出た。
「いつからいたんだ?」
「朝議の時からずっとといたよ」
「そうか」
「(コンコン)・・主。風殿、稟殿、万里殿を連れてきました」
「早かったね」
椿に続いて稟、風、万里が執務室と入って来る。
「一刀様。どうして秋蘭の執務室で仕事をしているのですか。それと、さっきの伝言の意味も教えてください」
「えっと・・・その~~」
「おいおい。俺様に助け舟を出して欲しそうな目で見るなよ」
「宝慧。それは欲しそうなではなく。欲しいのですよ」
「わかっているなら、助けてくれよ。風!!」
「いや~~。風も稟ちゃんと同じ意見でして」
「どうして」
「おいおい。自分の部下に手を出しといて、飽きたからって戦友に手を出すつもりか」
「「一刀様!!」」
稟と万里の後ろから暗黒の炎が出てきた。
「ち、違う。今日は前に秋蘭を泣かした罰として、今日だけは秋蘭の部下になる様にて華琳に言われて」
一刀は一生懸命に稟、風、万里に説明した。
「・・・わかりました。今日見ていただく予定の竹間は全てこちらに運んでいただきます」
「そうしてくれ」
「あと、焔耶と涼風にも一刀様を探すのを手伝ってもらっていましたので、後ほど二人にも謝罪しておいてください」
「わかった。ごめんな、三人に迷惑掛けて。その埋め合わせは何でもするから」
「でしたら風は、お兄さんの手料理が食べたいのですよ」
「わかった。稟と万里は?」
「私も風さんと同じで・・・。できればご一緒にしたいです」
「私もそれでお願いします」
「了解。すごく美味しいのを作らせていただきます」
「そ、それでは、早速竹間を持ってきます」
稟、風、万里は竹間を取りに部屋を出た。
「一刀も大変だな」
「まぁ、心配してくれた事は本当だし。俺がもう少し早く伝えとけば良かっただけだよ」
「そうか」
「それより。早くこの竹間を終わらさないと、風の事だから大量に持ってくるだろうし」
「・・がんばれよ」
「はぁ~~~~」
一刀はすぐさま竹間に手をつけた。
「終わった~~~」
「ご苦労だな(コトン)・・」
「ありがとう、秋蘭。ズズズズ・・うまい」
一刀の予想通り。風はとんでもない量の竹間を焔耶と涼風に持たせてやって来た。
「椿」
「はっ」
「この竹間の山を焔耶と涼風に頼んで、風達の所に運でおいて」
「御意」
椿は一刀の命に従い焔耶と涼風を探しに行った。
「それじゃ、お昼に仕様か。秋蘭」
「そうだな」
一刀と秋蘭は部屋を出た。
「秋蘭、ここはどうかな。俺のオススメの店」
「なら、入ろうか」
「うん。・・・おっちゃん、席二人分空いてる?」
「おぉ、これは北郷様に夏候淵様。よく来てくれました。席は空いていますのでどうぞここに」
店主に案内されて一刀と秋蘭は席に着いた。
「北郷様はいつもので宜しいでしょうか?」
「あぁ。秋蘭はどうする?」
「私も一刀と同じものを頼む」
「わかりました。少々お待ちください」
店主はすぐさま厨房に向かった。
「そう言えば、一刀。この後なんだが」
「兵の調練」
「うむ。それで、一刀。お前、弓は使えるか?」
「昔、秋蘭に習っていた事忘れてる」
「そうだったな。けど、あれから大分時間が経っているぞ」
「大丈夫だよ。天に帰った後でも、弓の練習はちゃんとしていたから」
「なら、問題ないな。けど、天に帰った後でも鍛錬を続けてくれた事は嬉しいぞ」
「あたり前だ。秋蘭に教えてもらった事を忘れるわけ無いだろう」
「そ、そうか(ポッ)・・・」
「へい。おまち」
秋蘭から見たら、店主が丁度いい時に料理を持ってきてくれた。二人は一刀オススメの麻婆豆腐を食べ、訓練場に向かった。
「全員聞け。今日は一刀も我々の調練に参加する。仕合をする時は遠慮なく立ち向かえ。そして多くを学べ。わかったな」
「「「「御意」」」」
秋蘭の言葉に兵達は、一部は不安がりもう一部は嬉しがった。
「あのさ、秋蘭。いくらなんでも、これだけの人数は相手に出来ないぞ」
「わかっている。けど、十五人位してもらうぞ」
「了解」
「全員今すぐ訓練場を二十周。最後の者は十周追加だ。わかったな」
「「「「はっ」」」」
秋蘭の命令で兵達が走り出した。
「何しているんだ、一刀。一刀も走るんだ」
「えっ?」
「私の部下なら、走るのが当然じゃないのか」
「いや、しかし・・」
「一刀~~~」
秋蘭の手には餓狼爪が握られていた。
「・・・やらせていただきます」
「んら、早く行け」
「はっ」
一刀は急いで兵達の後を追った。
「また会いましたね」
「クッソ~~~」
秋蘭の命令で訓練場を二十周走る事になった一刀達御一行。しかし、一刀にとってはこの距離は屁でもなく、兵達をすでに五回も抜いている。
「北郷将軍・・・速いのですね」
「天にいた時にさんざん走ったからな。それじゃ御先に~~」
一刀はさらに速度を上げて、兵達を置いていった。
「「「「バケモノだ」」」」
「ハァ、ハァ、ハァ・・・夏候淵将軍。最下位の追加の分を走り終えました」
「よし、次は仕合をするぞ。誰か一刀としたい奴はいるか?」
「はい!!」
「うむ。一刀相手してやってくれ」
「了解」
「他の者も各自相手を決めて始めろ」
「「「「はっ」」」」
兵達も相手を決めて仕合を始めた。
「はぁぁぁぁぁぁ」
ガチン ガチン ガチン
「うん。なかなかの太刀筋。けど、まだまだ甘いぞ」
ガチン!!
「うわぁぁ(ドス)」
「力任せに振っても駄目だ。相手の動きを見ながら打ち込まないと」
「はい」
「椿」
「ここにいますぞ。主」
「何度も悪いんだけど、今度は雫を呼んで来てくれないか。多分今は、街で警邏をしているはずだから」
「わかりました」
椿は雫を呼びに街へ向かった。
「続きしようか」
「お願いします。はぁぁぁぁぁ」
ガチン
「そのころ雫は指名手配犯を追っていた。
「そこの人。待ちなさい!!」
「待てと言われて待つ奴がいるか」
「あ~~~むかつく。楽進隊の方はどうなっていますか」
「ただ今広場で喧嘩があったので、そちらを止めに行っています」
「こんな時に」
「お、いたいた。雫殿探しましたぞ」
「椿さん。どうしてここに?」
「雫殿を呼んでくるように、主に言われましてな。それで、どうしたのですか、そんなにあわてて」
「実は、指名手配犯に逃げられまして」
「なら、拙者も手伝いましょう」
「本当ですか!!」
「じゃないとお主が来てくれなさそうだからな」
「ありがとうございます。それでは、雫達はこのまま犯人を追うので、椿さんは先回りしてください」
「わかった」
雫と警備兵はそのまま犯人を追い、椿は屋根の上に行き先回りしに行った。
「今日はやけにしつこいな、あいつら」
「しつこいのはお主の方だと思うが」
「!?」
「おとなしく捕まっていただこう(ドス)」
「ギャッ!!(バタン)」
椿が犯人を縄で縛っている最中に、雫達がやって来た。
「椿さん。ありがとうございます」
「いえいえ。それより早く参りましょう。主がお待ちかねです」
「はい」
犯人を警備兵に任せて、椿と雫は急いで訓練場に向かった。
「はぁぁぁぁ」
ガチン!!
「うわぁ!(ドン)」
「まだやる?」
「もう・・・結構です」
結局一刀は全ての兵の相手をし、全員をボコボコにした。
「お兄ちゃん」
「雫。遅かったな」
「すみません。街の方ですこしごたごたがありまして」
「ならしかたがないよ。けど、どうしようか秋蘭?」
「そうだな。雫はいつも一刀と手合わせをしいるのだろう」
「はい。毎朝半刻ほど相手してもらっています」
「なら、今日は違う相手としてみないか。・・そこのお前」
「はっ!!」
「確か、一番最初に一刀にボコボコにされたな」
「はい」
「なら体力も回復しているだろう。相手してやれ」
「相手ですか・・・」
「大丈夫だ。彼女はお前なんかよりはるかに強いぞ」
「・・・わかりました」
「なら、両者構え」
雫と兵士が刃を潰した剣を構えた。
「始め!!」
「はぁぁぁぁぁ」
ガチン!
「!?」
合図と共に雫はすばやく兵に向けて一太刀を放った。
「速いな」
「そりゃ、毎日鍛えているんだ。あれくらいはやって貰わないと」
「そうか」
雫の仕合を三人は優しく見守った。
ガチン ガチン ガチン
・・・見える。お兄ちゃんに鍛えてもらっているから、相手の動きが遅く見える。これなら勝てる
「はぁぁぁぁぁぁ」
ガチン!!
「うわぁ(バタン)」
「雫の勝ちですね」
「「「「おぉぉぉぉぉ」」」」
雫は勝ち誇った顔で一刀に近寄った。
「お兄ちゃん。勝ちましたよ」
「うん。最後の一撃は良かったぞ」
「本当ですか!!」
「あぁ、本当だとも。なぁ、秋蘭」
「そうだな。あの一撃は良かった」
「ありがとうございます。秋蘭さん(ガシ)」
「ちょっ、よせ雫」
一刀と秋蘭に褒められた事がよほど嬉しいのか、雫はそのまま秋蘭に抱きついた。
「なぁ、秋蘭。今日の調練はここまでにして、四人で飯でも食いに行かないか」
「・・・そうだな。今日の調練はここまでにする。解散」
秋蘭の一言で調練は終了したが、兵達は一刀にボコボコにされて一歩も動けなかった。
「それで、何食べる?」
「そうだな・・・拉麵なんてどうだ」
「雫は賛成です」
「椿。この辺で美味しい拉麵屋知らないか?」
「この先を曲がった所に美味しい拉麵屋があると、季衣殿に聞いたことがありますぞ。主」
「季衣が言うから本当だろう。そこにしよう」
「そうだな」
四人は美味しい拉麵屋に向かった。
「いらっしゃい」
「四人だけど空いている?」
「なら、こちらの席へどうぞ」
店主に案内されて一刀達は四人席の所へ行った。
「注文が決まりしだい、お呼びくだせえ」
店主はそのまま厨房へ向かった。
「どうする?」
「私は拉麵だけでよいぞ」
「雫も」
「私も拉麵だけで」
「それじゃ、俺も・・・すみません」
「は~~い」
厨房から、さっきの店主ではなく、女の人が出てきた。
「なんでしょうか?」
「拉麵四つ。お願いします」
「わかりました。大将、拉麵四つ」
「あいよ」
「では、少々お待ちください」
女の人はまた厨房に戻った。
「前々から気になっていたんだが。椿はどうして一刀の前では私と呼んでいるのだ。」
「あ、それ、雫も気になっていました」
「そう言えばそうだね。どうして?」
「それは、私が自分の真名を預ける主に会ったら、拙者のことを私と呼ぶと心に誓って旅に出たからです」
「それだけですか?」
「それだけだが、何か不満か?」
「いえ。ただ、あまりパッとしない理由だと思いまして」
「お主だって、主の所へ来た理由は武術を習うためだろ。それと余り変わらん気がするが」
「そういえば、俺はまだ雫に刀を渡してなかったな」
「はい。まだ貰っていません」
「雫は確か、華琳様から褒美として剣を貰ったのではないのか?」
「はい、貰いました。けど、鍛錬の時に使っていた刀と違ってあの剣はちょっと・・・。ですからお兄ちゃんが雫を一人前に認めてくれたら、その時に雫に刀を渡してくれるって言ってくださったので」
「連合が終わった後渡すって言ってまだだったね。明日の朝練の時に渡してあげるよ」
「はい」
「よかったな、雫」
話が盛り上がってか所に拉麵が来たので、四人は騒ぎながら拉麵を食べた。
食後。一刀は椿に「もう部屋に戻っていいよ」と言い。雫と椿は部屋に戻った。
「それじゃ、俺「一刀!!」・・なに?」
「私の部屋でお茶でも飲まないか?」
「・・・いいよ」
秋蘭に引っ張られて、一刀は秋蘭の部屋に向かった。
「一刀」
「なに、しゅ・・ん・・」
部屋に入った瞬間。秋蘭が一刀の唇を奪った。
「ん・・・ちゅ・・」
「ん・・・」
「ん・・・。どうした。一刀」
「いや。秋蘭って、以外と積極的なんだ」
「私とて、姉者に負けたくない事があるのだぞ」
「そうなんだ」
「あぁ・・・。だから今日は・・ん・・」
「ちゅ・・。今日は秋蘭だけを愛すよ」
「ふふ・・。困ったやつだ。・・ん・・」
その日、一刀と秋蘭は夜が明けるまで愛し合った。
第二十章 完
「第二十章終了。皆さんお久しぶりです」
「本当だぜ。一体今まで何をしていやがったんだ」
「いや~~。たちの悪い夏風邪とお盆とクラブの試合が重なりまして」
「それはたいへんでしたね」
「それと、一刀いた世界。天の世界では猛暑日が続いて、なんと35度以上が14日間続くという大変な世界になりました」
「35度とはどれくらいですか?一刀様」
「だいたいお風呂の温度くらいかな」
「それは熱いですね」
「驚かないの?稟」
「いまさら驚いたってしかたがないでしょう」
「そうか~~。稟の驚く顔見たかったな~~」
「それはまた、閨の時に見せますよ」
「稟」
「一刀様」
「あぁ~~~。熱い、熱い。これじゃ、天の世界にいる方がまだましだ」
「それよりも、この小説に色々と意見を書いてもらったらしいな」
「そうなんだよ。今度は凪は恋のを書いて欲しいと意見が出ましたので、だいたい二十五章位に出そうかと」
「次じゃないのか?」
「次はもう政策が始まっているので。それでは皆さん。この辺で、BY]
「BY]
「バイ」
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反董卓連合も終わり陳留に帰って来た一刀達。しかし一刀は前に秋蘭を泣かせたことで、華琳から罰を受ける。はたしてその罰はいかなるものか