No.168641

真・恋姫呉√アナザー~戦場に響く二つの鈴の音~第十三話・前編

秋華さん

遅くなりましたが、まず前編公開となりました。
今回あとがきを書く余裕が無いため、後編までお待ちください。

今日の思春ちゃんを楽しみにしてくれている方々、しばらくお待ちくださいね。

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2010-08-28 04:05:40 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:9480   閲覧ユーザー数:7615

雪蓮たちがこちらに向かってきた黄巾党の本隊を撃退したことにより、雪蓮の名声は東方だけではなく大陸に広まることとなる。それと時期を同じくし…北方では曹操、劉備などが同じく黄巾党を討伐して周り名を挙げ、西方では董卓、馬一族が名を挙げた。これらの活躍により、大陸全土に広まっていた黄巾党の乱にも終りが見え始めてきた。

 

そんな情勢の中、黄巾党の棟梁である張角・張宝・張梁が一箇所に兵を集めていると言う情報が流れる。この情報に対し、朝廷はこの機を逃すまいと各地の有力諸侯に黄巾党を討伐せよとの勅命を下す。無論その勅命は袁術…雪蓮たちの所にも届いていた………

 

~袁術・居城~

 

雪蓮「……って勅命が私達にも来てるんだけど、どうするの?」

 

朝廷からの勅命を話し終えると、仮でも自分たちの主である袁術に答えを求める。

 

美羽「ふ~む…どうしたらいいかの七乃?」

 

七乃「そうですね~さすがに朝廷の命ならば討伐に出ないといけないと思いますよ~」

 

美羽「むむむ~でもわらわは怖いことしたくないのじゃ~」

 

七乃「なら張角さんがいる主力部隊じゃなく、私達は他のところで集まっている黄巾党たちを討伐しましょ。本隊のほうは最近”小覇王”とか巷で英雄視されて調子のっている孫策さんに行ってもらうってことで♪」

 

美羽「うむ♪それがいいのじゃ」

 

七乃「じゃそうしましょ♪…ということで孫策さんは本隊のほうに行ってくださいね~」

 

雪蓮「…無理よ」

 

袁術と張勲の発言に、思わずため息とめまいを感じながらも、けして表には出さないようにして淡々と冷静に考えているように見せながら答える。

 

七乃「あれ~おかしいですね。英雄である孫策さんなら簡単でしょ?」

 

雪蓮「あのね…いくら私でも出来ないことってあるのよ?…まぁ今各地に散らばっている旧臣たちを戻してもいいならできると思うけど?」

 

美羽「ふーむ…わかったのじゃ。集めてもよいのじゃ。」

 

雪蓮「…そ。なら集めさせてもらうわね。だけど、主力部隊と戦うってことはそれなりに準備しないといけないから、準備が出来次第出発ってことにするからね。」

 

美羽「わかったのじゃ、では頼むの。もう戻ってよいぞ?わらわはこれから蜂蜜水を飲むので忙しいのじゃ、孫策たちに後は任せるのじゃ!…七乃!蜂蜜水を用意してたも!」

 

七乃「はいは~い。ちょっと待っててくださいね~」

 

雪蓮(なんで私達はこんなやつらに遅れを取ったのかしら……謎よね~)

 

そう思いながら、袁術たちの城を後にする雪蓮。

本来なら、もっと考えたり条件をつけたりするのが普通なのだが彼女らにはそういったことは一切なく、なんと言うかその日その日で決めているような気がするのはたぶん気のせいではないだろう…

そんなことを思いながら冥琳たちの元へと戻るのであった。

~雪蓮居城・中庭~

 

冥琳たちの元へ帰った雪蓮は早速おもだった者たちを集め、袁術の所であったことをすべて喋る。最初、黄巾党の主力部隊を私達だけで叩くことに皆難色を示していたが、その後に旧臣を呼び戻して良いと言う話をしたとたん、皆驚くのだった。

 

雪蓮「………と言うわけなの。」

 

冥琳「……あいかわらずと言うか…あいた口が塞がらないとはこういうことを言うんだな。」

 

穏「まったくですね~子供でもこんなことは言わないのではないですか~?」

 

祭「じゃの。…まぁ袁術たちは子供よりも馬鹿だから仕方がないがの。」

 

一刀「なんていうか……もうどうしようもないね。」

 

晴歌「なんか頭痛くなってきたよ…」

 

絢音「でも、袁術の馬鹿さ加減のおかげでこうして私達の良いほうに向かっているのですから、その馬鹿たちに感謝をしなくてはいけませんね。」

 

雪蓮「……絢音も結構言うわね。…ま、事実だけどね。」

 

皆思い思いのことを言いながら笑いあう。笑いの対象になっているだけ、袁術の馬鹿も捨てたものじゃないと思いながらも、雪蓮と同じように”なんで私達はあんなやつに遅れを取ったのだろうか…”と思わず考えてしまうのだった。

 

冥琳「まぁ…袁術たちの馬鹿についてはひとまずおいとくとして…早速各地に散らばった旧臣たちに伝令を送ることにしよう」

 

穏「そうですね~蓮華さま、思春ちゃん、それと最近になって蓮華さまたちが推挙した周泰ちゃんでしたっけ?その子も呼びましょうか。…あとはシャオさまもですかね?」

 

一刀「ん?最後に言った子はだれだ?」

 

雪蓮「シャオ…孫尚香って言うんだけど、孫家の末の妹よ。そういえば一刀はまだ言ってなかったし、あったこともなかったのよね。まぁそのうち逢えると思うから、真名についてはそのときに直接あの子に聞いて頂戴。…それと穏、シャオに関してはまだだめよ。」

 

冥琳「…まぁそれが良いだろう。まだこの先はかなり危険が伴う。最悪シャオ様さえ生きていれば孫家は再興できるからな…」

 

雪蓮「そういうこと♪…もちろん私達も死ぬ気はまったくないけれど、もしものための準備はしておくべきでしょ?だからシャオはこちらに呼ばないでおいて。」

 

穏「わかりました~」

冥琳「それで雪蓮。出発はいつにするつもりだ?」

 

雪蓮「さっきも言ったと思うけど、袁術たちに準備が整ったらって言ってあるからしばらくは何も言ってこないと思うわ…でもあまり時間も掛けられないわ。」

 

祭「そうじゃの。勅命ということは、他の諸侯も討伐に出ているじゃろうから名声と風評を得る為には余り時間をかけたくない所じゃの。」

 

晴歌「そうなると…絢音私達はどうすればいいんだ?」

 

絢音「そうですね…遅くても十日が限界かもしれませんね。現在黄巾党が集まっているところは私達の場所からかなりの距離があります。それを考えるとそれぐらいが限界かと…」

 

冥琳「私も絢音の意見に賛成だ。ただそれだと蓮華様たちをこっちに呼び寄せるのでは時間が掛かりすぎてしまうため、途中で合流することにしよう。場所は私と穏と絢音で決めておく。」

 

祭「なら、わしはその間に少しでも兵の力を上げるために鍛錬でもすることにしよう。…晴歌・一刀お主たちも手伝え」

 

晴歌「いっちょやりますか。」

 

一刀「わかってるよ」

 

雪蓮「じゃ皆お願いね。…この機会ぜったいにものにするわよ!!」

 

『御意!!』

 

雪蓮の掛け声によって、各々なすべきことをするためにその場を後にする。

 

しかし、雪蓮はその場から動くことはせず、皆が居なくなった後、雪蓮は空を見上げある人を思い出していた…

それは幼き日より見続けていた母

 

早くになくなってしまった父親のかわりに女一つで育ててくれた”誇り高き虎”

 

雪蓮にとって母とは、憧れでもあり…もっとも尊敬するに値する人であり…そして…

 

超えなくてはいけない壁

 

彼女は民を愛し、家臣を愛し、死ぬその時までも愛した者達を守ろうとしていた。

 

そしてその意思は私に受け継がれている。

 

母が死ぬ間際、私に伝えた言葉がある。

 

 

 

『…雪蓮。私はもう永くは生きられないわ…そして私が死んだ時、貴方は新たな孫呉の王となるのよ。でも、私がやってきたことを貴方が真似をする必要は無いの。私は私…貴方は貴方…だから好きにおやりなさい。

だけど一つだけ…先代の王としての…そして貴方の母としての最後の教えを言うわ。心して聞いて頂戴。

”貴方が目指すもの”まずこれを見つけるの。そしてそれを見つけることが出来たなら、それを目指し突き進みなさい。そのために貴方は、人の命を、罪のない民達の笑顔を奪ってしまうかもしれない。でもその”罪”から逃げてはいけなわ。その罪を背負うことができて初めて王と言えるのよ。だから貴方はその”罪”を背負う覚悟を持つの。それが出来て初めて王と呼ばれるに相応しい者になれるからね。

…本当なら私がその手伝いをしてあげたかったんだけど、どうやらそれも無理みたいだから、今の言葉を最後の教えということで勘弁してね。

……願わくば、貴方が目指すものが私と同じであることを節に祈っているわ…』

 

 

 

そう言ってしばらくたった後、母は亡くなった。

 

その後王となった私は、母の最期の言葉の通りやって来たつもりだ。

 

そして今

 

私の目指すもの…それを実現するための機会がやってきているのだ。

 

「…母さん見守ってくれているのかしら?私達の宿願を果たすための最初の難所がやってきたわ。でも、私は…いえ私達はそのことから逃げたりしない。少しでも少ない犠牲ですむように空から見守っていてね…」

 

そう呟きながら私は空を見続ける。

 

しばらくそうしていた後、雪蓮もまた自分が出来ることをするためにその場を後にする。

 

孫呉の再興、そして雪蓮たちの願いを叶える為の最初の難所の幕が今上がろうとしていた。

少しでも皆が生きて帰れるように…そう願いながら着々と準備をし、そして出陣時となった。

出陣してから数日がたった頃、雪蓮たちは黄巾党の主力部隊がいる場所まで目と鼻の先まで来ていた。冥琳たちが話し合った結果、他の場所で合流するよりも、目的地である主力部隊がいる場所で合流したほうが時間の無駄が省けるということで考えがまとまりここに来たのだが、まだそこには蓮華たちの姿は無かった。

 

雪蓮「穏?蓮華たちはいつ合流するのかしら?」

 

穏「伝令さんの話によると、兵を集めてから合流するということなので、こちらと合流するのはもう少し時間がかかるかと~」

 

雪蓮「そう…。なら初戦は私達だけで戦うことになるのね。」

 

冥琳「そうだな。蓮華様たちが合流するまで待っていても良いが、それでは非効率だろう。斥候をはなって、あたりの情報を手に入れてから主力部隊たちの周りにいる黄巾党を叩こう。」

 

祭「それがいいじゃろうな。ここまで行軍してきて、兵たちも少し疲れておる。…まぁこのまま戦っても大丈夫じゃろうが万全を期す為にも斥候が戻ってくる間昼休憩でもしておるか。」

 

冥琳「そうしましょう」

 

穏「わ~い。お昼、お昼~」

 

雪蓮「わかったわ。何か分かったことがあったら教えてね?私はちょっと一刀のところに行って来るから…じゃね~♪」

 

そう言って雪蓮はその場を離れ一刀たちがいる輜重隊の元へと向かっていった。

 

祭「いったい一刀に何のようなんじゃろうな?」

 

穏「それはもちろん。一刀さんにちょっかいを出して暇つぶしじゃないですか~?」

 

穏がそう言うと祭や周りにいた者たちも、納得が言ったのか笑ったり、中には雪蓮が言った先に手を合わせて、一刀の無事を祈る者までいた。そんな中冥琳はその答えに笑いながらも、どこか考えるそぶりをして、自分の考えを喋りだす。

 

冥琳「ふふっ…その可能性は十分に考えられるが、たぶん他にもあるのだろう…」

 

祭「なんじゃ?冥琳は何か知っておるのか?」

 

冥琳「いえ…あくまで私の推測でしかないのですが、この機を使って諸侯達を見るように言うんだと思います。」

 

穏「なるほど~一刀さんは将軍になってから日もまだ浅いですし、こうして一同に諸侯が集まる機会なんてなかなかないですからね~」

 

冥琳「そうだ。それにここには董卓軍と劉備軍、そして曹操軍がいる。」

祭「ん?だれじゃいったい?」

 

冥琳の言葉に、穏は冥琳の考えていることが分かったのか、相槌をする。しかし、冥琳の言葉の意味をいまいち理解できない祭は冥琳たちにたずね続きを促す。

 

穏「最近巷で噂になっている人たちですよ~他にも袁術の従姉である袁紹さんとか、西涼の馬一族、あと~公孫…なんちゃらさんも噂になってますね~でも特にその三部隊は絶えず噂がながれているんですよ。」

 

冥琳はなぜ公孫まででていて最後まで言えないのか疑問に思ったが、別にどうでもいい人なのでそこに突っ込むことをやめ、続きを話す。

 

冥琳「まず董卓軍ですが、どちらかというと董卓自身より、仕えている武将が有名ですね。彼女の元にはあの呂布がいます。あと神速の異名をもつ張遼ですね。」

 

祭「呂布か…その噂なら聞いたことがあるな三万の黄巾党に対し一人でそれを殲滅したとか…まぁ本当なのかどうかは分からんが。張遼も馬の扱いに駆けてはすごいとかは聞いたな。」

 

冥琳「ええ…ただ、それだけの武将を家臣においている董卓はその姿を見たものはおらず、今回も出陣していないみたいですが…。続いて劉備軍ですが、こちらは最近になって頭角を現してきた義勇軍ですね。」

 

穏「今の時代義勇軍なんてそんなに珍しいことは無いんですけど~ただ驚くのはほとんどの義勇軍たちはそこら辺の諸侯たちに吸収されているのに、劉備軍はどこにも属さず戦っていて、その強さはそこら辺の諸侯の人たちよりも数段上らしいですよ。今はまだ土地を持っていないようですが、今回の働きによっては土地を貰えるでしょうね。」

 

祭「劉備たち本人のことは分かっておらんのか?」

 

穏「各地を転々としていることもあり、どれが正しいのか判断ができないんですよ~まぁ今回の戦いで主だった人は調べるつもりです。そして最後が…」

 

冥琳「曹操軍だな。実はこの曹操軍に対しては雪蓮と私は一番危険視している軍なのです。」

 

祭「どういうことじゃ?」

 

冥琳「彼女達が治めている町はこの大陸の中でも一二を争う位に栄えているのですが、凄いのは町の献策で私達が考えていても実行に移せていなかったことをやっている事です。その実行力、そしてそれを行うことが出来る将の質…兵数では袁尚に劣っていますが兵の練度と兵一人一人の力は、ここに集まっている者たちの中でも随一でしょう。彼女達をこの目で見たことはありませんが、私達の宿願の最大の敵になるだろうというのが私と雪蓮の答えでした。」

 

祭「なるほどのう…策殿や冥琳にそこまで言わすほどか…是非ともこの目で見てみたいものじゃ」

 

冥琳「そうですね…。そして雪蓮は今言っていたものたちも含め、一刀にこれから争っていかなくてはいけない人たちを見てその力や考え方を学んでほしいのでしょう。その学んだ事を自分の力に変えることが出来たなら、さらに一刀は成長することになります。」

祭「未来の孫呉の中心人物に育てるためか?」

 

冥琳「まだそこまでは…ですが出来れば私の後を一刀に譲りたいとは思っていますよ?」

 

祭「くくっ…つまり未来の大都督か。しかし穏はそれでいいのか?」

 

穏「私も同じ気持ちですよ~私だって一刀さんが大都督になる姿見てみたいですし~それに一刀さんの手伝いもやってあげたいですから~」

 

祭「それは将としてか?それとも女としてか?」

 

穏「どちらもですかね~あはは~♪」

 

そう言って笑いながら祭の言葉に答える。普段の穏ならばそれが冗談かもしれないのだが、今言った言葉は本心からなのだろう…なぜなら笑っている穏の顔は少し赤く染まっていて照れている見

たいだったからだ。そしてその顔をみて分かってしまうこともある。

 

多分穏はどちらかというと、女としてのほうが強いのだろうと…

 

そして、冥琳も少し赤く染まっていることから、”女として好いた男にもっと立派になってほしいのだろう”と分かってしまう。

そのことにいち早く気付いた祭は、二人を見て思わず笑みがこぼれた。

 

祭「まったく…一刀は果報者じゃな、こんなにも大勢の女たちに好かれておるのじゃから…」

 

冥琳「雄として優れているという事でしょう」

 

祭「まったくじゃ…わっははは…」

 

冥琳の言葉をきいてその場にいた皆が笑い出す。

これから、命を懸ける戦場に行くというのにこの笑いはどうなのかと思ってしまうが、一刀のことだから仕方がないとだれもが納得し、さらに笑うのだった。

一刀「へ~くしょん。…うう誰かが噂でもしているのか?」

 

雪蓮「ちょっと一刀!ちゃんと聞いていたの?珍しく私が真面目な話をしてたんだからちゃんと聞いてよ!」

 

一刀「……自分で珍しくとか言うなよ」

 

冥琳たちがそんな話をしているとは知らず、雪蓮は一刀に先ほど冥琳が考えていた通りのことを喋っていた。もちろんその場には一刀の部下である晴歌と絢音もおり、二人にも一刀と同じ事を言っていた。

 

雪蓮「そんなことはどうでもいいの!それでわかったかしら?」

 

一刀「そんなことって…」

 

雪蓮「一刀~?」

 

一刀「分かったって。話をまとめるとここに集まっている人たちを見て自分たちの力にしろって事だろ?」

 

一刀の答えに満足したのか、さっきまで不満げな顔だったのが、一気に代わり満足した顔で一刀たちを見ていた。

 

雪蓮「そういうことよ。いい?こんな機会めったにないんだからね?袁術の目も余り気にしなくていいんだから好都合なのよ。だから、この機会無駄にしないでね?貴方たちもよ晴歌、絢音!」

 

晴歌「うい~、了解です。」

 

絢音「晴歌ちゃん!!はぁ…とにかく私も分かりました。」

 

雪蓮「頑張るのよ。」

 

そう言って二人にも確認を取る雪蓮。そして確認が取れると、満足そうに顔をほころばせるのだった。

たがここで一刀はあることに疑問をもった。そしてその疑問をそのまま雪蓮に投げ掛ける。

 

一刀「でもそれは俺達だけなのか?そういうことなら蓮華たちもまってたほうがいいんじゃないのか?さっきの説明で斥候が帰ってきた後仕掛けるのは分かったんだけど、そういう目的もあるなら蓮華たちも待っていたほうがいいだろ?一番経験しなくちゃいけないのは多分蓮華だと思うし…」

 

雪蓮「一刀貴方の意見ももっともなことだと思うけど、蓮華にはまだ早いのよ。」

 

一刀「早い?」

 

雪蓮の言葉にさらに疑問が膨らむ。

一刀は雪蓮が言っていることが理解できなかった。経験をつませるということなら、それは早いほうがいいのが普通である。もちろんそれに見合うだけのモノがないといけないのだが、少なくとも一刀には蓮華なら大丈夫だと思っていた。

しかし、雪蓮は表情を曇らせながらも、その目に自分の答えに対する絶対の自信が燈っていた。

雪蓮「そうよ。…あの子はまだ自分の持つ才に気付いていないし、自分が目指すべきものが見つかっていないもの」

 

絢音「そうなのですか?自分の才に気付いていないかどうかはわからないですが、目指すべきものについては、この間の宴会のときに言っていたと思うのですが?」

 

雪蓮「そうね…。でもあれは私が思うに、私を目指しているからそう答えたんじゃないかって思うのよ。」

 

晴歌「え?雪蓮さまを目指すことはいけないことなのか?」

 

雪蓮「そうは言わないし、私を目標にしてくれていることは嬉しいことよ。でもそれじゃ王としてはだめなの。」

 

一刀「どういうことだ?」

 

雪蓮「そう…ね。正直これは蓮華自身が気付いてほしいことだし、まだその時じゃないから私からは何もいえないの。それにこんなことを言っても無駄だと思うしね…」

 

そう言いながら、さらにつらそうな表情をする雪蓮。なぜそんな表情をするのか一刀たちには分からなかったが、雪蓮が何かに苦しんでいることは理解できた。そしてそれは、今この場では解消することが出来ないことも…

 

絢音「雪蓮様には何か考えがあるのですか?」

 

雪蓮「ええ…。ただこれが正解かどうかは分からないけど、私はこれが正解だと思っている。でも私の時はすぐにでも王にならないといけなかったから…他の人からみたら間違いかも知れないんだけどね…」

 

一刀「……雪蓮の考えってやつを俺達が聞くことはいいのか?」

 

雪蓮「……できれば聞かないでほしいかな。もし言ってしまえばきっと貴方達は…とくに一刀は蓮華を助けようとするでしょ?それじゃだめなのよ。あの子の才を伸ばし、私を超えてもらうためには自分で気付いてほしいから…」

 

一刀「……そうか、わかった。なら今は聞かない…でもその代わり俺に助けてほしいときはすぐに言えよ?力になるからな!」

 

そう言って笑顔を雪蓮にむける一刀。一刀自身今雪蓮を助けることが出来ない悔しさに、苛立ちを覚えていたが、自分がつらそうな顔をしても余計雪蓮をつらくさせてしまうだけだと思い、笑顔を向けるしか出来なかっただけなのだが…

雪蓮…いやその場にいた絢音や晴歌もその笑顔に胸がときめき顔を赤くするのだった。

雪蓮「//////////////ほ…んっとに一刀はずるいわよね。」

 

一刀「ええ!!いきなりなんだよ!?」

 

雪蓮「はぁ…」(わかってはいたんだけど、この反応はどうなのよこの鈍感が!!)

 

絢音「一刀様…」

 

晴歌「一刀~それはいくらなんでもだめだと思うぞ?」

 

一刀「ええ!!いったい俺が何をしたというんだ!?」

 

雪蓮「もういいわよ…。そ・れ・よ・り一刀~最近私との触れ合いが足りないと思わない?」

 

一刀「はぁ?こんどはいったいなんだ?」

 

絢音と晴歌が一刀を非難していると、いち早く無意味だと悟った雪蓮は先ほどとはうってかわっていたずらを思いついた子供のような顔で一刀に寄り添ってきた。

当然一刀はその行動に驚きながらも、何とか冷静に言葉を返す。

 

雪蓮「いやだってね?最近冥琳と一緒に仕事したり、祭とは鍛錬してるでしょ?穏はいっしょに勉強しているみたいだし…絢音や晴歌については部下なんだから大体一緒じゃない。だけど私とは全然一緒にならないじゃない。だからつまらないな~って」

 

一刀「いやいや!そんなことないから。雪蓮さん?貴方ほとんど毎日”孫呉の一大事なの”って言って俺を連れまわしているでしょうが!」

 

雪蓮「あれ?そうだったかな~…」

 

一刀「とぼけたって無駄だからな…しっかり覚えているし。…それに連れ回す度に俺にたかってくるんだから、いずれその分返してもらうからな!」

 

雪蓮「わかったわ!なら今ここでその分返すわ。も・ち・ろ・ん私の体でね♪」

 

一刀の言葉に”今が好機!!”と感じ取ったのか…ここぞとばかりに、多々でさえ寄り添っていた体をさらに密着させる。

 

一刀「//////な…な…何を言ってるんだ雪蓮さん!!それにこれ以上近寄られると…」

 

雪蓮「あら?私の体じゃ不服かしら?私の体好きにしていいのよ~♪ほらほら~胸なんてふかふかでなのにハリがあって気持ちわよ~♪」

 

一刀「そんな!不服なんてとんでも…いやいやそういうことを言ってるんじゃ無くてだな…」

 

絢音「あぅあぅあ~そんな今体でって…今ここででしゅか~そんなもうすぐ戦闘が始まるかもしれにゃいのに~でもでも~一刀しゃまが求めるなら私だって…いや~ん♪そ、そこはだめ~雪蓮しゃまと一緒ににゃんて~やっぱり最初は二人きりのほうが…/////」

 

一刀(晴歌!!タスケテ!!)←目で晴歌に助けを求めた

 

晴歌(ごめん一刀!私は逃げる!!)←手を合わせて合掌した後逃走…

 

一刀(そんな…我命ここで尽きるか…)←天を仰ぎ目から生気が無くなる…

 

雪蓮「ね~一刀どうするの?しちゃう?しちゃおうよ♪しちゃうしかないのよ!!」

 

絢音「ああ~とうとう一刀しゃまと結ばれる日がきたんでしゅね~ど、どうぞ私の体を~…//////」

 

一刀「だ…だれか助けて~~~」

 

その叫びは孫呉の軍はもちろん、近くにいた諸侯たちにも聞こえていたとかいなかったとか…

 

 

一刀……南無………

 

 


 
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