真・恋姫無双 二次創作小説 明命√
『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-
第73話 ~ 美しき華の前に、花は蕾のまま己を磨かん~
(はじめに)
キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助
かります。
この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。
北郷一刀:
姓 :北郷 名 :一刀 字 :なし 真名:なし(敢えて言うなら"一刀")
武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇
:鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋
得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)
気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)
神の手のマッサージ(若い女性には危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術
(今後順次公開)
華琳視点:
公孫賛が落ちた。
定例の報告の中で、最後に桂花がそう報告してきた。
むろん、その内容は数日前に聞いてはいたけど、この場には初耳の者が殆どで、場が騒然としだす。
そんな中、私は桂花の追加の細かい報告を聞きながら、急速に思考を深くしてゆく。
麗羽の強襲ともいえる進軍は、麗羽の狙い通り、雪の深い中進軍して来る筈無い、と言う固定概念に縛られた公孫賛の虚を取る事ができた。
その結果、公孫賛が軍の準備を急いで終える事には、麗羽の軍を深い所まで食い込まれていた。
それでも意外だったのが、公孫賛の粘りようだったわ。
軍師も優秀な将もいないと言うのに、自軍の十倍と言う敵相手に、公孫賛は一月以上近く粘って見せた。
でも逆に言えば、その条件で、それだけ粘ったと言うのは、それは公孫賛の王として能力の高さを示している事になるわ。
伊達にあの広大な土地を、統治して居た訳では無いと言う訳ね。
特に秀でた物があるようには感じられなかったけど、彼女にも英傑としての資質はあったと言う事かしら?
ふふっ、私もまだまだね。
でも細作の報告では、公孫賛は数名の部下に引き攣られるようにして、何処かへ逃げ延びたと言う事だから、いつか会いまみえる事もあるかもしれないわね。
問題は麗羽ね。
公孫賛が結果的に時間を稼いでくれたとは言え、此方の準備は整っていないと言っていいわ。
今戦えば、負けないまでも、私の覇道が大きく後退せざる得ないのは間違いない。
……やはり人手不足ね。
桂花や秋蘭が頑張ってくれているとは言え、
秋蘭は本来武官、ある程度政を行えるとは言え、桂花のようにはいかない。
桂花の仕事を減らしてくれる程度に留まってしまうわ。
国が大きくなればそれだけ、優秀な人材も必要。
だと言うのに、その優秀な人材は手元にいないわ。
何人か目を付けている娘や人物はいるけど、………劉備に孫策、まだ時期は熟していないけど、本気でどちらかを攻める事を、考えないといけないかもしれないわね。
「それと、もう一つの袁家が落ちました」
ざわっ
場が再び騒がしくなる。
それに、この事は私も初耳よ。
きっと、集めた情報を話せる状態になるまで、整理し続けたのでしょうね。
化粧で誤魔化しているけど、桂花の目の下の隈がそれを物語っているわ。
でも、桂花の報告は、ある程度予想はしていた事。
更に兵員補充された袁術軍に対抗するには、補充された兵数に対抗するだけの力を手にするまで期を待つか、
補充された兵を張子の虎と見抜き、調練を受ける前に叩くしかない。
調練を受けていない兵等、盾や囮にはなっても、それ以上にはなりえないわ。
むしろ運用を間違えれば、足手纏いでしかない。
それでも二万と言う兵数の増員を冷静に分析し、逆に攻勢に出る等、普通の才覚で出来る物ではないわ。
決して負けが許されない状態で、それが出来る者等、この大陸で何人いるかしらね。
でも、これで決まりね。 その才覚は認めるけど、その後の事をどこまで読んでいたのかしら?
幾ら張子の虎や弱兵ばかりとは言え、四倍もの敵と決戦して、無事で済むはずがないわ。
投降した袁術軍をそれなりに取り込んでいるでしょうけど、弱兵に変わりは無いわ。
呉が兵を増強し鍛えなおす前に、呉を攻め落し、その将を私の配下として組み入れる。
拒むなら、泣いて許しを請うようになるまで、調教してあげるだけ。
それはそれで楽しみだわ。
私はあの女装の似合う男の事を思い出しながら、
麗羽が此方を攻める様子が無いなら、呉を早急に攻めるための指示を出そうと思った時。
「孫策の率いる呉軍五万弱に対して、袁術軍は十五万、
その殆どを、孫呉は吸収する形で決着が付きました」
え?
私は、桂花の言葉の意味を取り違える事無く意味を理解した。
だけど、その内容に、私は信じられなかった。
いいえ、その内容を受け入れる事を、頭が拒絶したわ。
見回せば殆どの者が、桂花の言葉を正しく理解せず、私が最初想定していた通り、呉が弱体していると勘違いしている事が、囁き声や表情から読み取れた。
桂花は、『 その殆どを、孫呉は吸収した 』と言ったのよ。
ただ戦をして、寡兵で大軍を破り、投降した兵を吸収したなら、そんな言い回しはしないわ。
言い換えれば、桂花はこう言ったの、
『 呉の精鋭を殆ど失うことなく、袁術軍の殆どを取り込んだ 』
その事実に、心の中で確かに言語化した事で、私はその事実に改めて驚愕する。
いったい、どうやったらそんな真似ができると言うの?
戦をすれば、多くの兵が死ぬのが理よ。
幾ら兵の調練の差があっても、
策をいくら弄したとしても、
その数を勝者側が減らす事が出来るだけで、
多くの兵士が死ぬ事には変わりがないはず。
そもそも、袁術軍は何故殆どの兵が残っている状態で、敗北した?
君主である袁術が捕えられたから?
それこそ、まさかだわ。
だいたいあの下衆な老人達が、その程度で降伏するはずはないわ。
あれは、自分達の君主を生贄にしてでも、生き残る道を選ぶ人種よ。
だったらどうして?
………ふふふっ、何を驚くと言うの、曹孟徳。
私は最初から、答えを知っているじゃないの。
あの女装の似合う男、
あの太陽の日差しのような笑みを浮かべる男、
あの素晴らしい舞を舞い、私の魂を震わせる男、
北郷一刀
あの男以外、誰がやると言うのよ。
実際どういう手を使ったかなんて、今私が考えるべき時ではないわ。
それに、その答えは、桂花が持ってきている。
この娘は不確定な情報を、そのまま持ってくるような娘ではないわ。
だからこその、目の下の隈なのでしょう。
良いわ桂花、貴女が調べ上げた情報、私に聞かせて頂戴。
私は、そう視線で桂花に先を促す。
「呉は周辺の農民を扇動し、一揆を起こさせたもようで、その数約十五万程だそうです」
「な゛っ、民を巻き込んだのかっ!」
桂花の言葉に、春蘭が信じられない事の様に声を荒げる。
無理もないわね。 春蘭は孫策と直接会い、その誇り高さを知っているわ。
だから、自分が認めた武人が、下衆な行為をした事が、許せないのでしょうね。
でも違うわよ春蘭、孫策は私が認めた英傑、本当に民を巻き込むような真似なんてする訳がないわ。
「春蘭、今は黙って話を聞きなさい」
「……分かりました」
私の言葉に、怒りを抑え引き下がってくれる。
ふふっ、貴女はそれで構わないわ。
一見愚かとも取れる程の武人としての誇り、そして私への忠誠心。
だけど、言いたい人間には言わせておけばいいわ。
春蘭、彼女は間違いなく、武人として高みを目指し、民の為にその力を振るう事を喜びとしている。
その高貴な魂の価値が分からない者は、私の配下には居ないし、必要ないわ。
「桂花続けて」
「はい、 一揆を起こした民が実際戦に加わる事は無く、袁術軍を遠くに囲うようにしていただけです」
成程、やはり見せ札として、利用したと言う訳ね。
そして自分達に義があると、袁術軍と一揆を起こした農民達に見せつけたと。
たしかに、それなら、ろくに調練を受けていない名ばかりの兵や、袁家の弱兵にはかなりの精神的圧迫だったでしょうね。 少なくとも、そんな状態では、袁術軍の動きはかなり鈍くなるわ。
「華琳様が仰られたあの男、」
そう、あの男、とうとう表立って動いたの。
私は桂花の告げる次の言葉を、心待ちにする。
だけど、それは私の想像を超えていた。
「天の御遣いと名乗ったあの男は、一人で袁術軍の先鋒を天罰と言って、細かな肉片へと変えたそうです」
「それはどういう事?」
確かに、世の中には想像もつかない武を持つ者がいるわ。
現に呂布なんて化け物がいるし、彼女が一人で三万の敵を倒したと言うのは有名な事実。
でも、その呂布をもってしても、今桂花が言ったような言い回しはしないはず。
『 先鋒を打ち破った 』又は『 先鋒を壊滅させた 』とか言うはず。
それに天の御遣い?
「言葉通り、幾つもの拳大の肉片に変えられたそうです。
細作の報告では、話を聞けた者全て口を揃えて、『あれは人の死ではない、天罰だ』と証言したそうです」
「……そう、そう言う事」
「……はい」
私の漏らした言葉に、桂花は律儀に返してくれる。
でもそれは私の考えた事を察してくれた証でもあるわ。
『圧政と重税に苦しみ一揆を起こした民』それに『天の御遣い』と『天罰』、そして『吸収された袁術軍』
これだけ揃えば、呉がどうやって双方共に被害を抑えて勝ったのか、想像できるわ。
袁術軍を一揆を起こした農民達で囲む事で、精神的圧迫を掛けさせ、
これが天の意思であり、先鋒を惨殺して見せる事で、『天罰』である事を印象付ける。
そこへ精強な呉の兵による殲滅戦、否、投降する者以外を部隊単位で各個撃破したのでしょうね。
その攻撃が苛烈で在れば在る程、袁術軍の兵は恐怖し混乱に陥る。
調練を受けていない名ばかりの兵や、弱兵しかいない袁術軍しか通用しない奇策。
だけど、只の奇策と言うには、人の集団心理を良く理解しているわ。
そして、その思惑通り事を進め、戦後の弱点である弱体化を最小限に抑える所か、軍を強化する事が出来た。
ふふふっ、見事ね。 称賛に値するわ。
あと袁術軍には張遼も居たはずだけど、恐怖する大軍のに呑みこまれたか、其れとも孫策に付いたかね。
もともとあの男を人質に、汜水関から離脱した彼女が洛陽に現れ、あの男も無事孫呉に戻った時に、怪しいとは思っていたわ。
張遼があの段階では、どうなるか分からなかったけど、何らかの友誼が、その時結ばれたと見て間違いないわね。
それに、あの高潔な魂を持つ張遼が、袁家の老人達の醜悪さに、何時までも黙っているとは思えなかったわ。
だから早く引き取りたかったのだけど、そこへ袁術軍に降る前に友誼を結んだ相手が誘えば、高潔な魂を持つ張遼とは言え、 いいえ、むしろ高潔な魂を持つ張遼だからこそ、例え武人としての名を貶める事になろうとも、民の為に立ち上がったのでしょうね。
問題はあの男ね。
天の御遣いを名乗り、
天罰を下した。
………ふっ、馬鹿馬鹿しい。
本当に天があり、天罰が下るのなら、
そんなものは、とっくに大陸の彼方此方で、落ちていなければいけないわ。
だけどそんな事は起こりえなかった。
本当に天と言うものがあるとしたら、
少なくても、今起こっている程度の事は、
大陸に住まう者で対処しろと言う事なのでしょ。
だから私は立ち上がったのよ。
民の流す涙を、止めるためにね。
だから、あの男がした事は天罰ではない。
だけど、桂花の報告はそうだと言っている。
もっとも、桂花の報告が全て正しければよ。
そもそも、細作の報告が全て正しい、なんて事はありえない。
どんな優秀な細作でも、情報に騙される事も、私感が混ざるのは仕方ない事。
そんな事は桂花とて分かっている筈。
でも、実際はこんな曖昧な言葉のまま報告してきた。
つまり、本当にそうとしか表現できないか、
そう報告した方が、分かりやすいと判断したかでしょうね。
「桂花、貴女の考えを聞かせなさい」
「呉軍は一揆を起こした十五万の農民を見せ札として使い、調練のろくに出来ていない袁術軍に威圧を掛け
たのでしょう。 その事で、自軍以上の敵に囲まれると言う状況になった袁術軍の兵は、かなりの重圧を
受けたと思われます」
「軟弱な」
桂花の言葉に、春蘭が武人らしい言葉を吐き捨てる。
まぁ気持ちは分からないわけではないわ。
「春蘭、袁家の兵なんてそんなものよ。
数に頼って勢いが付けば、手が付けられないけど、逆の立場に追い込まれれば、所詮は弱兵、自軍が不利
と分かれば蜘蛛の子を散らすように逃げ出すわ。 そうでしょ桂花」
「はい、華琳様の言うとおり、『天の御遣い』と『天罰』の演出、『投降する者には手を出さない』と
言う鞭と飴を前に、殆どの者は早々に投降したようです」
「そう言う事よ春蘭、貴女達が鍛えた兵は間違ってもそんな事は無いでしょ」
「当たり前です。 我が軍にそのような腰抜けなど一人たりともいませんっ」
「そう、なら安心ね」
そう、春蘭に声をかけてあげる。
少なくても、軍事に関しては春蘭は信頼できるわ。
まぁ、偶に暴走する事もあるけど、それでも結果を残すだけの力はあるし、
その後の落ち込む姿も可愛い所ですもの。
まぁそっちは置いておいて、私は再び桂花に視線を送る。
今までは、事態を理解していない者達のための言わば前置き、
本題はこれからよ。
「『演出』とさっき言ったわね。 貴女はどう考えたの?」
「はい、『天の御遣い』には少数ですが、直属の部隊があります。
おそらくその部隊は呉の精鋭で組織されているのでしょう。
少なくとも『天罰』の演出を実行できる程の兵で構成されていると思われます」
「成程、その部隊で敵先鋒を必要以上に惨殺して見せる事で、『天罰』を演出したと考えている訳ね」
「はい、『天の御遣い』の率いる部隊が実行すれば、それは『天の御遣い』の所業として口伝されたと見て
います」
まぁそんな所でしょうね。
敵を惨殺して見せる事で、より多くの敵に恐怖を刷り込ませる。
人道には外れるけど、それが『天罰』なら、その限りではないわ。
そして、その『天罰』も、贅沢三昧をし民に圧制を引いた袁家相手ならば、
『天罰』として、民や兵に受け入れられるでしょうね。
実際あの男に、北郷一刀に春蘭や関羽、そして呂布のような真似が出来るとは思えない。
あれは知略に秀でていても、武を身に付けた人間ではないわ。
ふふふっ、予定は狂ってしまったけど、これはこれで構わないわ。
袁術との取引にしても、失ったのは、兵とも言えない難民や罪人達とその為の経費ぐらいよ。
張遼の件は残念だったけど、呉に居るのならば、いつか手にいれれる時も来るわ。
それよりも、あの男が此処まで人の心理を突いた策を生み出せる人間だと分かった事の方が、有意義よ。
それ程の人間がいる。
それを知っているか知らないかは、とてもな重要な情報よ。
ふふふふっ
ますます、呉と会いまみえる時が楽しみになってきたわ。
北郷一刀、
諸葛瑾、
張遼、
呉には他にも優秀な将がいる。
本当、どうやって手に入れるか、
そして、どう屈服させるかを考えただけで、背筋がゾクゾクするわね。
「報告しますっ!
河北国境沿いの砦近くに大軍が迫っているとの事。
旗印は『 袁 』『 文 』『 顔 』で敵の主力は主将が揃っています。
敵の規模は、およそ十万」
ざわっ
会議の場の飛び込んで来た伝令兵の、もたらせた知らせに、場が今日一番の騒がしさで包まれる。
それにしても、予想より動きが早すぎるわ。
「まったく、馬鹿は決断が速いのが厄介ね。 で、その様子だとまだ報告に続きがあるようね」
「はっ、報告によれば、敵の進行は極めて遅く、むしろ、此方に自らの勢力を誇示しているとの事です」
ふーん、さすが麗羽ね。
数の利と言うものを良く理解しているわ。
大軍を見せつける事で、此方の兵の士気を砕くつもりね。
物量に自信がある袁家だからできる手段ね。
それに、さすがに全軍は引き連れて来れなかったようね。
大方、老人達が新たに増えた領土を安定させるために、兵をそれ以上動かさせなかったのでしょうね。
これが吉と出るか凶と出るかよね。
「それで、報告のあった砦に兵はどれだけいるのだ? 三千か? 五千か?」
「姉者、そこなら、今は確か七百くらいしかいないはずだ」
「七百だとっ?」
「一番手薄な所を突かれたわね」
「そんなもの、手も足も出んではないか! 籠城した所で一日と保たんぞ!」
舌打ちする桂花に、春蘭が声を荒げる。
でも、私は桂花を叱る気にはなれない。
警戒すべき個所は幾らでもあるし、そちらに兵を回していただけの話、
桂花は、兵を不定期に動かす事で対策していたけど、その隙を突かれた事には違いないわね。
麗羽は運と機を見る事だけは、あの胸同様無駄にあるから一概に桂花のせいとは言えないわ。
そもそも、支配する土地が増えた分、内政だけでも手一杯の桂花を、そこまで追いやったのは、
君主である私の責任でもあるわ。
「春蘭、そんなこと今言っても仕方ないわ。 桂花、今すぐ動かせる兵は?」
「まさか此処まで早く進行するとは思っていませんでしたので。
半日以内に五千……もう半日あれば季衣や凪達が戻ってきますので何とか三万には」
他の常駐している兵士をかき集めれば、対抗できる数は集めれるけど、そんな時間は無いわね。
「少ないわね。 親衛隊を加えても一万……籠城するにしても心許ないわね」
「華琳様っ!」
「季衣や流琉もいないのに、兵だけ遊ばせても仕方ないでしょ。 使えるものは使うわ」
決断は決まったは、後は迅速に動くのみ、今は少しでも時間が惜しいわ。
「そ・曹操様、恐れながら報告にまだ続きが・」
「なんなのよ! 報告は迅速に全て答えなさいっ!」
言いにくそうに報告に続きがある兵に、私は怒鳴りつける。
たとえ絶望的な報告があろうとも、王はそれに対して最後まで動く義務があるわ。
「そ・それが、増員は不要との事、以上です」
「なんですって」
「馬鹿な。 みすみす死ぬ気か、その指揮官は!」
……以上ね。
対抗できないにしても、それなりの内容を報告させるはず。
いったいどう言うつもりなのかしら、…………そう、そう言う事。
「わかったわ。 なら増員は送らない」
「華琳様!?」
桂花が私の発言に驚きの声を上げるけど、桂花はまだこの指揮官の考えを理解していないようね。
「城の指揮官の名前は?」
「はっ、程昱様と郭嘉様です」
「なら、その二人には、後で此方に来るように言いなさい」
「はっ!」
私は伝令兵に、そう伝えると、この一件は終わりとばかりに、椅子に深く腰掛ける。
まだ理解していない何人かの娘達が何か言ってくるけど、私はそれを黙らせ、自分の仕事に行く様に命ずる。
春蘭が、それでも仲間の命を見捨てる訳には行かないと暴走しそうだったので、兵二百のみで出る事を許したわ。
まぁ、それくらいなら護衛として問題ないでしょう。
『兵の増員は要らない』のではなく、『送ってもらっては困る』と言うのがその二人の本音でしょうね。
麗羽は、派手好きだけど、それは性格的な事もあるけど、兵を上手く活用するための話。
大軍を扱う上で一番効率の良い事、それは誰にでも分かる単純な命令。
そして、大軍を用いた派手な行動は風評を呼び、更に人や金を集める事になるわ。
でも今回あの砦の指揮官が考えた策は、それを逆手に取った物。
幾ら派手と言っても、遣り過ぎと言うものがある。
例えば、兵が七百しかいない砦に対して、十万の兵で攻め込むとかね。
これが一万や二万ならともかく、それだけの兵力差があっては、逆効果でしかない。
袁紹は、たった七百の敵に十万の兵で立ち向かった等と、風評を立たせる訳には行かないでしょうね。
だから、迅速に今まで動いていた麗羽の軍が、ここにきて動きが鈍いのは、示威行為もあるけど、予想以上に少なすぎた敵に、風評に問題が出ないくらいまで、増援を呼び寄せるため、
だから、此処で一番の一手は、袁紹の手に乗らない事、
周辺の地理は詳しく調べられるでしょうけど、それくらいで今回の危機が乗り越えられるなら安いものよ。
麗羽の性格や心理、そして風評をよく熟知した上での策、
桂花に足りなかったものを、補ってくれそうな人物のようね。
実際、軍師として召し上げるかどうかは、会ってから決めるけど、
私の予想が確かならば、程昱と郭嘉の二人は、我が国の内政と軍略を、桂花を支点にこの国の支えになってくれるはずよ。
ふふっ、楽しみね。
つづく
あとがき みたいなもの
こんにちは、うたまるです。
第73話 ~ 美しき華の前に、花は蕾のまま己を磨かん ~ を此処にお送りしました。
今回は華琳視点で話を進めてみました。
一刀がとうとう表舞台に出てきた事を、華琳は喜んでいます。
この外史の華琳は、多少行き過ぎている気もしますが、まぁ一刀がいない華琳なら、こんなものかなぁと思っています。
一刀に対しての評価は相変わらずですが、これは、彼女達からの常識から当て嵌めても無理ない事だと思います。 人間直接見た事しか信じられない出来事、と言うものはありますからねぇ。
さて、風と稟の魏への登用は、ほぼ原作通りです。
( 本当は呉に連れてきたっかったけど……軍師ばっかになっちゃいますしね(汗 )
話しの流れとしては、まだまだまたーりとした話が続きますが、それでも、外の時間の流れも書いておかないと、後々困るので、ここ等で皆様が興味を持たれていた。 魏や蜀での一刀の評価の話を入れてみました。
私としては、風と稟、そして袁紹の動きで十分なのですが、それではお話にならないのでこういう形を取らせていただきました (゚∀゚ )
そう言う訳で、次回は蜀でのお話になりますが、誰の視点で語るかは次回のお楽しみと言う事で♪
では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。
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『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。
魏に孫呉の独立の報が桂花を通して知らされる。 その報に華琳は……
拙い文ですが、面白いと思ってくれた方、一言でもコメントをいただけたら僥倖です。
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