洛陽から帰還してしばらくの後…
---とある勢力の城---
?①?「あの『うわばみ』親子め!玉璽を私持するなんて!」
?②?「でも?①?様、さすがに遠過ぎて、私たちは動けませんよ?」
?①?「何か、いい方法は無いのですの!?」
?③?「姫~、じゃあこんなのは…ひそひそ」
?①?「貴女にしては、知恵が廻りますわね。ではさっそく実行しなさい。」
?③?「あいよ~、?②?~いくよ~。」
?②?「もぅ…いいのかな…」
こんな企みが起こっているとはつゆしらず…
孫呉では、別の事件で緊急会議が行われていた。
---長沙・会議室---
雨蓮「なに!?【軽華樂船団】が襲撃された!?その上、敗走!?」
冥琳「報告ではそのように。ただ、幸いと言うのでしょうか、【軽華樂船】拿捕はされておりませんし、護衛対象は無事です。」
ここでの『護衛対象』とは『商船団』の事である。
造船技術の発達で、比較的安価で船が手に入るようになり、貿易を行う商人が急増した。
これ自体はいい事なのだが…
同時期に江賊も急増して略奪行為が蔓延した。
商人たちも馬鹿ではなく、組合を組織し集団で行動するようになった。
しばらくの間は、これで上手くいっていたのだが…
すぐに対策を立てられ、荷物をまとめて奪われる羽目になった。
ここに来て、組合は孫呉に船団の護衛を陳情したのである。
最初、この陳情は受け入れてるか悩んだが…
百合ら内政官からは『貿易活動の促進につながり増収が見込める』と言われ…
祭ら武官からは『操船技術を磨きつつ、軍隊を動かす絶好の口実である』と言われ、
護送船団方式の貿易が始まった。
当然の結果ながら、江賊被害は激減したのだが…
軍に刃向かうある意味『猛者』が現れた…これが、今の現状である。
雪蓮「ただでさえ、北がきな臭いのに…明命、今の江夏の現状は?」
明命「えっと、相変わらず軍備に余念がないですね。それと、どこからかは分かりませんが、使者が行ったり来たりしています。」
一刀「劉表さんの所からじゃなくて?」
明命「方向的に、逆と言って差し障り無いくらい別方向です。故に劉表殿以外の所かと。」
一刀「……袁紹かな?」
冥琳「さすがに遠過ぎる……いや、玉璽関連でいくと、扇動者は袁紹でしたな」
一刀「『演義』での話だけどね。でも、玉璽の話は漏らさないようにしても、漏れるものだと考えるべき、と思う。」
雨蓮「そして、『私が死ぬ』話だな?」
蓮華「母様!!自ら言うにしても不謹慎すぎます!!」
睡蓮「『娘』達に『不幸な現実』を突き付けないでくださいね。」
雨蓮「蓮華、落ち着け…睡蓮、意趣返しか?…ったく…」
一刀「まあ、無茶な突撃が無ければ、誰も死なないよ。雨蓮さん、雪蓮、頼むよ?」
雪蓮「母様はいいとして、何であたしまで?」
冥琳「一番突撃しやすい人間だからよ、孫伯符?」
雪蓮「ぶーぶー。」
一刀「いくらでもぶー垂れていいから、無茶しないでね、雪蓮(ニコッ)」
雪蓮「う、うん…///」
一刀「痛い痛い痛い痛い痛い…すいれーん…」
睡蓮「フンッ…」
雨蓮「夫婦漫才は済んだか?…それで、江賊対策だが…」
睡蓮「漫才にしないでください…対策のひとつとして、『甘寧』をこっち側につけられれば、大半の江賊はこちら側につくかと…」
穏「誰が言ったか、『江賊王・甘興覇』とか『鈴の音に気をつけろ、江魔が来るぞ』とか言われる人ですからね…」
一刀「前者はいいけど、後者は既に人じゃないよね……まぁ、それほどの異名があるなら、是非仲間にしたい所だが…」
睡蓮「もし、『思春』で無いとすると、搦め手が必要ですね。」
雨蓮「?『思春』と言うんは、『お主の世界』での甘寧の事かい?」
睡蓮「ええ、実直な人間でしたので…『黄祖』に味方していなければ、仲間に引き込むのは容易かと…」
冥琳「どちらにせよ、もう少し調べないと手は打てませんね。江賊対策は【軽華樂船】から【華樂船】に引き上げつつ【走舸】(そうか)もつけて小回りをより効かせて対応するしかないかと…」
祭「古い船も駆り出すとは…まあ、【走舸】は特別小回りが利くしのぅ。」
雨蓮「とりあえずそれでいこう。明命、迅速に情報を頼む。」
明命「御意です!」
結果から言うと、こちらの『甘寧』は『この世界の思春』だった…何故わかったか…
一刀が臨時で船団長になり護衛に当たっていた時に『甘寧ら』が襲撃してきた。その時に一刀が間違って真名を言ってしまった。
当然、見ず知らずの人に真名を言われ激昂し一刀に襲いかかる甘寧。
だが、一刀も祖父との修行の成果か、互角に打ち合いを魅せた。
一刀「間違って真名を言った事は謝罪と共に取り消す。出来れば、戦闘を止めてほしい。今回は捕縛の意思は無い、『天の御遣い』の名において保障する。」
甘寧「ほう、大言を吐くではないか。いいだろう、野郎ども先に引き上げてろ!」
一刀「どうやら、智も優れているらしい。なぜ、こちらが話し合いたいと分かった?」
甘寧「なに、単なる興味だ。なぜ我の真名を知っていたのか、などを含めて『色々』聞きたいのでな。」
一刀「では、そっちの船に並走するよう、伝えてくれるか?多分、話長くなるだろうしね。」
甘寧「籠絡でもするつもりか?まあいいだろう。」
実際、一刻(二時間)程の会談では、いわゆる『お誘い』は一回も無かった。
天の国に話をしたり、何故真名を知っていたのか理由を話したり、一刀の剣術の話をしたり…
他愛の無い話しかしなかった。
だが、事態は一変する。
『黄祖』が荊北水軍を率いて、護送船団に対し、襲撃を掛けて来たのである。
黄祖「甘寧め、孫呉に下りおって…貴様らまとめて、江の藻屑となれ!…放て!!」
本気の一斉火射である。
一刀「甘寧!そっちの船じゃすぐに燃える!こっちに水夫たちを避難させろ!」
甘寧「甘えさせてもらうぞ!総員!この船に退避!」
一刀「庄子弩をありったけ撃て!二、三隻程沈めろ!」
兵装の差は歴然で、二、三隻どころか全体の三分の二程、大破ないし中破させ、黄祖は退却を余儀なくされた。
一刀「ふう、何とかなったかな?」
甘寧「お前らのおかげで部下が助かった、礼を言う。」
一刀「気にするな。しかし、黄祖というのは、あそこまで器が小さいかね…一刻話しただけで裏切りと判断…民船もあるのにお構いなしに攻撃…」
甘寧「まあ、このような物を出す人間だったしな…」
そう言って出て来たのは、『江賊行為を容認する覚書』と『江夏の港湾利用許可証』である。
一刀「成程、江賊を抱き込むには手っ取り早いか…なあ甘寧、江夏にはあとどれくらい江賊がいた?」
甘寧「人数で言うと千六百人くらいか、船で言うと二百隻くらいだと思う。」
一刀「そいつらを抱き込めたいと思う。そいつらに仕事として民船の護衛をしてもらうつもり。江賊より真っ当だと思うぞ?」
甘寧「我は顔が知られているから、部下がそそのかすとして…半数なら喰いつくと思う。我らもその仕事に就くのか?」
一刀「いんや、甘寧に関しては、武官として召し抱えたいと思う。只でさえ武官が不足している今、これほどの武は貴重の域だよ。」
甘寧「今までの江賊行為に対しての罰則はどうなる?」
一刀「真面目に働いてくれたら、それでチャラ。誰だって間違う事はある。大事なのは、間違ったと認識した後の行動だよ?」
甘寧「甘いな…甘過ぎるな…」
一刀「だが、贖罪の機会は設けるべきだし、今の賊の台頭は漢王朝の失策のせいだよ。それなのに、民たちを一方的に取り締まるのは間違えている。と言っても俺が知る限り、『霊帝』辺りから皇帝に力は無いもしくは不足していたはずだ。その上宦官が好き勝手やってたんだ。乱れて当たり前だ。故に、罪を認めた上で贖罪に力を注ぐ人には出来る限り力を貸すつもりだよ、甘寧?」
甘寧「…ふぅ……『思春』…さっきは勝手に呼ばれたが、以後は呼ぶといい。あと、『私の贖罪』の手助けもして欲しい。」
一刀「北郷守息、真名を『一刀』だ。『甘興覇・思春』の帰順を、その部下共々歓迎する。」
甘寧「ハッ、ありがたき幸せ。」
一刀「とりあえず、護衛の任が終わったら、孫堅様に謁見してもらうんでよろしく。」
一刀一行の帰還の後、思春らの帰順の報告を終えたその時…
劉表・逝去の報が入る…
時を同じく、『劉琮』の名で『孫呉に対する宣戦布告』がなされる…
『我らの艦隊に対する江賊行為と、玉璽の簒奪を理由に貴殿らに宣戦を布告する』と…
<おまけ>
思春らの帰順の報告の時の一コマ…
思春「孫堅様、帰順にあたりお願いがありまして…」
雨蓮「申してみよ。」
思春「その…一刀殿を婿に迎えたいのですが…」
孫呉全員「それは駄目!!」
一刀「それに俺、既婚者だぞ?なあ、睡蓮?」
睡蓮「さぁ、どうだか」
一刀「そろそろ機嫌直してくれよ~」
夫婦漫才は続く…
あとがき
どうもnakatakです。
やっと合流させましたが…ややデレ成分が多くなった?そんな気がしています。
なんせ、蓮華や睡蓮などとは初見のはずですしね…ツンする必要がそんなにないかな?なんて考えてます。
話変わって、TV見ていて、紙で作った熱気球をたくさん飛ばす映像が有りました。
こういった映像もネタになったりするんですよね…たとえば、天の世界への精霊流しみたいな…
それでは、また。
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二十三話です。思春さん、やっと合流です。
一刀の武に関しては、一話目のあとがきに書いた設定を元にしています。
それでは、どうぞ。