No.165536

夏の終わる頃に―KHMS祭りの後―

TAPEtさん

外史は無限大といいました。

それは私たちがいるからですよね?

ですよね?

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2010-08-13 20:26:10 投稿 / 全15ページ    総閲覧数:3334   閲覧ユーザー数:2846

北郷「ああ、ただいまマイクテスト中です」

 

 

北郷「ええ、皆さん、今日は大陸の平和を皆で一緒に祝うために作ったお祭りです。ここ一週間、魏、蜀、呉の皆、国や位置とかに構わずに楽しみましょう」

 

真桜「似合わないでー隊長、ええから早く始まっちゃいな」

 

沙和「そうなの、開幕式なんて適当に済ませちゃっていいの」

 

華琳「一刀、そろそろ春蘭が我慢の限界だそうよ」

 

蓮華「お姉様、逃げないでください!」

 

雪連「やーだー、私かき氷食べたい」

 

鈴々「お兄ちゃん!早く鈴々たちと遊ぶのだー」

 

美似「お祭りにゃ」

 

ミケ・トラ・シャム「まつりにゃー!!」

 

紫苑「あらあら…」

 

北郷「あはは…」

 

やっぱこんなのって要らないよなぁ。

 

他の街の人たちももう待ちきれないって顔してるし、

 

北郷「それじゃあ、楽しんだもの勝ちのおお祭りの時間です!!皆今日は遊んで遊んで遊びまくるぞ!!!」

 

民たち「おおおおおおおお!!!」

 

 

一週間後

 

桃香「終わっちゃったね…」

 

北郷「ソウダネー」

 

愛紗「大丈夫ですか?ご主人さま?」

 

北郷「いやー、遊ぶのもけっこう大変なんだよなー。せめて体が50体ぐらいはほしいところだ」

 

華琳「そんなにたくさんいたら大陸の女たちが全部あんたの女になっちゃうでしょう」

 

春蘭「なんだとー!?貴様、華琳さまがあるというのにまたそんな破廉恥なことを…」

 

秋蘭「姉者、少し静かにしてくれるか。頭の中が鳴るのだが…」

 

蓮華「も、もーだめ…」

 

冥琳「これは当分政務は無理のようですな」

 

祭「まったく、あの程度で倒れおって」

 

明命「流石にこれは祭さまと雪連さまがいけなかったのではないかと…」

 

祭りも終わり(実際一部の人たちはまだ後遺症を見せていたが)、騒がしかった一週間も、もう過去の思い出に閉まっておいて日常に戻らなければならない時が来てしまった。

 

もう政務に戻らなければならないというこの事実が惜しいというのは、誰もが同じではないだろうか。

 

そんな俺たちの前に、

 

まだ祭りの最後を飾ってくれる一つの儀式が残っていた。

 

真桜「皆待ってたやろー。お祭りで取った写真全部現像できたでー」

 

それは、この思い出を一生忘れないようにしてくれる、形で残る証拠。

 

 

沙和「わーい、沙和はこの隊長と一緒に取った写真欲しい!」

 

真桜「一枚に一文やでー」

 

沙和「お金取るのー?!」

 

真桜「『フィルム』作るのに結構お金入ったんや。売ってもウチに残るもんないから勘弁しー」

 

北郷「まぁ、こういうものを買ったら後でもいい思い出になるからな。しかし結構あるな。これって、全部真桜が回りながら取ったのか?」

 

真桜「いやー、カメラを量産して、そこそこに部下たちを配置してとってもらったんや」

 

道理でお金がたくさん入ったものだ。

 

確かカメラのお代に関しては三国で分けて投資したはずだけど…

 

真桜「でもまぁ、これも結構選んで持ってきたんやからな。ここにあるもんはサンプルだから、買いたいもんはそこの番号を書いてウチにくれたら後で現像してあげるでー」

 

北郷「本格的だな…」

 

 

桃香「わはー、どれも欲しいな…でも、全部買ったら今月が厳しいから…うんとー、何がいいかな」

 

鈴々「鈴々はこれにするのだー!!」

 

愛紗「なっ!ちょっと鈴々、それは…!!」

 

北郷「どうしたの?」

 

桃香「ああ、その写真!私も欲しい!愛紗ちゃんが泣いてる亞莎ちゃんにたこ焼き食べさせてる写真」

 

亞莎「へっ!?…ああ、それは!!」

 

北郷「何?何があったの?」

 

桃香「実はね…」

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

愛紗「はぁ…」

 

鈴々「愛紗、元気出すのだ」

 

桃香「そうだよ。ご主人さまが忙しいのは解ったいたことなんだから」

 

愛紗「それはそうですけど…」

 

桃香「祭りの色んなところでご主人さまの助けが必要なところが多くて、私たちと一緒に楽しめない分、私たちが楽しまないとご主人さまがかわいそうだよ」

 

愛紗「…そうですね」

 

鈴々「そうなのだ。ああ!あそこでいいにおいがするのだ!!」

 

てってってって

 

桃香「あ、鈴々ちゃん、待って!愛紗ちゃん、行こう?」

 

愛紗「あ…はい!」

 

・・・

 

亞莎「はぁあー!これが一刀様の世界の食べ物なんですね。何か丸っこいのがコマ団子みたいです」

 

亞莎「それじゃあ、いただきま……」

 

その時、亞莎は一つ大きな間違いをしていた。

 

それは、たこ焼きの屋台が回り角の先っちょにあったことにも関わらず、前を見ないでたこ焼きを口に運びながら足も一緒に囲んでいたこと。

 

そして、

 

ドーン

 

愛紗「うわっ!!」

 

亞莎「ああ!!」

 

先に行ってしまった義姉と義妹を追いかけるべく向こうの角から走っていた愛紗と見事にぶつかって倒れてしまったのである。

 

タッ

 

そして、買ったばかりのたこ焼きは虚しくも空を浮かんでは…

 

タダダダダダ

 

亞莎「ひゃうっ!!」

 

亞莎に時代にも合わない空中爆撃を仕掛けたのである

 

愛紗「だ、大丈夫か?」

 

亞莎「う、うぅぅ……」

 

泣きたくもなる状況である。

 

勝ったばかりのコマ団子、もといたこ焼きを一つも食べれず捨ててしまった上に、それを全身に被ってしまったこの災難。

 

しかもその相手が蜀の筆頭武将だときたら怒ることも厳しい。

 

これはもう遥か遠い、あの正史の恨みがまた再び彼女に下ったとしかいえない状況であった。

 

亞莎「わ、私のコマ団子が…」(違います)

 

愛紗「す、すまん」

 

亞莎「ふええ……」

 

結局泣いてしまった亞莎。

 

愛紗「す、すまん!亞莎、泣くな。わ、コマ団子なら私がまた買ってあげるから…」(だからコマ団子じゃない)

 

亞莎「ふええ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

愛紗「ほら、亞莎、買ってきたぞ」

 

亞莎を街から少し離れたところで服を拭いて安定させた後、たこ焼きを買って戻ってきた愛紗。

 

亞莎「えぐ…えぐぅ…」

 

でも、亞莎はあまりの驚きと楽しいはずだった祭りの始めをこんな風にしてしまった自分の不運さを怨むべく泣き続けていた。

 

愛紗「はぁ……ほ、ほら、落ち着け、今日はせっかくご主人さまが準備してくれたお祭りなんだぞ?泣いていたら、ご主人さまに失礼だ」

 

亞莎「…か、一刀様に失礼…」

 

愛紗「そうだぞ。ご主人さまのためにも、これから楽しまねば…ほら」

 

愛紗はたこ焼きを刺した楊枝を亞莎に出しながら言った。

 

亞莎「あ、…はい」

 

ぱくっ

 

 

 

・・

 

・・・

 

 

桃香「それで、私と鈴々が愛紗を見つけたときは、二人で仲良くたこ焼き食べていたってお話…ご主人さま?どうしたの?」

 

北郷「いや、気にするな。俺がその場に居なかったことがあまりにも悔しいだけだから」

 

愛紗「何故桃香様がその終始をご存知なのですか?」

 

桃香「星から聞いたけど「星――!!」」

 

亞莎「あ、愛紗さん落ち着いてください…あ、真桜さん、私はこの写真ください」

 

愛紗「あ、亞莎」

 

亞莎「だって、今まで愛紗さんって凄く怖い人だと思っていたのに、あの時愛紗さんが色々と助けてくれまして…、私はいい思い出だと思いますし、これからもずっと覚えていたいですから」

 

愛紗「そ、そう、か……」

 

北郷「(歴史であの仲の二人だからこそ凄く微笑ましい話だな)」

 

沙和「ああ!これも取ってあったのー!」

 

凪「なっ!これはー!!」

 

霞「うわっ、ウチと凪の早食い大会優勝した時の写真やんか」

 

北郷「ええっ!?あれって、凪たちが優勝したの?他の皆は??」

 

真桜「それがなー隊長」

 

・・・

 

・・

 

 

 

真桜「はい、始まりました。大陸の一番の多食い者を決めるこの場!第一回早食い大会!何故多食いじゃなくて早食いなのかはこの面子を見ればわかる!!」

 

真桜「さあ、それではここまで厳しい予選を超えて来た五つのチームを紹介します!先ずは蜀の小さなブラックホール、鈴々こと張飛と、西涼の錦馬超、もとい、黄金翠ごと馬超!」

 

鈴々「ブラックホール?」

 

翠「もといのところおかしいだろ、おい!」

 

真桜「二つ目は、魏の大検の春蘭さまこと夏侯惇と、また魏が誇る大食家、季衣こと許緒!」

 

季衣「春蘭さま、頑張りましょ!」

 

春蘭「うむ!」

 

真桜「三つ目は、神速の名を持つ霞姐さんこと張遼と北郷隊我が親友の凪こと楽進!!」

 

霞「ひやーなんとかここまで来れたなー」

 

凪「……」

 

霞「うん?凪どうしたん?」

 

凪「い、いえ、予選の時より見てる人多いなって……」

 

霞「そりゃまあ決勝やからなーまぁ、緊張せへんでええわ。凪はウチのチームの切り札やからな」

 

凪「は、はい…」

 

真桜「四番目は素早さでは天下一品!出戦者がないだろうと思われた呉からまさかの決勝戦進出!思春こと甘寧さんと、明命こと周泰さん!」

 

明命「頑張ります!!」

 

思春「……」

 

真桜「そして五つ目は!勘弁してくださいとのお願いも聞かずに、二人一組のこと大会でハンデとして一人で出戦しながらここまで来た!大陸で天下無双を誇ったあの人!!恋こと呂布!!」

 

恋「…お腹すいた……」

 

真桜「さて、ルールを説明します。五つの組みは、二人でペースを調整しながら次々と出てくる飲食たちを出来るだけ早く食べてください!何が出てくるかは参加者の皆さんは知りません!何が出てきても食べ切れろ!これがこの大会の一つだけのルールです!」

 

真桜「それでは始まりの銅鑼が鳴ると一緒に皆さんの目の前にある一つ目の食べ物を開くとします」

 

真桜「それでは…はじめ!!」

 

 

 

真桜「最初はかるーくいってみましょうか!十万石五十個!」

 

鈴々「うへぇ…翠、鈴々は十万石はいやなのだ」

 

翠「仕方ないなー。任せろ!」

 

季衣「春蘭さま…」

 

春蘭「安心しろ、季衣。ここは私が何とかする」

 

真桜「おっと、ここで弱音を吐くチビのお二人さん「「チビじゃないのだー!!」」うわっ!」

 

翠「はぐっはぐっ……」

 

真桜「おおっと、馬超選手はやーい!!」

 

翠「ふふーん、こんなものは食べたうちにもはいらな…」

 

恋「…次」

 

翠「何!?」

 

真桜「おおっと!!もう食べ終えた呂布選手!流石は天下無双!しかもあれだけたべといて顔色はまったく変わりはしない!!」

 

思春「次頼む!」

 

真桜「なんとー!!呉の小柄の甘寧選手、呂布選手とほぼ同じに時間に食べ終えた!!」

 

春蘭「なんだとー?!あいつらがあれだけ早く食べられるはずが!!」

 

霞「惇ちゃーん、しゃべる口があると食ったらどうや?」

 

春蘭「うぐぅ……」

 

真桜「さて、先に食べ終えた二組には次の食べ物、チャーハン特盛りで十皿が待っている!」

 

恋「……」

 

思春「……」

 

翠「くうぅ…よっし終わり!!鈴々!」

 

鈴々「おう、なのだ!」

 

春蘭「終わりだ!季衣、頼んだぞ」

 

季衣「任せてください!」

 

真桜「遅れて十万石と食べ終えた馬超選手と夏侯惇選手。まだ二国のチビたちが健在なまま。この勝負はまだ始まったばかりだ!」

 

 

 

真桜「大会が進んだところで、中間報告!総六ステージの中で現在四番目を終わらせている恋選手が一位、その後を張飛、許緒、甘寧選手が追っている!ああ、どこか一組が足りなくないか?」

 

霞「……」

 

真桜「ああ!!姐さんの手が止まっている!二つ番目のチャーハンで手が止まったー!」

 

霞「………よっし!!いっくでー!!」

 

スババババッ!

 

真桜「おお!!手が止まったと思った姐さん!すごい勢いでチャーハンを食べつくしている!その素早さ!まさに神速!!」

 

恋「…次」

 

真桜「言ってる側から五番目に入った呂布選手。次に出てくるのは何かー!」

 

恋「……!!」

 

鈴々「っ!終わりなのだー!」

 

季衣「こっちも終わり!」

 

鈴々「へへーん鈴々の方が速かったもんね」

 

季衣「ふーんだ。そんなにでたらめに食べたら落ちて食べれなくなるのが半分だもん。実はこっちの方が速いよーだ」

 

真桜「おっと、ここで張飛選手と許緒選手も五番目に入ったー!」

 

思春「次!」

 

真桜「甘寧選手も三番目終わったー!しっかし、凄い甘寧選手!今まで周泰選手の力を借りずに一人で他のチームと速度を合わせている!」

 

霞「……そろそろやな…凪」

 

凪「はいっ!」

 

真桜「おおっ!そして同じく今まで一人でやってきた姐さんが三番目を終わらせて凪ちゃんと交代!さて、楽進選手は一体どんな姿を見せてくれるだろうか!」

 

凪「……ふっ!」

 

真桜「おおっ!!アレはー!!」

 

真桜「出たー!!あれはラー油!凪選手!自分が普段持ち歩いているラー油を課題の食べ物に注ぎまくっている!!」

 

凪「はぐっ、はぐっ!!」

 

真桜「そして、食べる!素早い!あの辛いものを凄まじい勢いで食べている!さすがは凪ちゃんだ!辛いものには目がない!!」

 

 

思春「……」

 

霞「明命やー」

 

思春「!」

 

真桜「おっと、姐さん、他の選手の邪魔をするのはルール違反ですよー?」

 

霞「邪魔はせへんでー。ただ、

 

正々堂々と戦ってもらいたいだけや」

 

思春「!」

 

霞「明命やー」

 

明命「は、はいっ!」

 

霞「(小声)……見え見えやでー」

 

明命「!!」

 

霞「(小声)思春は食べるふりをしているだけ。実は後ろの明命に渡して、そして明命はそれを素早く舞台の裏に処理する……他のやつらの目は騙してもウチは騙せへんでー」

 

明命・思春「!!」

 

真桜「ああ!思春さん、手が止まったー!!」

 

思春「……棄権する」

 

真桜「なんとー、思春選手ここで棄権宣告!!これで勝負は四組勝負で…と思ったら、呂布選手も手が止まっている!!」

 

恋「……」

 

真桜「これは一体どういうことだ?」

 

鈴々「簡単なことなのだ」

 

真桜「おっと、張飛選手、それはどういう意味だ?」

 

鈴々「五番目に出てきたのはラーメン特盛りなのだ。でも、恋は箸が使えないから食べられないのだ」

 

真桜「なんとー!?呂布選手箸使いが苦手だったのかー!?」

 

恋「…食べられない」

 

愛紗(観覧席)「恋…私がそれだけ教えてやったのに…」

 

真桜「これで残りは実際三組!三組とも六番目を終わらせて後一品を終わらせている」

 

鈴々・季衣・凪「次!!」

 

真桜「ここで三人同時に終わり宣言!ラストを飾る一品は…これだー!!」

 

鈴々・季衣「!!!」

 

凪「こ、これは…」

 

真桜「街に一品料理店に特別頼んだマーボー。でも普通のマーボーとは違う。あらゆる辛い香辛料とビタビタに入れた、ちょー辛マーボーだ!!」

 

鈴々「こ、これは…」

 

季衣「見てるだけでも涙が出てくる……

 

真桜「張飛選手と許緒選手の手が止まっている。いくらこの二人でも、この難題を越えることはできないのか?!」

 

翠「ええい、退け、鈴々!ここは私が……っ!!」

 

真桜「おおっと、ここで馬超選手勇気を出してちょー辛マーボー口に…」

 

翠「からー!!!!!!」

 

バタン

 

鈴々「翠―!!」

 

真桜「たおれたー!翠選手一口でダウン!恐るべきマーボーの力!」

 

春蘭「……」

 

季衣「春蘭さま……」

 

春蘭「……くふぅっ!ここで諦めるわけには…!!」

 

真桜「夏侯惇選手も挑戦に入った!さてちょー辛マーボーに勝てるか!」

 

春蘭「くふっ!!うぅ…これしきのこと!!」

 

真桜「おお!さすがは魏の大剣!料理が減っていく!これで勝負はついたの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凪「終わり!」

 

春蘭「…へっ!」

 

真桜「勝負あったー!!最後の一品を一番速く食べ終えたのは楽進選手!これで優勝は張遼&楽進チームで決まったー!!」

 

春蘭「そ、そんな…ばかな…」

 

がくっ

 

季衣「春蘭さまー!!」

 

 

 

 

 

・・

 

・・・

 

北郷「最後のが凪が大好きな辛い料理で助かったなー…ちなみに春蘭は今…」

 

秋蘭「華陀に言われて安定している。胃腸に穴ができたそうだ」

 

北郷「うわ……」

 

凪「あれだけ美味しいマーボーは初めてでした。後であの料理店に行って、またつくってもらいたいと思っています。その時は隊長も是非一緒に」

 

北郷「い、いやー、それは遠慮しておきたいかなー」

 

胃に穴が開けるほどの辛さって…

 

霞「凪のおかげでウチも優勝賞品もらえたしなー」

 

北郷「賞品ってなんだったの?」

 

凪「いくつかの中で優勝者が決める仕組みでしたけど、霞さまはお酒一年分を…」

 

霞「居酒屋で酒呑み放題だってなー!」

 

北郷「よ、よかったな」

 

店主哀れ…

 

思春「……」

 

明命「思春さん、何見てるんですか?」

 

思春「…いや、別になんでもない」

 

明命「あ、これって、甘述ちゃんが泥棒を捕まえた時の写真ですね」

 

北郷「ええっ!? 甘述が!?思春、 甘述一人で街行かせたの?」

 

思春「そんなわけがあるか!」

 

明命「祭りであまり人が多すぎたせいで 甘述ちゃんのことを見失ってしまったのです。探した時は、祭りで人たちの財布を狙っていた巾着きり一人を捕まえていて…」

 

北郷「マジかよ…」

 

思春「周邵も一緒だっただろ」

 

北郷「周邵も見失ってたの!?」

 

明命「ごめんなさい!」

 

・・・

 

・・

 

 

 

母たちと逸れてしまった甘述と周邵二人。

 

周邵「甘述お姉ちゃん、どうしましょう…」

 

甘述「大丈夫だろ。母親たちもどこかで私たちを探しているはずだ。こんなところでは私たちの姿を探しにくいから、屋根の上とかにでも行くとしよう」

 

周邵「は、はい」

 

スッ

 

母女相伝、というところか。まだ小さいというのに素早い動きで屋台の屋根の上に上る甘述と周邵。

 

甘述「ここを回りながら、私たちも母たちを捜すとしよう」

 

周邵「むやみに動くより、大人しくしていた方がいいんじゃないでしょうか」

 

甘述「『迷子になっている人たち』だ。どこに動くか解らないし、ここに待っていてこっちに来るという保障もない」

 

周邵「……へ?」

 

甘述「何だ?」

 

周邵「い、いえ、なんでもありません」

 

考えることが子供なのか子供でないのかよく解らない甘述ちゃんであった。

 

母に似ているのは確かだ。

 

甘述「確か母たちを見失ったのはあそこ辺りだったな。先ずはあそこから探すとしよう」

 

周邵「はい」

 

スッ

 

そして二人は軽い歩きで屋台の屋根たちを飛び跳ねながら母たちと逸れてたあの場所に向かうのであった。

 

 

周邵「お母さまー!!」

 

甘述「……」

 

周邵「あうぁぅ…こんな人群れの中では探したくても探せませんよぉ」

 

甘述「…(ブルブル)」

 

周邵「甘述お姉ちゃん?」

 

甘述「!な、何だ?」

 

周邵「…もしかして、泣いてるんですか?」

 

甘述「ば、馬鹿。泣くわけないだろ。は、早く迷子になった母たちを捜さないと」

 

所詮は子供な甘述ちゃんでした。

 

でも、本当にもうそろそろ二人とも限界です。

 

こんなにぎやかなところで母たちを失えば、不安で不安でどうしようもないのは、親も子も一緒です。

 

周邵「甘述お姉ちゃん……うん?」

 

甘述「どうした?探したのか?」

 

甘述お姉ちゃんが必死な声で聞いたが、どうやら周邵が見つけたのは他のものらしい。

 

周邵「甘述お姉ちゃん、あの人、人の財布に手を出してる」

 

甘述「!!巾着きりか」

 

周邵「どうしよう、甘述お姉ちゃん」

 

甘述「決まっている。母たちは後だ。父が広げたこのお祭りを汚すやつらをほおっておくわけにはいくまい」

 

周邵「そうですね。でも、お祭りだから大丈夫だと思って、手裏剣とかも持ってきてないのに…」

 

甘述「…あれだ」

 

周邵「へっ?

 

甘述ちゃんが指したのは、屋台にあるたこ焼きを刺すときに使う長い楊枝。

 

甘述「あれを使えばいい」

 

周邵「あ」

 

甘述「しかし、こんなに人が多いのに、あいつに投げられるかどうか…」

 

周邵「大丈夫です。私、自身あります!」

 

甘述「そうか、じゃあ、頼んだぞ?」

 

周邵「はい!」

 

 

 

 

 

 

すり「へへへ、こんな騒いでいて、自分の財布が奪われるのも知れないなんて、今日は運がいい。ありがとうよ、大陸の種馬さま)

 

スッ

 

グサッ!

 

すり「くいぃっ!!手がー!」

 

周邵が投げた楊枝は、人群れの中の巾着きりの手に見事に命中した。

 

そして次々と他の手、腕、肩を狙う楊枝。

 

すり「ぐわっ!」

 

手裏剣ではなく木で作った楊枝だと言え、すごい速度で投げられる楊枝は容赦なく巾着きりの皮膚に刺さるのであった。

 

すり「に、逃げよう!」

 

どこにいるか知らない敵から逃げようとする巾着きりだったが、

 

甘述「はああぁっ!」

 

すり「うわっ!!」

 

逃げるところの屋台で待機していた、甘述、巾着きりのところに飛び込み、足で首を挟み、両腕で頭を捕まえて、

 

 

クギッ!!

 

すり「ぐぅ…」

 

バタン

 

甘述「……ふう」

 

良い子の皆は真似しないようにね。下手すると相手死ぬから。

 

 

 

 

 

 

 

思春「甘述―!!」

 

明命「周邵さーん!!どこに居ますかー!」

 

そして必死になって見失った子供たちを探していた、

 

周邵「お母さまー!」

 

明命「!!周邵さん!って…」

 

思春「甘述!お前…」

 

甘述「……」

 

母を見て直ぐに行動を見せない甘述ちゃんであったが…

 

周邵「甘述お姉ちゃん」

 

甘述「……お母さーーん!!!」

 

直ぐに素直に母のところに走っていく甘述ちゃんであった。

 

思春「甘述…」

 

甘述「うぅ……えぐ……」

 

思春「…よし…もう大丈夫だ」

 

明命「ああ!あんなところに人が倒れています!」

 

周邵「甘述お姉ちゃんと私がしました。人の財布盗んでいると捕まえました!」

 

明命「ええっ!?二人で!?」

 

 

・・

 

・・・

 

 

 

北郷「そんなことが……」

 

思春「あの場では厳しく叱っていたが…正直誇らしいものだ。もうそんなこともできるようになったなんて」

 

明命「これから我が呉を支えていく子たちになるでしょう」

 

北郷「ああ、後であの子たちにも行ってみるよ」

 

思春「ふっ、自慢げに話すだろうな」

 

 

 

 

 

北郷「でも、本当に皆色んなことがあったんだね。俺は裏で助け事してあまり皆と遊べなくて心配してたのに…」

 

桃香「そうだよ。私たち皆、ご主人さまと遊ぶの楽しみにしてたのに」

 

鈴々「鈴々、お兄ちゃんと一緒にりんご飴食べたかったのだ」

 

亞莎「でも、一刀さまのおかげで、皆いい思い出を作ることができました。一生忘れません」

 

霞「せやなー、楽しかったなー。お祭り…これって来年にもまたやるんやろうな、な?」

 

北郷「どうだろうね…俺はあまり遊べないし、疲れる嫌だなーー」

 

皆「ええええーーー!!?」

 

 

 

 

 

北郷「冗談だよ、冗談!来年もまたやるよ、やるって!」

 

 

 

夏の忘れない思い出。

 

それが特別に感じられるのは、

 

その夏がもう終わるという事実と、

 

そしてまた次の夏が来るということを知っているからであるだろう。

 

 

 

俺たちの外史は終わることを知らない。

 

次から次へと芽生えて行くだろう。

 

いつか終わりを告げたら、また新しい話が始まる。

 

終わりがまた新しい物語の始まりだということを知っている故に、

 

俺たちは、この終わりが惜しくても、惜しくない。

 

 

 

北郷「来年、楽しみだな…」

 

 

 

 


 
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