No.165090

それがあなたの望むことならば~雛から凰まで~六.五歩

TAPEtさん

奏を朱里視点で見てみました。

2010/8/14 小作業

2010-08-11 22:39:10 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2706   閲覧ユーザー数:2332

お揃いの服

 

この前街の服屋さんに頼んだ一成ちゃんのようの制服が完成しました。

 

「わーい、鳳統お姉ちゃんとお揃い」

 

「嬉しそうだね。一成ちゃん」

 

「うん」

 

「キャハハー子供みたい」

 

側でお茶をしながら私と朱里ちゃんと奏ちゃんは、その姿を見守っていました。

 

「子瑜お姉さん見て、いいでしょー」

 

「ええ、よく似合うわね」

 

「だね、だねー♪」

 

「でも、何でそんなに私と同じ帽子が欲しかったのかな」

 

「「……」」

 

その時、二人ともお茶を飲んでいた口をぽかんと開けて私の方を見ました。

 

「あわわ?二人ともどうしたの?急に黙り込んで」

 

「な、何でもないよー」

 

「キャハー、それはね、泡ちゃん…」

 

奏ちゃんが何か言おうとした時、

 

「鳳統お姉ちゃん」

 

「あ、一成ちゃん」

 

「お帽子、お揃いだね」

 

「うん、そうだねー」

 

「えへへー」

 

「えへへー」

 

一成ちゃんが無邪気に笑うのを見て、私も笑ってしまいました。

 

 

 

抱っこしてみたい

 

朱里side

 

塾の制服を着るようになってから、一成ちゃんは前よりも雛里ちゃんに懐くようになりました。

 

てってってってってっ

 

てってってってってっ

 

「何かね、母が行くところを何処までも付いていく雛みたい」

 

資料を分けて持ってあっちこっち歩いている二人を見ながら、奏ちゃんはそういいました。

 

「そうだね」

 

側で見ていると、凄く微笑ましいです。

 

「急いでる時には帽子が落ちないように捕まって走るのもそっくりだね」

 

「へへっ、何か本当にお揃いの姉弟みたいだね」

 

「……ねぇ、孔明ちゃん」

 

「何、奏ちゃん」

 

「もし、奏は今走って行って一成ちゃんを抱きしめたら泡ちゃんどんな反応するかな?」

 

「その前に一成ちゃんが捕まらないと思うけど」

 

「今の一成ちゃんなら大丈夫な気がするよ」

 

「ふーん、やってみたら?」

 

「じゃあ、奏行ってきまーす」

 

半分冗談で答えたら(あの時は、私も何か癒されていて、自分が何を言ったのか解りませんでした)、奏ちゃんは本当に一成ちゃんのところに行きました。

 

「かーずなりちゃーん」

 

「ピイイィィィーー!!!」

 

「あ」

 

 

 

近づくには恐ろしすぎるあの人

 

雛里side

 

「ひっく…ひっく…」

 

「よしよし……」

 

一成ちゃんが私のところにくっ付いてきて泣きついてきたので、慰めています。

 

「キャハハー」

 

「わらうんじゃねぇーー!」

 

本人は凄くいやそうです。

 

「でも一成ちゃん、どうしてそんなに奏ちゃんのこと嫌いなの?」

 

「うぅぅ……だって、怖いもん…」

 

「キャハー、奏のどこがそんなに怖いの?」

 

「……存在」

 

「キャハ?」

 

「ピイィィー!!」

 

もうダメっぽいです。

 

 

子供を懐かせるためには?

 

朱里side

 

「どうすれば、一成ちゃんが奏のことも泡ちゃんや孔明ちゃんみたいに好きになってくれるかな」

 

「きっと初対面があれだったのがいけなかったのよ。子供だから一度張った警戒を解けるのは難しいと思うよ」

 

「でも何か方法があるはずだよー。孔明ちゃん何か良い方法ないの?」

 

「そうだね…」

 

一成ちゃんは時には色々と良いことを言ったりもするけど、結局はその年頃の子供とそう変わらないはず。

 

「おいしいものとか作ってあげたらどうかな?」

 

「キャハ?逆効果じゃないかな。この前桃饅頭のこともあるし。余計に悪化するかも知れないよ?」

 

「そうかも知れないけど、やっぱ子供だし、ほら、一成ちゃんそんなのあまり深く恨みに思ってるような子じゃないから」

 

「うーん、じゃあ、孔明ちゃんの言うとおりにしよっか。孔明ちゃんもちょっと手伝ってくれる?」

 

「うん。あ、でもやっぱ桃まんはやめたほうがいいかな」

 

「キャハハーさすがに桃まんにはしないよー」

 

・・・

 

「キャハー、やっぱり手伝ってくれる人がいるといいね」

 

「奏ちゃんは本当にお菓子作り上手だね」

 

「まぁ……ねぇ、母様に全部習ったんだけどね」

 

「あ」

 

奏ちゃんの暗い過去を思い出させちゃったみたいです。

 

奏ちゃんのお母さんは、家の中で首を絞って自殺したそうで、奏ちゃんはその姿を自分の目で見たようです。

 

それが衝撃になって、死ぬ寸前まで行ったところを、水鏡先生がここに連れて来たのです。

 

「ごめん」

 

「キャハー、何で謝るかなー。さあ、早く一成ちゃんのところに行こう?」

 

「あ、うん」

 

 

 

元直の罠

 

 

「じゃあ、孔明ちゃん、これ、一成ちゃんにあげて」

 

「へっ?」

 

お菓子の皿を持って一成ちゃんと雛里ちゃんが勉強をしているところの近くにまで来た奏ちゃんは、皿を私に渡しながらそういいました。

 

「だってー、奏が持っていたらろくに話もする前に逃げられちゃいそうだもん。お菓子も多分食べてもらいないしー」

 

「で、でも」

 

「大丈夫だから。奏は後で行くから。あ、お菓子は孔明ちゃんが作ったように言って」

 

「あ、うん…」

 

・・・

 

「二人ともちょっと休憩にしない?お菓子作ってきたよ」

 

皿を持って、私は二人が勉強をしているところにいきました。

 

「あ、孔明お姉ちゃん」

 

「朱里ちゃん」

 

同じ帽子(魔女っこ帽子と一成ちゃんは言っていた)二つが同時にこっちを向きました。

 

「はわっ!」

 

え?何ですかこれ?

 

「「何?どうしたの?朱里ちゃん(孔明お姉ちゃん)?」」

 

二人ともそんな目で同時に私を見つめないでー///

 

「はわわ…お、恐ろしい破壊力」

 

「「うん??」」

 

「はわわー!」

 

奏ちゃん、まさかこうなると知っていたの!?

 

 

奏のやり方

 

「おいしい!孔明お姉ちゃんのお菓子はいつもおいしいね」

 

「朱里ちゃん一人で腕上げちゃったね」

 

「そ、そうかな」

 

二人とも奏ちゃんが作ったものとは知らずに美味しく食べています。

 

…別に奏ちゃんが作ったからって何か変なのが入ってるわけじゃないですよ?私が側で手伝いましたから間違いない…と思います。

 

「鳳統お姉ちゃんが作ってくれたお菓子もおいしいけど、孔明お姉ちゃんのもおいしいね」

 

「あ、ありがとう」

 

何かグサッて来ます。

 

私、ここまでうまくないのに。

 

実は雛里ちゃんと同じぐらいなのに。

 

「かーずなーりちゃーん」

 

「ピイイィィィーー」

 

その時、後ろからこっそり近づいて来た奏ちゃんが、片手で一成ちゃんの肩をそっと触りました。

 

「キャハハー」

 

「奏ちゃん…」

 

「キャハー、ごめん。だって、一成ちゃんみたら虐めたくなるもん」

 

「鬼ぃー!」

 

雛里ちゃんの後ろに隠れて帽子を被ってカタブルと震えている一成ちゃんを見ていると、奏ちゃんのその気持ちが解らなくもないです。

 

「あ、お菓子、奏も食べてもいい?」

 

「いいよ」

 

私に断わってから奏ちゃんは自分が作ったそのお菓子を一つ口に入れました。

 

「ん…おいしいね」

 

「あ、当たり前でしょ?孔明お姉ちゃんも鳳統お姉ちゃんも、お菓子作りうまいもん」

 

雛里ちゃんの後ろで一成ちゃんがそういいました。

 

怖くても言うことは言うつもりらしいです。

 

「ふーん、でも奏はこれよりずっと美味しくつくれるもんねー」

 

「なっ!」

 

「じゃーん、食べて見ればわかるよ」

 

そういいながら、奏ちゃんはどこから持ってきたのか他のお菓子の皿を持ってきました。

 

奏ちゃん、もしかしてあれからまた作ってきたの?

 

「奏ちゃんもお菓子作ったの?」

 

「うん、泡ちゃんも食べて見て」

 

「奏ちゃんが作ってくれたのは、あの時以来初めてだね。あの時は食べられなかったけど」

 

あの桃まん事件の時は、その後桃まんが食べられなくなってました。

 

ちなみにその後一成ちゃんが桃まんを嫌いになってまた作ってあげたことはありません。

 

「……あ、おいしい」

 

「え?鳳統お姉ちゃんほんと?」

 

「うん、一成ちゃんも食べて見て」

 

雛里ちゃんが先に一つ食べて、一成ちゃんにも一つあげました。

 

「……」

 

むしゃむしゃとお菓子を食べた一成ちゃんは、

 

「……おいしい」

 

「キャハー」

 

意地を張らずに思うまま言うところが一成ちゃんらしいです。

 

「でも、孔明お姉ちゃんの方がおいしいもん」

 

「な、にー!」

 

…そうでもないみたいです。

 

 

 

「でも、何でそんなに遠回しな方法使ったの?」

 

その後、奏ちゃんに何でまたつくりに行ったのか聞いて見ました。

 

「だって、そのまま奏が持って行っても、一成ちゃん食べてくれないもの。食べても素直な感想なんて出るはずもないしねー。だから、わざと孔明ちゃんのよりも奏のが美味しいよって一成ちゃんに反発するように仕組んだの」

 

「なるほどー」

 

「キャハー、奏は奏が作ったお菓子を美味しく食べてくれるのだったら、一成ちゃんが孔明ちゃんが作ったのに思っても別に関係ないけどねー」

 

「へ?」

 

「でも、こうしたほうが面白いでしょ?奏は一成ちゃんが泣く顔が見たいのー」

 

「奏ちゃん……」

 

やっぱり奏ちゃんは考えの回路が私たちと一線か二線ぐらい違ってるような気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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