「おや、あれは愛紗だな」
汜水関より連合を見下ろす星は、連合の先頭に立つ黒髪の麗人を発見する。
「それって真名だよね? でも劉旗があるからあれは劉備軍の関羽かな?」
「その通りですぞ。おそらく弱小勢力の劉備軍が先頭に配置されたようですね」
「へぇ。それじゃあその隣にいる赤い服の人は誰なの?」
「あれは孫堅の娘の孫策だぞ」
一刀の質問に答えたのは華雄だった。
「奴の母とは少し因縁があってな」
「そうなんだ~。ということは孫策軍と協力しているのかな」
しばらくすると関羽と孫策による挑発が始まった。
主に華雄を侮辱するものだったが。
「許せん! 私の誇りをここまで穢すとは!」
「ま、待ってよ華雄お姉ちゃん! ここで相手の挑発にのっちゃダメだよ!」
「いくら一刀くんでも私の武をバカにする奴は許しちゃおけん!」
一刀の静止を振り切ってまで出陣しようとする華雄。
そこで一刀は華雄に抱きついた。
「俺は華雄お姉ちゃんが強いってことを知っている。……それじゃダメかな?」
上目遣いで華雄を見つめる一刀。
「ふふん。あんな奴らの挑発に乗るわけないじゃないか。はーっはっはっは!」
なんとか留めることに成功したのであった。
「むぅー。なかなか出て来ないわねー」
「はい。己の武に誇りを持っているという華雄なら出てくるかと思われたのですが……」
挑発が不発に終わった孫策――雪蓮と関羽――愛紗は策が外れどうしたものかと考える。
「あら? 誰か出てきたみたいよ」
雪蓮は汜水関に立つ人物に気付く。
「あれは…………子供か?」
そう。
我らが北郷一刀である。
「なんでこんなところに子供が…………まさか」
「どうされたのだ孫策殿?」
「ねえ関羽。確か天の御遣いは子供って噂よね」
「そういえばそうでしたね。…………もしやあの子供が!?」
「多分ね。天の御遣いにも袁紹の檄文は届いただろうからこっち側にいないとなると董卓側に着いたってことね。それに黄巾党の本隊を倒したのは董卓と天の御遣いって聞くし」
「な、なるほど。しかし何故大陸を平和に導く天の御遣いが暴政を布く董卓に……」
そこで愛紗は一つの考えに至る。
「もしや董卓の暴政の事実などは嘘なのか?」
「十中八九そうでしょうね。元々檄文の内容も怪しい物だったし」
事実を知った関羽は大きなショックを受ける。
それもそのはず。
民のために立ち上がった自分たちが、逆に平和に暮らしている者たちを脅かしているのだから。
「義のために立ち上がった我らがこんなことをすることになるとは……」
俯き、悔しそうにする愛紗。
「関羽。今はそんなことしている暇はないわよ。戦は始まってしまったのだから」
「しかし、これでは桃香様の理想とは全く違うものだ!」
「だったら連合を裏切るの? それはそれで義を失うわよ」
「ぐっ……」
何も言い返せない愛紗だった。
「俺の名前は北郷一刀! この大陸を平和に導くためにやって来た天の御遣いだ!」
汜水関の上に立つ一刀は自分が出せる精一杯の声を出す。
「嘘の檄文によって集まった連合軍たちよ、よく聞けっ!」
小さいながらも頑張るその姿に敵味方問わずこう思った。
『可愛過ぎる』
「董卓の暴政など事実無根である! お前たちは朝廷に仇なす、所謂朝敵である!」
朝敵、と言う言葉に衝撃を受ける諸侯たち。
力を失いつつあるとはいえ、まだまだ漢王朝の名は良くも悪くも影響力が残っていた。
それは総大将である袁紹も例外ではなかった。
「そ、そんなことありませんわ! 董卓さんは民を虐げている悪い人ですわ。名家の私が言うのですから間違いないですわ」
袁紹では諸侯たちの動揺は収まらなかった。
「すでに連合は組まれ、洛陽に攻め込もうとしている。その時点で董卓に国を取り仕切る資格はないわ」
それを発するは曹孟徳。
「それに天の名を冠するあなたこそ朝敵ではなくて?」
「そうですわ! 天を語るなど言語道断ですわ!」
曹操――華琳の援護により調子を取り戻す袁紹――麗羽。
上手い事かわされた一刀はもはや戦うしかないと悟る。
「分かった。ならば天の力を持って連合軍を倒して見せよう!」
戦いは避けられないものとなった。
一旦自軍に戻ることにした二人。
「関羽、あなたたちはどうするの?」
「はぁぁぁぁ~」
「ダメだわ。完全に堕ちたわねこの子」
雪蓮は恍惚の表情を浮かべる愛紗を見ながら一刀のことを思い出す。
「確かに可愛かったわね……。…………天の血を孫呉に……。ダメよ雪蓮、相手は子供だわ!」
雪蓮は雪蓮で何やらよからぬことを考えていた。
「朱里ちゃん、あの子可愛かったね…………じゃなくて! 董卓さんが民を虐めてないって本当なのかな?」
劉備――桃香は、自軍の軍師の諸葛亮――朱里に尋ねる。
「そうですね……。檄文の内容はあまりに一方的で信憑性のないものでしたけど、黄巾党を討伐した実績を持つ天の御遣いが董卓さん側に着いたとなるとその可能性は高いと思います」
「やっぱりそうなんだ……」
朱里は悲痛な面持ちで桃香を心配する。
「私、どうしたらいいのかな?」
「あわわ、既に連合を裏切ることは出来ない状況になっています」
鳳統――雛里が答える。
先程の華琳の論いによってさらに厳しくなったのである。
桃香も愛紗と同じく自分たちに義がないことを分かっていた。
「私は董卓さんを助けたい」
この状況においてのその発言は桃香をして劉玄徳たらしめるものだった。
「……一つだけ連合を抜ける方法があります」
「本当に朱里ちゃん!?」
「……はい。それは――――」
「ダメよ華琳! あなたは大陸の覇者になるんだから!」
誰もいない天幕で自分を叱責する華琳。
「北郷一刀くん……か」
あの小さな少年を思い出し、可愛そうなことをしてしまったと少し後悔する華琳。
「し、仕方なかったのよ。私はこんなところで止まるわけにはいかないのよ! そうよ華琳! 頑張りなさい!」
なんとか自分を奮い立たせる華琳。
「そうよ。そして一刀くんもきっと手に入れてみせるのよ!」
一刀を手に入れることを決意する華琳。
「行くわよ華琳! 負けるな華琳!」
「結局戦うしかないっちゅうことやな」
「そのようですね」
「基本的に籠城ですが場合によっては打って出たり虎牢関に退いたりするので臨機応変に動けるようにしてくださいねー」
「任せておけ!」
「やれやれ。どの口がそんなこと言うのですか」
「…………へぅ」
「恋よ、それは月の台詞だ」
汜水関にいる者たちは一刀の立派な姿に士気が高まっていた。
「みんな、頑張ろうね!」
『おう!』
<おまけはお休み>
「朱里、雛里、詠、ねね、桂花、風、稟、冥琳、穏、亜莎!」
「はわわ!」
「あわわ!」
「なによ」
「なんのようです」
「うっさいわね精液」
「ぐぅ」
「プハッ」
「なんだ」
「はいです~」
「なんでしょうか?」
真・軍師†無双 ~策がなかなか決まらない~
こんなやつを一瞬書こうと思ったけど無理ですねw
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この作品にシリアスを求めたら負けです。