No.164093

デペイズマン・シード 1st season;

リリカルなのはA's後×デジモンアドベンチャー(ただし時間軸は02後:ED展開無視)八神つながり 真面目に連載第①話
既にシュチュエーションで遊んでみる③で書いていますものの再編集・加筆修正版となります。

CP等設定一切無し。5部作予定。第1部

2010-08-07 23:35:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5299   閲覧ユーザー数:5106

 

 

 

「太一。週末なんだけど・・・・・」

 

帰り際。

友人が言いかけた言葉に、太一は申し訳なさそうにその言葉に声をかぶせた。

 

「あ、わり。今週末、オレ駄目だ。親戚の子のお見舞い」

「お見舞い?」

 

意外そうな口調を隠そうともせず、その単語を鸚鵡返しにした空に、太一は鼻の頭を掻いた。

自分でもあまり見合う科白じゃないなとでも感じたのかもしれない。

 

「ん。ちょっと遠いトコに住んでいる奴でさ。

せっかく部活もないしってことでヒカリといこうって」

そういえば校庭に土だか砂だかが入るとかはいらないとか。

今の自分には疎遠な校庭事情を、HRできいたことがあるような気がする。

それに親戚ともなれば、顔見知りでもない人間が同行していいものでもない。

空はポケットの中にあった、"たまたま"手に入ったサッカーの試合のチケットを軽くその手で確認しながら、黙っていたほうがいいだろうなと笑って流す。

余計なことを悩ませてしまう必要もないだろう。

これは大輔たちにでもやろうと思いながら、病院で騒がないでよ、と子ども扱いだといわれるのが判っている注意を彼に投げて、わかってらぁ、という文句を聞いて、それでその話はおしまい。

 

「あぁ。わりぃな、空」

 

背を向けたときに投げられた一言なんて、彼女には聞こえない。

 

 

 

 

 

 

  デペイズマン・シード 1st season;

 

 

 

 

 

 

翌日。

ガラス越しに差し込む日の光は穏やかで、その振動と共に眠気を誘う。

まさに誘惑と言っていい電車でその町に着いた八神兄妹は、徒歩で海岸線を歩き、その病院にたどり着いた。

普通知らぬ土地であるなら、タクシーやせめてバスをと思う程度を持つ距離だったが、天気もよく、急ぐわけでもなかった二人は歩くことを選んだのだ。

どちらも言いはしなかったが、眠気覚ましも伴っていたかもしれない。

 

その役目柄もあって目的地は比較的大きな総合病院だった。

20分程歩いてみつけたそこに立ち入り、受付で彼女の病室を確認してからエレベーターに乗り込む。

程なくしてたどり着いた病室のドアを叩くと、久しぶりの声がのんびりと「どーぞー」と招きいれてくれる。

間違いのないいとこの声に、備え付けられているアルコール洗浄液でおざなりにとはいえ手を洗ってから、その扉を開けながら、声をかける。

 

「はやて」

「はやてちゃん!」

「太一兄、ヒカリちゃん」

 

白い病室で、ぱっと明るい笑顔が兄妹を迎える。

きれいなボブカットが少しだけ揺れて、半分起こされたベッドの上いる割りには、その顔色は比較的よさそうだと一見で判断するが、奥にはいつもの、彼女の相棒とも言うべき車椅子がある。

微笑む少女の元に、ヒカリが小さな音を立てて駆け寄っていった。

躊躇い無くそっと重ねられた手は、アルコールのせいか、少しひんやりして。

 

「ごめんね、はやてちゃん。あんまり来れなくて・・・」

「そんな。きてくれただけで充分嬉しいわぁ。

お台場からなんてけっこうかかるンやし・・・ホンマうれしい」

 

心からされる告白は彼女の意志そのものだ。

ソレより疲れたやろ?

続いた言葉のまま、お茶でも入れようとしているのか、身体を起こそうとする少女に、太一が慌てて制止の声を上げた。

 

「あ、無理に起きるなよ、おかまいなく」

 

何せ彼女は「入院」しているのだ。

そんな少女に仕事をさせては八神家の名折れだ。多分。

だが彼女は胸を張ってへーきやよぅ、と笑う。

 

「ホント、大丈夫なんよ。今回のやって単なる検査やし」

「検査?また悪いの?」

 

ヒカルが殆ど泣きそうにはやてに聞くが、彼女はむしろ嬉しそうに微笑んだ。

それは「原因不明」・「不治」であることを聞いていた彼らにとっては想わぬ意味を伴って。

「ううん。逆なんよ、ヒカリちゃん。やっぱお茶いれるね」

「え、わわ、わたしがやるよ、はやてちゃんっ」

「へいきへいきー」

 

太一が制したのを応じるように、がっちり握っていたヒカルの手を上手にそっと解いて、彼女は本当に手馴れた様子でベッド脇においてあったポットに手を伸ばす。

これ以上の制止は逆に無理だと悟ったか、太一は息をついて話題に切り替えた。

 

「それより、逆ってなんだ?お前のって原因不明って言ってなかったか?」

「お兄ちゃん!」

 

さすがに、直球直接過ぎた問いに妹の非難じみた声が上がるが、本人はあくまでも穏やかに微笑む。

 

「んー、せやねぇ。ま、色々あってん」

「色々?」

「せや、色々」

 

説明する気が全くないというか、必要ないとでもいいそうな彼女の様子に、さてどういう意味だと答えがあるとは思えない謎々に戸惑った兄妹が顔を合わせた。

そこでがちゃり、と扉が開く。

びっくりした二人の目線の向こう、落ち着いた雰囲気を纏った、ポニーテールの女性がいた。

医者だったら、多分彼らはこんなに驚いていない。

医者だったらするはずもない、その人物が「気配を消して」扉を開けたものだから、驚いたのだ。

いくら悪意や敵意がないにしても、彼らにはそれこそ非常識なレベルのサバイバル経験がある。

生き物の気配には敏感な自信があったものだから、それはショックだったのかもしれない。

しかもそこに立っていたのは知らない顔で、しかもどう贔屓目に見ても日本人には見えなかったのだから戸惑いは上塗りされる。

だがそんな彼らに反し、従姉妹の表情ははっきり彼女を受け入れていた。

 

「あ。シグナム」

「主はやて」

 

・・・・・・・・・・・はい?

兄妹の戸惑いが、その単語に別の色を帯びた。

っていうか。

 

「・・・あるじぃ?」

「あー。シグナム」

 

奇妙な言葉に本人は当たり前に笑顔で応えたが、来訪者は戸惑い気味に先客を観る。

微かな警戒の目に、兄妹は気付いたがなにも言わない。

 

「そちらは?」

 

固い声は仕方ないのか、むしろ自分たちが上げるべきなのか。

この場でのほほん、としているのはこの部屋のかりそめの主人だけだ。

 

「あぁ。この子らは親戚の・・・」

「八神太一です」

「ヒカリです」

 

やよ、という少女の声にあわせたように、それでも緊張を押し殺して頭を下げた二人の子どもに、彼女は緊張気味に自分を名乗ろうとする。

 

「わたしは・・・」

 

それを、どういおうとしたと思われたのか。

 

「わたしの家族のシグナムや」

 

まるで彼女の言葉を遮るように、はやてがそう紹介した。

言葉に対して微かに驚いている彼女の表情を見逃して、太一は記憶を探る。

「・・・あぁ、例のはやての面倒見てるって言う外国のおじさんの関係か?」

「あー、まぁせやなぁ。まちがっとらんと想うで、それ」

「・・・・・・」

 

どうにも引っかかる、微妙な表現。

だが、ヒカリはそれらを差し引いても強い目線で異国の名を持つ女性をじつと見つめた。

 

「ヒカリ、さん?」

「あ、すいません、美人だなーって想って」

 

シグナムという女性からの戸惑いの声に、少女が切り返す。

ほんわりと微笑む言葉に、偽りはないが総てとも思えない。

だが、太一もはやてもそれを肯定して噴出した。

 

「そうだよなー」

「せやろー」

 

太一は少年らしい素直さで肯定し、はやては自慢するように胸を張る。

 

「・・・・・・・・」

 

一人生真面目さが祟った女性が立ち往生するが、不意に妹が兄に目線を投げた。

短いそれを正確に解し、兄はちょっと下の売店いってくると立ち上がる。

 

「あ、おにーちゃん。ついでにアイスw」

「へーへー」

 

彼女にしては酷く珍しいわがままを背中に受けながら少年が部屋に出る。

わーかりました。

素直に部屋を出る兄を見送った少女は、再び彼らに向き合う。

今のやりとりがいささか芝居がかり、彼が外に出る理由であると悟れないほど鈍い人間はここにはいない。

些か背筋を伸ばしながら、先ずはやてが確かめるように彼女の名を呼んだ。

 

「ひかりちゃん」

 

そうして受け止める目線は少々警戒を含めたもので、だから少女の目線はまっすぐそれに返す。

言葉ではなく、なんら問題はないのだと伝えるために。

それでも大切な従姉妹だ。

彼女はわかっていて、言葉にする。

 

「うん、ごめんね、はやてちゃん。聞いていい?」

「・・・・・・・・うん。えぇよ」

どんな言葉が来るか、彼女にはわかっていた。

わかっていたから肯定して、果たして形になる。

 

「"どなたですか?"」

「ッ!!」

 

肩を大きく揺らしたのはシグナムだ。

だがはやてはごく自然に微笑んで、いったやろぅ、とのんびり告げる。

 

「家族、やよ。ヒカリちゃんの心配することなんてひとっつもないくらい、私の大切な・・・」

 

ヒカリは尚も重ねようとするはやての言葉を遮って、ゆったりと微笑んだ。

 

「そうなら、じゃぁもう私はなにも聞かない」

 

はやてもまた、その言葉に満足そうに頷き、心から「おおきに」と言葉を返す。

少女が二人、にっこりと笑いあっている。

微笑ましい光景であるはずなのに、歴戦の戦士たる女性には緊張が走る。

それは恐らく、彼女が「強いから」こそ感じ取られたものであったのだろう。

 

「あ、私お手洗い借りてくるね」

「んー」

 

だからそんなさりげない提案が、恐ろしいほどの安堵を彼女に与えるのだ。

わざわざ個室で部屋についているのを知っていて、共同のものへと廊下へ踏み出した彼女を、二人も止めない。

それが判っていて、遺された主従は目線を交わす。

 

「主はやて」

「ん、ま、ヒカリちゃんは特別やな。っかし益々不思議めいてく子やねぇ」

 

怖い子じゃないんやけどねぇ。

緊張している彼女に対して大丈夫だといいたいのだろう。

それを察して尚、彼女は謝罪を合えて口にする。

 

「申し訳ございません。配慮なく訪問してしまって」

「そない言わんといて。シグナム。

誰がなにを気にしようが、私は誰にだって胸を張っていってみせる。

私は、みんなの家族やって。ほんで家族に会うのに配慮もなにもないんやん?」

「・・・・はい」

 

応じた彼女の声は、既に戦士のものではなく「八神家」の一人の、柔らかなものだった。

 

 

 

 

 

一方兄は時間を計りながら、売店のコンビニ値段なアイスをいくつかあさっていた。

どれとはいわれなかったが、ここは人数分買うべきだろう。

 

(必要経費・・・・・・にゃならんだろうなぁ)

 

仕方が無い。

追い出されたカタチというかなり不条理な立場ではある気がるするが仕方ない。腹を括るか、と伸ばした手が、ぶつかった。

 

「あ」

「それ、私がもらう」

 

短い科白と示すものはすぐにわかった。

 

「え?あ、まぁ、うん」

 

きつめの目線を持ったみつあみの少女が、太一の肯定を確認してから、自分が手にしようとしたアイスを勢いよく奪っていく。

その味に対しては最後の一個だったようだが、別にこだわっていたわけではない。

「自分より年下の少女」に譲るのに小意地になるほど子どもでもない。

文句を言われるという想像があったのか(だとしたらよっぽど譲れなかったということか)一瞬きょとんとした彼女はだがサンキュ、と笑ってがっつりとソレを自分の手元に引き寄せた。

 

「へっへ」

 

嬉しそうにカウンターに向かっていく少女を見送ることも無く、さて本当に適当にいくかと手に取ったところで、不意に後ろ裾を引っ張られた。

 

「へ?」

 

振り返ると今しがたの少女が、びっくりする位沈んだ顔でそこにいた。

手にはアイス。袋もなければシールもないそれを、つい、とこちらに差し出す。

 

「えっと?」

「・・・・・・・・・やる」

 

どういうことだと聞くのは野暮というものだろう。

このシュチュエーションともなれば、予想されるのは限られてくる。

 

(あぁ・・・・・金なかったんだな)

 

思えば金なんてのが必要じゃない(一時その為に働かされたこともあるけど)旅をしてきた太一も、そういうシュチュエーションの絶望感はわからないでもない。

だからと言って見ず知らずのオンナノコにアイスを買ってやれるほど器用ではないのだ。

仲間内でもそんな配慮をしかも不審なく出来るのって、タケルくらいかなぁと思いながら、今更もう選んだからいらないというのも彼女の覚悟に冷たい。

ありがとうと受け取り、そのまま「予定より一個多い」アイスをカウンターに持っていく。

じっ、とそれらが袋に入れるまではその目線を感じていたが、つり銭をもらって振り返った頃には既に彼女の姿は無くなっていた。

冷凍庫、あったかなぁ、と首をひねりながら病室に戻る。

 

結果として、そのアイスは無駄にならずに済んだ。

病室の入り口で妹と合流し、更にいとこと合流した際に、「不在中に来た」もう一人がいたからだ。

 

「あ」

「あ」

 

「ヴィータ。太一兄ちゃん知って」

「あぁ。さっき売…」

 

・・・・・・・・・・・話すな、という目線に逆らう理由はない。

 

「店で見かけたんだよ。

いや。丁度よかった。アイスかいすぎてさ、これで丁度人数分だ」

 

行儀は悪いと思ったが、置く場所も無いのでベッドの隅に小さな店を広げる。

・・・・・御代は望むべくもないが。

 

「へー、数間違えるなんてお兄ちゃんにしては珍しいね」

「ま、そんなこともあるさ。はやて、どれがいい?」

「んー、せやなぁ。

あ、その前に。家族の一人のヴィータや。

ヴィータ。こっちいとこの太一兄ちゃんとヒカリちゃん」

 

どうも、と今更のように挨拶するが、おざなりな返答もそこそこに、少女は直にはやてに目線を投げる。

 

「いとこ?」

「あー。そっか。いとこって言葉がよぉわからんか。お父さん同士が兄弟なんやよ」

「そういうのがいとこ?」

 

その子供同士やな。ちゃんと説明を終らせた後に、「自分が選ぶ」のがむしろ礼儀とわかっていてアイスをあさり始めたはやては直にソレに気づいた。

 

「そうやで。・・・・あ、このアイスヴィータ好きやろ?」

 

はい。先に確保。

 

「あ、ありがと、はやて!」

 

嬉しそうに「ねんがんのあいすをてにいれた」ヴィータが笑う。

気持ちは判らないのではないのだけれど。

 

「この場合、オレが買ってきたんだけど、ってどう考えても空気の読めてない発言になるんだろうなぁ」

「おにーちゃん・・・そう思ってるのなら我慢してね」

「わーってるよ」

人に話せない部分なんて誰にもある。

話しても信じてもらえない類も然り。

ソレが判っているし、自分たちも持っているから、太一もヒカリも目の前の「家族」のやりとりを素直に受け入れていた。

 

一応、自分が狙っているアイスがなくならないことをほんのりと祈りながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

いいかげんネタばっかりってのもアレだから

真面目に連載してみよう①でした。

比較的シュチュ③の奴はちゃんと書いていたのだけれど、色々編集したり追加したり

 

もっと先に完結させろよ的話書き散らしておいて何をいまさらとか聞く耳持たない。

結果予定ではこれから5部作ですか。そうですか。

あぁちなみに太空とかってことには 一切無いです。

太一たちは高校生くらいで(つーかどの道時間軸おかしいけどキニシナイ)扱いくださいませ

 

 

 

 


 
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