No.163019

『舞い踊る季節の中で』 第71話

うたまるさん

『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

戦後処理で忙しい真っただ中、雪蓮は、ふと空いた時間を、
城内を見て回る。 そこで雪蓮が見たものとは……、

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2010-08-03 17:40:27 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:18691   閲覧ユーザー数:11936

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-

   第71話 ~ 雪に埋もれし華は、一時の平穏を過ごさんとするも、火中に飛び込む ~

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性には危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術

  (今後順次公開)

 

 

雪蓮視点:

 

 

「あ~~っ、やっと終わった。 冥琳今日はもう終わりよね?」

 

机上の書簡・竹簡の山全てが無くなり、私は大きく伸びをしながら、

最期の山を受け取りに来た冥琳に尋ねる。

 

「この後、街の有力者の代表と、同じく長老との謁見が残っている、と言いたい所だが……」

 

冥琳は、そこで頭が痛そうなそぶりを見せた後、苦笑を浮かべながら、

 

「一昨日前、仕事を放りだして、一緒に酒を飲んでおったのだろう?

 今更堅苦しく会った所で、お互い白々しくなると言うもの、なら残りは事務的な話だ。

 翡翠を補助に、亞莎にでもやらせてみるさ」

 

等と、嬉しい事を言ってくれる。

 

「視察なり、何なり、やる事は幾らでもあるが……、

 それこそ、勝手に彼方此方視察して回っている雪蓮には、今更と言うもの」

「と言う事は、今日はもう自由なのね」

「あぁ、街に出かけるなり勝手にしろ。

 言っておくが、北郷はこの後、此方の仕事を手伝って貰う予定があるから、連れ出して貰っては困る」

「ぶーーっ、冥琳の意地悪、 でも良いわ、それならそれで、廻りたい場所もあるしね」

 

せっかく、この街のお爺ちゃん達に、この街の面白そうな場所や、お店を幾つか聞き出したから、一緒に廻ろうと思ったのに、冥琳とお仕事じゃ、流石に連れ出す訳には行かないわ。

なら、今日はせっかく冥琳公認のお休みなんだから、皆の様子を見がてら、この街の様子を、もう少し知るのも悪くないわね。

 

 

 

 

「はーい、穏、亞莎お仕事頑張ってる?」

「……あっ、雪蓮様、はい大変ですが、毎日多くの事が学べて、とても楽しくやっています」

「ええ、そうなんですよ~。 亞莎ちゃん、物凄く頑張り屋さんなんですよぉ~。

 そう言う訳で、私も負けていられないので、勉強するために、書庫の・」

「駄~目」

 

亞莎の頑張りを讃えるようにして、ちゃっかり自分の欲望を満たそうとする穏の企みを、私は最後まで聞かずに駄目出しを出す。

 

「えぇぇ、そんな酷いですよ。 私だって頑張って勉強したいと思っているのに、亞莎ちゃんばかり書庫・」

「亞莎を引き合いに出さないの、この娘はまだまだ覚える事があるんだし、当然の事でしょ。

 だいたい穏、冥琳から聞いたわよ。 貴女あの書庫の本、ほとんど暗記している物ばかりと言うじゃない。

 冥琳からも口煩く言われているから、私の一存では許可できないわ。 それに、そんな事ばかりやってい

 るから、いまだ一刀に真名で呼ばれないのよ」

「うっ……それを言ったら雪蓮様だ・」

「穏、私が、な・に・か・し・ら?」

「な・何でもありません…くすん」

 

私の、冷たい笑みに、穏は言いかけた事を止める。

そんな事、貴女に言われなくても、十分に分かっているわ。

私はそんな事、百も承知で一刀と向かい合っているの。

でも、貴女の場合は違うでしょ。

姑息な事などせず、真っ直ぐに一刀と向かい合えば、貴女なら、すぐに真名を許されるわ。

まぁ、出遅れたことが、逆に考えすぎる事となり、深みに填まった今の状態なのでしょうけど、こればかりは、穏のためにも、自分で気が付いて貰わないといけないわね。

それに、

 

「貴女の妙な癖さえなくなれば、冥琳だって、すぐに書庫への出入り禁止を解いてくれるわよ。

 くれぐれも、兵達の前で、特に一刀の前であんな醜態晒さないようにね」

「うぅぅっ、分かってはいるんですけど、こればかりは……」

 

書庫へ入るための希望が断たれて項垂れる穏を放っておいて、亞莎に一言二言頑張るように言葉を交わして、二人の仕事の邪魔にならない様に、早々に部屋を後にする。

 

 

 

 

「模型で上手く行ったからと言って、実物で同じように上手く行くとは限りません。

 大きくなればなる程、加わる力以外にも自重や強度の問題等、多くの問題が出て来るとも書いてあります。

 いきなり実用しても、多くの問題を残したままでは、意味がありません。

 ここは、時間とお金が掛かっても、書いてある通り、小さな物から始めて行くべきです」

「ですが、これに書いてある程の能力があるのならば、すぐにでも・」

「何を揉めているのかしら?」

「雪蓮様」「「「そ・孫策様」」」

 

私の掛け声に、議論に熱中になっていた翡翠と数人の文官と技術者が、議論を止めて振り向く。

部屋を見渡せば、長机の上に、議論の対象となった物の模型が鎮座していた。

 

「ふーん、これが一刀の言っていた水車の模型ね。

 成程、こうして小さな形にする事で、未知の物でも、分かりやすくなるわね」

 

私は、話は聞いていたものの初めて見る形に、だけど水の代わりに手で水車を動かして見て、成程と思う仕掛けに驚き、天の技術の一端に感心する。

水の流れる力で、水車をを回転させるだけではなく、上下運動や様々な動きに変わるのが良く分かるわ。

これが、一刀の居た天の国で、大昔に出来ていたと言うんだから、驚きよね。

実際、水車の概念はこの世界にもあるけど、此処まで効率の良いものではないし、とても脆弱な作りで、態々普及させる物ではないわ。 でもこの水車の模型は見るからに違うし、多くの事に利用できそうだわ。

それに、水車を水の流れる力を、他のものに置き換えるだけではなく、

水を水面より高い所に、効率よく汲み上げる事も出来ると言うんだから、それだけでも農家にとっては、夢のような話よね。 確かに、これだけの事が出来るのなら、今みたいに揉めるのも分かるわ。

でも、

 

「翡翠は、これの実用は早いと言うのよね」

「はい、これは一刀君も同意見です」

「理由を分かりやすく説明してくれるかしら」

 

そして、翡翠の優しく丁寧な説明を聞くのだけど、はっきり言って、技術的な事なんて半分も分からないわ。

でも、なんとなく言いたい事は分かった。

 

「つまり急ぎすぎるのは、良くないと言う訳ね」

「一言で纏めれば、そう言う事になります」

 

私の言葉に翡翠は、少し困ったような顔をするけど、

そんな間違えた捉え方をしているつもりはないわ

 

「ようは、小さな子供に弓矢を持たせるなと言う事でしょ」

「少し違いますが、そう考えて貰っても間違いではありません」

「「「な゛っ」」」

 

私の言葉に、翡翠は苦笑しながら、そして文官達は、自分達が小さな子供扱いされたと思い憤慨しだす。

でも、

 

「貴方達だろうと、何も知らない民であろうと、天の知識と技術の前には、大差は無いって事よ。

 それが如何に危険な物かを知らずに、広めるのは、小さな子供に弓矢を与えて遊ばせるのと変わらないわ。

 そして、その結果は見るまでも無い事、逆に危険な物を広げたとして、此方が窮地に立たされかねないわ」

「はい、一刀君も大きな力を扱えば扱う程、便利な道具であればあるほど、危険が大きく、歯車が狂えば被

 害も大きくなると、 そして、まずはどんな危険があるかを、十分知る必要があると言っていました」

 

私の言葉の後に、翡翠が補足するように説明してくる。

そして、その言葉に、私は王として、民を守り導く者としての決断をする。

 

「決まりね。 無為に民を傷つけるような道具を、広める訳にはいかないわ。

 道具の進歩は大切だけど、民の命はもっと大切よ。 翡翠、当初の計画通りに進めなさい。

 でも、民の苦労を少しでも早く軽くもしたいわ。 問題の少ないと判断できたものから、順次広めていって

 頂戴。 そうすれば、便利さと同時に、危険に対しても学べるはずよ」

 

私の決断に、文官と技術者は、黙って頷く。

この人達とて、自分達の事ばかり考えて翡翠に反対していた訳ではない。

民のためと言う気持ちがあったからこそ、翡翠相手に、此処まで食い下がったのでしょうしね。

翡翠も上役として、命令とか使える筈なのに、こう言う所は、相手に納得して貰うために時間と労力を惜しまないのよね。

翡翠のそう言う所を気に入っているし、多くの人間がそんな翡翠の政治の在り方を慕っているとは言え、全部が全部、そんな事やっていたら、自分の時間なんて取れやしないし、体を壊しかねないわ。

翡翠には悪いけど、適当な所で、王命として決着を付けさせてもらうわ。

私は、とりあえず、少しでも不満を残さないためにも、そんな文官達と、模型を作った技術者をそれなりに、褒めてから部屋を後にする。

 

 

 

 

そして、ぶらぶらと彼方此方に声を掛けてから庭に出ると

 

「だから、いくら気合つけたかって、むやみに突っ込んでも駄目や、

 蓮ちゃんの攻撃は、まだまだ点や、もっと点と点を繋がな、其処を突かれたらおしまいやっ、

 こんなふうになっ!」

「くっ!!」

 

蓮華の剣が、霞の飛龍偃月刀に弾かれ、地面に叩き付けられる。

その事実に、悔しげにしながらも、今の試合で言われた事を、もう一度自分に言い聞かすように、目を瞑り大きく息を吐いた後、剣を再び拾い。

 

「もう一度願おう」

「ええけど、はっきり言ってええか?」

「霞、貴女はもう私達の仲間よ。 そんな貴女が、私に何を遠慮する必要があると言うの」

 

蓮華の言葉を、霞は嬉しそうな顔をした後、先程以上の武人の顔になり、

 

「雪蓮の真似するのは、止めた方がええで」

「な゛っ」

「蓮ちゃんが、雪蓮の真似しとる限り、蓮ちゃんはこれ以上伸びる事あらへん。

 多少技術が上がった所で、それでお終いや」

「確かに私は姉様には遠く及ばないかもしれないっ。 だからと言って・」

「そう言う事言っているんやあらへん。 はっきり言って、蓮ちゃんには、雪蓮のような才能はあらへん。

 あれは雪蓮だけが持つ、言わば天武の様なものや、真似しようとした所で誰も真似でけへん」

 

霞の言葉に、蓮華は最初こそ、睨みつけていたけど、霞の真摯な瞳と言葉に、それが本当に蓮華のためと思っている事に気が付き、今度は心底悔しげに涙を堪えている様な顔をする。

……霞、悪いわね。 本当は、それは私が言わなければいけない事だと言うのに……、

 

「別に、武の才能そのものが無いと言うとる訳やあらへん。

 ただ、ああ言う勘に任せた所のある戦い方は、蓮ちゃんには合わへんと言うとるだけや、

 蓮ちゃんには、蓮ちゃんに合った戦い方があると言うとるだけや」

「だが、私は姉様・」

「蓮華、それまでよ」

「ね・姉様っ、……見ておられたのですか」

 

蓮華の諦めきれない言葉を、私の言葉が遮る。

 

「蓮華が、私の後姿を追ってくれるのは嬉しいわ。 でも、貴女は私と違う王を目指しなさい」

「姉様、またそのような馬鹿な事を」

「何度だって言うわよ。 私だって何時までも生きていられるとは限らないわ。

 蓮華には蓮華しかない才能があるの。 蓮華の王としての才能は、私より上の筈よ。

 だから、私なんかの後を追って、その才能を潰さないで欲しいわ」

「私には、そのような才など・」

「それとも、私の真似をして、仕事を抜け出してばかりいる王になりたいの?」

「自覚しているのならば、少しは自重してくださいっ!」

 

私の言葉に、蓮華が呆れたように怒ってくる。

まったく本当に生真面目なんだから、……でも、

 

「そう言う差よ。 蓮華は私みたいに振る舞えないわ。

 なら、貴女は貴女の大切にしている想いを胸に、自分なりの王を目指しなさい。

 誰かの後を追っていては、何時まで経っても追いつけないし、追い抜く事なんて出来ないわよ」

 

私はそこで、その話は終わりとばかりに打ち切る。

後は、貴女次第よ蓮華。 これでもまだ私の影を追うようなら、自分の足で立つのではなく、誰かの真似をする事しかできないと言うのであれば、貴女に王としての資格は無いわ。

その時は、それなりの覚悟をしておきなさい。

 

 

 

 

私は、蓮華との話を止め、先程から気になっている事を聞くために、霞に向き合う。

 

「ところで、明命は何であんなところで、一人暗くなっているの?」

 

私の視線の先、裏庭の木に向かって、一人地面に座り込みながら、指で地面にひたすら猫の絵を描いている明命を見ながら、霞に聞いてみたんだけど。

 

「なんや、念願かなって、今朝から一刀に鍛錬つけて貰える様になったらしいんだけど……」

 

口を濁しながら言う霞だけど、内容を聞く限り、良い話だと思うんだけど。

明命は、一刀に鍛錬つけて貰える事を願っていたし、それをして貰えたと言うのなら、一刀がまた一つ成長したと言う証でもある訳だもの。

それが、何故あんな感じに?

 

「何でも、まず最初に徹底的に、自分の実力を思い知らされたみたいやで」

 

……まぁ、自分の実力が、まだまだ、と言う事を知る事は、決して悪い事ではないわ。

でも、一刀には敵わないと知っている以上、あそこまで落ち込むなんて明命らしくないわよね。

 

「しかも、ついでに袁術達に教えている技の見本を見せる言うて、

 無手で、しかも打ち合うんやのうて、捕縛され続けたそうや」

 

………あぁー、確かにそれは私でも落ち込むかも……、

いくら敵わないと分かっていても、本気で向かって行ったと言うのに、無手で、しかも、技の見本にされ続けたとあっては、幾らなんでも将としての誇りが傷つくわよね。

 

「結局、掠りもせんかったそうや」

「……一刀、結構容赦ないわね」

「うちも意外や思ったわ」

 

思春の時は、それなりに形になっていたと聞いていたけど、

………それはそれで、一刀なりに手を抜いていた訳ではないと思うけど、……思春が聞いたら、いったいどう反応するかしら?

 

「何時までも落ち込んでいられませんっ!

 一刀さんは、私用の鍛錬方法を考えてくれると言ったんです。

 なら、今は一刀さんを信じて、一刀さんに着いて行くだけですっ!」

「あっ、立ち直ったで」

「そうね」

 

勢いの良い声と共に立ち上がった明命は、

一人何かウンウン頷きながら、見ていて気持ちよいくらい、すっきりした顔をして、

 

「お猫様の もふもふ にたっぷり癒されてから、一刀さんに注意された事を踏まえて、鍛錬するのみです」

 

あんな状態でも私に気がついていたらしく、振り向いて私に元気よく挨拶をしてから、塀の向こうへと消える。

 

「・・・・・・もふもふって、いったいあの娘、何処まで猫探しに行くつもりなの?」

「街やろうな、たしか昼からの街の巡回の当番だったはずや」

 

あぁ、そう言う事ね。

それにしても、元々巡回と言った所で、実際は警備の兵が足りている以上、将自らの街への警邏なんて、兵や民に見せつけるためと、半ば息抜きを兼ねていると言うのに、………相変わらず生真面目な娘よね。

そんな明命を優しい気持ちで見送りながら、

 

「どう、うちにはもう慣れた?」

「おかげさまで、呼び寄せた残りの部下も、気侭にさせてもろうてる。 それに、家族も増えたしな」

「そうね。 もう簡単に死ねやしないわよ」

「そのつもりや」

 

霞の前以上に力強い笑みに、私は霞が、本当に孫呉の一員になってくれた事に嬉しさを感じながら、

今度、ゆっくり飲む約束をして別れた。

 

 

 

 

「おじいちゃん美味しかった。 お金此処置いておくね」

 

王である私からは貰えないと言うお店のお爺ちゃんに、美味しい料理を御馳走してくれた正当な報酬だからと、私は感謝の気持ちを込めて、何時もどおりお金を払ってお店を出る。

前の街ではすでに馴染みの風景だけど、この街の人間には、驚くべき事らしいわね。

さてと、少し遅めのお昼ごはんも食べたし、市を覗いてから、その辺りを"ぶらっ"として見ようかな、もしかしたら面白いものを見つけれるかもしれないし、

 

 

 

 

 

「……と、つい半刻前は思っていたんだけどね。……前言取り消したくなったわ」

 

私の前方の方、其処には、派手な侍女服らしきものを着た袁術と張勲が居た。

二人は取り分け此方に気付いているという感じではなく、どうやら夕食の材料とかを買い物に来ただけらしいけど、………いったい、どう言う神経しているのよ?

まだ、戦が終わったばかりだと言うのに、二人っきりで街になんて出て、街の人間に殺してくれって言っているようなものじゃない。

 

そう思っていたのだけど、擦れ違う人達も、店の人達も、顔を引きつらせながらも、普通(?)に応対している。

そっか、あの一刀の紋が小さく入った服のせいね。

きっと一刀が用意したのでしょうけど、確かにあれなら、二人から刺激しない限り、普通の人達は手出しできないわね。………よほどの阿呆か、そんな事など気にしない人間以外はね。

 

二人も、特に馬鹿な事をする気は無いみたいだけど、街の人間の冷たい視線に、袁術は随分と居心地悪そうね。でもこうやって見ていると、まるで年の離れた仲の良い姉妹みたいね。 袁術がもう少し小さければ、親子でも通用したかもしれないわよね。

それにしても袁術ったら、街を自由に歩けるのが嬉しいのか、興味津々ね。

その癖して、冷たい恨みの籠った視線に見つめられては、ビクビク震えて、まるで子猫か栗鼠ね。

こうなんか、喜びそうな事を餌に、苛じり倒してみたくなるわ。

 

「って、何考えてるのよ。

 せっかくの休みを、あの娘達を観察して終わりなんて、もったいない事したくないわ」

 

そう、さっきまで考えていた事を振り払う様に首を振る。

どこか適当な茶館にでも入ろうかしら?

そう思っていたら、袁術の足下に、毬が転がって行き、袁術はそれに気が付くなり、拾って持ち主であろう子供達の前に持って行く。

 

「受け取るのじゃ」

「………っ」

 

子供達の一番年上らしい子供は、目の前の人物が袁術と分かったのか、袁術からひったくるかのように毬を受け取るなり、何も言わず、子供故に心のままに恨めし気な目で袁術を睨み付ける。

他の子供達も目の前の人物がどういった人物か気が付いたらしく、ひそひそと小さな声で、教え合いながら同じ様に、袁術を睨み付けて行く。

中には、地面に落ちた石を拾おうとした子もいたけど、先程の一番年上の子がそれを止める。

そうね、それが正解よ。 未来を担う貴方達は、恨むより、もっと大切な事を覚えて欲しい。

そんな醜い感情は、私の代で終わりにしなければいけないわ。

 

「わ・妾はもう行くのじゃ、邪魔したのじゃ……」

 

恨みの籠った子供達の目に、袁術は悲しげな、だけどそれを一生懸命我慢している顔で、子供達にそう言って、元の場所に戻って行く…………って、張勲いないじゃないっ!

もしかして、袁術が離れている事に気が付かずに、次の店に行っちゃったの!?

 

「七乃っ? 何処じゃ? 七乃ーーーっ」

 

袁術は、張勲と離ればなれになった事に気が付き、慌てて張勲を呼ぶけど、張勲は一向に姿を見せず。

いったい、張勲はどこまで行ったと言うのよ。

 

「…妾は、…妾は、どうやって帰れば良いのじゃ……」

 

袁術は今の自分が置かれた状況に、半泣きでそう呟くのだけど、

もしかして、あの娘、迷子なの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

 第71話 ~ 雪に埋もれし華は、一時の平穏を過ごさんとするも、火中に飛び込む ~

                                     を此処にお送りしました。

 

すみません、今回一刀出番無しです(w

前二話との同じテーマなのですが、同じような事は書きたくは無いので、少し色々アレンジして二話構成(予定)で執筆してみました。

ちなみに、この時の一刀君、明命に対してやり過ぎたと自己嫌悪でウジウジしている所を、冥琳に うっとおしいと お説教を喰らっています(w まぁこの話は今は置いておきましょう。

 

さて、次回はこの話の続きで、美羽と雪蓮の二人の視線で描いて行きます。。

サブタイトルは、某有名GAMEのパクリで行く予定ですのでお楽しみに、

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

おまけ:

 

 

小蓮「あれっ、シャオは?

   呉に咲く美しき一輪の花こと、孫尚香を出さないなんて、作者何とか言いなさいよっ!」

 

思春「………せめてもの慈悲だ。 全身の皮を剥ぐのと、指先から少しずつ斬り落としてゆくのと、

   どちらが好きな方を選ばせてやろう」

 

祭 「まて、その前に儂が壁にでも縫い付けてやろう。

   天の国では、この時期、昆虫採集と言って、虫を針で張り付けるそうじゃからのぉ」


 
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