No.162836

真・恋姫†無双 十√ 25

kazさん

関中編

真面目に書くのは久しぶりだなや


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2010-08-02 22:45:27 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:35291   閲覧ユーザー数:21055

 

北郷軍の拠点だった場所、今この地には南征の為北郷軍の将、そして十数万の兵が集結しつつあった

 

赤壁の怨みを晴らすべく、そしてこの大陸を制覇する為に、対する呉も迎撃の準備を整えつつあり両軍が激突するのは避けられない状況となっていた

 

そんな一刀達に対し蜀の王劉備こと桃香はなんとか共に国を支えられないものかと模索していた

 

使者を魏と呉に何度も送り共に手を携え平和な世を目指さんとする為に、呉の王孫策こと雪蓮はそんな桃香の想いを感じつつもそれに同意する事はなかった、大陸制覇による統一こそが平和への道だと考えており、そして孫呉の長年の宿願でもあったからだ、しかし今現在強大な魏と対抗する為には蜀と対立する訳にもいかなかった、周瑜こと冥琳は蜀との同盟を模索してはいたが

 

「私まだ劉備を認めていないのよ、できれば一戦交えてから決めたいと思ってるんだけどなぁ~♪」

 

などと言い出す始末、雪蓮は桃香に王の、そして英雄の器を感じていた、一刀とはまた違う強敵と戦いたくてウズウズしていたのだ、そんな雪蓮を必死で抑える冥琳、結局呉からも蜀へ使者を出し同盟ではなく不可侵条約のようなものをとりあえず結ぶ事となる、ただし隙あらばいつでも荊州への侵攻が出来るように準備をしつつ

 

そして魏にも蜀からの使者が何度も送られ共に国を支えようとの桃香の想いが伝えられる、

しかし一刀もそんな桃香の想いを感じながらも雪蓮と同じくそれに同意する事はなかった

 

(桃香には悪いけど、この国を平和にする為には馴れ合う国じゃなく強い国による大陸制覇しかないんだ)

 

それこそが今まで流されてきた多くの血に報いる為だと、しかし一刀の心にはわずかばかりの揺らぎがあった

それはきっと覇王となる前の自分であったなら桃香の言葉に同調していたのではないかというわずかな想い

もし覇王でなかったなら…

 

 

”ズキンッ!”

 

 

「っつ!」

 

唐突に襲われる頭痛、一刀はここ最近頭痛に悩まされ続けていた、それは唐突にくる痛み

医者に診て貰っても原因不明と言うだけ、長く続くものでもなく一瞬の痛みが多かった為一刀もそんなには気にしなかった

しかしそれはまるで一刀に何かを伝えるかのようであった…

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

許城では軍師達と一刀が軍議を開いていた、そんな中兵士がある報告を持ってくる、曰く

 

 

”関中に不穏な動きあり”

 

 

関中

 

西涼、隴西、長安は関西もしくは関中と呼ばれている、これは、都・洛陽と長安の中間に位置し、堅固な関所として名高い函谷関より西にあることに由来する

関中から隴西にかけての地域には漢族、羌などが暮らし騎馬に長けた者達が多く住む土地である

一大勢力であった董卓が涼州からいなくなった後、異民族からの侵攻などで混乱するこの地を西涼の英雄馬騰が纏め上げるその後は中原の戦いを見つつも異民族からの侵略から守る為の戦いを続けていた

 

一刀達はこの方面に細作を放ち情報収集はしていたものの涼州に異民族が度々侵攻し戦いが激化している為魏領への侵攻はしばらくはないものと見ていた、その為西方には数万の兵を配し、まず南征に重点を置いていたのだ、その関中に不穏な動きがあると聞いた一刀と軍師達は

 

「南征中に背後を突かれるのはまずいな」

 

「そうですね、まだ報告を精査しないと何とも言えませんがもし関中の軍が侵攻してきた場合防ぐのは容易ではありません」

 

「ですね~、関中の方々は騎馬の運用に長けた方々ですし、何より西涼の英雄馬騰さん、そしてその娘さんの馬超さんや他の諸将の皆さんは皆猛者揃いだという話ですので~」

 

一刀の言葉に軍師の稟、風が答える

 

「ところで馬騰さんてどんな人?かなり凄いってのは噂で聞いた事はあるんだけど、詠は同じ涼州だったよね?」

 

「馬騰 字を寿成、前漢の名将である馬援の子孫でありながら羌族の血も引いていて身の丈は八尺(約190センチ)以上ある偉丈夫で賢く、武勇に優れ忠義にも厚い正義漢ってところかしら、その人柄で皆からも慕われていたわ、数えるほどしか会った事はなかったけど月や私達にも良くしてくれて月も馬騰殿を慕っていたわ、そういや霞も懐いてたわね、なんか何度も挑戦して全敗だったって」

 

「そんな方がいきなり攻めてくるような事をしますでしょうか?」

 

「いずれにせよ細作を増やして情報を集めよう、事によっては南征を中止する必要がある」

 

一刀のその言葉に軍師達は小さく頷く

 

 

 

関中に送った細作からの報告が次々と届く

 

西涼の馬一族、韓遂、さらに関中に勢力を築いていた8人の将、侯選・程銀・李堪・張横・梁興・成宜・馬玩・楊秋の

「関中十部軍」が兵をあげ東へ動き出したとの報告が上がってくる、こうなると魏領への侵攻が目的であろう事は明白であった、許城の玉座の間に集まった魏の主だった将兵達、春蘭が関中軍の事について軍師達に尋ねる

 

「奴らは魏領に侵攻してくるのだな!」

 

「ええ、すでに長安を越えたとの報告が上がっているわ、兵力はおよそ十三万」

 

「十三万!?えらい数やなぁ」

 

十三万という大軍に驚く真桜、他の皆も同様だ、

しかしただ一人一刀だけは関中軍の数の事よりも別の事が気にかかり尋ねる

 

「稟、涼州に侵攻している異民族の情報はあるかい?」

 

「確かな情報はまだありませんが数は減ったものの侵攻は相次いでいるそうです、迎撃していた兵をこの東征に集めた為に手薄になった涼州の民への被害が増えているとか」

 

「そんな状態で侵攻とか何考えてんねん!」

 

稟の報告に怒る霞、霞も元々は涼州に住んでいた事がある為に涼州の民が異民族に蹂躙される事が耐えられないのだ

 

「余程の事情か、挟撃目的で蜀か呉の策略で動かされたか、いずれにせよ向こうの意図が読めない以上は迂闊には動けないわ」

 

「いや、動こう」

 

桂花の言葉に一刀が即答する

 

「魏領へ侵攻してくるというのなら迎え撃たなければならない、民に被害が出るのを抑える為にも避難の為の護衛も必要だ、それに涼州の人達への被害が増えているというのも捨ててはおけない、ひとまず南征をやめ西に備えよう、関中軍には使者を出しその意図をなんとか聞き出させてくれ」

 

「わかりました、しかし南への備えも必要でしょう、これが蜀や孫呉による策の可能性もある以上この許には春蘭、秋蘭を残し後方よりさらに兵の増員をさせます」

 

「何故私が留守番なのだっ!!」

 

稟の配置に納得いかない春蘭が食って掛かる、それに対して稟は

 

「あの小覇王孫策を止められるのは春蘭殿しかいないからです、それにこの許は我々にとって、そして一刀殿にとっても重要な地、そのような重要な地を任せられるのは魏武の大剣春蘭殿をおいて他にないではありませんかっ!!!」

 

「むっ!//// そ、そうか、そ、そういう理由ならしょうがないな はっはっは!!!」

 

 

(((上手いっ!!)))

 

 

稟の説明に照れながらも納得する春蘭を見て話術巧みな稟の軍師(?)としての力量を皆感じていた

 

「関中軍に対しては騎馬戦に通じた恋殿と霞殿を軸に編成を行い、

あと一刀殿には万一の為この許に残り…「いや、俺も行くよ」一刀殿!!」

 

稟の言葉を遮るように一刀が話す

 

「ごめん、けど俺は行くべきだと思うんだ、関中軍が何を考えての行動かわからないけど多分俺に用があるんじゃないかと思う、そしてできるなら直接話しをしてみたいんだ、馬騰さんが詠の話し通りの英雄のような人ならなおの事、だから頼むよ稟」

 

「……わかりました、ですが危険な事はなさらないようお願いいたします、貴方はこの国にはなくてはならない存在なのですから」

 

「ありがとう稟、心配かけてごめんな」

 

そんな一刀の優しい言葉に頬を染め何も言えなくなる稟

そんな様子に周りからはいつもながらの冷たい視線、しかしそんな中抜け駆けしたのは恋さんと風さん、一刀にテテテテッと近づきぴとっと両手に抱きついたり、緊張感があるんだかないんだかのいつものぽわぽわな北郷軍であった

 

しかしそんないつもの時間も関中へ送った使者が誰一人戻らない事で吹き飛ぶことになる、

関中軍との戦いは避けられないと

 

その後軍師達の指揮の下素早く西への軍の移動が行われる

 

元々南征準備だった為輜重隊なども時間をかけずに整えられる、西に向かうは総大将に北郷一刀自らが出陣し、恋、霞、そして親衛隊の季衣と流琉、沙和、真桜、凪、軍師に詠、稟(W眼鏡軍師)、音々音(恋専用軍師)兵は許に待機していたほぼ全軍の十万が動く

 

 

関中軍は東進すると東の関門の潼関を占拠、

潼関は黄河と渭水の合流点の南にある関所のような場所でこの地での重要拠点であった

関中軍が潼関に入った頃には北郷軍が迎撃の為出陣した事を知る

待ち構える関中軍、そして北郷軍十万が潼関の前に姿を現す、それを待っていたかのように出陣し対峙する両軍

 

関中軍からは馬超、韓遂、そして馬岱が出、北郷軍からは一刀、恋、霞が出る、

霞が関中軍を見回し馬騰がいない事を一刀に伝えると

 

(盟主の馬騰さんがいない?)と疑問に思う一刀、嫌な予感をしつつも関中軍と対峙する

 

「関中諸侯に問う!、東進し、我が魏領に侵攻せんとする理由をお聞かせ願いたい」

 

一刀の言葉に馬超が進み出る、その姿は怒りに震え、今にも襲い掛からんとするほどの殺気を帯びていた

 

 

「北郷… よくも… 親父を殺したなっ!!!」

 

 

 

突然発せられた言葉に戸惑う一刀、馬超の父、すなわち馬騰を殺したと言ってきたのだから当然だ、まったく見に覚えのない一刀達、そして馬騰の事を知っている霞が

 

「馬騰はんが亡くなられたて!?いつ?な、なんでや!?」

 

「白々しい!!お前達が殺したんだろうがっ!!よくも、卑怯な手を使って親父を…、よくもっ!!」

 

「ちょ、ちょお待ちいや、あんたが何言ってんのか全然わからへんで、うちらが馬騰はんを殺したとか何の話や!?」

 

「黙れっ!これ以上お前達と話す事なんかない!親父の仇討たせてもらうからなっ!!!」

 

 

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 

 

その瞬間関中軍から起こる鬨の声、その迫力にたじろぐ北郷軍、霞や恋も戸惑うばかり、しかし一刀は

 

「そういう事か…」

 

と小さくつぶやく、今回の事が何者かの手で起こされたと気付いたのだ、霞は必死で馬超に話を聞くように言うが馬超達は聞かない、そんな霞を

 

「もういい霞」

 

「けど一刀、あいつら訳わからん理由で戦おうとしてんねんで!うちらは馬騰はんを殺してへんてちゃんと言い聞かせんと!」

 

「今は無理だよ、今の馬超達には何を言ってもきっと聞きはしない、今は…、被害を少なくする事に専念してくれ!」

 

 

「突撃ぃ!!!」

 

 

関中軍が攻撃を開始する

 

一刀達は陣へ戻り迎撃態勢をとる、激突する両軍、この時関中軍は五万ほどしか出陣していなかったが十万の北郷軍を圧倒する、騎馬に長けた将兵、そして仇討ちという強い想いが力となって襲い掛かってきたからだ、不利な戦いで混乱する北郷軍、しかし詠と稟はすぐさま軍を整え反撃に出る、さらに霞、恋といった将がよく敵を抑えた為不利だった戦況も徐々に好転していく

 

しかしほんのわずかな隙を突き霞と打ち合っていた馬超が手薄になった本陣の一刀に襲い掛かる

 

「しもたっ!!」

 

どかぁっ!

 

一刀を守る本陣の兵達は必死で守るものの馬超の槍に次々となぎ払われていく、そして

 

「北郷一刀!親父の仇!覚悟ぉぉぉぉ!!!!」

「馬超!!!!」

 

がぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!

 

馬超の一閃をすんででかわす一刀、しかし騎乗していた馬が殺され落馬する、

動けない一刀に再び襲い掛かる馬超、絶体絶命!

 

 

「させるもんかぁああああああ!!!!」

 

 

どがーーーーーーーーーーーーーーん!!!!

 

馬超の槍から一刀を守ったのは季衣の岩打武反魔、さらに流琉もかけつけ一刀を守る、さらにとって返してきた霞が

 

「一刀に何さらすんじゃ!こんのボケェェェェ!!!!」

 

がぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいんん!!!!!ぎいん!!がぎいん!!

 

馬騰の件で今ひとつ戦いに集中できなかった霞だったが一刀の危機にさすがに全力全開!

 

一刀を守りたいという一心が馬超を圧倒する、さらに季衣、流琉も加勢、さすがにかなわないと悟った馬超は撤退、それに追従するかのように韓遂、そして関中軍も潼関へ撤退していく、関中軍と北郷軍の最初の戦いは結局両軍ほぼ同数の被害を出した痛み分けという形になる

 

 

北郷軍は潼関から離れた場所に陣を構える、本陣の天幕では今回の事についての軍議が開かれる、話し始めたのは稟

 

「今回の関中軍の侵攻は西涼の馬騰殿が何者かによって暗殺され、その暗殺犯を私達だと何者かが吹聴した事が原因の行動だと思われます」

 

「馬騰を慕う者達がそれだけ多かったという事でしょうか?」

 

「確かにそれもあるだろうけどそれだけじゃないと思う、多分裏で別の力が動いたんだと思う、たとえば…官位や地位を与えるとか」

 

一刀の言葉に軍師達が顔を見合わせ

 

「今回の動きは長安の連中の仕業だと?」

 

「まだ証拠はないけど俺はそう思っている、俺がいなくなる事で今誰が一番喜ぶのかを考えればな、ただ、今それを行う意味があるのかってのが疑問ではあるんだ、俺達としては馬騰さんがいる方がきっと脅威だし、なにより自分たちを守る者がいなくなる訳だから」

 

「もう少し馬騰殿の死については調べる必要がありますね」

 

「蜀や呉が動いてる可能性はどう?」

 

詠の質問に

 

「呉が長安と密に連携を取るのは難しいと思う、それにもし呉が関中と連携しているのであれば今頃は魏領への侵攻をしていてもおかしくはないと思う、けど本国からはそんな報告は一切ない、蜀に関しては…あくまで俺の考えだが、劉備はそういった権謀術数で民を巻き込むような策をするとは思えない、軍師の孔明などが策を巡らす事も考えたが他国への侵攻といったものは考えてないと思う、何故ならそれを行えば彼女達が望んでいる「天下三分の計」を否定する事になるからだ」

 

「随分劉備と孫策を信じているのね」

 

「雪蓮に関してはいずれ決着をつけるって約束したからね、劉備に関しては…、なんだろうな、ただそう思うとしか言えない」

 

そんなあやふやな答えにあきれる詠と稟、しかし恋は何故かむーっとご機嫌斜め、どうも一刀が楽しげに桃香と雪蓮の話をしている事が面白くないようだった

 

「いずれにせよここでの戦いを長引かせるわけにはいかないわね、仮に蜀や呉が暗躍してないにしてもあまり時間をかければ隙を突かれる恐れがあるし、かといって関中軍を放置しておく訳にもいかない、南征中に再度侵攻されたらたまったもんじゃないし」

 

「ならこの機会に関中を一気に平定してしまおう」

 

その言葉に皆が一刀に注目する、そして溜息をつきながら詠が

 

「ふうっ、簡単に言ってくれるわね、兵の数も地理的な状況も向こうが圧倒的に有利なのよ」

 

「でもそれをなんとかしてみせるのが俺の軍師賈 文和だろ、俺は信じているよ(ニコッ)」

 

「なっ!/// ななな何言ってるのよっ!へ、へへへ変な期待とかしないでよまったく!!!///」

 

そう言って照れながらも本心はめちゃめちゃ嬉しい詠、そんな様子を見て少しむっとしたのはもう一人の軍師稟さん

 

「詠殿がやらないと言うのであれば私が軍を指揮し敵を打ち破って関中を平定をしてみせましょう、詠殿は私の補佐という事でよろしいですね」

「な、何勝手に決めてるのよっ!誰もやらないなんて言ってないでしょ!」

 

そんな感じでW眼鏡軍師達が言い争ってる中、恋がちょこちょこと一刀に近づき

 

「ご主人様、恋、頑張る!」

 

「?… うん、頼むね恋」

 

そう言って頭を撫でてやると嬉しそうにする恋さん、そんな様子を羨ましそうにみる魏の面々

ただ一人音々音さんだけが一刀にちんきゅうきっくを叩きつけるのだった

 

 

こうして関中平定の戦いが始まるのだがそうは簡単にはいかない

関中軍は正面からの激突を避け時折急襲を繰り返す騎馬の運用に特化した戦いを繰り返し始め魏軍の損耗を計ってきたのだ

 

「はぁ~、まったくちょろちょろと、最初の戦いはなんやってん!!」

 

そんな感じで愚痴を言う霞、追撃すれば逃げ、戻れば別の場所を攻撃されるといういたちゴッコに疲れきっていた、霞ですらこの有様なのだから他の将兵達も休まる暇がなかった、これを打開するには城塞を築くのが一番ではあったがそうはさせまいと妨害する関中軍、結局柵を設置する程度しか進まなかった、そんなこんなで数日が過ぎ去ったある夜、その日はとても寒く水も凍りつくようなほど、そして一刀はそれを待ってたかのように

 

「よし、今夜中に城を築くぞ」

 

ときっぱり言い放つ、その言葉に詠だけでなく霞も異論を唱える

 

「今夜中って、バッカじゃないの!そんなの無理に決まってるでしょ!関中軍の妨害、そして何よりここの地盤が邪魔して城どころか家さえも造るのが難しいわよ」

 

「せやで一刀、いくら学のないうちらかてこんな所に城造んの無理やてわかるで」

 

「大丈夫さ、天の時が味方してくれるからね」

 

「天の時?……あっ!そういう事!」

 

一刀の言葉にある事に気づく詠、そして稟もそれに気付きさっそく作業に取り掛かる、しかし霞達武官はわからずブーブー言っている、そんな皆に

 

「まぁ、明日になったらわかるさ、きっと皆、そして馬超達も驚くぞ」

 

そう言ってにこやかに微笑む

 

 

 

翌日、潼関では幾度もの戦いで魏軍に被害を与え士気は高くすでに勝った気でいた、

しかしそんな関中軍の軍議に兵士が慌てて飛び込んできて報告する、曰く

 

「ほ、北郷軍の陣に一夜にして城が築かれておりますっ!」

 

その報告に関中の諸侯達は「何を言っているのだ!」「ふざけているのか!」と激怒する、

しかし兵の必死な様に確認の為潼関を出撃していく

そして北郷軍の陣まできて関中軍の諸侯達は絶句する、兵の報告どおり北郷軍の陣に城塞が造られていたのだ、

 

 

『氷の城』が

 

 

前日の寒さを感じた一刀は築き上げた土砂の上から水をかけ氷の城塞を一夜にして作り上げたのだった

 

「北郷一刀とは本当に天より参ったのか…」

 

関中軍の兵達は一夜にして出来た城にただ呆然とし言葉を無くすのみ、その時城壁に一刀が現れる、そして大声で

 

「関中の諸侯及び兵士達、ようこそ我が氷の城へ、正面から戦う事を避けコソコソ戦っていたのでこの城を見て恐れおののき故郷へ逃げ出すのかと思っていたがよく来られた!」

 

「だ、黙れっ!こんな氷の城などすぐに叩き潰してやるっ!」

 

「貴様達にそれができるのか!関中の者共は平原での戦いには慣れてはいるが城攻めなどはズブの素人だと聞いているぞ!まぁどうせこの城に怯え、震え、恐怖し近づく事すらできないだろうがせいぜい頑張って攻めてくるがいい、どうせ何もできずあがくだけであろうしな!俺達はそれを眺め酒宴でも開いて楽しむとしよう!」

 

そう言うと城からは大きな笑い声が響き渡る、さすがに堪忍袋の尾が切れた関中軍、陣形や策なども考えず氷の城に向け突撃を開始する、その様子を見た一刀は城内に戻る、そんな一刀をニヤニヤして待ち構える魏の面々、そんな皆の様子を見た瞬間一刀はへたっとして

 

「は、はああああ~、俺やっぱこういうのは苦手だよ、相手を馬鹿にするような言葉はなんか上手く言えないな」

 

「そうか?結構ええ感じやったで!」「「まったく!」」

 

慣れない挑発に疲れきった一刀を霞が誉め、それに凪達も同意する

 

「ならいいけどね、まぁ相手は怒って攻めてくるみたいだし挑発は成功かな?」

 

「まぁ結果としてみたらね、けど相手が呉や蜀だったらきっと見抜かれてたわよ、もっと勉強しなさいよ!」

 

「はは、詠は手厳しいな、ま、頑張ってみるよ、さて皆、これからきついけど頑張っていこうな!大丈夫、俺達は官渡、合肥を守りきった、今回も大丈夫だ!」

 

 

「「「応っ!!!!」」」

 

 

そして氷の城を巡っての戦いが始まる、事前に城の周りに罠を作り、騎馬の動きを制限するような状態にしていた為、突っ込んできた関中軍騎馬隊は次々と落馬していく、そこに城から矢の雨、さらに真桜が設置した十数台の霹靂車から岩が降り注ぐ、それでも突っ込んでくる関中軍ではあったが元々城攻めの為の準備などしてるわけでもなく、ただいたずらに被害を出すばかりであった

 

それでも守る側も平気という訳ではない、なにしろ関中軍は怒涛の勢いで攻めてくるのだから。しかし一刀も言っていたように官渡、合肥と戦い抜いた魏軍は守りに守りきる

 

城に近づく事すらままならず被害だけが増える状態にさすがの関中軍も攻め疲れる、

だが次の瞬間その時を待っていたかのように鳴り響く銅鑼の音

 

 

ジャーーン ジャーーン ジャーーン

 

 

「おっしゃ行くでぇ!!今まで追いかけっこばっかさせられてた鬱憤晴らさせてもらうからなぁ!!!」

 

「ご主人様の敵は恋の敵」

 

予め城の外に出ていた恋と霞が潼関と氷の城との間に割って入るように現れる、突然の伏兵に混乱する関中軍

潼関への退路が絶たれるのを恐れた関中軍は急遽転進、しかしその瞬間を見逃すはずのない詠

 

「今よっ!沙和、真桜、凪!城から撃って出て!」

 

氷の城の城門が開き沙和、真桜、凪が兵を率いて撃って出る、挟撃された形となった関中軍は混乱し次々を討たれていく、馬超、韓遂はなんとか潼関まで戻れたものの関中十部軍の主だった諸将の多くがここで討たれる事となる

 

「くそっ!強いっ!」

 

撤退しつつ戦況を見る馬超は北郷軍の戦いぶりに苦虫をかみ殺したような表情で言い放つ

そしてこの戦いを境に戦局は北郷軍有利に進んでいく事となる

 

 

北郷軍は攻勢をかける

 

北郷軍は黄河西岸に渡り、甬道(両側に防壁を築いた道)を築きながら黄河に沿って南下し部隊を分割して渭水を渡らせ陣地を築く、それに気付いた関中軍は挟撃されるのを恐れその陣を急襲するがその陣には北郷軍はいなかった、陣中に入っていくと金銀や武器などが放置されているのに気付く、関中軍はそれを我先にと奪い合いを始める、それはエスカレートしていきついには同士討ちまで起こる有様

 

「今よっ!」

 

それは北郷軍軍師詠の策略でもあった、陣に深く入り込んだ関中軍に対し合図と共に火矢を放つ北郷軍、予め油をしみこませていた陣幕に次々と引火したちまち陣は火の海となり多くの関中兵が討ち取られる

 

 

潼関に立てこもる関中軍をおびき出すため一刀自らが囮となって出陣する事も、

いかにも伏兵がいそうな場所を進む一刀達、そんな時一刀はふとある事を思い出す

 

(そういや関中軍には馬岱がいるんだっけな、うーん、まさかとは思うけどアレ言ったら出てきたりして…)

 

と一人何事か思う、まぁ知る人ぞ知るそのフレーズ、伏兵が出る様子もなかったのでちょっと試しにと

 

 

 

「俺を討ち取れる者はいるかーー 」

 

 

 

急に声を出した一刀に追従していた凪、季衣、流琉などは「?」という感じだった、一刀も「まぁそりゃ言わないか…」とか思っていると

 

 

 

「ここにいるぞーーー  」

 

 

 

突如可愛い声が聞こえそこに現れた少女に皆が絶句する、それは敵味方問わず、しばらく静かな時間が過ぎ去り声を発したのは

 

 

「あ、ああっ!ど、どうしよう、つい言っちゃったぁ~!!!!」

 

 

声の主は馬岱こと蒲公英、せっかく伏兵として隠れていたのに自ら出てきてしまうという大失態、あきれ果ててはいたが敵は敵、一刀は凪達に攻撃を命じる、意味不明な混乱状態に陥った蒲公英率いる関中軍は数も少なく蜘蛛の子を散らすように撤退していく、しかし凪が素早く回り込むと蒲公英と一騎撃ちを演じる、戦いはほぼ互角ではあったが一瞬の隙をついて蒲公英の武器を弾き飛ばした凪に軍配が上がり、蒲公英は捕まってしまう

 

北郷軍の陣に連れてこられた蒲公英は

 

「離せ離せ馬鹿~!くっそお、覚えてろよ~!!」

 

と、じたばたと暴れていた、そんな蒲公英に一刀が歩みより

 

「少し静かにしてくれないか馬岱、俺達は別に君に何かをしようって訳じゃないから」

 

 

「嘘だっ!!!」

 

 

「え、ええっ!? 何でそこまで言い切っちゃうの?」

 

「だって何かお前すっごくイヤラシそうなんだもん!きっと女の子見たら襲ってばっかなんでしょ!蒲公英も可愛いからきっと襲うつもりでしょ!」

 

その言葉に魏の面々は大きく頷く、「あっれー?」と誰もフォローしてくれない事に少し悲しくなってくる一刀さん、しかし立ち直るのも早いぞ一刀さん!

 

「コホン、えっと馬岱、君をここに連れてきたのは今回の出征について聞きたいからなんだ、捕虜の兵士達からはあまり情報がとれなかったからね、西涼を束ねる馬超の従姉妹である君なら今回の事について何か…」

 

「五月蝿いっ!お前達に話す事なんかなにもあるもんかっ!」

 

それはやはり怒りに満ちた言葉、蒲公英は震える声で続ける

 

「お前達が馬騰叔父様を殺したんじゃないかっ!叔父様は皆から慕われて蒲公英にだってずっと優しくしてくれた、なのにどうして殺したんだよっ!許さないから!蒲公英は叔父様を殺したお前達を絶対許さないんだからっ!」

 

「俺達は馬騰さんを殺してなんかいない」

 

「そんなの信じられるもんかっ!「別に信じなくてもいい」…!?」

 

「俺達は今回の件が俺達以外の何者かに仕組まれたものだと思っている、まだ憶測でしかないが何が目的でそいつらが何を求めているのかはまだわからない、だがすでに戦端は開かれ多くの将兵の血と命が失われた、だから俺達は今更君達との戦いをやめるつもりはない」

 

一刀の言葉に黙ってしまう蒲公英、そして一刀は蒲公英の縛られている縄を解き放つと

 

「馬岱もう帰っていいよ、多分これ以上話しても俺たちが考えている憶測以上の話は聞けないと思うから、ただ一つだけ言っておくよ、俺達は関中を平定する、二度とこんなくだらない戦いが起きないようにする為にもね、君達が君達の正義で自分達が被害者だという理由で戦うと言うならそうすればいい、けど俺達は負けないよ、俺達が戦う目的はこの国の民を守り平和な国にする事、そしてその平和を守れるだけの強い国にする事だからね」

 

 

一刀の言葉に何も言えなくなる蒲公英は天幕を力なく出て行く、馬を与えられ陣から出て行こうとする蒲公英に一刀が

 

「待った馬岱、武器を忘れてるぞ、武人にとって武器は大切なものなんだからちゃんと持っていかないと」

 

そう言うと一刀は蒲公英の武器『影閃』を渡す、そんな一刀に蒲公英は

 

「…えと、ありがとうって言いたいけど、今これで攻撃されるって考えないの?」

 

「ん?別に?だって馬岱はそんな事しないだろ、じゃあな、寄り道せず潼関に戻るんだぞ!」

 

そう言うと天幕に戻る一刀、そんな姿を不思議そうに見つめる蒲公英は馬を駆り潼関へと帰っていく

 

 

「なんなのよあいつ…///」

 

 

戦況はこう着状態となっていた

 

関中十部軍の主だった諸将が次々と討たれそれに従っていた兵達が次々逃亡したり自国へ逃げ帰った為兵数ではすでに北郷軍が上まわっていた、北郷軍が有利なのはあきらかではあったが、今だ馬超、韓遂の涼州軍を主力とした関中軍が潼関に篭っていた為迂闊に動けない状態であった

 

 

北郷軍本陣の天幕

 

そこには一刀、詠、稟、音々音の軍師達がいた、話し始めたのは稟

 

「敵は潼関に篭ったまま出てくる様子はありません、このまま篭城を続けられるのはまずいですね

兵糧はまだもちはしますがあまりこちらに長居し続けると呉や蜀が動き出す恐れがあります、できれば早めに決着をつけたい所ですが…」

 

「恋殿もセキト達と会えなくて寂しがっているのです!このままじゃ恋殿が病気になってしまうのです!」

 

「あんたは少し黙ってなさい!で、実際これからどうするの?稟も言ったけど呉が本気で軍を進めたら守りきるのは難しいわよ」

 

音々音、詠が一刀に問う、それに対し一刀は

 

「もう少し待とう、多分、現状を打破できると思うから」

 

一刀は何かを待つような感じであった、そんな一刀の言葉にしぶしぶ軍師達は引き下がる

 

それから数日後

物見からの報告で潼関に小さな変化が起こる、潼関の守備をしている将が一日ごとに馬超→韓遂という感じに交互に変わっているというのだ、その報告を聞いた詠は何かを考えつき一刀のいる天幕へ向かう

 

「北郷、その… あんたに、頼みたい事があるんだけど…」

 

どこかハッキリしない詠、何か策を考えたのではあるがその策は一刀を危険にさらす可能性があったからだ、しかし一刀はそれを知っていたかのように

 

 

「俺は交馬語をすればいいんだな」

 

 

その言葉に詠は「はっ!」とする

交馬語とは両将が自軍の兵を退け、数人を引き連れるだけで馬上で言葉を交わす事である

詠は一刀の言葉に冷や汗のようなものが流れ

 

「ほんとに… あんたって一体どこまで見通しているのかたまに恐ろしくなってくるわ」

 

「見通してる、というか知ってるんだよ、天の知識でな、ただ、それをするにはきっと条件や時期があるとは思う、俺にはそれを判断する事ができなくてね、それに実際それが起こるとは限らないし、だから有能な軍師さん達がそれを言ってくれるのを待つしかないんだ」

 

「天の知識か、じゃあ、ボクがこれからする事に反対はしないのね」

 

「もちろん」

 

きっぱりと言い放つ一刀、一刀は詠を信じているのだ、そんな想いに決意を固める詠、そして語られる詠の策

 

 

その策は一刀の知っているものであった、関中軍との戦いを終わらせる為の軍師賈 文和の策

 

 

 

 

『 離間の計 』

 

 

 

 

 

あとがきのようなもの

 

 

実際氷の城って造れるもんなんだろうか…

 

 

 

萌将伝をのんびりクリア、自分は結構楽しめました

恋姫もこれで終わりかと思うと寂しい気もします、改めて携わった方々に感謝を

 


 
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