No.161858

真・恋姫無双 縁日の夜に・・・。

狭乃 狼さん

恋姫夏祭り参加用のネタです。

一刀の都で開かれた縁日。

みなが楽しく騒ぐ中、一刀はふと気づく。

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2010-07-30 16:00:47 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:15819   閲覧ユーザー数:13691

 「縁日、ですか?」

 

 一刀の前で首をかしげる四人の少女。

 

 「うん。俺がいた世界で、夏になると各地で行われる、ようはお祭りなんだけど」

 

 そう言って、目の前に立つ少女たち、桃香、華琳、雪連、月の四人を見る一刀。

 

 「お祭りねぇ。・・・まあ、ここのところみんな忙しかったし、息抜きの意味でもいいかもしれないわね」

 

 華琳が腕組みをしながら言う。

 

 「ですね。・・・でも、具体的に何をどうするんですか?」

 

 華琳の言に頷きつつ、月が一刀に問う。

 

 「まずは屋台かな。ちょっとした料理やお菓子を出すお店と、金魚すくいとか射的なんかの遊技場とかさ」

 

 「金魚って何ですか?」

 

 一刀の言葉の中で、聞きなれない言葉に気づいた桃香が尋ねる。

 

 「あ、そうか。金魚ってこの時代にはないのか。・・・まあ、要するに小さな魚のこと。それをこのくらいの紙でできた網ですくうのが、金魚すくいって遊び」

 

 手でその形と大きさを示しながら、一刀が説明する。

 

 「射的はなんとなく判るから良いとして、後は何をするの?」

 

 今度は雪蓮が、一刀に問いかける。

 

 「そうだな。やぐらを組んでその上に太鼓を載せて、その音にあわせて、その周りでみんなで踊ったり、かな。で、最後の閉めはやっぱり花火だな」

 

 うんうん、と一人頷く一刀。

 

 「・・・花火かあ。・・・きれいだろうねえ」

 

 うっとりとする桃香。

 

 「じゃあ、みんな賛成ってことで良いかな?」

 

 「私は良いわよ」

 

 「私も」

 

 「へう。私も賛成です」

 

 「もちろん私もよ。最後の花火、一緒に見ましょうね、一刀」

 

 最後にそんなことを言う雪蓮。

 

 「あー、雪蓮さんずるい!!ご主人様は私と花火を見るんです!!」

 

 「何言ってるのよ、桃香。一刀は私と一緒に見るの。でしょ?」

 

 にっこりと、一刀を見て微笑む華琳。

 

 「へう~。わたしもご主人様と一緒に見たいです」

 

 控えめに、しかしはっきりと言う月。

 

 全員に詰め寄られた一刀は、

 

 「・・・全員と見るんじゃ、駄目?」

 

 と、むなしい提案をするが、

 

 「「「「駄目です」」」」

 

 あっさり却下されてしまうのであった。

 

 

 それから数日後の夕刻。

 

 都の一角に設けられた縁日の会場。

 

 そこはまさしく、お祭り騒ぎな状態だった。

 

 ある一角では、紫苑と秋蘭が射的の腕を競い、次々と景品をゲットして屋台の主を蒼白にさせていたり、

 

 またある一角では、華琳と朱里が屋台を巡っては、料理に駄目出しをして技術指導をしていたり、

 

 また別の屋台では、金魚すくい(もどき)をしていた詠が、なぜかたらいの中に落ちておぼれかけ、月と桃香に助け出されていたり、

 

 大食い会場では、季衣と鈴々が恋に負けて、悔しがりながら、さらに残っていた料理を二人で平らげていたり、

 

 踊りの会場では、太鼓を上機嫌で叩く霞がいて、そのそばで張三姉妹が歌を歌い、それにあわせて踊る大勢の元・黄巾党の面々がいたり、

 

 さらには、利き酒の会場でべろんべろんになった雪蓮や祭、桔梗らを、冥琳と蓮華がたしなめようとして逆に酔わされたり、

 

 町の人々も含め、みなこの祭りを心底から楽しんでいた。

 

 そんな様子を、主催者である一刀は、笑顔で見守っていた(逃げていたともいう)。

 

 「よかった、みんな楽しそうで。・・・やってよかったな、うん」

 

 あとはみんなの暴走に巻き込まれないように祈るだけだな、と、そんなことを思う一刀。だが、

 

 「・・・あれ?・・・あそこにいるのって・・・」

 

 少し離れた場所で、何をするでもなく、ただ一人、木にもたれかかっている人物を見つけた。

 

 「なにしてんだろ、あんなとこで」

 

 気になった一刀はその人物のほうへと、歩き出す。

 

 

 彼女はただ、祭りの様子をじっと見ていた。楽しそうだとは思う。だが、自分が行っても場違いだろうと、一人ここで聞こえてくる喧騒だけを楽しんでいた。

 

 「一人で夕涼み?・・・お邪魔しても良いかな?華雄さん」

 

 ふと聞こえてきた、一人の青年の声。

 

 「・・・好きにすると良いさ」

 

 声の主に、そっけなく答える華雄。

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 しばしの沈黙。

 

 「・・・向こうに行かないのかい?」

 

 一刀が華雄に声をかける。

 

 「・・・いい。ああいうのは私の性に会わん」

 

 ぶっきらぼうに答える華雄。

 

 「・・・そっか」

 

 残念そうにうつむく一刀。

 

 「お前こそ良いのか、向こうで皆が探しているだろう」

 

 「・・・どうせ後でもみくちゃにされるのは判ってるからね。今のうちに体力温存しておくよ」

 

 「ふふ。それもそうだな。・・・どうだ、少しぐらい」

 

 そう言って、足元の酒瓶を一刀に差し出す華雄。

 

 「・・・ちょっとだけなら」

 

 

 

 そして、しばらく静かな時間が過ぎたころ。

 

 ひゅるるるるるる・・・・・・・どおーーーーん。

 

 夜空に大輪の花が咲き誇る。

 

 「もうそんな時間か。・・・そろそろ行かなきゃな」

 

 木の根元に座り込んでいた一刀が立ち上がる。

 

 「・・・なあ、北郷。一つ聞いて良いか」

 

 「ん?」

 

 杯をもったまま、一刀に問いかける華雄。

 

 「・・・わたしは、ここにいていいのだろうか」

 

 その質問に、一刀は首をかしげる。

 

 「どういう意味?」

 

 「そのままだ。戦もなくなり、賊も殆ど出なくなった。かといって私は政には向かん。・・・斧を振るえぬ私が、ここに、みなと同じ場所にいてもいいものか」

 

 うつむき、そう語る華雄。

 

 「・・・いいんじゃないの?」

 

 間髪いれず答える一刀。

 

 「ちょっと待て!そんなあっさりと・・・!!」

 

 「華雄さんの気持ちは分かるよ。でもさ、他のみんな、もちろん俺も含めて、今まで一緒にいた人が急にいなくなったらさ、寂しいじゃない」

 

 「あ・・・・・・」

 

 一刀の台詞に華雄は気付く。

 

 (私は、自分のことしか考えてなかった。・・・月さまや、詠や、他のみなの事を、考えてなかった)

 

 そしてさらに落ち込む華雄。

 

 ひゅるるるるるる・・・・・どどおーーーーん。

 

 何発目かの花火があがる。

 

 その光が、華雄のほほを伝う雫を光らせる。

 

 「・・・はい」

 

 一刀がハンカチを華雄に手渡す。

 

 「・・・すまん。みっともない所を見せた」

 

 「誰だってそういう一面はあるよ。・・・じゃあ、はい」

 

 そう言って、華雄に手を差し出す一刀。

 

 「?なんだ?」

 

 その意図が分からず、つい聞き返す華雄。

 

 「みんなのところに行こう?・・・華雄さんがいていい場所に」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ」

 

 一刀の手をとり、立ち上がる華雄。

 

 ひゅるるるるるる・・・・・どどどおおーーーーーん。

 

 また一発、花火が上がる。

 

 その輝きが照らすのは、多くの仲間に手荒い歓迎を受ける、二人の姿。

 

 その手は、硬く握られたままに。

 

 その心は、強く、永久に、繋がれたままに。

 

                          ~ END ~


 
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