「さて・・・とりあえず祭、そこになおりなさい」
「ちょ・・・落ち着くんじゃ、策殿!」
雪蓮に南海覇王を突きつけられ、ビクッと大きく体を震わせる黄蓋
まぁ・・・気持ちはわからないでもない
死んだと思っていた大切な者が、実は生きていて・・・でも恥ずかしいから、帰りませんでした
これはないわ・・・
「待て策殿!
ホラ、あれじゃよ! たまにあるじゃろ!? 人には、何かしら譲れないものがあるんじゃよ!」
「そんな小さいものならば、いっそ捨ててしまえええぇぇ!!!」
「おおう!!!??」
随分と、賑やかな空気になったものだ
これは・・・いいのかしら?
「いや、よくないやろ」
そう言ったのは・・・霞だった
彼女は私にそう言ったあとに、凪から・・・日記を受け取っていた
ああ、そうか
「次は・・・貴女の番ってことね?」
「せや・・・ええやろ?」
霞の言葉
私は無言で頷いて見せた
が・・・まずは
「ちょ、策殿!!?切れる!今のは切れるとこじゃったぞ!?」
「ちょっと祭さん!?こっちに逃げてこないうわああああぁぁああ!!?危ない、雪蓮様危ないですよ!!!??」
「あの騒がしい集団をなんとかしましょうか」
「すまないな曹操殿、すぐに・・・黙らせる」
言って、不気味な笑みを浮かべる周瑜
それから僅か数刻後・・・広間に二つの悲鳴が響きわたった
「しっかし・・・これ、ホンマきついな」
「そうね」
「でも・・・ま、逃げるわけにはいかんやろ」
『そうやろ?』と、霞は笑う
その笑みは、とても悲しげに・・・弱弱しく見えた気がした
その笑みを見ただけで、わかってしまう
彼女は、きっと・・・『後悔』しているんだということが
《雲の向こう、君に会いに-魏伝-》
十九章 約束は、この空へとのせて-KAZUTO-
~あの日、俺と祭さんが出会った日
ひとまず祭さんには、街にある宿で待機してもらうことにした
お金は、俺が出すことに・・・どうせ、あんまし使わないしな
その時に、俺は祭さんにあることをお願いした
それは・・・
『冥琳のもとに、華佗を向かわせろとな?』
『うん、俺のいた世界では確か・・・赤壁の戦いのあとに、周瑜は病で死んでしまうんだ
だから念のために、華佗に見てもらったほうがいいんじゃないかなって』
『なるほどのぅ』
華佗に、周瑜の様子を診て貰う・・・ということだ
実は前から少し気にはなっていたのだ
俺の知っている歴史と、必ずしも同じというわけではないだろう
それはわかっている
げんに、赤壁からはもう大分たった
彼女は、病など患ってはいないのかもしれない
でも・・・やっぱり、気になるんだ
もう敵ではなく、互いに手を取り合い生きていく仲間なんだ
俺がいなくなった後も、華琳たちを助けてくれる・・・頼もしい仲間となってくれるであろう彼女を
俺は、見捨てたくない
『気のせいだったなら、その時はその時だよ
とりあえず、一度診てくれるよう華佗に頼んでくれないかな?』
『うむ、そのこと自体には反対はせん・・・むしろ、お主の言うとおりかもしれん』
『え・・・?』
『赤壁より少し前から、確かにあやつの様子がどこかおかしかった気がするんじゃ
それが病によるものじゃったとしたら・・・なるほど、頷けるわ』
そう言って、祭さんは何度か頷く
それから、スッと立ち上がった
『ならば、ワシはもうゆくぞ
華佗にはよう伝えなければの・・・全速力で呉へと向かえと』
『うん、お願い』
『うむ、それでは・・・とりあえず今日は解散じゃな』
『ああ、今後は何かあったら祭さんが泊まる宿に連絡を入れるから
あと、くれぐれも他の人には見つからないようにね』
『了解した
それではの』
『うん、またね』
こうして、この日は祭さんと別れ・・・俺は、一人自室へと帰った
それから三日後
つまり、今日のことなんだが
この日、俺はまた・・・一歩、近づくことになる
逃れることのできない、『終わり』へと・・・また一歩
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「ん・・・」
目を覚ます・・・その瞬間、まず俺は安堵した
俺は、まだこうやって起きていれる
目を開けられる
そんな当たり前のことが、たまらなく嬉しかった
それと同時に、怯える自分がいることに気づく
今日はよかったけど、明日は?明後日は?
こうやって起きることができるんだろうか?
もしかして・・・あのまま、眠り続けるんじゃないだろうか?
そう思うと、たまらなく恐かった
「くそっ・・・」
咄嗟に、俺は思考を中断する
駄目だ・・・これ以上、そんなことを考えるな
もっと別のことを考えろ
もっと、別の・・・
「あ・・・れ?」
ふと、違和感を感じた
俺は体を起こし、自分の現在の状態を確認する
俺は今、寝台に入っている
入っている『はず』なんだ
なら、なんでだ?
なんで・・・何も、感じないんだ?
いやまて、何も感じない?
それも違うだろう?
だってホラ・・・『きた』
『拒絶』が・・・始まった
「うっ・・・!」
慌てて、寝台から飛び出そうとする俺
だけど、足がもつれ・・・自室の床に倒れ込んでしまった
けっこうな勢いで、だ
それでも・・・
「痛く・・・ない?」
俺は・・・全く、痛みを感じることはなかった
気のせい・・・かもしれない
案外、転んだくらいじゃ痛みを感じないくらいに強くなっただけかもしれない
「なんて・・・な」
そんなこと・・・
「うひゃぁ!?」
「んぉぶ!!!??」
あるわけない
そう教えるかのように、彼女は・・・霞は、思い切り俺の顔面を踏みつけてくれたんだよな
はは、ホントびっくりしたよ
でも、おかげで目が覚めた
確信がもてた
この日、俺は・・・また一つ、失ってしまったんだ
【味× 嗅△ 触× 視○ 聴△】
『なぁ今日・・・ウチと、どっか出かけへん?』
~霞が見事俺の顔面をぶち抜いて、少し経ったころ
霞は微かに頬を赤くしながら、そう言ってきたんだ
その誘いに、俺は・・・
『いいよ、俺も・・・霞と一緒に、どっか行きたかったんだ』
笑顔で、そう返したんだ
俺も、霞と一緒にすごしたかったから
それに、彼女とは・・・一つ、約束してしまったこともある
それを守れないのが、申し訳なかったってのも・・・多分、あったのかもしれない
でもま、結局俺が霞と一緒にいたかったってのが・・・大きな理由なんだろうけど
それよりもだ
俺はこの時、一つ忘れていたのだ
とても大切なことを
それは・・・
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「大丈夫かいな?」
「無理、酔った・・・『馬酔い』だ」
「なんやねんそれ」
あれから、しばらくしてのこと
霞が手綱を握る馬に乗る俺の情けない言葉に、霞は律儀にもツッコミを返してくれる
だが、それを嬉しいと感じる余裕はない
俺としたことが・・・すっかり忘れていたのだ
『拒絶』の存在を
まずった・・・っていうか、かなり予想外だ
『触覚』が無くなっても尚、この『気持ち悪さ』は弱まることはなく・・・むしろ、さらに強烈なものとなっている
これは、正直かなりキツイ
「ちょっと待って、一回降りていいか?」
「はいよ、ちょい待っとき」
もう駄目だ、限界
そう思い、俺は霞にそう声をかける
彼女はこの言葉に頷き、手早く馬の動きを止めてくれる
それと同時に、俺は馬から降りて・・・近くにある草陰に向かって歩き出した
「ぐ・・・はぁっ、げほ!」
そして・・・辿り着くと、一気に『ソレ』を吐き出す
赤々としたそれは、緑生い茂る草達を・・・その赤に染めた
「げほっ・・・これは・・・予想以上に・・・・・やっかいだな」
そう、これは思ったよりも厄介だ
『触覚』を失い拒絶されたことによって、俺は・・・気づくことが困難になってしまったのだ
拒絶の予兆である、あの胸の痛みには・・・まず気づけないだろう
「これは・・・思ったよりも早く、祭さんの手を借りることになるかもしれないな」
言って、俺は笑う
手についてしまった、それを・・・己の血を眺めて
「はは、ほんっと・・・キツイよ」
でも・・・
「まだ・・・頑張れる」
~まだ・・・頑張れる
呪文のように、俺はこの言葉を繰り返した
そうして、ようやく落ち着いたころに霞と合流
んで霞から『これ、なんてイジメ?』なスキンシップを受けてから、そこに辿り着いた
そこはどうやら以前俺が言った『雰囲気』ってやつを霞なりに考え、自分で見つけた場所だという
なるほど・・・これは、確かに良い場所だ
そう思い、霞を見ると・・・何故か、彼女は顔を真っ赤にさせていたっけ
どうかしたのか?
その疑問も、次の霞の一言で見事に吹き飛んでしまったのも・・・今となっては良い思い出だ
彼女の・・・
『あああ、あんな一刀・・・ひひひひ、膝枕したろか!!!??』
この、嬉しい一言で・・・ね~
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「良い場所だな」
「えへへ・・・せやろ?」
「うん、良い場所だよ」
言って、俺は目を細める
不思議だ・・・と、そう漠然と思いながら
なんで、そう思うんだろう?
そんな疑問が浮かんだ・・・その直後に、襲いくるのは強烈な眠気だった
思わず零れる欠伸
それを見て、霞はクスリと笑う
「なんや、眠いんか?」
「ん、ちょっと・・・最近、なんか眠れなくてさ」
眠れない
眠りたくない
そんな状態だから、眠ったとしても・・・たいして眠れなかったんだよな
「そか、そんならそのまま寝たらええよ」
「いいのか?
せっかくきたのに・・・」
そう言いながら、体を起こそうとした俺
そんな俺を霞は、微笑みながらそっと再び寝かせた
「ウチは、一刀の寝顔肴に酒でものんどるから♪」
「それは、ちょっと恥ずかしいんだけど・・・」
何を言ってるんだ、霞は・・・それは、マジで恥ずかしいって
そんなことを考えながら、見上げた先
彼女と、目が合った
「なぁ、霞・・・」
その瞬間・・・
「俺は・・・ちゃんと『此処』にいるのかな?」
俺は・・・そんなことを口走っていた
「は・・・?」
当然、霞は首を傾げる
実を言うと、俺だってよくわからないんだ
何故、こんなことを言ったのか・・・まったくわからないんだ
ただ彼女の瞳を見た瞬間・・・ふと、聞いてみたくなったんだ
ほんと・・・なんで、こんなこと聞いたんだろ?
自問自答してみるが、答えは出てこない
かわりにでたのは・・・
「おるよ」
彼女の、この言葉だった
「この大陸に、この魏国に、この空の下に
そんで・・・ウチらの『ココ』に、ちゃんとおる」
俺が呆気にとられるなか
そう言って、霞は自身の胸をとんと叩いた
その瞬間・・・思わず、笑みがこぼれてしまう
「そっか、俺・・・ちゃんと『ココ』にいるんだな」
「せや、今だってこれからだって一刀はずっと『ココ』におるよ」
「ははは、そっか」
彼女の言葉
それが、深く・・・優しく、響いていく
そっか、俺・・・皆の『ココ』に、ちゃんといるんだ
それなら、俺は・・・
「うん、ありがとう霞
おかげで・・・俺・・頑張れる・・・・よ」
ゆっくりと、意識が薄れていく
目蓋が重い
あぁ、わかった
なんで、不思議だなんて思ったのか
温かいんだ
彼女の体が、優しくて温かくて
まるで、俺の体を包み込んでくれるような・・・そんな感じがしたんだ
失ったはずのものが、彼女の傍にいると・・・また、戻ったような感じさえする
眠るのが・・・恐くない
ああやっぱり俺は・・・
「霞・・・」
「なんや?」
皆に・・・助けられてばっかりだ
「待ってて・・・絶対・・羅馬に連れてくから・・・・さ」
この日、俺は久し振りに・・・温かな眠りにつくことができたんだ
★あとがき★
はい、十九章ですねw
まいった、仕事が鬼だww
鬼すぎて、萌将買いにいけない!!くそうう!!
妄想力が、妄想力が足りナインですwwww
く、この想いはまるごとこれにぶつけてやんよww
さって、今回は四章のお話ですが
いや、いいよね膝枕ww憧れるねww
【華伝】【呉伝】試作版配信は、まもなく打ち切りますw
頼んだけどまだきてない
興味ある
という方は、気軽にご連絡ください
仕事の都合で、連絡が遅れるかもしれませんが
それでは、またお会いしましょうww
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十九章公開します
楽しんでいただければ幸いですww