No.159115

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~ 第16幕

覇炎さん

…(汗)言い訳はしません。ですが、待っていた人達に言いたい。
 待たせて済みませんでした~~!!

それでも読んで頂ければ幸いです。

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2010-07-19 22:53:46 投稿 / 全26ページ    総閲覧数:3847   閲覧ユーザー数:3016

 

 

 

~~???の天幕~~

 

 

―――キィイィィン。

 

 

 どこかに張られた天幕の中。

 

その天幕の中には黄金に輝く装飾品、煌びやかな光を放つ宝石などが散乱していた。床には羽毛の絨毯、周りを見渡せば机に椅子。

 

その上に乗っているのは、あの“曹孟徳”血眼になり探している、あの『太平要術の書』が置かれていた。

 

そんな、天幕の中央にいきなり、怪しく紫色に光輝く太陰大極図が浮かぶ。

 

辺り一面、妖しい光に包まれる中で陣の中心で薄っすらと人影が浮かび始める。

 

 

―――キィィン。

 

 

 甲高く鳴り響いていた音が小さくなると共に、光も薄くなっていく。

 

 音と光が完全に消えた時には、天幕は元の薄暗さを取り戻していた。

 

 ただ、さっきと変わった処と言えば…部屋の中心でもぞもぞとボロボロの外套を羽織った何かが居る事だろうか。

 

 

「…ハァ、ハァ」

 

 

 外套の中から、可愛らしい吐息が聞こえた。其れが身悶えるかの如く、身体を震わせて外套が邪魔になったのか、バッと剥ぎ取った。

 

 天幕の隙間から、月の光が差し込み。それの姿を露わにする。

 

 

 

 

 

 

髪は青竹色の巻き毛。その髪を左に一括り[サイドテール]にした少女………張宝〈真名:地和[ちーほう]〉であった。

 

余りに幻想的に映しだしていた為、先ほどの一刀達が観れば、一瞬見違えてしまうほどである。

 

そして、少女は息を整えて息を面いっぱい吸いこんだ。

 

…その小さな、……“小さな”胸で。

 

 

「そこを、強調するなッ!!!」

 

 

 張宝が息を整えぬまま、地文に突っ込む。

 

 

「…ちぃ姉さん?」

 

 

 天幕の扉越しに誰かが張宝に話しかけてきた。

 

 最初は驚いき、身体を震わせたがすぐに聞き覚えがある声だと分かると、肩の力を抜いて返答する。

 

 

「れんほー、まだ寝ていなかったの?」

 

 

 その返答をと共に天幕の垂幕が捲られ、月の光と一緒に菖蒲色の短髪の少女が現れた。

 

 顔立ちは淵の太い眼鏡のせいか、パッとしないがその下の顔はかなり整っており、心なしか張宝に似ていた。

 

 その少女はその顔を顰[しか]めながら、張宝の服の汚れに気づき、額を手で押さえながら溜息を吐く。

 

 

「用件も告げつに出かけた、姉の帰りを待たずに寝る妹が何処にいるのよ?」

 

「…取り敢えず、妹を差し置いて寝る姉ならいるわよ」

 

「………(汗)。一応、天和姉さんの威厳の為にいうなら、さっきまで起きていたわよ」

 

 

 少女が自分の姉の為に額に汗をかきながら、この場にいない姉のフォローをしたが、張宝はあまり興味無さそうに「ふーん」と言う。

 

 この菖蒲色の髪の少女こそ、この張宝の妹…張梁[ちょうりょう]〈真名:人和[れんほー]〉であり、今は席を外しているが張宝が言っている姉こそが、世間で黄巾党の首魁と呼ばれている者…張角〈真名:天和[てんほー]〉である。

 

 張宝は踵を返すと天幕の外へと赴く。張梁が止めとしたが、外の空気を吸いに行くだけと言い残し、そのまま出て言った。

 

 残された張梁も流石に、出ていかないだろうと思い、自分の寝床に戻る。しかし、寝台に入る前にこう呟いた。

 

 

「一人で抱え込まないでよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆は覚えているだろうか?この二人…ここにいない張角を合わせた三人が、数ヶ月前に一刀と出会っていた事を…。

 

 

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~

  第16幕「張三姉妹と黄巾党と開幕説~その願い、誰の耳に…~」

 

 

 

 

 

 

 ―― 数ヶ月前、陳留 ――

 

 

~~ これは『真・恋姫†無双~物語は俺が書く~第06幕~』の張三姉妹との邂逅後の物語 ~~

 

 

 

 

 

 華琳が一刀を“攫って”から数刻が経ち、張三姉妹は一刀に貰ったお金を使って近くの飲食店で、早めの晩御飯を食べていた。

 

 

 

 ――― モキュ、モミュ。

 

 ――― パク、パク。

 

――― ハム、ハム。

 

 

 

 卓に並ぶは、並の飲茶店にしてはそれなりに豪華な食事であった。

 

 しかし、食べている本人…と言っても、張宝だけであるがかなり不機嫌な表情で食す。

 

 その顔に耐えきれなくなったのか、鴇色をした長髪を靡かせた女性が頬を可愛く膨らませて張宝を注意…と言うより不満を口にする。

 

 そして、この者こそが張角である。

 

 

「も~、ちぃちゃん#。そんな顔していちゃ、美味し物も美味しく無くなっちゃうよ~?」

 

 

 その子供の不満のような物言いだが自分の姉故か、苛立ちはしないモノの張宝も少し不満そうに口を返してきた。

 

 

「でも天和姉さんは、悔しくないの!?いきなり、介入してきた男の事。最終的にお捻りは貰ったけど、結局は全部あいつの物なんだよ?これじゃ、あいつに奢ってもらったようなものじゃない!」

 

「…みたいじゃなくて、事実そうなのよ」

 

 

 張宝の愚痴に鋭い突っ込みを入れた張梁。そして、張宝はツッコミを入れた張梁に愚痴るターゲットを替えて、溜息を吐[つ]く。

 

 

「私は別に奢ってもらった事に、イラついている訳じゃなくて……こんなんで…あいつに負けるようじゃ、大陸一の旅芸人なれるのかなって…そう考えちゃうのよ」

 

 

 

―――大陸一の旅芸人。

 

 

 それが彼女たち――張三姉妹幼き時より、思い描いてきたの夢。そして今、その想いを叶える為に三人は村を出て、旅芸人となった。

 

 

 ―――この乱世に…。

 

 

 世間は甘くは無かった。この時代で歌という娯楽は貴族達には有効でも、民にとってはあまり興味をそそるものでは無かった。

 

 しかし、彼女達は諦めなかった。別に金儲けだけなら、貴族の前で歌えば良い。

 

 でも、それは彼女達の誇り…歌手(芸人)としての誇りが赦しはしなかった。飽くまで皆に好かれる芸人、それこそが張三姉妹の想い・夢である。

 

 故に努力した。歌唱力、演技力。様々な事を学んである程度の民の心を掴む事が出来た。

 

しかし、そんな彼女達をどん底に突き落とした者がいた…。

 

 

 それが、我らが主人公…北郷 一刀である。

 

 彼はあの時、不審な視線を送る者を炙りだす為に張三姉妹のライブに乱入したが、それが彼女たちにどれだけのプレッシャーを与えたのかは本人〔一刀〕には分かっていなかった。

 

 因みに一刀の歌が上手いのは、正史で及川が一刀をストリートライブに強制連行したせいであった。あの時…今もそうだが、一刀は好奇心の塊。興味が沸いた物は、ある程度(上の下、素人以上玄人以下)まで鍛えてしまうのが趣味…いや、癖と言っても良い。

 

 そして、彼の為にいうなら彼は武道系以外は、決して天才では無い。ただ、没頭していつの間にかプロ顔負けに、なってしまっているのである。

 

故に彼は唯の努力家である。

 

 しかし、彼女達にはそんなの事は知る筈もなく、一刀の事を言いたい放題であった。

 

 それも仕方ない事。厭な事があれば、愚痴を零すのが人の性である。(注:愚痴っているのは、張宝一人)

 

 

「姉さん…。愚痴を零しながら喰うのは良いけど、そろそろ閉めないと足が出るわよ?それとも、野宿したい?」

 

 

 だが、いつまでも愚痴を零す張宝…姉に妹の張梁は儚い現実を叩きつけた。

 

 その残酷な現実に張宝は顔を引き攣らせた。そして、張宝に『マジ?』って訴える様な瞳で見つめる。その張梁も眼鏡を煌めかせながら、クールな眼差しで『マジです』と返す。

 

 二人がそんな事を繰り広げている際に、その長女…張角は刺々しい空気に耐えきれなくなり、外の空気を吸いに出ていた。

 

 

 

 

「―――ふぅ。二人ともどうして、あんなに苛立ってるのかな?」

 

 

 張角は黒天が広がる空に、煌めきながら浮かんでる星を眺める。

 

 彼女も天然は入っていても、莫迦ではない。一刀が原因と言う事も理解している。

 

しかし、張角は感じていた。本当の原因はもっと深くて単純である事を…。

 

 

「―――焦っている、のよね?でも、どうすればいいのかな?」

 

 

 張角も姉である。妹の些細な行動からでも、感情と云う物は読める。でも、どうしようも無かった。

 

 日頃から努力しているが、最近はマンネリというか良い結果が出ない時に現れた人〔一刀〕のせいで、二人の感情に掛けていた楔に亀裂が入り、負の感情が流れ出していた。

 

 張角にも負の感情が無い訳では無いが、それ以上に…。

 

 

「あの歌の合戦…、楽しかったな~」

 

 

 夜空を眺めていた張角は、口元を綻ばした。

 

 

「…もし…もしも、あの人と歌ったら楽しいよね?きっと」

 

 

 張角は瞼を瞑り、その裏に今、想像したモノを思い描く。

 

 

 

 

――― 沢山の観客が、まだかまだかと自分達の舞台を経つ。

 

 ――― その様子を舞台の脇から眺める私達と…あの光に反射する服を着た人。

 

 ――― 舞台が始まり、駆けだす私たちを多くの歓声と拍手で迎える観衆。

 

 ――― 歌と演出を私達三姉妹が、そして歌と演奏が彼。

 

 ――― 彼が演奏に合わせ、私たちが舞を舞う。

 

 ――― 目で合図し合い、お互いに最骨頂まで上り詰めて………。

 

 

 

「―――結構、素敵かも?」

 

 

 一刀が笑顔で張角を見つめるところを想像し、頬に手を当ててウットリとしていた。

 

 

 

 だから気が付かなかった。背後に忍び寄る影に…。

 

 

「あ、あのー?」

 

「はい、なんですか?というより、誰ですか?」

 

 

 その影が話しかけてきた。

 

 いきなり背後から話しかけられても、動じないのは姉がなせる業か?それとも天然の所以か?

 

 張角はその瞳を満丸にして、話かけてきた相手を見つめる。

 

 長身の背にチョビ髭。黄色い頭巾を頭に被り、身体を安そうな防具に身を包み、所々傷があったり汚れていたりした。顔は…記すと可哀想なので書かないでおく。

 

 そんな、姿を見れば、常識を持った人なら野盗か何かと気が付き、警戒するところだが張角はその辺の常識〔危機感〕がないのか、別段怯えもせずに相手を笑顔で見つめている。

 

 そんな張角に毒気を抜かれた訳ではないが、その微笑みに顔がニヤついてしまう。

 

 しかし、すぐに頭を振るい苦笑いする。

 

 

「い、いや~!名を名乗るほどの者じゃ…。それより、俺………張角さんの歌、すごく好きなんです!これからも頑張ってください!」

 

「え?ホントに?ありがとうございますー♪」

 

 

 

 

 

 

 無邪気なその笑顔に、男の心には深々と言葉の矢が突き刺さる。

 

 

「(くっ!眩しすぎるぜ、張角さん!?でも、俺にもやるべき事が…!!)」

 

 

「あと………よかったらこれ、貰ってください!よく知らないけど貴重な本らしいですから、売ったら、ちょっとはお金になると思います!活動資金の足しにでもしてください!」

 

 

 男が取り出した(何処から取り出したかは、詮索禁止!)のは、A5サイズ位の紫の表紙の本であった。

 

 これだけなら、そこら辺の書店でも売っている本と変わりない。しかし、その本の表紙には北斗七星が描かれ、題名はこう書かれていた。

 

 

 

 

 

――― 太平要術の書 ―――

 

 

 

 

 そう、華琳が探している本である。この本を持っているという事は詰まる処、この者が本を盗んだ犯人であり、外史に来たばかりの一刀に撃退された盗賊…俗称アニキであった。

 

 しかし、張角自身そんな事も知る筈も無い上に、高価な物と言われて先ほどの張梁の話を思い出す。

 

 

「(そう言えば、れんほーちゃん〔張梁〕がもうお金が無いって言ってったよね?それなら、貰っていいよね…?)」

 

 

 何が良いのか不明ではあるが、相手の好意に甘えようと思い、

 

 

「え?いいんですかー?嬉しいですー♪」

 

 

 そう言って張角は、その本を受け取った。

 

 

 

――― この本が、これからどれほどの惨劇を生むのかも知らずに…。

 

 

 

 張角は笑顔でお礼とばかりに、アニキの手を優しく包み込む。

 

 その行動に驚き、アニキは一瞬呆けていたがすぐに動き出した。そして、握られている自分の手を見て満面の笑みを浮かべる。

 

 

「うお………あ、握手まで…!こっちこそありがとうございます!この手もう、一生洗いません!チビ、デク!見ているか!?俺はやったぞ!!?」

 

「あはは♪厠にいったらちゃんと洗わないとダメですよぉ♪」

 

 

 小躍りしそうな勢いのアニキを見て、張角も笑いが込み上げてきたが、そのアニキの顔がすぐに強張る。

 

 そして、ぶつぶつと小言を言い始めた。張角も気になって聴き耳を立てるが、『…分かってる!』とか『急かすんじゃねぇ!?』などと、あまり意味が分からなかった。

 

 危ない独り言が終わったかと思うと、すぐに張角に向き直るがその顔は先ほどの笑みでは無く、何所か後ろめたい事があるような同時に後悔が混じっている顔であった。

 

 そんな表情だったのにも関わらず、すぐに笑顔を作った。

 

 そのアニキが焦ったように、声を荒上げる。

 

 

「それじゃ、失礼しますっ!追われているので!」

 

「はぁ………?」

 

 

 そう言い残すと、颯爽と踵を返して走り出すが、途中で振りむきもう一度、後ろを向き、

 

 

「―――張角さん…。すまねぇ!」

 

 

 それは何に対しての謝罪であったのか、それを理解するのは数ヶ月後であった。

 

 そして、また踵を返して闇夜の町へと消えて行った。

 

 

「なんだったんだろ………?」

 

 

あの笑顔…無理強いしている事が分かった為か、張角も無理に理由は聞かずに気づいていない振りをした。

 

 でも、最後の謝罪が気になったのか、貰った本…“太平要術の書”を見つめる。

 

 本当に高価な物なのかもしれないが、同時に恐くなった。

 

 

 

 

 

 

 

「…もしかして、曰く憑きとか?」

 

 

 そんな事を想像したのか、徐々に手が震え始めた。その時、遠くから夜の町には場違いな大人数の足音が聞こえてきた。

 

 張角は反射的に“太平要術の書”を背に隠した。必要があったと訊かれればなかったが、もしこの本を探している人なら?と考えると、今の状況ではどう見ても自分が犯人と見られてしまう。もっとも彼女もそこまでは考えてはいないが…。

 

 足音が大きくなってきた。すると、アニキが言った方とは逆の道から桃色の髪をした少女が大人数の兵を連れ、張角の前に止まった。

 

 張角は少々、ぎこちない笑顔を作る。彼女も、一応は芸人。すぐに表情を作り変える事位、造作も無かった。

 

 そんな彼女の前に先ほどの少女…許緒―季衣―が人懐っこい笑みを浮かべて、張角に話しかけてきた。

 

 

「すみませ~ん、ここ等辺で背の高いチョビ髭のチョイ悪そうな…え~と、兄ちゃんなんて言ったけ?」

 

「許緒さま、血畏怖曰く『如何にも悪役その一のアニキって感じ』ですよ」

 

 

 季衣が頭を捻っていると、後ろの兵が耳打ちしてフォローした。そして、季衣が蟠[わだかま]りが晴れたような顔で、フォローした兵に指差して『そう、それだよ!』と蜻蛉[トンボ]のガンマン風に言う。そして、再び張角に向き直る。

 

 

「…で、その悪役その一風の男とチビっこい男と巨漢の男を見ませんでしたか?」

 

 

 そんな季衣の質問…いや、この構図では尋問と言う表現が正しいだろう。

 

 その尋問に笑顔のまま、冷汗を掻き始める。

 

 

「え、え~と(間違いなく、さっきの人だよね?)(汗)」

 

 

 後ろに隠した“太平要術の書”を強く握る。張角の本能が告げる。現状がまずいと。

 

 すると、季衣が張角の挙動不審な行動に気づく。

 

 

「…お姉さん。後ろに何を隠しているんですか?」

 

 

どんなに表情から心情を悟らせないようにしていても、行動までは将軍である季衣は欺けなかった。

 

 まずい…。張角の心が掻き乱れる。今は自分の大きなポニーテールで見えていないが、季衣がその気になれば………ならなくても二人の身体能力を考えれば、すぐにばれるだろう。

 

 張角の頭には今まさに、お星様になっている自分の姿が浮かんでいた。

 

 

「(嫌だよ~!この歳でお星様になるなんて~~~ッ!!!)」

 

 

 そして、そんな彼女…張角は自分なりの一世一代、大博打に出るッ!!

 

 それは…。

 

 

 

 

 

 

「あ~!そう言えば、先ほどその、『背の高いチョビ髭のチョイ悪そうな如何にも悪役その一のアニキって感じ』の人があっちに行ったのをみましたよ~!?」

 

 

 ………人を売る事であった。人々はそれを『罪を擦り付ける』という。

 

 まぁ、元を正せば、先に擦り付けてきたのは、アニキの方であるが…そこは云わないお約束である。

 

 

 張角のワザとらしい表現に兵たちは訝[いぶか]しむ…が。

 

 

「なにぃ!?本当ですか!!?」

 

 

そんな大人と違い純粋な季衣はすぐさま興味を替える。

 

 そんな季衣に隊の副長と思われる者が、そろりと耳打ちする。

 

 

「許緒さま、いいのですか?彼女の素振りは怪しすぎます。もう少し、尋問した方が…」

 

 

 と、進言してみたが季衣はつぶらな瞳で、『にゃ?駄目だよ、そんなに人の事を疑っちゃ』と逆に諭されてしまう始末。流石にこれ以上、口答えしては隊の規律にも害が生じ、様々な人(主に“許緒将軍を護ろうの会”)にやられる為、ここは将軍の意思に従う事にした。

(賢明な判断、別名:英断である。幼児・幼女を護る方々は最強である。『愛[あい]する者は“邪”、愛[め]でる者は“正義”』らしい。ここテストに出ますから、要注意ですよ~)

 

 

 そして、季衣は礼を言うと風のように部下を連れて去って行った。

 

 残された張角はと言うと、星空を眺めながら先ほどのアニキの顔を思い描いた。

 

 

「…名も知らないけど、アニキ(仮名)さん。生き残ってください」

 

 

 売った上に無責任な、張角であるがきっと可愛いから許されるだろう………本人に。

 

 

 

 

 

「てんほー姉さん?何かあったの?」

 

「随分騒がしかったけど、宦官のお世話になる事は止めてよね?」

 

 

 そんな事を言っていると、またも声を掛けられた。しかし、今度は忘れる訳も無い愛しの妹達の声であった。

 

 張角はすぐさま振り向くと、張宝達に今までの経緯を話した。

 

 

 

 

――― 本を貰った事に関して。

 

 

「へぇ~。こんな本がね?本当に売れるの?」

 

「好事家の人に売れば、それなりには…。けど、後で中身を見てから判断しないとね」

 

 

 

―――宦官と思われる人に、アニキ(仮名)を売った事。

 

『姉さんは悪くない』

 

 二人、口を揃えて言った。流石、姉妹ということか。

 

 

「後でいちゃもん付けてきたら、色香でなんとかすればいいでしょ?」

 

「先に押し付けてきたのは相手の方だし、逆にお金を取っても良いくらいだわ」

 

 

 

 そんな事を話していると、いきなり張宝が何かを思い出したように噴出した。

 

 

「あっはっはっ、にしてもさっきのてんほー姉さんの演技!クックッ、笑いを堪えるのに必死だったは!!」

 

「あれは、しょうがないよ~。練習したモノなら、やりこなせる自身は有るけど…即興〈アドリブ〉は出来ないよ~(涙)」

 

「それは、これからの議題ね」

 

 

 張角は自分でも先ほどの演技は不味いと思っており、更にそれを見られていた事に羞恥を覚えた。その姉に今後の課題と、妹の張梁は分厚い眼鏡をかけなおしながらピシャリと言い放つ。

 

 しかし、不意に張角は不審に思った。

 

 何故、今来たばかりの二人が“いないときに演じた猿芝居を知っているのか?”と。

 

 まさかとは思いつつ、薄暗い笑顔を浮かべつつ、ちょっとカマを掛けてみる事にした。

 

 

「あははっ、そうだね。―――で、何時から見ていたのかな?」

 

「そりゃ、最初から――」

 

「っ!?ちぃほー姉さん!」

 

 

 張宝も自分の失態に気づいたが、時既に遅し。

 

 

「―――――――――そうだよね~?あれだけ、騒いでいたんだもん。気づかない方がおかしいよね~~#####」

 

 

 張角は笑顔であった。別に目が笑っていないとか、背後に何か黒いモノが居る訳でもない。しかし、辺りは静寂に包まれており、妹二人は互いに肩を震わせ、顔を蒼くしていた。

 

 

 

 

夜だから?

 

―――確かに今の時期、肌寒いがそれでは、否。

 

 

 敵が化け物?

 

―――否、寧ろ可愛らしく愛らしい。

 

 

 張角が姉だから?

 

―――そう。空手100段の達人も言っていた…姉は恐ろしいものだと…。

 

 

 

 

「二人とも…」

 

『はい…』

 

 

 

 

 

 

 

「頭を冷やすのと~♪少しお話するの~♪どっちがいいのかな?」

 

 

『………いややや~~~!!!』

 

 

 

―――次の日の朝。

 

 

 宿屋の女将が、白くなってやつれている二人の女性を廊下で発見した。掛けようろうとしたが、同時に近くの部屋から鴇色の長髪の女性が出てきて『御気に為さらずに~♪』と言って、その白い物体を部屋に引きずって行ったと証言した。

 

 

 

 

 

 その後、何事も無かったように三人は顔を合わせながら、アニキ(仮名)から貰った本を眺めていた。

 

 断わっておくが、決して二人の記憶が抜け落ちている訳ではない。本当ですよ?

 

 最初は張梁が興味無さそうにパラパラと捲っていたが、徐々にその顔が真剣なモノとなり、姉を呼びだした。

 

 二人も興味無さそうに見ていたが、張宝も張梁と同じように目を皿のようにして文字を黙読し始めた。

 

 唯一読めていないのは長女の張角だけであった。どんなに頭を捻っても彼女には文字が、ただの“線や点”にしか見えなかった。

 

 彼女は決して、字が読めない訳ではない。では何故読めないのか?その答えは至って簡単であった。

 

 

 この本、“太平要術の書”は別名“妖術の書”。

 

 一刀のいた正史のゲームなどで云う、『魔導書』や『悪魔との契約書』と同じようなものである。

 

 

 この“太平要術の書”は妖術に精通している上で秀でている者、又は聡明な者にしか理解できないように細工…術をかけていた。

 

 つまりは、妖術に秀でている張宝と聡明な張梁にしにか、“太平要術の書”の中身を理解する事が出来ていない。

 

 そして、内容が理解できた二人が思った事。それは…。

 

 

『この本さえあれば、歌で天下が取れる…!!!』

 

 

 

 “太平要術の書”に記されている事は、大まかには分けると二種類であった。

 

 

 一つ、『他者の心への“干渉”』する方法。

 

 どうすれば、相手に興味を持ってもらえるか?

 

心に漬け込むにはどうすればいいか?

 

 他者を操るには、どうすればいいか?

 

 ――― そう云った事を綴ってある。これは聡明な知識を持つ張梁が担当する事となった。

 

 

 二つ、『妖術に関する技術と知識』。

 

 

 妖術を効率よく、使う方法。

 

 妖術の種類。

 

 そう云った事を記されていた。これに関しては張宝が担当する事になった。

 

 張宝が舞台の演出を妖術にて舞台を盛り上げ、張梁が巧みな話術で相手の心を鷲掴みにする。姉の張角も“太平要術の書”は読めない代わりに、舞や振り付けを考えた。

 

 そして、その二つの力を使って初の舞台を行った。

 

 

 

 

 

 結果は大成功で終わった。

 

 

 

 

―――ある一部の行き過ぎた信奉者[ファン]………暴徒を除いて。

 

 

 

 

 そこからが彼女達の『黄巾の乱』の始まりだった。

 

 

 

 

 その暴徒の数はまた一人、また一人と増えていった。

 

 そして、その中には張三姉妹に貢ぐ為に近くの邑や街を襲う者まで出てしまった。

 

 それに気づかずに張三姉妹は貢物を、受け取ってしまった為に更に暴徒達を仰ぐ結果になってしまい、気が付いた時にはもう彼女達の力では止めれないほどの勢力となっていた。

 

 張三姉妹はそれが怖ろしくなり、信奉者から逃げようとしたが何処からか嗅ぎつけて来る上に更に人数が増えていく事となった。

 

 

 

―――どうして、こうなったのだろうか?

 

 

 

 何度も同じ自問自答しても答えは返ってこない。ただ、分かる事はこれは自分たちが生んだ事と言う事のみ。

 

 そして、精神が摩耗して病まないときに奴は現れた。

 

 

 

 

―――『御困りのようですね?』

 

 

 

 暗い天幕の中。肩を寄せ合いながら眠っている彼女達が、その声で目覚めて声の出先を探す。

 

 見つけるのには、そう時間は掛からなかった。何故ならそいつは自分達の目の前にいたからだ。

 

 しかし、驚くのはどうやってそいつはここに辿りついたかだ。今、自分達が居るこの天幕は暴徒の中心にある。ここに来るには、それを突っ切ってこなければならない。

 

 だが、そいつの姿を見る限り争った形跡も、服に汚れ一つ見受けられない。そんな事を考えているとそいつから声が発せられた。

 

 

 

―――『…助けて差し上げましょうか?』

 

 

 

 ………沈黙がこの空間を支配する。誰に助けを求めれば良いのか分からなかった時に、やっと射した一筋の光。

 

 

 

―――『ですが、此方も只でとはいかないのでよ』

 

 

「どうすれば、助けてくれるの!?」

 

 

 やっと見えてきた光を手放したくない為に、張宝は即座に喰いつく。そいつが細くほほ笑んだ気がした。

 

 

 

―――『ある男を殺してほしいのですよ』

 

 

 張角と張梁は悩んだが、張宝だけは即答した。

 

 

その男を殺すと。

 

 

 手放したく無かった。

 

 

―――やっと見えた救い。

 

 

 見失いたくは無かった。

 

 

―――やっと見えた光を。

 

 

 

 

………例え、それが…黒い光だとしても…。

 

 

 

 

 

 

~~ 現 在 ~~

 

 

「(私があの時、あんな事を言わなければ…)…くっ!」

 

 

 外に出た張宝は唇を噛みつつ、近くに有った櫓台を叩く。

 

早く助かりたい。楽になりたい。

 

その気持ちがあった為に焦り、とんでもない失態を犯して他の姉妹に迷惑をかけた。

 

 

「だから、せめて…」

 

 

 

「―――『罪を被るなら、自分だけでいい』…ですか?泣かせますね~」

 

 

「!!?」

 

 

 今現在、自分の周りには誰もいないはず何も関わらず、すぐ近く…背後から声が聞こえた。

 

 

 張宝はすぐさま反転して後ろを振り向く。するとそこには“あいつ”がいた。

 

 

 

―――あの時と同じ姿で。

 

 

「おや、今日は他の御二人はいないのですね?」

 

 

―――あの時と同じ顔に眼鏡をして。

 

 

「あぁ、こんな深夜ですものね。いないのも当然な事ですか」

 

 

―――あの時と同じ道士服で、そいつは悠々と立っていた。

 

 

張宝は怒気を込めた声で、そいつの名を叫んだ。

 

 

 

 

―――“于吉”っと。

 

 

 

 

 

「はい♪貴方の心の恋人、于吉ですよ~」

 

「…自分で言っていてキモいと思わないの?」

 

「?別に思いませんが」

 

「―――突っ込まないからね」

 

 

 

 

 

 

「まぁ、それは置いておいて。…“妖刀使いの稲妻”――北郷 一刀と接触したようですね?」

 

 

 于吉が話を戻すかのように、話題を振る。その一刀の名に張宝の顔が微かに歪んだのを于吉は見逃さなかった。

 

 

「しつこいようですが、北郷一刀を殺しなさい。そうすれば」

 

「『この状態…黄巾党を静めて差し上げましょう』。もう耳にタコができるわよ。云われなくともやってやるわ…そう、私が…ちぃが家族を護るの…」

 

「そう。貴女が護らなければ、皆が殺されるのです…北郷一刀を殺せば、私が貴女方を救ってあげましょう…」

「北郷を…アイツヲコロス?」

 

 

 于吉が云い終わるよりも早く、張宝が于吉を睨みながら科白を奪った。

 

そして、その言葉に満足したのか于吉は踵を返してその場を去ろうとしたが、張宝が一端呼びとめ、こう尋ねた。

 

 

「あんた、私達とあいつ…北郷一刀が一度接触していた事を知ってたの?」

 

「―――んぅ?えぇ、知ってましたが。それが何ですか?言っておきますが、それで貴方がたを選んだ訳では無いですよ」

 

 

 そう、言い残すと于吉は闇に消えて行った。

 

 

 残された張宝は消えた闇をみながら歯軋りをし、また櫓を叩く。さっきよりも強く…でもどこか弱々しかった。

 

 しばらく、睨んでいたが少しして自分の天幕へと戻る。

 

 張宝の部屋は二人の部屋とは別になっている。

 

これには理由がある。張宝の部屋には頻繁に黄巾兵からの報告がある、それが夜中、寝ている時でも…だ。その為に二人に迷惑がかからない様に別々の天幕を張ってもらっているのだ。

 

 その張宝が寝床に吸い込まれるように、倒れこむ。そして、目を瞑りながら今日の事を思い返す。

 

 

「…まさか、“北郷一刀”があの時の奴だなんて。―――天和姉さん達には言わない方がいいわね…。結構気に入っているぽっいし」

 

 

 最初に逢った時は、まさか闘える者だとは思いもしなかった。

 

 

 

 

「なにが、『救ってやるよ』よ。期待なんかさせないでよ…」

 

 

 徐々に睡魔に襲われつつ、悪態を吐く。

 

家族を護る為には誰も[他人]信じてはいけない、今彼女の精神を支えているのはその信念のみであった。黄巾党の罪を被らされた上に、于吉の言葉を信じたが為にこの結果の為にしょうがない事である。

 

 そんな心に、一刀の言葉に響く。

 

 

『この最悪な時代でも信じる事を忘れなければ必ず出会える、だから楽進達は本当に信じあえる友達と出会えた』

 

 

「―――信じれば?…もう、無理よ」

 

 

 暴徒がやった事とはいえ、間接的にあの“書”を用いた時点で自分達が悪いのは分かっていた。でも、そのせいで追われている。“他人のせい”で。

 

 

「でも…今を変えれるなら」

 

 

 張宝の瞼が徐々に垂れ落ちて来る。目尻に涙を溜めて…。

 

 

「―――“信じるから”…。誰か…助け…て…よ」

 

 

 瞼が閉じると共に涙が、頬を伝う。

 

 

 

 

『その願い、必ず届くぞ。我が孫に………なっ?』

 

 

 

 

 その声は眠りに着いたはずの少女の耳にいつまでも木霊し、その日だけ少女は安心して眠りに着いた。

 

 

 

 

 

 

 

~あとがき~

 

 

 一体どれだけ、更新遅れているのだよ!?と自問自答している。覇炎です…。

 

 仕事と両立って難しいですね…。ですが、どれだけ遅れても達成したいのも事実…。この際、余計な文を書かずに投稿しようか?などと考えています。

 

 まぁ、それは置いておいて…。今回は少し、ネガティブ係数が多いので次回は前回やった『鍼で倒せ』の違うバージョンをやろうかなと思っていたり、いなかったり。

 

 

 その内容を少しだけ載せますね?観たい人のみ『次へ』をクリックしてください。

 

 それ以外の人は次の小説で逢いましょう!では、アデュー!!!

 

 

 

 

 

―――こんにちはです。私は名前は言えませんが、とりあえずはこう名乗りましょうか?

 

 ~~諜報員―黒猫~~っと。

 

 

 私はある噂の真実を確かめる為、ある陳留の武将…ではなく、軍師を調べる為に遠征を行なっている部隊を観察して“いました”。

 

 

――その軍師の名は………北郷一刀、『妖刀使いの稲妻』。

 

 

 

 そして、そいつは―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「み~っけた♪探したぜ、どこぞの諜報員?」

 

 

 

 

 

 

 

―――私の目の前に飄々と木の枝に座っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒猫が跳ぶ!

 

   それを追う一刀!

 

 

 黒猫が忍者の如く、森の木々の間を縫うように逃げる。

 

  それ以上の速さで、駆け抜ける“種”馬。

 

 

「誰がじゃ!?」

 

 

 

 逃げれないと悟ると反転し、苦無を打ち込む黒猫。

 

 それを同じ苦無で撃墜する全身精液男!

 

 

「最早、妖怪レベルだな!?おい!」

 

 

 

 そして、捕まる黒猫。

 

 迫りくる、触手!!

 

 

「それを言うなら、食指!あれ、でもこの場合はこの方が萌える?」

 

 

 さぁ、どうなる?大和撫子たる猫よ?

 

この先は次回を待て!!

 

次回の真・恋姫†無双~物語は俺が書く~

  第17幕「初めての直属の部下?三羽烏と闘う軍師2号!そして、リアルな鬼ごっこ♪」

 

 

 

 

 逃げ切った先に黒猫は何を見るのだろう?

 

 

 

 

 

―――あれはただの軍師では無いです…あれは―――妖刀使いの稲妻は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――大変な変態です!!←黒猫、真面目な表情o(><)o。

 

 

―――・・・もう一度、調べてきなさいΦ(。。)。

 

―――∑(ToT)

 

―――冥淋!冥淋!私も“変態な大変”に逢いたい!o(^-^o)(o^-^)o

 

 

 

 

 

 

 この通りに書くとは限りませんので、あしからず。

 

 次回をまてw

 

 

 

 

 


 
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