No.124510

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~ 第15幕+α

覇炎さん

 申し開きは御座いません。

 済みませんでした~!!

 とりあえず、楽進達の出会い編&戦闘は終了です。

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2010-02-15 00:17:36 投稿 / 全28ページ    総閲覧数:5015   閲覧ユーザー数:3848

 

 

 

――― 満天の夜空、星が爛爛と輝くにも関わらず、地上には幾閃もの光で輝いていた。

 

――― そんな、空の下の城壁の上で俺―― 一刀 ――は3人の少女達と一緒に城壁の下で高ぶっている人達を眺めていた。

 

――― その少女達は、瞳を煌めかせながら今からする事に興奮を抑えきれずにウズウズしていた。

 

――― そして、一刀も彼女たちに感化されたのか、落ち着きがない。

 

――― そうだ、これは他人事。俺は、また何かを映像として“観”せられているのだ。

 

 

『ねぇ、一刀。この舞台、みんなと一緒に一刀も楽しんでね』

 

 

――― 青竹色の巻き毛の髪を、左に一括り[サイドテール]にした活気そうな少女は奇抜な衣装を身に纏い、小さそうな胸を懸命に張る。

 

 

『ああ、もちろん。存分に楽しませてもらうよ』

 

 

――― 一刀は“本当に”嬉しそうにサイドテールの娘に笑顔で答える。しかし、“観ている俺”としては“知らない奴”に笑顔でいる一刀が…自分が気に入らない…はずなのに別に苛立つ事は無い。それが不思議でしょうがないが、逆に苛立たない理由を考えれば、“観ている俺”も“知っている奴”だから苛立たないという事になる。

 

 

『それじゃ、言って来るね!』

 

 

――― 苛立たない理由を考えている間も、映像は止まらずに流れている。次の娘も奇抜な衣装を身に纏いつつ、今度は“3人の中で一番”年上のような女性。鴇〔トキ〕色か珊瑚〔サンゴ〕色…分かりやすく言えば桃色の挑発の髪に黄色い布を蝶々結び〔リボン〕にした胸の大きな女性。少々、天然が入っていそうな締りの無い笑顔だが、その中にも人を集める強さを秘めているのを感じる。

 

――― 一刀はその娘に笑顔で手を振りつつ、舞台に送りだす。先ずは■■が光が爛々している舞台に走り出し、大きな歓声が上がる。

 

――― ???今、俺は少女の名を呼ぼうとしていた?知っている?でも、声にならない。

 

 

『観客の誰よりも、一刀を一番めろめろにしちゃうんだからね!♡』

 

『既にめろめろになっている気もするけどな』

 

『分かっているけど、今までよりももっと、めろめろにしてげるの!』

 

 

――― 続いて■■も舞台に躍り出て、派手な演出が観客を沸騰させた。

 

 

『一刀さん、今日はお礼の意味を込めて、貴方の為に歌うから』

 

『……分かった。しっかり聴かせてもらうよ』

 

 

――― 最後に■■が舞台に現れ、三人揃った■■■■☆姉妹が出そろった。

 

――― 知っている。俺はこの娘達を知っている。でも…思い出せない?

 

 

 

 

――― 否、俺は知らないがこの“一刀”が知っている。そして、その一刀を“俺”が知っている。

 

――― でも、“この一刀”は、左慈と戦って敗れた“あの一刀”と同じではない気がする…。

 

 

――― 大熱狂の渦の中、三人の歌が始まった。たった三人なのに、会場の歓声に負けないくらいの音量で歌が響き渡る。

 

――― 鴇色の髪の娘の舞台をいっぱい使った天真爛漫な演出。そして、透き通った歌声が心に澄み渡る。

 

――― 青竹色の娘は狙った姿勢や態度で観客を興奮させて、止めの甘い美声で魅了していく。

 

――― 菖蒲色の娘は二人の暴走を抑えつつ、しっかりと目立つ位置に移動しているのは流石の一言だ。

 

――― 三人とも、自分の個性を引き出しながら互いに高め、一つの歌になっている。………これがきっと、みんなを夢中・熱狂させる理由なのだろう。

 

 

 

 

――― 一刀と俺はその姿に見入る。時が流れていくことすら忘れさせるほど、真剣な表情で…。

 

 

 

 

 

 

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~

 

 第15幕「Progress~進展~」

 

 

 

「ちょっとっ!!!アンタ、ちぃの話し聞いてんの!?耳に蚯蚓〔ミミズ〕でも湧いてんじゃない!!?」

 

「……ふぅ。すまん、もう一回言ってくれ。あぁ、やっぱり、いいや。耳〔ミミ〕に蚯蚓〔ミミズ〕を掛けた詰まらん冗談を、言う者の話を聞く気は無い。因みに湧くのは『蟲』か『蛆〔うじ〕』だ…。付け加えるなら『頭に蟲でも湧いている―――』が正解だ」

 

 

 一刀は左慈の時と同様、また何かを観せられていた。まるで過去に何かがあったような。しかし、本人には全く身に覚えが無い為、頭が混乱していた。

 

 その為にデクの肩に乗っている者が、可愛らしい声で怒鳴る声も今の一刀にとっては雑音にすぎない。

 

 故にイラつき、鼻で嗤うように今も怒鳴るモノを小馬鹿にする。それに便乗しつつ、自分の主も罵る者がここにいる(ある)が。

 

 

〈全くです。オヤジ思考回路ですね、まぁ、下品の比べ合いならマイスターといい勝負でしょうが…〉

 

「朔っち…それって追い打ちっていうんじゃ…」

 

 

 そんな一刀に追い打ちをするが如く、朔が自慢するように毒舌を吐く。其れを季衣が苦笑いしながら、突っ込んだ。

 

 一刀は表面上は何時も通りのボケ突っ込みをしつつ、朔に念話で話しかける。

 

 

「(…朔)」

 

〈(3秒ほどです、おめでとうございます。また、世界を縮める事に成功しましたね?)〉

 

「(そうか…今回はその程度か。一体あれは…?)」

 

〈(マイスター、考えるのは良いですから突っ込みをプリーズです!『世界を縮めるって…クー○ースピリッツも大概に…』などの突っ込みは!?放置プレイ禁止です~!?)〉

 

「(放置では無い………スルーだ)」

 

 

 朔の冗談を流しつつ、敵を見る。

 

目の前にいるのは、家よりもでかいあり得ない図体の黄巾党。言葉にならない声を上げている事から、知能が低い事が窺える。武器は巨大な戦斧が二つ。

 

 

「ステーターで現すと名前――デク。武器――戦斧。知能――10段階中の1。力――8…ってところか?」

 

「だから、無視すんなやーコラッ!!?」

 

「…あと、超電○銃〔レール○ン〕思考が一名。カッコ始まり戦力外カッコ閉じ」

 

〈マイスター、全部声に出ていますよ…〉

 

 

 一刀が戦力分析している間も、相も変わらずデクの肩の上にいる者が騒ぐ為に一刀スキル、『オートツッコミ』で適当に相手する。

 

 因みにその者はやっと朔の存在に気が付いたらしく、肩を一瞬だけ震わせて『剣が喋った!?』などと驚いている。朔はと言うと『今更ですか?時代の波に乗り遅れましたね…』と憐れんでいた。

 

 

「(あいつは…誰だ?普通はあんなところに乗らんだろ…。あれじゃ狙い撃ちにして下さいって言っているような物だぞ?)」

 

 

 次に一刀は、先ほどから騒いでる者に関して考えるが大きな布で姿形を隠している為、声以外からの情報で女と言う事しか分からない。いや、若しかしたら声の高い『男の娘』と言う事だって有る得る。自分で情報を得るのも限界な為に一刀は敵から眼を離さず秋蘭に現状況を訊く。

 

 

「状況か…観ての通りだ。敵は二人。あの巨大な者は妖術の力にて巨大化し、厄介な事にあの脂肪は季衣の“岩打武反魔”まで無力化する。更に私の矢も無暗に放てば突風で跳ね返される可能性がある。そして…」

 

 

 秋蘭が一端区切り、布を被っている者を見るように指示するので一刀は『狼襲』から降りて、『朔夜』を持つ手と逆の左手で地面から抜き取り、肩に担ぐ。そして、見る…いや、見ている心算なのだがその者が肩を震わしているのを見ると一刀は“見る”では無く“睨んでいる”のかもしれない。

 

 が、別に一刀は謝るつもりも無い。何故ならどんな理由があろうとも、この者達は黄巾党。多くの同胞がこの者達のせいで死んでいるのだから一刀にとっては睨まれて当然の存在であった。

 

 そして、秋蘭の次の一言が一刀の怒りを駆り立てる。

 

 

「―――この黄巾党の首魁…張宝だ」

 

 

 

 

 

 

――― バシュ。

 

 一刀が『稲妻の氣』と発動させる。

 

 しかし、今回はそれだけでは無かった。辺り一面が重い空気に包まれ、ここにいる皆の背に冷たい汗が流れる。ただ一人…殺気を出している本人〔一刀〕を除いて…。

 

 その一刀が秋蘭に向かって疑問をぶつける。

 

 

「秋蘭…。俺の記憶が正しければ、“張角”と言う者が首魁と記憶しているが?」

 

「………あ、あぁ。私もそう思っていたが、その本人が『自分が黄巾党の首魁』と言っている」

 

「…そうか。じゃあ、次に此方の状況は?その三人は見覚えがあるんだけど、仲間って解釈でいいのか?」

 

 

 声色はいつもと変わらず穏やかであるが、その気配からは気を抜けば瞬時に真っ二つに出来るほどの剣先を、向けられているように感じる。

 

 そんなはずは無いと秋蘭は頭を振り、邪念を振り払いながら楽進たちの事を述べた。

 

 

「あぁ、その通りだ。銀髪の者が楽進文謙[がくしんぶんけん]、菫色の髪の毛が李典曼成[りてんまんせい]、栗毛色が于禁文則[うきんぶんそく]といってな…。順に拳闘士・槍・双剣を使うが…」

 

 

 秋蘭の言葉の歯切れが悪くなる。一刀もその理由は分かっていた。

 

 地面に突き刺さっ『狼襲』と抱えると共に周りを見渡していた際、その三人…いや、季衣も平然としてはいるが脚に怪我を負っているのは分かっていた。

 

 

「(さて…と、現状を纏めれば奴と戦えるのは俺〔撃(重)剣士[ブランディッシュ] + 斬刀士[ブレイド] = 双剣士[ツインソード]?〕と秋蘭〔弓兵[アーチャー]〕の二人。敵はデク〔戦斧〔撃(重)剣[ブランディッシュ]の類〕〕と張宝…カテゴリー的には魔導士(妖術士[ウォーロック])ってところかな?)」

 

 

 敵をまるでゲームのジョブ[役柄]に当てはめる様に分析する。しかし、主人公で有るが為か一刀のジョブが多すぎる。敢えて.ha○k//G.U.で言うなら錬装士[マルチウェポン]という所である。

 

 一刀は敵を睨みつつ、徐々に後退して秋蘭達が居る所まで下がり、小声で話しかける。

 

 

「秋蘭、正直なところ楽進たちが足手纏いだ…。すまないが後退するように言ってくれ」

 

「…流石は戦う軍師の異名、思いやりの無い言葉だが最善策か。それに言葉の裏に『これ以上、傷つけさせたくない』という感情が見え隠れしているな」

 

 

 一刀の冷たい言葉の裏を読み取ったのか、薄笑いを浮かべながらもからかう。

 

 それを気にした様子も無く、左手に持つ『狼襲』を縦に構えつつ、左に持つ『朔夜』を逆さに持ち替え自分の背中に隠す様に背後に回す。

 

 

「(まず、敵…張宝に空我[くうが]を一発。デクが防御したら、デクの背後に回る込み、『狼襲』で一振り。妖術か何かで防いだら、『焔の力』で熱いのを一発くれてやるか)」

 

 

 脚を肩幅に開き、『狼襲』を振るう。

 

 その動作が引き金となり、皆が一斉に行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 秋蘭が皆に『下がれ!』と命を下し、

 

 

 

―――『狼襲』は囮で、相手の出方を見る。思った通り、張宝はデクが己の戦斧で張宝の身体を隠した。

 

 

 

 楽進達も驚きつつ、将の命に従って後方へ下がった。

 

 

 

―――『狼襲』を振り終えると同時に『朔夜』に風を纏わせ、前へと振り上げる。

 

 

 

「風之型――『空我』」

 

 

 

 予定通り、風の刃[空我]は張宝の楯[戦斧]に中り、突風が巻き起こる。其れが目眩ましとなり、デクは硬く眼を瞑った。

 

 其れは、たったの一秒にも満たない時間。しかし、一刀にはそれでも十分な時間である…相手の背後に回るには。

 

 

「『稲妻の氣』…俺のオリジナル歩法。『雷孤[らいこ]…』

 

 

 一刀はデクの目の前から孤[こ]を描くそうに横から後ろに“跳躍”する。決して三角跳びでもないし、跳躍と着地以外は一度も脚を地面に着けずに…。

 

 それにより、余計な時間を削減し相手の不意を付ける。

 

 …ただ、欠点として着地からすぐに行動できない。そして、跳躍と着地以外は一度も脚を地面に着け“れない”為に方向転換が効かず、相手に着地地点がばれると待ち伏せされてしまう。

 

 

「しかし、今の相手にはこれで十分。欠点[デメリット]あってこその利点[メリット]だ…っと!」

 

 

 その言葉に張宝が、いち早く反応してデクに呼びかけるが…。

 

 

「遅ぇッ!!」

 

 

 その時にはすでに、一刀が跳躍して『狼襲』がデクの背後を捕らえていた。

 

 一刀はギラギラの殺意を隠そうとせず、歪んだ笑みでこう叫んだ。

 

 

「さぁ!季衣の『岩打武反魔[いわだむはんま]』すら通さぬ防御力…俺に見せやがれッ!」

 

 

 身体全体を使って『狼襲』を振った。

 

 

 

 

――― ザシュュゥゥッッッッ!!!

 

 

 

 

 『狼襲』がデクの肩に食い込んだ。そこから、鮮血が舞い散り真赤な血桜を咲かせる。

 

 

「■■■■■■ッッッッッ!!!?」

 

 

 

張宝の口元が歪む。

 

 秋蘭は内心「取った」と確信した。

 

 デクが悲鳴を上げる。

 

 季衣が『倒した~!』と歓喜する。

 

 楽進が自分たちでは、手も足も出なかった相手を一撃で斬った事に慄く。

 

 李典が驚きのあまり、空いた口が塞がらなくなった。

 

 于禁が余りの衝撃に『全力全壊なの~』とNGワードを口走る。

 

 

 

 そんな中で一人、腑に落ちないという顔をしている者が居た。

 

 

「(どういう事だ?)」

 

 

 それは、デクを斬り付けた本人…一刀であった。

 

 

 

 

 

 

「…『狼襲』は俺の持つ武器の中で、最高重量を誇る武器。熊だって縦に一刀両断が出来る物だぞ?」

 

 

 昔、山の中で『狼襲』の試し斬りで出遭った3m近くの人食い熊を斬った大刀…その切味は首切り台と同じ。名前を“首切り包丁”や“熊切”と改名しようと思ったくらいに…。

 

 其れが、食い込む程度。一刀の額に厭な汗が浮かぶ。

 

 

 

「■■■■■ッ!!」

 

「ッ!?チッ!」

 

 

 デクが一刀を捕まえようと、背中に腕を伸ばすが、その行動を止めさせる為に『狼襲』に『焔』の力…――  灼 熱  ――で『狼襲』の熱量を上昇させ、傷口を火で炙る様な真似を行う。

 

 

―――ジュッ!

 

 

 

 その外道・鬼畜な行いにデクはまたも咆哮を上げ、今やろうとしていた行動を止めて痛みに耐える。

 

 その隙を逃さないと、一刀は『狼襲』をデクから引き抜き、デクの身体を蹴り上げながら張宝の所まで駆け上がる。

 

 

「!?こ、こないでよッ!!?」

 

 

 其れに気づいた張宝が、手の平より紫色の火の玉…『鬼火』を出現させ、一刀に向かって放つ。

 

 

「…遅いって」

 

 

しかし、そのようなモノが中る訳も無い。

 

一発、ニ発…。

 

 

 

―――駆け上がる。

 

 

 

「いや、来るな~~!」

 

 

 泣き叫ぶように『鬼火』を連弾する。

 

 

「『下手な鉄砲、数撃ち当る』ってのは的が動かないときだけだ…」

 

 

 三発、四発、五発…。

 

 

駆け上がろうとした…が。

 

 

―――グラッ。

 

 

 

「んっな!?」

 

 

 いきなり、目の前が歪み脚に力が入らなくなる。素人でも判る隙を張宝は見逃さなかった。

 

 

「!…そこだ!?」

 

「ぎっ!」

 

 

『鬼火』をもろに受け、そのまま地面へと落ちていく。

 

 

〈マイスター!?意識をしっかりと持って、着地の後にバックステップを!〉

 

 

 薄れゆきそうな意識を、唇を噛み締めて痛みで意識をハッキリさせる。次に一刀は空中で一回転して地面への衝撃を和らげ、朔の言うと通りに後方に飛びのく。

 

 すると、デクが降り返り、丁度一刀が着地した所にデクの脚が置かれる。少しでも遅ければ…朔が補助していなければ、一刀は潰れていたろう。

 

 

「ふ…ふぅ。ふー、ふぅ」

 

 

 しかし、今の一刀にそのような事を気にしている余裕はなかった。

 

地面に膝を着き、肩で息をしながら今の現象について考えていた。

 

 

「(んっだよ、今の?いきなり身体が重くなって眩暈がしやがる。…チィ、ダルりぃ…)」

 

〈(氣の限界が近い為に、身体が反射的に氣を制限したのでしょ)〉

 

 

 一刀の疑問に答えたのは、相棒の朔であった。

 

 朔が言う通り、氣とは云わば、“体力”を“力”に変えているようなもの。人が疲れる…体力を消費すれば疲労回復の為に眠るように、力を使い過ぎれば、身体が回復するように信号を出す。

 

 例えるなら、今の一刀の身体は黄色信号を発しているようなものである。

 

 今までの戦いを見れば、誰が見ても氣の使い過ぎで在った。

 

 しかし、敵はそのような事は関係ない。

 

 張宝は一刀を殺す様、デクに指示を出す。

 

 

「私の邪魔を………」

 

 

 デクが巨大な1対の戦斧を、振り上げる。

 

 

「マジィ〔本当〕?…つか、マズィ〔不味い〕」

 

 

 流石の一刀も、危機感が芽生えて『狼襲』を振るおうとするが、氣が使えない今では戦斧を受け止める事は出来ない。

 

 

〈マイスター、後退を!!氣が使えない以上、あれを止める事は!?〉

 

「天衣無縫流、―――型…」

 

 

 朔が後退するように助言するが、一刀は引かずに構える。

 

 そして、

 

 

「―――邪魔をするな~~っ!!」

 

 

一刀は見た。デクの戦斧が、振り下ろされる瞬間。外套を深く被った張宝の眼から頬にかけて、透明な雫が落ちている所を…。

 

 

 

―――ドスンッ!

 

 

 

 とても、大きく…されど短い音がこの町に木霊した。

 

 

 

 

・・・・・・BAD END?

 

 

 

 

 

 

アイキャッチ〔前半〕

 

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~〔アフレコ:夏候惇元譲〔春蘭〕[CV:深井晴花]&夏候淵妙才〔秋蘭〕[CV:如月葵]〕

 

 

お題:………取り敢えず、武器繋がりで逝こうか?

 

 

春蘭「適当だな!?」

 

秋蘭「鳴り響け!僕のメロス!!」

 

春蘭「秋蘭!?くっ、こうなったら…月牙天衝!?」

 

 

覇炎「はい、次逝こうか~?」

 

 

春・秋「テンション低いな…」

 

 

 

 

 

 

アイキャッチ[後半]

 

 

 

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~〔アフレコ:左慈元放〔???〕[CV:氷河流]&于吉〔???〕[CV:ジャック・クラウド]〕

 

 

お題:………う~ん?…声真似!名台詞~、いってみよ~!?

 

 

左慈「くだらない…が、『カズマ~~~ッ!!!』」

 

 

于吉「ふふっ、ツンデレですね。では、私は・・・」

 

 

―――ガシャーーン。

 

 

 スタジオの窓ガラスが割れ、同時に誰かが侵入してきた。その犯人は…!

 

 

一刀「劉邦~~ッ!!!基、左慈~~ッ!!!」

 

 

覇炎「―――ちょい、待て。貴様、前回出たろ?」

 

 

一刀「…いや、ほら。俺の元CVの人ってあの人じゃん?左慈の掛け声を聴いたら、つい(汗)。」

 

 

覇炎「だからって、上から…しかも窓を蹴り破るなッ!?そう言うのは恋乱〈真・恋姫†乱舞〉の紲の行動だ!」

 

紲 「…呼んだか、愚民?つか、俺なら、やっても構わないのだな?」

 

光魔「時空を超えて、貴方の元に!恋と正義と食事と睡眠と、其れから…取り敢えず色々な味方!火雅 光魔!!只今、参上仕ります!!!」

 

白亜[司馬懿]「もう!君達、これ以上迷惑かけないで!?作者さん、左慈君、于吉さん。ゴメンナサイ!」

 

 

 

于吉「………カオスですね?取り敢えず、『うひょ~、俺って天才?』。…相手してくれないと淋しいですね?」

 

 

 

 

 

 

――― 一刀がやられた?

 

 

 

 皆の頭に其れが浮かんだ。

 

 誰も動こうとせず、秋蘭と季衣は呆け、楽進達も何が何だか分からない状態であった。

 

 砂埃が舞う中、この沈黙を破ったのは一刀を殺った犯人…張宝であった。

 

 

「…ははっ、あははっ、馬鹿みたい。仲間を助けに来てやられるなんてさ。そうよ…他人を…血の繋がりもない人を助けようなんて馬鹿のすることなのよ!?」

 

 

 張宝は狂ったような…そして、乾いた声で哂い一刀の行動を否定する。しかし、秋蘭にはそれが自分を否定しているようにも聞こえた。

 

 実際、秋蘭には幾つか気がかりな事があった。

 

 

 一つ。張宝がさっきから他人の事を否定している事。

 

 幾ら、何でもあれ程、他人を否定するのは異常だ。

 

 

二つ。北郷 一刀を殺そうとしている。

 

先ほど一刀が現れる前、張宝は『本当に巫山戯ないでよっ!!?もういい、あんた達を倒して“北郷 一刀”って奴を殺しに行ってやる!!!』と、言っていた。どういう意味か?そして、一刀を吹き飛ばしたのにも関わらず、未だにここに滞在している。

 

 

 

「(…どちらにしろ、北郷がやられた事は痛い。この事が兵にでも洩れれば、混乱が生まれる。クッ!こういうときに、兵に慕われている者を失うのがこれほど痛手になるとは…)」

 

 

 

 

 秋蘭も冷静を装っているが、一刀がやられてた事は許し難い。出会いは唐突。最初は己が主に馴れ馴れしいと思っていたが、話してみればそう悪い者でない事はすぐ分かった。自分の姉の事を馬鹿にしつつ、しっかりと面倒を見てくれる。桂花と喧嘩しつつ、しっかりと認めるところは認め、譲るところは確りと譲る。

 

 

 

―――そんな人間が消えた。姉じゃは泣くだろうか?死は兵の常と言い、悲しむ程度だろうか?

 

―――では、私は?

 

 

 そう考えている時に横から、地の底から聞こえてきたような声がした。

 

 

「………れ」

 

 

 その声に反応して張宝が振り向く。そして、つまらなそうに声の本人の名を呼んだ。

 

 

―――『楽進…』っと。

 

 

「…また、あんたなの?いい加減にウザった…」

 

「黙れ、と言ったのだ。あの人を馬鹿にするなッ!!」

 

 

 血みどろの身体に鞭を打ち、楽進は立ち上がる。その身体からは底を着いたはずの紅蓮色の氣が、巻き上がっていた。

 

 その瞳には闘氣が。

 

   その身には涸れたはずの力が湧き上がる。

 

 

 

 しかし、その見る者を虜にするような姿さえも、今の張宝にとっては癇に障るだけであった。

 

 

「なによ、あんたも死にたいの?どうして、そこまでして立って来るのよ!?どうして、何の“関係もない奴〔人〕”の為にそこまでするのよ!!?」

 

「あぁ、お前の言う通りだな…」

 

『…なっ!?』

 

 

 

 

 

 

 張宝の嫌味を、何の苦も無く、嫌そうな顔もせずに即座に肯定した。

 

 その返答に周りにいた者、全てが唖然とした。

 

 しかし、楽進は『確かに…』と眼を瞑りながら、言葉を紡いだ。

 

 

「私は貴殿の先ほどの言葉…『友達など…所詮、赤の他人。この者達[黄巾党]だってきっと何時かは…自分達を裏切る。結局はその程度。そんな、奴らを………血の繋がりすらない他人を、お前は信じられる?』のか…。私は一瞬ではあったが、其れが正しいのではと思ってしまった」

 

 

 楽進は悔しそうに、そう呟く。秋蘭や季衣、于禁や李典も黙って耳を傾ける。しかし、当の本人〔張宝〕は『ちぃ、そんな事を言ったっけ?』などと弩忘れしていたが…。

 

 

「しかし、先ほどの人の行動を見て気づいた事がある。あの人は別に自分の“立場”の為に助けたのでは無い。あの人の行動は“助けたい”から助けたのだ」

 

 

 最初の出会いは、偶然であった。素直というか鈍感というのか、傷だらけの楽進を可愛いと言った。

 

 再会は戦場。煌びやかな衣服を身に纏い、楽進たちの窮地を救った。

 

 

「とても優しそうな人だと思ったが、物凄い殺意を出したりして恐く感じたが、それは皆を救う一心が為…」

 

 

 楽進は深く深呼吸をして、空を見上げる。

 

 何処までも青く澄んだ空。

 

 

 

―――そうだ。何を疑う必要があった?

 

 

 

 例え、自分が不利な状況でも仲間を助ける為、一人で立ち向かっていった一刀。

 

 

 

―――昔の私もあんな感じであったろう?いつから他人、血の繋がり、利害などを考える必要があった?

 

 

 

 一刀はそんな事を考えず、敵を倒す事を考え、仲間を救う事を考えて戦っていた。

 

 

 

―――そうだ…。今までそうやって闘ってきたじゃないか!そう、これからも!

 

 

 

「だから…」

 

 

 楽進はデクを睨み、拳を前に突き出して構えた。

 

 

「私は闘う…。友と明日の為にッ!!!」

 

 

 そんな楽進の姿をみて、多少は怯みつつ、的確に楽進の弱点を突く。

 

 

「ふ、ふん、なによ?あんた、もう、ふらふらじゃない。アンタ一人で何が出来んのよ!?」

 

 

 確かに、立ったは良いが脚が震えているのも、また事実。楽進が冷や汗を欠きながら、どうするか考えていると。

 

 

「…一人やなかったら………どうにかなるんかい?」

 

「一人でおいしい処、持っていちゃ駄目なの~!」

 

「そうだよ?将軍の僕より目立っちゃ駄目だよ?」

 

「全く…。良くも悪くも他人に影響を及ぼす奴だな、吾奴は」

 

 

 気が付けば、左に李典、秋蘭が。右を見れば于禁に、季衣がそれぞれの得物を構えて立っていた。

 

 皆、強気…勝気な笑みを浮かべて、敵に立ち向かう。

 

 その行動が張宝を苛立たせ、叫ばせる。

 

 

「何なのよ!?味方がやられて、何でそんな顔が出来んのよ!?どうして、他人の為に頑張れんのよ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――それが、“仲間や友達”ってやつだからだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

張宝の背後から、先ほどから聴きなれた声が聞こえた。鮮明に、そして、飄々と。

 

 

 信じられないという面もちで、背後を振り向く。

 

 戦斧が巻き起こした砂埃が、未だに晴れぬ中、その中に人影らしきものが確認できた。

 

 

「うそ…?だって、確実に捕らえたはず…」

 

 

 心地よい風が吹き乱れ、砂埃が晴れて今度こそ姿が確認でき、張宝の考えが確信へと変わった。

 

 視線の先には、確りとした足取りで立ち、勝気な笑みを浮かべて敵を見据える一刀の姿があった。

 

 

「兄ちゃん!?」

 

「よぅ、季衣…、ってさほど時間も経ってないが」

 

 

 季衣が一刀の姿を確認すると共に、大声で呼び、一刀も暢気に片手を上げて返事をした。

 

 

〈全く、マイスターには驚かせられます。私を脅かして楽しいですか、鬼畜マスター?〉

 

「………朔、それは色々と不味いものがあるから止めろ」

 

 

 そんな一刀を相変わらずの毒舌で、弄る朔。声色的にはなんか拗ねているような感じであった。

 

 

〈…考えてみれば、そうですよね。マイスターは正史では“氣”を使って無かったのにも関わらず、グランドマスター小十郎を降したのです。あの程度の攻撃、避けれて当然ですね…〉

 

 

 そう、最近は氣を多用していたが、元は氣を使わずに天衣無縫流の継承者になったのだから…。実際の一刀は氣など使わなくても、そこら辺の者には負けないのであった。

 

 

 

 

 

 

―――戦斧を振り下ろされる瞬間………。

 

 

《マイスター、後退を!!氣が使えない以上、あれを止める事は!?》

 

『天衣無縫流、氷之型――静無[しずな]』

 

 

戦斧が一刀の眼前に迫る。

 

 しかし、一刀は慌てずにゆっくりと対処した。

 

 まず、相手と視線を合わせつつ、身体を敵の攻撃が届くか否かの処で回避。そうする事により相手は脊髄反射状、視線をそらせる事が出来ず、更にギリギリで回避する事によって自分が外したと勘違いし、その瞬間の隙を突くと言う技。実際に武術の世界にもこういった技などがあるが、実践しようとなると視線を合わせたまま、当てる・避けると言うのはかなり、難易度が高い。

 

 そうして、一刀は避ける事に成功した。

 

 

《…あっ。そうでした。マイスターって、“いちよ”武術の“達人になりかけた師範代クラス”でしたね…》

 

『…今、バカにしなかったか?』

 

 何かを察知したのか、ジト眼で朔を睨みつける一刀。其れを回避する為に今のうちに攻撃するように指示を出すが…。

 

 

『…いや、この砂埃を利用して、ちょい待機。気配を殺して機を窺いつつ、氣と体力の回復を待つ…』

 

 

 なにやら、考えている顔付になり、朔も何か心当たりがあるのか一言だけ言って黙った。

 

 

《何を考えているのか、判り兼ねますが…どんな選択をしても、後悔だけはなさらぬよう》

 

『…ありがとよ。相棒』

 

 

 照れているのか、刀身がカタカタと微動して少し経つと治まった。

 

 そして、気配を殺しつつ考えていた。

 

 

 

―――張宝の涙の意味を。

 

 

 

『(もしかして、あいつ…)』

 

 

 そして、ある事が思い合った。

 

 

『もし、そうなら…これ以上、殺らせない。…いや』

 

 

 

―――俺と同じ、人殺しにはさせない!

 

 

 

 

 

 

「さて、張宝。こっからが本番、俺の…いや、俺たちの真骨頂を見せてやる」

 

 

 そう言うと、一刀は大刀『狼襲』を手の平で一回転させ、切っ先が地面に向いた時に地面に思いっきり刺した。

 

 

 

―――ドッスン!!!

 

 

 

 正にその効果音が似合う音が鳴り響く。

 

 

「…ちょうまて!?なんや、あんな重たい刀を背負って、あないぴょんぴょん跳び回ってたんかい!!?」

 

「あの武器…。初めて拝見するな?」

 

「わ~、僕の鉄球とどっちが重いかな?」

 

「どうでも良いけど、早く終わらせて帰りたいの?」

 

「なら、沙和も確りと働けよ?」

 

 

 

「敵のアタシが言うのもなんだけど…、緊張感ないわね?」

 

「………面目次第も無い、返す言葉すらも無いぜ…」

 

〈くじけるなマイスター、頑張れマイスター、罪と罰が貴方の友達です!!!〉

 

「せめて、愛と勇気が友達だとうれしいな~」

 

 

 皆がそれぞれ『狼襲』の感想を言ったり、帰りたいと抜かす中、張宝と一刀はそんな一行に呆れていた。何処まで行っても閉まらない小説である。

 

 

 

 

―――気を取り直して。

 

 

「と、取り敢えず、もう一度あの世に送り返してあげるわ」

 

「無理振りを感謝するが、其れはさせない!」

 

 

 一刀は両手で長刀『朔夜』を構え、すぐに攻守が入れ替えられる距離を取る。今回の敵は接近戦一筋、これなら一刀も引きを取る事も無い。

 

 秋蘭達も得物を構えはしているが、ちょっとずつ後退している。今自分のすべきことは敵を倒す事では無く、一刀の脚を引っ張らない事を理解してる行動であった。

 

 なら、一刀のするべき事は一つ。敵の気を引く事。丁度良く、一刀には重宝に訊きたい事があった。

 

 

「なぁ、張宝。尋ねたい事が有るんだが?」

 

「なぁに?後ろの奴らを逃がさない程度で聴いてあ・げ・る」

 

「…ちっ、あざといな。割と頭が回るようで」

 

 

 張宝も割と賢いようでは有ったが、一刀はそれにおいては負ける気はなかった。

 

何故なら相手は、確実に乗ってくる。なにせ、今自分が向き合っている問題…。同時にこの世界で一刀が向き合った問題。それは…。

 

 

「張宝…お前………」

 

「なによ?」

 

「人…殺した事“無い”だろ?」

 

「っ!!!?」

 

 

 

 張宝の口元が引き攣る。多分良い当てられて、驚愕しているのだろう。

 

 そして、一刀の声は秋蘭達にも聞こえており、後退していた脚を止め、仰天していた。

 

 

「…なんと」

 

「にゃ?どういう事?」

 

「なんやと?」

 

「ぇ?でも、あの子は黄巾党の首魁なの~」

 

「あぁ、あの人の言う事が本当なら…」

 

 

 

 

 

 

「…そう、張宝。お前は間接的〔黄巾党〕に人は殺していても、自分の目の前で…。増して、自分の手で人を殺した事が無いな?」

 

 

 一刀が確信付き、的確に張宝の心を鷲掴みにする。これで頭は回らなくなり、的確な指示が出せなくなると、一刀は踏んでいた。

 

 そして、確実に張宝の矛先は一刀に向いた。

 

 しかし、張宝は一刀の指摘を共同不審な哂いと共に否定する。

 

 

「あ、…あ、はっはっ。君は何言っているのかな、かな?ちぃ、わっかんない」

 

「じゃあ、何故、あの時…俺を殺す時、涙を流した?」

 

「ち、ちがう!?涙なんか流して…」

 

「はい。ダウト…今ので肯定だ。そこは『砂埃が目に入った』とか言えばいいじゃないか。何を慌てる?何を焦る?何がそこまで君を…駆り立てるんだ?」

 

 

 一刀の熱弁で張宝は言い包められた。もう、反論の余地は無い、沈黙は肯定…。最早、逃げ道は無かった。怒鳴る事以外に…。

 

 

「なにが………お前に何が分かる!!?訳も分からずに人殺しになる気持ちが解かるっていうの!!?黄巾党が勝手に暴動起こしたのに、ちぃ達のせいにされて…こんな世界に…こんな時代のせいで私は…私たちは殺されなくちゃいけないのよ!!?そんなの厭!絶対、厭!!?“他人の罪を背負うなんて厭”!!なら、いっそう自分の手で…そんな気持ちがアンタに分かる!!!!?」

 

「…それが他人を否定する理由か。あと、知らん」

 

「な!!?」

 

 

 張宝の激しい訴えすら、一刀は受け流す。しかし、

 

 

「知らんと言った…が、理解できる事もある」

 

「…理解…できる?」

 

 一刀は理解できる、共感できる事は確りと受け止めていた。それがどんな結末であったとしても…。

 

 静かに目を閉じ、言葉を紡ぐ…。

 

 

 

 

 

 

「…俺もこんな時代のせいで、数ヶ月前の戦で…初めて人を殺した。一人じゃない、沢山、沢山の者をこの手にかけ、この刀で斬った」

 

「…初めて?」

 

 

 張宝は一刀の言葉をゆっくりと繰り返す。一刀も慎重に言葉を選び、丁寧に述べる。

 

 

 

―――相手に確りと理解してもらう為に。………そして、この後の行動の為に。

 

 

 

「人を殺した事無いようだから、教えてやるよ。………人って、簡単に殺せるんだぜ?」

 

 

 その言葉が張宝の耳にこびり付き、いつまでもエコーする。そして、優しそうな、されど触れば消えてしまうのでは?と思わせるような儚げな笑みを浮かべる。

 

 

「同時に、その死を長引かせ、死ぬ寸前まで甚振る事が出来る」

 

「…めて。やめて。もう、いい」

 

「お前こそ、理解してるのか?」

 

「もう、良い!聴きたくない!」

 

 

「殺すというのは―――人の死期すら簡単に操れる」

 

「っ!!?」

 

 

 張宝が余りの衝撃に、ストンっとデクの肩に座り込んだ。

 

 同時に頃合いと朔に念話する。

 

 

「(朔、今から作戦を言う)」

 

〈(…グズッ。ざぐぜんでづが〔作戦ですか〕?)〉

 

「(なに涙ぐんでいる?)」

 

〈(だって、普段はどうしようもなく、母性本能を擽るマイスターがそこまで考えているなんて…。ま、まさか!?)〉

 

「(…ふっ。相棒すら騙せる俺の演技。オスカー賞ものであるな)」

 

〈(騙しましたね!?純粋素朴な私の心と躯で玩びましたね!?絶望した!この外道マスターに絶望した!!!)〉

 

 

 一刀の考えに感動していた朔であったが、一刀の嘘と感じたのか今度は怒りを顕にして否定していた。

 

 その反応に困った顔をしつつ、朔を諭す。

 

 

「(………騙してねぇーよ。実際そう感じ、こういう考えに至った。お前に『この世界の人を否定した』って言われたあの日からずっと考えていた。俺なりにまとめた心算だ)」

 

〈(…すみません。取り乱しました。………あと)〉

 

「(んっ?なんだ?)」

 

〈(重たいモノを背負わせてしまい、申し訳ありません〉)

 

「(……失態は功績で取り戻せば良いし、感謝はしてもお前の事、怨んでないよ…、逆に)」

 

〈(?)〉

 

「(いつも支えてくれて、一緒に闘ってくれてありがとう)」

 

〈(ッ!!!!?………作戦を。絶対に成功させます。いえ、させて見せましょう。雷の宝刀『朔夜』の名に賭け)〉

 

「(…?おう、期待しているぞ。あと、さっきの『純粋素朴うんぬん』って事、貂蝉みたいだから止めてくれ…)」

 

〈(今後、一切しませんです。はい)〉

 

 

 

「…ねぇ?」

 

 

 そんなやり取りしつつ、作戦を話して、準備をしていると張宝が何を思ったのか話しかけてきた。一刀としては今の隙を秋蘭に突いて欲しかった所だが…。

 

 

「(お前らも、感動してないで隙ついて、敵を無効化してくれよ~~っ!!)…なんだ?」

 

 

 デクの後ろで涙ぐんでる者達を一睨みしつつ、張宝に視線を戻す。

 

 フードごしてはあったが、その顔には迷いが窺えた。

 

 

「…あんたは、なんで…人の命を奪ったの?」

 

 

 素朴な質問であった。

 

 でも、一刀には返答し難いものであった。

 

 富の為?

 

―――――違う、そんなのも、人を殺さなくたってこの知識を使用すれば、手に入った。

 

 腕を磨く為?

 

――――それは断じて有ってはならない。腕を磨く為に人を殺めるモノなど断じて武人では無い。…俺は武人では無いが、武心得は持っている。

 

 では、仲間の為。

 

―――――――――否定はしないが、しっくりこない。

 

では―――為か?

 

――――――――――そうだな。

 

 

 

「…そうだ。俺は…」

 

「…なに?」

 

 

 

 

 

 

「おれは…俺自身の為に人を殺めた」

 

「自分自身の為…」

 

 

 張宝が繰り返す。

 

 

「そうだ。殺らなければ、殺られていた」

 

「…なによ。それじゃ、ちぃに何も言えないじゃない!!?」

 

「でも、お前はまだ、護ってくれる奴が居るだろ、そのデクってやつがさ?」

 

 

 一刀はデクを指差す。

 

 一見、張宝のゆう事しか聴いていないように見えるが、張宝を狙った時のあの行動…。意識の無いモノの行動では無いように見えていた。

 

 

―――それにその言い方じゃ、助けてくださいって言っているようなものだぜ?

 

 

「俺はあの時、誰も傍にいなくて、殺らねば俺が死んでいた。多分、あの時他の兵とかがいれば、そいつに任せて、今も軍隊の隅で震えていたかもしれない…」

 

〈そりゃないですね。貴方の性格上〉

 

「(うっさい#黙って準備しろ)」

 

〈(は~い。失禁マス・・・)〉

 

「(望月で打つ#)」

 

〈………OK.OK.話し合いは人類の偉大な一歩ですよ?〉

 

 

「…私の知らない処で話が進んでいるような?」

 

「気のせいだ」

  〈気のせいです、little lady[リトルレディ]〉

 

 

 割と鋭い張宝をあしらいつつ、朔に準備させる。

 

同時に張宝の相手をする。本心を混ぜつつ。

 

 

「…まぁ、最初はそんな感じだ。お前が言うようにこの世界…時代を怨んでもいる」

 

「なら!」

 

 

 一緒に…そう言い切る前にハッキリと言う。そうする為に何をすべきか、自分のこれからの道を教えてやるために。

 

 

「―――だから、破壊する」

 

「…なにを?」

 

 

 張宝の意識が飛んだように感じた。

 

 

 

―――教えてやるよ。俺が往く道を!

 

 

「この時代の流れを…。乱世を壊す!そして終わらせる!!!」

 

「それなら、私達と一緒でもいいじゃない!?」

 

「お前らのは、唯の集まり…。それも、他の者に害を成す最悪のな!!!」

 

「それこそ、自分の為にでしょ!!!」

 

 

―――そこだよ、俺が一緒に行けないのは…。

 

 

「あぁ、俺は自分自身の欲望を満たす為に………護るんだ」

 

「なによ、それ?」

 

「心が叫ぶ、皆を護れと…。身体が欲する…知人との民との触れ合いを」

 

 

―――昔の俺では、決してない事であった。他人を護るなど。けど、今は望む。知人を………華琳が護りたい笑顔を!!

 

 

「…なによ?所詮、あんたも他人の為?」

 

 

 張宝が酷く落ち込んだような、呆れたような声を出す。

 

 そんな重宝に一刀は人差し指を振り、こう否定した。

 

 

「違うな。俺は他人の為に闘うほど、強くない。他人を護るのは、最強の人か王がする事」

 

「あんたのと、何が違うのよ?」

 

 

 一刀は胸を張る。これだけは違わぬよう。心に誓う為に。

 

 

 

 

 

 

「俺は“他人”じゃなく、“知人”を護る」

 

「…はぁ!?何が違うのよ!!」

 

「違うぞ!?他人は知人の他の人を差し、知人よりも遙かに多い。しかし、逆を言えば知人は他人より少ない訳だから、大人数を護るよりも少人数の方が護りやすい、うん。君の言う通り、他人の為になんか死にたくないしな?」

 

「…あんた、バカだ。それに…」

 

 

張宝が外套を取り、その素顔を曝け出した。

 

 

「…!?その顔は」

 

一刀の思考に再び、ノイズが奔る。それは先ほどの映像。

 

 

 

 

 

 

―――青竹色の巻き毛の髪を、左に一括り[サイドテール]にした活気そうな少女は奇抜な衣装を身に纏い、小さそうな胸を懸命に張る。

 

―――『観客の誰よりも、一刀を一番めろめろにしちゃうんだからね!♡』

 

 

 

―――あの姿で…あの顔で、どうして、悲しそうな笑顔を作る?どうして、そんな事を言う。

 

 

 

「…私たちも他人だから、護ってくれないんでしょ?」

 

 

 

―――そんな悲しい事をいうな…。どうして、この言葉を“君”の口から聴くと、こんなに胸が痛むんだ?

 

 

   ―――集中しろ、北郷 一刀!敵を斃す為に!!

 

      ―――■■■を殺しちゃだめだ!!!

 

         ―――俺ガ代ワッテ、ヤロウカ?

 

            ―――テメーはすっ込め!!!

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ、ふー。落ちつけ」

 

 

 一刀は己に自己暗示を掛け、落ちつかせる。何故、彼女の顔を知っているのかは知らない。でも、一つだけ判る。

 

 

―――助けたい。

 

 

「…もとより、その心算だ!」

 

 

 一刀は自分に小声で云い聞かせ、張宝を見る。

 

 未だに悲しそうな顔をしている。気のせいか、やつれているし、目にも隈が出来ていた。

 

 それほど、今の現状が彼女の精神を蝕み、摩耗させているのだろ。

 

 それ故、

 

 

―――待っていろ、どれだけの犠牲、時間をかけても助けるから。

 

 

 一刀は踏みだす。己が欲望[願い]を満たす[叶える]為に。

 

 

「なら降れ。絶対にお前を死なせない。殺させない」

 

「そんなの信じられる。私は他人なんでしょ?」

 

「なら、今から知人に…仲間になれば良い」

 

「さっきから、言ってんでしょ?この時代の他者なんかッ信じられないって!」

 

 

 張宝の悲しい叫び、今なら、判る。この張宝は過去の一刀…自分だと。

 

 

――― だから、…助ける。いや、助けられる!今の自分が居るのはこの時代の仲間が居たからなんだ!!!

 

 

 一刀は心の底から、本心をぶつける。

 

 

 

 

 

 

「…たしかに、この時代は最悪だ。人が人を疑い、誰も人を信じられなくなった世界」

 

 

―――でも、それはどの時代も変わらないんだぜ?

 

 

「だがな、この最悪な時代でも信じる事を忘れなければ必ず出会える、だから楽進達は本当に信じあえる友達と出会えた」

 

 

 張宝が楽進を見る。隣には李典や于禁が楽進を支えている。

 

 

―――ちー■う、替えるのは時代じゃない、自分達だ。

 

 

 張宝が歯軋りをさせる。

 

 

「そんなに…すごいッてんなら!」

 

 

 張宝がデクに楽進達を襲うように指示した。

 

 

―――ち■ほう、変わろうぜ?“前みたい”に笑顔を見せてくれ。

 

 

「この危機を乗り越えて、見なさいよ~~!!?」

 

 

 戦斧が再び、楽進達に襲いいかかる。

 

 

―――シュン、ドス。

 

 

 しかし、楽進達は動けない、動こうとしない。

 

 その顔は何処までも、信じていた。

 

 一刀を。

 

 

「―――あぁ、救ってやるよ。この俺がな!!」

 

 

―――解放してやる。お前を覆う闇を破壊してやるよ、地和!

 

 

 

 

 

 

―――バリッ。

 

 

 デクの戦斧が楽進の眼前で停止した。

 

 

「…ちょっと、なにやってんの?殺せって言って…!?」

 

 

 張宝がデクに蹴りを入れようと、振り向くが途中で力が入らなくなる。

 

というよりも。

 

 

「…か、身体が、し、しび、痺れてる?な、何で~?」

 

「…一瞬の閃きがこうも、逆転のキーになるとは…作戦第一段階完了っと」

 

〈流石は私、良い仕事ですわ~、とみさka  …朔は自画自賛するのでした〉

 

 

 一刀の声に張宝が、その方を向く。その途中でデクの背中に有るモノが刺さっている事に気づいた。

 

 

「あれは、刀?」

 

 

 そう、それは一刀の宝刀『朔夜』であった。それだけなら、デクの動きなど止めれない。不味いのは、

 

 

 

―――バリッ、パリッ。バチッ。

 

 

 

 帯電していた。それはもう、刀から蒼白い龍の面影を見るほどに。

 

 

 秋蘭達もそれには驚いていたが、それ以上に皆の目線は一刀の方に向いていた。

 

 張宝を見れば、一瞬だけ意識が飛んでしまった。

 

 一刀の両足以外は何ともない。うん、普通だ…ちょっとぼろぼろだけど。

 

 本題は脚だ。

 

 

 

―――ボッ、ボゥ。

 

 

 

 火の粉を撒き散らしながら轟々と燃え盛っていた。高熱と言っていい程の炎を纏って…。

 

 

「…はっ!ちょっと、なによ、何なのよ?その脚!?想定外な展開に意識が飛んじゃない!!?」

 

「~んっ♪?もう、俺の氣も底をついてね、回復した分で仕留めないと痛いんでね…ならば、どうするか?」

 

「ゴクリ」

 

 

 張宝がツッコミを入れるが、鼻歌交じり受け流し、地獄の作戦を告げた。

 

 

 

 

 

 

「答えは簡単…。………………敵を固定して動かないようにして、当てればいい!!」

 

「…あ、あ、悪魔っ!鬼!?人手無し!!?」

 

「悪魔でも良いよ?悪魔らしい、やり方で…破壊してやるよ!!」

 

「破壊、破壊って、そんなに壊したいの!?」

 

「うん♪b」

 

「にこやかに即答して言うな~~~!!?」

 

 

 一刀の性格はいたって残酷、そして純粋なのです。

 

 そんな一刀の性格を理解したのか、覚悟を決め、離脱する準備をする張宝。しかし、その前に敵の事を聴かなければならない。

 

 

「アンタ、一体何者なのよ?」

 

 

 一刀は人差し指を張宝に差し、通りすがりの旅人の真似をしてこう言った。

 

 

「…ふっ。天から地に落ちた“刹那”の“稲妻”…破壊の稲妻。魏の軍師、北郷 一刀!覚えておけ」

 

「!?…アンタが北郷 一刀…」

 

〈因みに稲妻の速度は1/1000秒程度、刹那は1×10の-18乗ですので〉

 

「いらん突っ込みをするな!」

 

〈おまけ、解説として“瞬息”は1×10の-16乗、“瞬息”と“刹那”の間として1×10の-17乗として“弾指[たんじ]”と言うのがあります〉

 

 

『へぇ~~~…はっ!?話の腰、折るな!!?』

 

 

 今まで斃そうとしていた青年が、自分の標的だった事に驚いた張宝…。

 

 そして、朔のウンチクに皆が関心していたがすぐに、意識を取り戻し、突っ込んだ。

 

 その時、デクの身体が動き出そうと、身体を捩り始めた。

 

 一刀もこれ以上、敵を固定しきれないと判断し、駆ける。

 

 

 

―――朔に頼んだ事は二つ。

 

 

 一刀の足の裏が地面から離れる度、接触地点から火の粉が弾け飛ぶ。

 

 

〈取り敢えず、『Exceed charge[イクシード チャージ].』っと〉

 

 

 朔が自分の刀身に蓄積していた、電気を全て放出してデクを捕縛する。

 

 

 

――― 一つ。回復した氣を使って、『稲妻の氣』で敵を動かなくする事。

 

 

 

 一刀が跳ぶ。空中で捻りを加えて、脚力の威力を増す。

 

 

「やっちえ、兄ちゃん!」

 

 

 季衣が応援する。

 

 

「決めろ、北郷!」

 

 

 秋蘭が援護出来るよう構えながら叫んだ。

 

 

「かましたれー!」

 

「全壊なの~!」

 

「頼む、決まってくれ」

 

〈マイスター、今こそ『Crims○n sm○sh[深紅の一撃]←(勝手な解釈)』です!〉

 

 

 三人が祈る。そして朔がNGワードをかます。

 

 

 

 

 

 

―――二つ。残った氣を『焔』で圧縮して、“二”撃で仕留める!!

 

 

 

「こっから、俺のオリジナルだ。―――雷堕・焔葬[らいだ・えんそう]―――」

 

「…一蹴[いっしゅう]・雷突[らいとつ]!」

 

 

 捻りを加えた一刀の右脚が、デク…に刺さった『朔夜』の柄を捕らえて、そのまま、蹴り込む。

 

 

 

―――ドシュュュュゥゥウゥゥッ!!!

 

 

 

「■■■■ッ!!?」

 

 

 『朔夜』がデクの肉を裂き、帯電した電気が痛みと共にデクの身体を駆け廻る。

 

 

―――ガチンッ。

 

 

 突き進むと共に朔は、己が刀身に何か硬いモノに中った事を感じるが、それも一瞬の事。

 

 

―――ガシャン。

 

 

〈んっ?今、何か…?〉

 

 

 そのまま、デクを貫通して地面へと突き刺さる。

 

 デクが仰け反っている最中、一刀は残りの左脚をデクに振るう。

 

 

「二蹴[にしゅう]、焔環[えんかん]!」

 

 

捻りを加えた、二撃目の蹴りが確実にデクの躯体を捕らえた。同時に張宝は危機を感じて、力を振り絞り、近くいの屋根に跳び移った。

 

そして、

 

 

 

―――ドシッーーーン!!!

 

 

 衝撃波が、周りの砂や砂利を全て吹き飛ばす。一刀の脚はデクに食い込み、デク自身も動かない。

 

 初めに動いたのは、一刀であった。自由な右脚をデクに添え、左脚を引き抜く。そして、両足が自由になった事で重力に引っ張られて地上に降りる事になった。

 

 着地すると、共にデクが膝をおる。そして…。

 

 

「…地獄がお前を待っているぜ」

 

 

 デクが地面に倒れた。其れがこの戦いのカーテンフォールであった…。

 

 

 

 

 

 みなさん、お久しぶりです。覇炎です。余りに長い事、開いてしまった為に忘れ去られてしまったでしょうか?

 

 申し訳ない事です。結構な長文になってしまいました。

 

 今後とも、大きく更新が開くかもしれませんが、応援してもらえれば恐縮です。

 

 

 さて、暗い空気はここまでにして、一刀くんの氣が半端じゃない量と思われているかもしれませんが、実はそう見えるトリックがあるのです!それはまた次の機会に説明していきたいと、思います。

 

 

 では天衣無縫流の秘技の解説…その名も『教えて、北郷師匠!』

 

 

 

 

 

 

「…やる気、出ないな」

 

〈まぁ、技の解説は本人の方が分かりやすいじゃないですか?〉

 

『稲妻の氣』技集

○『雷孤[らいこ]』

・自分が敵の目の前から孤[こ]を描くそうに横から後ろに“跳躍”する。

 決して三角跳びでもないし、跳躍と着地以外は一度も脚を地面に着ける事無く敵後方に回り込める。

 それにより、余計な時間を削減し相手の不意を付ける。

 

・ただ、欠点として着地からすぐに行動できない。

 そして、跳躍と着地以外は一度も脚を地面に着け“れない”為に方向転換が効かず、相手に着地地点がばれると待ち伏せされてしまう。

 

『焔』技集

○『灼 熱[しゃくねつ]』

・武器の熱量を上昇させる。物を焼き切ったりする事が出来る。

 しかし、決して俺が熱を感じない、などというご都合設定は無く、熱を上げ過ぎれば、俺自身も火傷する。

 

 

『天衣無縫流、氷之型』

○『静無[しずな]』

・技・奥義…と言うよりも武人の心構えを思い返すモノ…心を落ち着かせて対処する事かな?

 まず、相手と視線を合わせつつ、身体を敵の攻撃が届くか否かの処で回避。そうする事により相手は脊髄反射状、視線をそらせる事が出来ず、更にギリギリで回避する事によって自分が外したと勘違いし、その瞬間の隙を突くと言う技。実際に武術の世界にもこういった技などがあるが、実践しようとなると視線を合わせたまま、当てる・避けると言うのはかなり、難易度が高い。

 

 

『稲妻と焔、合成技』

○『雷堕・焔葬[らいだ・えんそう]』⇐作者的に『雷陀・忌苦[ラ〇ダーキック]』にしたかった…。

 ・俺のオリジナルの秘技ってところだな…。

 まず、『朔夜』に『稲妻の氣』を使用し、雷を蓄積、帯電させて敵に刺し、動けないように固定。

 その後、俺が好き勝手に、敵を蹂躙する…。我ながら鬼畜な技だな…。

 

〈でも、私自身が敵に触れなければ、マイスターは武器を失いかなり危険な状態になりますよね?〉

 

 …痛いところを突かれたが、正にその通りである。俺自身、体術は、余り得意では無い…。が、負ける気も無いが。

 

 

・一蹴[いっしゅう]・雷突[らいとつ]

 こいつは『雷堕・焔葬』の一撃目。両足に圧縮した『焔』の片足で最初に刺した『朔夜』を蹴り飛ばし、同時に『朔夜』に蓄積してある雷を解放。相手を完璧に怯ませる。

 

 因みに今回は、敵の装甲…脂肪が分厚いから『焔』で打ちこんだだけで、本来は『焔』無しでも可である。

 

 

・二蹴[にしゅう]、焔環[えんかん]

 『雷堕・焔葬』の二撃目。こいつは『一蹴』目で怯ませて、二蹴目の蹴りで仕留める技。これは単純に回し蹴りだ。しかも、かなりの勢い、威力で打ちこんでいるから一般兵からしたら死神の鎌に見えなくもないだろう。…多分、首を刎ねる事が出来る。………うん、相当の武に通じた者で無い限り禁止だ。

 

 

○鬼火[おにび]

 ・張宝が使った妖術だ。単純に自分の妖力を火に還元して打ち出す技だと思う。

 

 

 以上、『教えて、北郷師匠!』終了だ。

 

 では、次回予告。朔、よろしく。

 

 

 

 

 

 

〈はい。では、こっからは朔ちゃんの番です〉

 

 

 

―――次回の真・恋姫†無双~物語は俺が書く~は!?

 

 

「………私が、私が家族を護らなきゃ…」

 

「そう。貴女が護らなければ、皆が殺されるのです…北郷一刀を殺せば、私が貴女方を救ってあげましょう…」

 

「北郷を…アイツヲコロス?」

 

 

 

「そう言えば、貴方が進言した部下は、使えるようになったかしら?」

 

「―――えっ?…あー、あいつね。おう、完璧では無いが其れなり。足を引っ張る事は無いぞ?」

 

 

「という訳で、今日から貴女達は三人は武将。そしてあなたは一刀の―――になってもらうわ」

 

「ウチらが…」

 

「武将なの?」

 

「頑張ります」

 

 

「ボクが血畏怖[チーフ]の―――ですか?………(バタン)」

 

「おい!?―――!!駄目だ、気絶しやがった」

 

 

 外史とは明らかに変わりつつある、この世界。在る筈の無い張宝との記憶。一刀に何が?

 

 マイスター貴方は一体、魏の外史ではないの?

 

 先の見えぬ、この外史。私が見据える、私が貴方を護る、心を。

 

 

~~期待せずに待ってください~~

 

 

 

 

 

 

真・恋姫†無双~物語は俺が書く~

 

裏壱幕「爺さん、頑張る?」

 

 

 

 

――― 一刀と左慈の戦闘跡地 ―――

 

 

 

「…やれやれ。一刀の奴、盛大にやってくれおったな」

 

「それこそ、流石はアンタの―――だろ?」

 

「がっはっはっ!その通りじゃな、逢魔[おうま]?」

 

 

 一刀と左慈が闘った跡地で日本の着物…男物の流しを白い短髪の男性がいた。

 

 その近くには和服を着た年端もいかない赤毛の少女が二人。

 

 その野太い声で笑う20~30代の男性の輪郭は何処となく、一刀に似ていた。

 

 それもそのはず、この男性は何を隠そう…、

 

 

「むっ!そう、この儂は何を隠そう、あの暴れん坊、一刀の祖父事、儂は北郷 小十郎(25歳、自称実際は60越え)とは儂のこと~よ!」

 

「小十郎…、お前さ、誰に言ってんだ?」

 

「逢魔、唯でさえ得物に話しかける淋しい爺さんなんだから、これ以上惨めにしちゃ、可哀想ですわ…」

 

 

 いきなり、地文の説明を横取りしたこの年寄り染みた口調の破天荒な青年…もとい、爺さんは自称、年齢以外はその通りの一刀の祖父。

 

 その破天荒な小十郎の傍にいる少女の鋭い突っ込みに膝を突き、メソメソと泣き始めた。

 

 

「…相棒たちが、苛める…。くそ。『朔夜』では無くて、この性悪姉妹を孫にやるんだった!」

 

 

「安心しろ。朔ねぇや望ねぇでも、アンタにはこんな風に接すると思うぜ?」

 

 

 この男勝りな口調の少女、名は逢魔[おうま]。髪はセミロングで悪戯好きそうな顔付。目は釣り上がり、瞳は見た者を吸い込むのでは、と錯覚するほどのクリムゾンレッドであった。

 

 

「寧ろ、私たちは一刀君の方が嬉しかったですわ。可愛いしぃ、…からかいやすそう♡―――夜の方も………キャ、キャ♪」

 

 

 この女性的な口調にして、毒舌ぎみな少女、名は旭[あさひ]。腰まであるロングヘアーに日本人形を思わせる風格。目は垂れ下がり、見る者を和ます。瞳はエメラルドグリーン。

 

 髪型と瞳色、顔つきは違えど、この二人は間違いなく双子の姉妹で在った。その姉妹に苛められた老人はと言うと…。

 

 

「儂か?儂がいけんとですか?」

 

 

 何かに、絶望していた。だが、その眼は確実に“何か”を捕らえていた。

 

 双子も何かに気づいたのか、小十郎の近くにより付く。

 

 ふと、小十郎が立ち上がり独り言のように、話し始めた。

 

 

「全く、正史の時代はやれ年金など、オヤジ狩りだの、老後問題など在ったが…。外史のこの時代は年寄りを敬っておったろ?…そこら辺をどう考える、………于吉?」

 

 

 

 

 

 

 小十郎は虚空を見上げ、語り付ける。すると、視線の先の空が、歪み始めた。そして、蒼い道士服を着た眼鏡の青年…于吉が現れた。

 

 于吉は顎に手を添え…、

 

 

「そうですね。やはり国の問題ですから、まずは―――して―――をした挙句に―――するのが良いかと」

 

「…すまん(汗)。禁止用語の為か、ピー音のせいで全く聞こえんかった」

 

「そうですか、それは残念…」

 

 

二人はにこやかに談笑しつつ、ある程度の距離を保ちそれ以上近づこうとしない。逢魔と旭は小十郎の手を握りつつ、于吉…そして、周りに注意を払う。

 

 小十郎は于吉を睨み、話しかける。

 

 

 

「して、どのような用権じゃ、変態?」

 

「…これ以上、左慈の邪魔はさせませんよ?ミスターロリペドフィン」

 

 

 

 二人の間に沈黙が続き、木枯らしが吹いた瞬間、二人が動き出した!

 

 

 

「私の愛は不純じゃねぇ!死ねぇ、ロリコン!?来々、『傀儡兵[くぐつへい』!」

 

 

 于吉が印を結び、変な掛け声と共に白装束の傀儡[かいらい]五〇〇人ほど現る。

 

 双子が警戒する中、小十郎は傀儡をみて鼻で笑う。

 

 

「フン。于吉、まさか高々五〇〇で儂らを…いや、儂を止めれると?」

 

「…いくら、管路の役割を担っている貴方でも、これだけの兵に時間を取らざる得ない…!?」

 

 

 于吉は最後まで、言葉を紡ぐ事が出来ない。

 

 其れは逢魔、旭も同じであった。

 

 

 

 

 

 

「…もう一度、汝に問う。この程度、でよいのだな?」

 

 

 先ほどまでの小十郎の気配とは、天と地ほど違うこの威圧感は間違いなく、小十郎から発しられている。

 

 

「―――くっ!!?『増』。貴方達、こいつを殺さなくてもいいですから、時間を稼ぎなさい!!!『裂』」

 

 

 于吉は小十郎の威圧感に負け、更に三〇〇ほど傀儡を増加させ、時間を稼ぐよう指示を残して自分は亜空間へと消えて行った。

 

 

「ふー、最近の若者はなっとらんな?この程度の威圧感で逃げ出すとは…。これなら、一刀を相手にしていた方がっぷりすっ!??」

 

 

 小十郎が呆れて溜息を吐いていると、後頭部に衝撃が奔る。

 

 それは涙目になった、逢魔の蹴りだった。

 

 

「小十郎!?テメー、あんな威圧感を出すんじゃねぇ!!失禁しかけたろうが!?」

 

「これこれ、女子[おなご]がその様な言葉を使うんでぃーねっ!?」

 

 

今度はうつ伏せになっている所に、涙目の旭のボディープレスを喰らう。…全体重を膝の一点に集中して。

 

 

「私たちは朔夜様と違って、“造られた”ばかりなのです!あのような、威圧感に慣れてないのですから!?」

 

 

 その後、二人にボコボコにされつつ、すぐに復活して周りの白装束達を観る。

 

 その眼は別に敵としてでは無い。ただ、そこにある風景でも眺めるかのように…。

 

 逢魔達が小十郎の横に並ぶ。

 

 

「小十郎…、やんのか?」

 

「んっ?あー、まぁ、やると言えばやるが~」

 

 

 もう一度、敵を眺めて頷く。

 

 

「あぁ、やる」

 

「よっしゃ!初仕事だぜ!!」

 

「腕が…いえ、身体が疼きますわ♪」

 

 

 双子の顔は先ほどまでの、年相応の顔では無く、とても儚げ…そして、残酷なほど美しい笑顔であった。

 

 しかし、そんな二人を余所に小十郎は前に出て…。

 

 

「うんにゃ、お前らが出るまでも無いわ」

 

『…えっ?』

 

 

 そう、申すとそれを合図に傀儡兵(八〇〇)が小十郎を囲み、襲いかかる。

 

 しかし、3人は慌てなかった。

 

 逢魔は、『また、御預けか…』と肩を落とす。

 

 旭は、『出番が欲しいですわ』と静かに嘆く。

 

 そして、小十郎は…。

 

 

「さて、見栄えを良くするとするかのぅ。………数さえ居れば、勝てる…か。烏合の衆のような考えだな、于吉よ?…………………身の程を知れ…」

 

 

 

 

 

―――裏・天 衣 無 縫 流―――風の型、極技…。

 

 

 

 

 

 小十郎が緩やかな動きで、左腕を首に巻く様な動作をする。

 

 同時に風が…漆黒の風が小十郎に纏わりつく。

 

 

 

―――鳳凰之旋風[ホウオウノツムジ]―――

 

 

 

―――その後、その場に小十郎の姿は見当たらなかったが、代わりに木端微塵となった人形[ひとがた]が…もはや、原形を留めていない状態で発見された。

 

 

 魏の調査員の報告書より抜書。

 

 

 

 

 

 

 

・逢魔[おうま] age …??歳 CV:真〇 圭

 

 IC[イメージキャラクター]「リリカルな〇はシリーズ『ヴ〇ータ』(ツンデレ率4:6)」

 

 

・旭[あさひ] age …??歳 CV:中〇麻衣

 

 IC[イメージキャラクター]「SHUF〇LE!!『カ〇ハ』(微毒舌&可愛いいたずらっ子&妄想癖(多))」

 

 

 

 時折、こちらも更新。多分、どこかで本編と合流する………かも?


 
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