No.157732

真・恋姫✝無双 悠久の追憶・番外編 ~~蜀の日常 其の一~~

jesさん

この番外編、蜀の日常はちょっとした拠点話みたいなものです。

話の区切りごとにちょこちょこ入れていこうかと思っていますww

どうか最後まで読んでやってください。

2010-07-14 22:55:55 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:3080   閲覧ユーザー数:2588

番外編・蜀の日常 其の一 ~~黒髪の眠り姫~~

 

 

 「さて・・・とりあえず今の状況を整理してみよう。」

 

一刀は寝台の上で腕を組みながらつぶやいた。

 

というのも、目が覚めてすぐにものすごい難問を突きつけられたからである。

 

 

窓からさす日の光に目が覚めたのは、ついさっき。

 

身体を起こし、目をこすってから“ぐ~~っ”と伸びをする。

 

いつもと変わらないすがすがしい朝・・・・だったはずなのだが、ふと自分の隣に人の気配を感じた。

 

隣に視線を向けると、そこには普通居るはずのない人物が気持ちよさそうに寝息を立てていた。

 

 「・・・愛紗・・・だよな?やっぱり・・・」

 

もう何度目かになる確認をするが、間違いない。

 

というか間違えようもない。

 

そこにいたのは、いつもなら自室で眠っているはずの愛紗だった。

 

 「なんで愛紗が俺の布団に・・・?」

 

昨日の晩は特に酒も飲んでおらず、一刀の記憶もはっきりしている。

 

仕事が終わってからはすぐに寝たはずなので、愛紗がここで寝ている理由に心当たりはなかった。

 「・・・とりあえず、このままにしておくわけにもいかないよな。」

 

眠っている愛紗の顔はとても可愛らしく、さながらおとぎ話に出てくるどこぞのお姫様のようだった。

 

彼女のトレードマークである美しい黒髪も、朝日に照らされて艶やかに輝いている。

 

時間が許すのならずっとこのまま眺めていたいくらいだったが、さすがに仕事もあるのでそういうわけにもいかない。

 

 「おーい、愛紗~~。」

 

 「スーー、スーー。」

 

肩を揺すってみるが、愛紗は気にせず静かに寝息を立てている。

 

 「愛紗~。 お~い、愛紗ってば~。」

 

 「・・・ん~・・・」

 

さらに強く揺すると、愛紗の目がうっすらと開いた。

 

 「あ、起きた?」

 

 「・・・スーー。」

 

 「寝るなーーー!」

 

開いたと思った目はすぐに閉じ、振り出しに戻ってしまった。

 

本当におとぎ話のようにキスで目覚めるのならばそれも悪くないが、起きた後の事を考えるととてもじゃないがその案は採用できない。

 

 「はぁ~・・・まぁいいか。 そのうち起きるだろうし、とりあえずこのまま寝かせといて朝飯でも食いに行こう。」

 

 「ん~~・・・」

 

“ガシッ”

 

 「ん?」

 

愛紗を起こすのを諦め、布団から出ようとする一刀の腕が愛紗にしっかりと掴まれた。

 

起きている様子はないので、どうやら寝ぼけているらしい。

 

 「ちょ、こら愛紗・・・」

 

振りほどこうとするが、寝ぼけていて力の加減ができていない愛紗に敵うはずもない。

 

 「あ、ちょっと・・・危ないって・・・うわっ!?」

 

“ドサッ”

 

そのまま腕を強くひかれて、一刀はバランスを崩して倒れてしまった。

 

愛紗の両側に手をついて、ちょうど身体に覆いかぶさる体勢だ。

 

 「ん・・・・っ」

 

するとその衝撃で、再び愛紗の目がうっすらと開いた。

 

 「はれ?・・・ごしゅじん・・・さま?」

 

まるでまだ夢を見ているかのように、“ぼ~っ”と目の前にある一刀の顔を見つめる。

 

二人の顔は、お互いの鼻が触れ合うかどうかというほどの距離にある。

 

 「や、やぁ。 おはよう・・・愛紗。」

 

 「・・・・・・っ!?」

 

苦笑いであいさつをすると、ようやく自分の状況を理解したのか、愛紗は半開きだった目を大きく見開いた。

 

 「き・・・・きゃーーーーーー!」

 

“バチーーーン!!”

 

静かな朝の部屋に、乾いた音が響いた。

 

 

 

――――――――――――――――

 「ほ、本当に申し訳ありませんでした!!」

 

 「いや、もういいよ気にしなくて。」

 

必死に頭を下げる愛紗に笑顔で答える一刀の頬には、愛紗の手形が赤くしっかりと残っている。

 

 「この関雲長。 いかなる罰でも慎んでお受けいたします!!」

 

 「本当に大丈夫だから、気にしないでいいってば。」

 

大丈夫とは言いつつ、愛紗の本気のビンタを食らって一瞬意識が飛びそうになったとは情けなくて言えなかった。

 「それより、なんで愛紗が俺の布団に寝てたの?」

 

このままでは愛紗はずっと頭を下げていそうなので、話題を変えてみる。

 

 「へ?いや・・・その・・・」

 

やっと頭が上がったが、眉をひそめて目を泳がせている。

 

こんなに歯切れの悪い愛紗は珍しい。

 

 「・・・実は、私もよく覚えていないのです・・・」

 

 「へ?」

 

 「いえ・・・夜中に起きて、厠に行ったところまでは覚えているのですが・・・恐らくそのあと寝ぼけて部屋を間違えたのではないかと・・・」

 

 「ぷ・・・はははは!」

 

予想外の返答に、思わず一刀は笑い出してしまった。

 

それをみて、愛紗は顔を真っ赤にする。

 

 「わ、笑わなくてもよいではないですか!・・・私だって・・・その・・・」

 

 「あぁ、ごめんごめん。 別に馬鹿にしたわけじゃないんだ。 ただ、いつもしっかりしてる愛紗でも、こんなふうに寝ぼけることもあるんだと思ったら可愛くてさ。」

 

 「うぅ“~・・・」

 

可愛いなんて言ったら怒られるかもと思ったのだが、愛紗にしては珍しく顔を赤くしてうつむいてしまった。

 

よほど恥ずかしかったらしい。

 

 「そ、そうでしたっ!わ、私は仕事がありますのでこれで・・・!」

 

 「あっ、愛紗。」

 

 「は、はい!?」

 

明らかに無理やり話を切って部屋を出ようとする愛紗を呼び止め、一刀はにっこりと笑う。

 

 「別に寝ぼけてない時でも、一人で寝るのが寂しかったりしたら、また来ていいからね。」

 

 「なっ!・・・ななな・・・」

 

予想外の一刀の発言に、愛紗は真っ赤になって口をパクパクさせている。

 

 「あはは、冗談だよ。」

 

 「~~~~っ・・・ご主人様なんてもう知りません!!」

 

“バタン!”

 

照れ隠しのつもりなのだろうが、愛紗は思い切り扉を閉めて走り去ってしまった。

 

 「ありゃ・・・ちょっとからかいすぎたかな。」

 

一刀は”ガリガリ”と頭をかきながら、愛紗が出て行った扉を眺めて少し反省した。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 「うぁ“~~、つかれたぁ~~。」

 

その日の夜、一刀は一日分の仕事を終えたところだった。

 

窓の外はすでに暗く、空にはきれいに月が浮かんでいる。

 

 「もうけっこう遅い時間だな・・・明日も仕事だし、寝るか。」

 

重くなってきたまぶたこすりながら、一刀は寝台に入った。

 

 “トントン”

 

 「ん?」

 

布団をかぶり目を閉じようとした時、扉が小さく叩かれた。

 

 「・・・誰だ?」

 

こんな時間だ、まさか今更仕事の用事ということもないだろう。

 

扉を見つめながら、一刀は首をかしげた。

 

 “トントン”

 

 「あぁっ、開いてるからどうぞ。」

 

二度目の扉を叩く音にまだ返事をしていなかったことに気づき、慌てて扉の向こうにいる相手に声をかける。

 

 

 “ガチャ”

 

 「・・・・し、失礼します・・・」

 

 「あれ?・・・愛紗?」

 

静かに扉を開けて入ってきたのは、昼間その扉から逃げるように走り去って行った愛紗だった。

 

愛紗は部屋に入ってきても一刀の方を見ようとはせず、下を向いている。

 

その顔は少し赤くなっているようだった。

 

 「どうしたんだこんな時間に?まさか仕事・・・じゃないよね?」

 

 「ち、違います!・・・えと、その・・・ですね・・・」

 

 「?」

 

一刀の問いかけに、顔を上げて強く否定する愛紗だが、すぐにまた口ごもってしまう。

 

今朝にもましてずいぶんと歯切れが悪かった。

 

 「その・・・今朝の事なのですが・・・」

 

 「あぁ・・・ごめん。 俺、変なこと言っちゃって・・・」

 

 「い、いえ・・・そうではないのです・・・」

 

 「そうじゃないって・・・?」

 

今朝の出来事があってから愛紗は今日一日一刀と目を合わさず、ほとんど口もきいていない。

 

だから一刀は今朝の事をまだ怒っていて、それを言いに来たのではないかと思ったのだが、愛紗の反応からするとそうではないらしいかった。

 

 「今朝・・・ご主人様は、言ってくださいましたよね・・・・?」

 

 「言ったって・・・何を?」

 

今朝はいくつか言葉を交わしたが、その中のどれの事をいっているのか一刀にはわからなかった。

 

 「ですから、その・・・また、一緒に寝てもいい・・・と。」

 

 「・・・・・・・へ?」

 

ほとんど口を開けずに話す愛紗の口から出たのは、一刀が予想もしなかった一言だった。

 

なにせあの一言は、慌てている愛紗が可愛くてただ冗談で言っただけだったのだから。

 

 「えっと・・・・本気?」

 

 「わ、私は本気です! なんですか!せっかくこうして勇気を出してきたのに・・・・」

 

 「ご、ごめん。」

 

いきなり顔を真っ赤にして怒鳴る愛紗の迫力に、おもわずあやまってしまった。

 

 「もういいです!ご主人様の言葉を本気にした私がバカでした!」

 

愛紗は目の端に涙を浮かべ、一刀に背を向けて部屋を出て行こうとする。

 

 「あっ、愛紗!」

 

 「きゃっ!?」

 

一刀は扉を閉めようとした愛紗の腕を、慌てて掴んだ。

 

突然腕を引かれ、愛紗も驚いたように小さく悲鳴を上げた。

 

 「な、なんですか?」

 

 「ごめん、俺が悪かったよ。 愛紗が本気で来てくれたなんて思わなかったから。」

 

あの真面目な愛紗のことだ。

 

こうして一刀の部屋に来るというのは彼女にしてみればどれほど勇気がいることなのかは、一刀にも十分想像できた。

 

そして彼女の目に浮かんでいる涙の粒を見て、自分はなんて馬鹿なのだろうと心の中で後悔した。

 

 「・・・・・・・」

 

もう一度しっかりと目を見つめて謝ると、愛紗はまたうつむいてしまった。

 

だが今度のうつむきは、おそらく部屋に入ってきたときとは違う理由。

 

一刀はそんな愛紗の頭に優しく手を置いて、小さく囁く。

 

 「ありがとう、来てくれてうれしいよ。」

 

 「・・・ほんとうですか?」

 

 「もちろん!」

 

 「・・・・・・♪」

 

一刀の笑顔に、沈んでいた愛紗の顔も少しずつ明るくなった。

 

やっと笑ってくれた愛紗をみて、一刀も心の中でホッとため息。

 

 「さぁ、今夜は冷えるから、部屋に入ろう。」

 

 「・・・・はい。」

 

差し出された優しい手をとって”コクリ”とうなずいた愛紗の目には、もう涙は浮かんでいなかった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――この夜、二人は狭い寝台の上で寄り添いあって眠った。

 

ただ一緒に眠る。

 

それだけの夜だったが、一刀の隣で静かに寝息を立てる愛紗の顔は幸せに満ちていた。――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

~~一応あとがき~~

 

え~・・・ということで初めての拠点話です。

 

まぁ原作の翠の拠点をちょっとアレンジしただけですが・・・・初めてということで勘弁してやってください

(汗

 

最初なのに愛紗がちょっとデレすぎているという気もしますが、こんな感じもいいかなと思ってますww

 

 

 

さて、次回は黄巾党との最終決戦になる予定です。

 

懲りずに読んでいただけると嬉しいですww


 
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