第一章 ―想起回想―
「起きろ!!」
俺は突然の呼び声に驚き、寝ぼけながらも起きると、目の前には美術の蒲原先生が立っていて、周りのみんなが俺に視線を向けていた。
「授業開始5分で寝るとはいい度胸だな」
女性なのに相変わらず男性ような口調で話す先生に、ちょっとは女の品格ってやつを持ってくださいとちょっと思ってみたりする。
「すみません」
妄想してる場合ではなかったと思いながら、俺は顔をちょっと赤くしながら謝った。
俺の名前は梶本勝喜だ。先週このドがつくほどのド田舎に引っ越してきたばかりだ。理由は、俺の父親が会社で失敗が続き、とうとうリストラされ、家賃やら色々払えなくなって、昔の家を売って、もっと安く、父親の新しい職場の近くのここに引っ越すことになった。
引越しの時は、父親の顔には生気がなくかなりやつれていたが、今は新しい職場でうまくいってるみたいだ。
「何ボケーっとしているんだ!ちゃんと話を聞け!!」
色々考えていたらまた先生に怒られた。
「すみません……」
二回目は結構怖かった。周りは笑い声など出さずに静かった、たぶんみんなも蒲原先生が怖いからだろう。
しかし多分それだけの理由じゃあないだろう、比較的仲がいい委員長から聞いた話によると、ここの村人は大の都会人が大嫌いらしい。
理由は昔、どこかの企業がが金に物を言わせ、ここの土地を買収して工場を建てたそうだ。田舎だし、ここの土地は安かったんだろう、実際僕の父親もここの土地が安いため、ここに引っ越してきたのだから。しかしそのせいで騒音はもちろん、空気は濁り始め、水は化学物質に汚染されていった。当然汚染された水では作物は育たないに決まっている。おかげで毎年損害は大きくなり、我慢できなくなった村人達はその企業を訴えたらしい。色々もめごともあったみたいだが、最後は勝ったようだ。
それ以来金持ちとかその手の人やら、もめごとのせいで都会の人が嫌いになったみたいだ。
まぁ、こんなことがあったのは今から20年も前のことだから気にするなと言ってたけど、まだまだ嫌いな人はいるみたい。でも数人だけだが転校初日から話しかけてくれたから、まあ大丈夫だろ。
確かに田舎に比べたら都会の人は他人に何かと冷たいから嫌われるのかもね。
「よし、それじゃあみんなで班を決めろ、組み方はさっき言った通りに組むんだぞ、いいな」
色々思い出していたら授業の内容がさっぱり分からない。
すると委員長がこっちに向かってきた。
「俺らでいいよな?」
「えーと……、何が?その……し、しら…」
ヤベッ!!名前忘れた!!
「おいおい、もしかして名前忘れたとか?」
「すまん……」
俺今日何回謝ってんだよ。
「ちゃんと覚えろよ、俺の名前は白儀智哉だぞ」
そうだ思い出した、この人が委員長だ、俺の数少ない友達のうちの一人だ。
まぁ、転校初日であの雰囲気だからな。あの雰囲気とは、転校初日に初めて教室に入った時、見事に周りは静まり返っていた。
皆無関心だった、理由は都会人だからだ。
今思うと、転校初日の前夜に緊張と不安を交錯していた自分がバカみたいだ。
そのおかげで「居場所」をなかなか見つけられなかった。教室は都会と同じ素朴なのになぜ雰囲気が違うのだろう、なぜ遠く感じるのだろう、なぜ体と心は違う「場所」にあるのだろうと思った。
今は友達とかもちょっとはいるから居場所はある、居場所があるとこんなにも安心できるとは。
こんなこと考えてると何故か虚しい。
「で、どうする?」
おっと、また考え込んでしまった。
「何が?」
「授業聞いていたのかな、君は?」
智哉はあきれた、と思わせるような仕草をした。委員長の前で授業聞いてなかったっと言ってるようなもんだしな。
「いや~、考えことしてたから」
誤魔化しながらも、授業内容は教えてもらった。
「ふん~、来週の授業は写生か」
都会じゃあ、滅多にしないな。まぁ、描くものなんてビルぐらいしかないし。
「それで男子3人、女子2人で班つくらないといけないから、まずはあと1人男子誰にする?」
どうするかな、と悩んでると向こうから1人やってきた。彼の名前は境野鷹志という。ときどき話をする数少ない友達その2だ。
「俺も入れてくれよ、あいつらとは組みたくねぇし」
とその「あいつら」をの方を見ながら言った。あいつらとは、俺にたまにイヤミやらイジメやらしてくる黒樹、渕ノ上だ。
そこにもう一人加わった。まぁ、男子3人って決まってるしな、あとその加わった吾郷もあの二人と同類だ。
都会人が嫌いなのか知らないが、これまたイジメが幼稚っていうか、なんていうか、俺が知ってるようなイジメより格がかなりしたなので、嫌い、というよりうざいだけなので、よく喧嘩はする。
「で勝喜は別にいいよな?」
いきなり聞かれて、びっくりした。
「俺は別にいいよ」
「サンキュー、梶本」
鷹志はそういいながら女子について話した。
「それで、あと2人どうする?」
俺たちは余ってる女子を探すと、身近にいた。
「和泉、もしかしてまだ余ってる?」
それは僕の隣りの席に座っている和泉麗可と友好関係が広い文乃美幸だ。席が隣りと友好関係が広い二人なのでクラスの中でも話しやすい相手だ。
「うん、私たちは誰でもいいんだけどね」
「それじゃあ一緒の班になろうぜ」
「美幸は別にいいよね?」
と文乃は和泉に聞いた。
「別にいいよ、どうせ誰ともよかったし」
俺ははっきりいってちょっと安心した。相手はみんな話しやすい相手だからだ。俺はいまだに違う空気を吸ってる感じがするので、もし他の人たちだったら周りの空気の重さに耐えられないと思う。
みんなが班を決め終わったあと、先生は注意事項やら何やら色々言ってたけど、今日は考え事で頭が疲れた、自分の思考回路の弱さにちょっと嘆くが、眠いし、何故か意識が朦朧となり、そのまま居眠りの続きをした……。
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続きです
ここからが本番です(^_^;)
第一章 想起回想です
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