---華陀、回りだす歯車---
【水あめ】事業は孫呉にとって【製紙】事業よりも、高収益を上げていた。
それもそのはずである。この時代、紙を使う人はごく一部(大半は識字の出来る人)に限られていたことと、初期の規模だと、あまり遠くに運ぶと、今までの紙より安いとはいえ、洛陽以北では、あまり手が出されなかった。
ただ、【水あめ】は【民】全てが消費者になる。当然、飛ぶように売れる。遠くに運んでも利益率が良い。良いことずくめである。
そして、【水あめ】の利益を【製紙】事業に再投資し、こちらも軌道に乗った。
孫呉の中では、この莫大な資金(今までの長沙の年間税収の3倍超を3カ月で稼ぎました)をどう使おうか?。こんな議論が始まった頃…
この日、北郷家では小さな事件が起きていた。
---長沙・会議室---
一刀「医者に心当たりはないか!?」
冥琳「何ですか?いきなり…そういえば、睡蓮殿はご欠席のようだが…」
一刀「今、小雪の看病をしている。今朝から、熱にうなされてるんだ。」
一刀の顔色は素人眼にも悪いと分かる。
蓮華「医者と言えば『華陀』の名を聞きますが…」
冥琳「居たり居なかったりですね。腕は良いと評判ですし。」
一刀「すまん、探してくる。」そう言ってそそくさと出て行った。
冥琳「居るとすれば…ああ、行ってしまったか…」
雪蓮「親ばか…と言いたいところだけどね…」
雨蓮「気をつけなければならん時期ではあるし…しかたないのぅ」
雪蓮「これを機に『医者を増やしたい』…何ていいそうね♪」
冥琳「こちらとしては、軍備を充実させたいところです…まあ『軍医』も不足はしていますが…」
蓮華「優先すべきことが他にもある。農業政策などはこれからだ。今、凶作になったら『医者』どころではない。」
穏「最悪、お金はありますから、食料を買って備蓄する手もありますね~。あくまで、『最後』の手段ですが~」
会議は踊る…
一方その頃、一刀はすんなり華陀を見つけていた。日頃の行いが良いんでしょうか…
---北郷家---
小雪「ぅー、ぅー」
華陀「風邪か。でも良かった、早く診ることができて。今、治療してやるからな。」
と言って、治療を始めて、五分…
華陀「元気になあぁぁぁぁぁれぇぇ!!」
---
小雪「すぅー、すぅー」
治療成功である。
一刀「先生、ありがとうございます。」
華陀「『先生』なんてやめてくれ、こそばゆい…俺には『華陀』という名前があるんだ。」
一刀「これは、失礼しました。華陀【先生】」
華陀「むぅぅ…」悪い気はしないんです。居心地が悪いだけなんです…
一刀「ぜひ、お礼をしたいので…明日、城の方に来ていただけないでしょうか?」
華陀「なんだ…宮仕えだったのか…だったら治療費を…」
一刀「もちろんお支払いします。で、城の方には…」
華陀「何があるんだ?」
一刀「華陀先生にとって、有益となるものが…」
睡蓮「あなた、図書館を見せる気ですか?」
華陀「図書館とはなんだ?」
一刀「大きい書庫だと思っていただければ…医療関連の書も有りますし」
華陀「俺が見ても良いのか?奥方は眉をひそめているぞ?」
一刀「ええ、構いません。先生のことは、孫堅様にも紹介したいですし…、よろしいでしょうか?」
--翌日--
---長沙・謁見の間---
一刀はこれまでの経緯を説明した
一刀「…とゆうわけです」
華陀「お初にお目にかかります。華陀と申します。」
雨蓮「で、図書館が見たいと?」
華陀「はい。」
雨蓮「見て回る分にはかまわんぞ。」
一刀「ありがとうございます。華陀先生、こちらです。」
雨蓮「一介の医者に【先生】とは、大層なことで…」
雪蓮「『守息』の名は伊達じゃない♪ってね。」
一刀「こらこら、聞こえてるぞ…俺達んところの医者は、【一人前になるのに最低二十年掛かる】んだからな…ゆえに【先生】なんだよ。それに、これは俺なりの【先行投資】なんだよ。」
雨・雪「惚れこんどるのう♪(でるわね♪)」
とか言いながら皆ついてきてるし…
---図書館---
そこには、睡蓮がいた。そばには小雪も…
一刀「睡蓮…今日は、小雪を連れてきちゃ駄目じゃないか。」
睡蓮「ごめんなさい。でもね、今日に限って、駄々をこねたもんだからつい…」
一刀「…まあ、良いや。それでは先生……?、どうなさいました?」
そう言って華陀は一人スタスタと歩いてゆき、皆も付いていく。向かった先は…
睡蓮「資料室?」デジャビュ?
一刀「でも、こっちに来てからは、開かずの間だったんだが…」
華陀「??、【太平妖術の書】と似た波動を感じる。ここに入った時もそうだが、ここはさらに強い【力】を感じる」
氣の使い手でもある華陀、だからこそ感じ取れたのかもしれない。
華陀が扉に手をかけた瞬間…
??「汝、【鍵】をもつものか?」
一刀、華陀「「なんだなんだ?」」睡蓮「なんなのいったい?」雨蓮「なんじゃなんじゃ?」…
一様に混乱している。
??「汝、【鍵】をもつものか?【鍵】を持つもの、【鍵】を示せ」
この言葉の後、以外なところから声がする…
小雪?「『道具に善悪は存在しない。善悪を決めるのは、その使い手なり。』」
??「…【鍵】は示された。さあ、入るがよい。」
いきなり小雪がしゃべりだしたのも驚いたが、それで、扉が開いたから余計驚きである。
一刀「天の御遣いって、小雪のことだったりして…」
睡蓮「ま、まさか…ね…」
---資料室---
中には、一刀の世界では一般公開していなかった、貴重な書籍などが置いてあるが、その一角で弱弱しく光る本を見つけた。
一刀「なになに?…【太平清領道】?」
タイトルを言ったとたん、一時、強く光り、そこから人影が現れた。
??「我が名は【太平清領道】、この世を太平に導く書であり、【太平妖術の書】と対をなす書である」
華陀「【太平妖術の書】と対の書だと!?、そんなの【五斗米道】では聞いたことが無いぞ!」
一刀「な、なに?ごとべいどー?」
華陀「ちがーう!!『ゴッドヴェイドゥ』だ」細かいこだわりがあるようで…
一刀達がやいのやいの言っている間に、【太平清領道】に声をかける者がいた。
小雪「清ちゃんひさしぶり~」
太平清領道(以後、清)「…久しぶりね…一年ぶりかしら?」
小雪ちゃん、生後11カ月のはずですが?睡蓮は目をパチクリさせている。
そらそうだ。太平清領道の言うことが正しければ、睡蓮のお腹の中にいたことになる。
ただ、妙に納得ができる。太平清領道の外見は睡蓮に似ていて、違いは髪が銀色であることぐらいである。
睡蓮「…でも、私…本を産んだ覚えはないわよ?」
一刀「いやいやいや…無くて当たり前だから。普通産まないし…それに俺、出産に立ち会ってるんだから…」
小雪「ととさまかかさまおちついて~」
一・睡「「!?、もう一回いって!」」
小雪「?、ととさまかかさま、うぎゅ~」父母して小雪にはぐはぐした。
雨蓮を除く呉の面々「親ばか…」
雨蓮「あのな、お前らがしゃべりだしたの、三歳ごろ(数え年)からだぞ…」
そういった意味では、小雪は良い意味で異常であるし、はぐはぐするきもちも雨蓮は理解できた。
清「まあ、睡蓮のお腹の中にいたのは事実よ。といっても思念体だけね。それにしても、よく【鍵】を覚えていたわね?」
小雪「ううん、わすれていたの。清ちゃんのこえきいておもいだしたの~。」
一・睡「「何を思い出したの?小雪」」
小雪「うんと…、おはなしとかいろいろ~」
華陀「…そろそろ話を戻すが、【太平妖術の書】の対の本とはいったいどうゆうことだ?」
皆、真剣な顔に戻る。親ばか夫婦は除いて…
清「もともと、【太平妖術の書】と【太平清領道】はひとつで【太平要術】と呼ばれていました」
文字を示しながら答えた。
冥琳「太平の要(かなめ)となる術…」
清「技術書と思ってもらって結構です。ただ、書かれたのが、神仙の時代まで遡りますが…」
蓮華「では、なぜ二つに分かれたのですか?」
清「まあ、普通の本と違って、意思を持っています。そして、邪な心が入ってきて中で喧嘩して、二つに分かれた、といったところでしょうか。ただ、持って行かれた技の全ては【人に仇なす術】ばかりなのです。」
雨蓮「では、なぜここにいる?」
清「【太平妖術の書】の浄化、もしくは封印が目的です。もっとも…一度失敗していますが…」
一刀「!!睡蓮のいた世界!?」
ここに来て、親ばか夫婦の顔も真剣になる。
清「ご名答。そして、負けた私の思念体は、憑代(よりしろ)として、睡蓮さんのお腹の中に入らせてもらいました。」
皆してシーンとなる…
小雪「清ちゃん、おなかのなかで、いろいろおはなししてくれたの~」
清「…皆さまには、【太平妖術の書】の浄化、封印に協力していただきたい。少ないですが、対価をお支払いします。」
雨蓮「ものによるな…」
皆も一様にうなずく。
清「『【図書館】の【術】の緩和等』でどうでしょう…」
雪蓮「ちょっと待って!?…てことは、ここに掛かってあった【呪】は清ちゃんが掛けたの?」
清「【呪】とはなんですか!?私のは【術】です!それに清ちゃんってなんですか!?」
雪蓮「だって、小雪ちゃんがそう呼んでたしね♪」
清「せめて、清と呼んでください。」細かいこだわりがあるようで…
『【図書館】の【術】の緩和等』について要点をまとめると…
①蔵書の出し入れができるようになる(期限付き)
②今まで持ち込めなかった灯りを『一個』持って入れる
③図書館内での閲覧に限り文章が中国語に翻訳されて覧られる
清「ただし、一個、規制をかけますが…」
【術】による規制→俗物や邪な心を持つ者の排除。
冥琳「ものすごくありがたい話です!!人の見極めがすごく楽になります!!ぜひ受けましょう!!」
珍しく興奮している冥琳…見えないところで苦労してるんだね…
雨蓮「まあ、乱世は歓迎するところではないからな。【太平清領道】よ、この話受けよう。ただ、こちらも、行動に制限があるからすぐに見つけて封印…というわけにはいかないが良いか?」
清「それは構いません。というか、【太平妖術の書】もどこかの勢力に組み込まれてる可能性もありますので…」
一刀「ところで、華陀先生、しばらく孫呉に身を寄せませんか?【太平妖術の書】のことについても分かりますし…」
華陀「俺は構わん。目的も一致するし。ここにある医療書が読めるのも有りがたい話だ。こちらからもお願いする。」
雨蓮「では、客将として迎えよう。できれば、後進の育成もお願いしたい。」
華陀「承った」
ただ、【術】の変更が上手くいかなかったのか、『一回だけ』、冥琳が門の所で弾き飛ばされてしまい、
『邪琳』だの『黒冥琳』だの言われたのは、また別の話…
あとがき
いやぁ、長かった。nakatakです。チート制限を解除したのは、【太平清領道】のアイデアが
出てきたからなんです。いわば、後付けですが、弐話余談が話の流れの良い布石なったと思います。
【呪】と【術】の違いですが、人に仇なすものを【呪】、それ以外を【術】と
【太平清領道】の中では分けているようです。基本、変わらないんですけどね…
次回ですが、周泰を出そうと思っています。賊として…
それではまた。
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アンケート、ありがとうございました。周泰については次あたりで出そうと思っています。それとひとつごめんなさい。
自分で掛けたチート制限を自分で解く結果になりました。
詳しくは本文+あとがきにて…
それでは、どうぞ。