-呉国建業-
孫伯符、雪蓮と本郷一刀が前王、孫堅の墓参りへと赴いてしばらくの後、
呉へ10万を越える魏の大部隊が攻めてきたという知らせが城内へ届いていた。
知らせを受けた大提督、周公謹こと冥林は急ぎ馬を走らせる。
そしてやって来た墓石の建つ森林にて雪蓮を発見。 驚いた事に彼女は屍を従え、血化粧を施し鬼のごとき形相をしていた。
出会った二人は互いの状境を簡潔に伝達し合い、雪蓮は急ぎ城へ、冥林はその足で曹魏の刺客と思われる者からの襲撃で、現在重体の一刀のもとへとそれぞれが動く。
やがて王の戻った玉座にて、現在の国の状況と今後の方針を決める軍議が行われた。
雪蓮 「曹操を迎え撃つわよ! すぐに出陣の準備を!!」
呉一同「はっ」
雪蓮 「冥林と穏は各部隊の編成と配置を!!」
冥林 「了解した」
穏 「まかせてください」
雪蓮 「亞莎は二人の指揮伝達、補助を!」
亞莎 「が、がんばります!!」
雪蓮 「他の者達は自部隊の連携確認と士気の鼓舞を!!」
祭 「まかされた!」
思春 「はっ!」
明命 「はい!」
小蓮 「やっちゃうもんね!」
蓮華 「……………」
雪蓮 「では解散。 体勢が整い次第こちらから仕掛ける。 皆、心せよ!!!」
呉一同「応!!」
号令と共に一斉に散る呉の猛将、神算軍師達。 その中にあり、周りと違う動きをしている者が一名いた。
その女性、蓮華はその場を立ち去る事なく、姉であり王である雪蓮のもとへと駆け寄る。
[side 一刀]
……広間の隅にて、今現在の我が状況に首を捻り思案していた俺は、雪蓮と蓮華が何やら言い争っているのに気付き、何事かと二人へ近づいた。
蓮華 「姉様、一刀は…… 一刀は大丈夫なんですか!!!」
雪蓮 「わからないわ」
雪蓮は軍議中からずっと殺気だって冷たい表情をしている、その雰囲気で袁術の時以上に相手への憎しみが強く感じとれた。
対する蓮華はこれから戦が始まるというのに目線が定まらず、落ち着かない挙動で明らかに心が不安定の様子。
蓮華 「わからないって ……そんな… 一刀は姉様を庇って傷をうけたのでしょう!!」
雪蓮 「そうよ!!」
一刀 〈いや、違うよ〉
蓮華 「なら心配にはならないのですか!? 一刀は_」
雪蓮 「一刀、一刀うるさいわね!! 今はそれどころではないでしょう!!
自らの立場を考えなさい、孫権仲謀!!!」
蓮華 「っ! し、しかし私は一刀の……」
一刀 〈そう、俺のお尻、もとい嫁だ! 異論がある奴はかかって来い!!〉
シュ ッシュ
俺はその場で軽快なフットワークと共に、ワン・ツーを空へ打ち込む
雪連 「私のよ」
一刀 〈なにぃっ?〉
蓮華 「なっ!? 姉様、今なんと?」
一刀 〈ま、まさか雪蓮…………妹をそんな目でみてたのか!? ……よろしい、ならば戦争だ!!〉
俺は雪蓮へ向けステップを踏みながら再び構えをとる。
まさか冥林だけでなく、自分の妹までその範疇に入れてしまうとは……雪蓮、おそろしい子!
(だが相手が誰だろうと「全世界 呉の至宝級、蓮華のお尻タイトルマッチ [略してWGR]」のベルトは譲れないぜ!! さあ、かかってこい!!)
雪蓮 「…… 一刀は私のモノだって言ったのよ。 蓮華、貴女でも呉の皆でもなく「現孫呉の王」 この孫策伯符のね」
蓮華 「!!」
一刀 〈え? な、なんだぁ 俺の方かよ ……って、俺かよ!?〉
まあ、確かにああいう関係ではあるっぽいが、そういう関係はどうかと思いますよ? 雪蓮さん
蓮華 「姉様!こんな時にふざけないで!!」
その発言を見過ごせないとばかりに、今まで歯切れの悪かった蓮華が雪蓮に攻め寄った。
一刀〈そうだ! 横暴だ!! そんな「お前のものは全て俺のもの」的な理論は断じて認めん〉
雪蓮 「私は本気よ。 …だから蓮華や他の者が一刀の事を心配するのは勝手だけど、それで一刀をどうこう出来るとは思わないでちょうだい」
蓮華 「そ、そんな……」
一刀 〈あ、あの……俺の意思はどこにあるんでしょうか?……〉
雪蓮 「という訳だから、貴女は一刀の回復を願い曹魏への仇討ちに専念しなさい。
……大丈夫、一刀は死なないわ。 治療を三国一と言われる名医にまかせているし ……それに約束したんだから」
そういって顔を少し穏やかにした雪蓮。 その彼女の目は誰かに思いを馳せる様、遠くに向けられている。
(その誰かはこんな近くに居るんですけどね)
蓮華 「約束?」
雪蓮 「そう、 〈私〉を幸せにするって、ね」
蓮華 「!!!」
ピキッ
一刀 〈ぬお、空間に亀裂が!!〉
雪蓮の意味ありに含ませた言葉に、辺りの空気が固まり、割れた。
その神業をやってのけた魔王のごとき女性。 名は蓮華
今、彼女の全身は自身が発するオーラに黒く塗りつぶされている……ように見える
雪蓮 「どうしたの蓮華? 私に殺気が向けられてる風に感じるわ」
蓮華 「……気のせいでしょう、雪蓮姉様………」
雪蓮 「…………」
蓮華 「…………」
………
しばし無言で対峙する姉妹。
その二人の間に生み出される圧力で、そろそろこの場がメルトダウンしそうだ。
雪蓮 「…………ま、いいわ、そろそろ出陣よ。 ……貴女も孫家の血統、ならば従うべき信念と、私情を捨て去れる強さを心に刻みなさい」
そう言い残し立ち去る雪蓮、俺はその背を見送り彼女の真意を計った。
一刀 〈あの暴君め、もう少し言い方ってもんがあるだろうに〉
やがて消える王の背中。
要するに蓮華に気持ちの切り替えをさせたかったんだろうけど……そこに到る言動が勝手すぎる、
第一俺は「呉のみんな」とは言ったが、「雪蓮」とは言ってない。
蓮華 「……許せない」
一刀 (そうだよな。 いくら王様だからって許せれるもんじゃないぞ、うん)
蓮華 「……私をその気にさせるだけさせといて………………ふふ、いいわ。
雪蓮姉様がその気なら……その挑戦、受けてあげる………ふふふふふ……」
一刀 (……蓮華さん? あれ? あなたは蓮華さんでしたっけ?)
禍々しいオーラを纏い不適に笑い続ける蓮華、姿形は彼女なのだがそれ以外がまったく別の印象をうける。
蓮華 「…ふふ、ふふふふ…………とりあえず曹操を追い払って……それからじっくり一刀を……私のものに………ふふふ……」
……
暗黒面で顔を隠し、ゆらゆらと玉座の間をでていく蓮華をその場で見送る。
一刀 〈……まだまだ雪蓮の手の上だな、蓮華は……〉
生真面目な性格が災いし、あるはずの柔軟な思考や視点を排除している彼女、
英雄の器とはいえまだまだ青いという事なのだろう。
(だがしかし、あの尻がまだ熟してないとモノとは…………やりおるわ、孫仲謀)
俺は大きく関心しながら頷いた。
フワ フワ
…………
誰もいなくなった玉座の間。
俺は中空を漂いつずける。
フワ フワ
……
一刀 〈……さて、俺はどうしようか?〉
フワ フワ
一刀 〈とりあえずみんなの様子でも見てくるか〉
俺は壁をすり抜け玉座を後にした。
『説明しよう、彼こと「北郷一刀」 は生死の堺を彷徨った果てに現在、性質の悪い浮遊霊として魂と体が離れてしまい、 なんだか暇なのだ!! 以上』
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短いですが、よろしくです。
次は前回の魏であふた~ぬ~ん4で回避ルートを投下します。