No.155462

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第十六話

狭乃 狼さん

刀香譚、十六話です。

ここより新章の開幕です。

徐州の一刀たちの下を朝廷の使者が訪れる。

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2010-07-05 11:32:25 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:23474   閲覧ユーザー数:19795

 

 徐州・下邳城。

 

 その謁見の間にて、一刀は膝をつき、頭をたれて拱手していた。

 

 その一刀の前に立つのは、華雄。

 

 「徐州の牧にして、左将軍・劉北辰に勅を伝える。心して聞くよう」

 

 「は」

 

 この日、華雄は皇帝劉弁の勅使として、徐州を訪れていた。

 

 「勅。劉北辰は豫州を荒らす賊徒討伐に向かうべし。賊徒平定後は、豫州刺史として、かの地の治安維持に尽力するよう」

 

 「御意。勅命、確かに承りました」

 

 勅使である華雄に答える一刀。

 

 「・・・さて、堅苦しいのはここまでだ。劉翔、元気そうで何よりだ」

 

 勅書を一刀に渡すと、とたんに口調を普段のものに戻し、にこりと微笑む華雄。

 

 「ありがとう。華雄さんも元気でよかったよ」

 

 立ち上がり、同じく微笑む一刀。

 

 その笑顔を見て、なぜか顔を赤らめる華雄。

 

 「あ、いや、その、・・・そ、そうだ!劉翔、私のことは呼び捨てで良いと言っただろう?なんでいまだに”さん”をつけるんだ?」

 

 「華雄さんが俺を真名で呼んでくれるなら、すぐにでもやめるけど?」

 

 華雄の質問に、にやにやしながら答える一刀。

 

 「う。・・・その、か、カズ・・・ト?こ、これでいいのか?」

 

 さらに真っ赤になって、一刀のの真名を呼ぶ華雄。

 

 (まさか、華雄さんも・・・?)

 

 (むう。さらに恋敵が増えようとは)

 

 (カズくんてば、相変わらずモテモテ~)

 

 (本人は自覚がないんでしょうけどねぇ)

 

 「うん。さてみんな、軍議をするから、合議の間にいくよ」

 

 一刀に言われ、謁見の間を出て行く一同。

 

 「あの、か、一刀?」

 

 「あなたも参加してくれるかな?華雄」

 

 「!!あ、ああ。もちろんだ!!

 

 

 「それにしても、なぜわれわれなのでしょうか」

 

 下邳城の合議の間。

 

 勅命である賊討伐のための軍議を、一刀たちは開いていた。

 

 「確かに。豫州であれば、兗州、もしくは荊州に勅が下ってもよさそうですが」

 

 愛紗に続いて、柊がいう。

 

 柊の発言に、その隣に座る翡翠が、

 

 「私のほうで調べたところ、兗州では陳留の曹家と、濮陽の曹家とが、兗州の支配を巡って対立しているそうだ」

 

 「・・・同じ曹家が争っているのか」

 

 「華琳ちゃんがいなくなったせい?」

 

 「多分な。華琳―曹孟徳という指導者がいてこそ、兗州は纏まっていたんだろうな」

 

 「曹操さん一人がいなくなっただけで、身内すら割れるんですねぇ」

 

 のほほんとした口調で話す琥珀。

 

 「・・・ねえ、琥珀さん?その格好、・・・なに?」

 

 「おや、何かおかしいですか?ただの掃除着なんですけど」

 

 一刀の質問に首をかしげる琥珀。

 

 「掃除着・・・ねえ」

 

 「ほら、こうすればお掃除中でもほこりを被らないんです」

 

 そう言って背中のフードを被る。

 

 「最近流行の掃除着で、”割烹着”っていうんですよ」

 

 ニコニコ顔の琥珀。その手にはなぜか箒が。

 

 「・・・話が進まんので、とりあえず姉さんの格好云々は無視する方向で」

 

 「がーーーん。・・・くすん。翡翠ちゃん冷たい。お姉ちゃんさみしい」

 

 机にのの字を書く琥珀。

 

 「・・・おほん!荊州ですが、州の牧である劉表どのは重い病にかかっており、明日をも知れぬ身とのこと。なので」

 

 「後継問題でもめてるの。長子の琦君を推す譜代派と、次子の宗を推す新参派にね」

 

 翡翠に続くのは輝里である。

 

 

 「つまり、どっちもよそに兵を出せる状況じゃあないってことか」

 

 一刀が腕組みをして言う。

 

 「・・・愛紗ちゃん、鈴々ちゃん。すぐに動かせる兵隊さんはどの位?」

 

 桃香が愛紗と鈴々の二人に問う。

 

 「騎兵が一万。歩兵が五千に、義兄上の発案で組織した例の隊が五千」

 

 「鈴々が訓練していた”超・鈴々隊”ももう使えるのだ」

 

 「こら鈴々!またそんな勝手な名前をつけて!!」

 

 「でもおにいちゃんが良いって言ったのだ」

 

 「本当ですか?」

 

 鈴々の台詞を聞いて、一刀に尋ねる愛紗。

 

 「うん。部隊名に関しては任せてあるよ。愛紗も例の隊、好きに命名して良いから」

 

 「はあ・・・」

 

 「・・・ほんと、すぐに話が脱線しますね。華雄どの、豫州の賊軍の戦力は?」

 

 愛紗と鈴々のやり取りにあきれながら、華雄に話を振る柊。

 

 「細かい数字は不明だが、少なく見ても五万。ただ、州全体に活動が広がっていることから、もう少し多めに見たほうが良いかも知れん」

 

 そう答える華雄。

 

 「華雄がつれてきた五千を入れて、こっちは合計三万か。・・・協力してくれるということで良いんだよね?」

 

 「ああ。陛下からとは別に、月さまから劉しょ、あ、いや、一刀に協力するよう言われてる。好きに使ってくれていい」

 

 「月が。・・・そっか」

 

 「まあ、詠はあまりいい顔をしていなかったがな」

 

 肩をすくめる華雄。

 

 「詠ちゃんらしいね」

 

 

 

 「さて、それじゃあ、三日後に豫州に向けて出陣する。留守は柊さん、琥珀さん、翡翠に任せます」

 

 「「「御意」」」

 

 「まずは汝南へ向かい、拠点を設けるとする。その後、州内に斥候を放ち、相手の情報を調べることにします」

 

 一刀が次々に指示を出す。

 

 「先鋒は鈴々と愛紗。輝里は俺と一緒に本陣を。華雄は自身の兵を率いて、遊軍としていつでも動けるように待機」

 

 「「「「応(なのだ)!」」」」

 

 席を立ち、次々と部屋を出て行く一同。

 

 「柊さん」

 

 ふと、柊を呼び止める一刀。

 

 「はい。なんでしょうか」

 

 ちょいちょい。

 

 手招きする一刀。柊が一刀の傍による。

 

 「あとで俺の部屋に来てくれる?頼みがあるんだ」

 

 「・・・一刀さまのお部屋に、ですか?」

 

 「うん。・・・それじゃ、後で」

 

 柊にそれだけ言って、一刀も部屋を出る。

 

 「お部屋に・・・?・・・!!まさか!!ついに私にお声がかりが?!ど、どうしましょう!?二人きりになったところで、あんなことやこんなことを・・・!!」

 

 一人、妄想に身悶える柊。

 

 「そんなわけあるかーーーーーーーー!!!!!」

 

 ばっしーーーーーん!!

 

 「はうあ!!」

 

 後方からハリセンで突っ込む、五月であった。

 

 「てか、五月さま、いたんですね」

 

 「ずっと居たわい!!」

 

 誰かさんのように、存在感の薄い五月であった。

 

 

 

 同じころ、洛陽にて。

 

 「月、詠。おるか」

 

 「杏さま。どうされました?」

 

 部屋に入ってきた女性、漢の大将軍である馬騰に問う月。

 

 「悪い知らせだ。涼州に匈奴が進攻してきたそうだ」

 

 「匈奴が?!」

 

 五胡と呼ばれる異民族の一つ、匈奴が国境を越えて西涼に進入してきたと、馬騰の下に急使が訪れた。その数は二十万。

 

 「長安のあざみは既に五万の兵で出陣したそうだ。私もこれから二万を率いて西涼に向かう。翠と蒲公英は残していくから、好きに使ってくれ」

 

 「わかりました。杏さま、御武運を」

 

 杏―馬騰に拱手する月と詠。

 

 「二人も十分に気をつけるようにな。なにやら不穏な動きをしている者も居る。用心するに越したことはない」

 

 「わかってます。月も陛下も、協殿下も、僕たちが守って見せます」

 

 そう胸を張って言う詠であった。

 

 

 同じころ。洛陽近郊のとある場所。

 

 「そうか。仕込みはうまくいって居るか」

 

 「はい。兗州・荊州に続き、近いうちに冀州でも事が始まりましょう」

 

 元は煌びやかであったろう、絹の衣をまとった老人に、男が答える。

 

 「涼州にも嵐が襲いかかっておるころじゃ。機は熟しつつある」

 

 「洛陽の戦力が各地に散ったときこそ、貴方様が元の地位に返り咲く、その時」

 

 「そうじゃ。このわしがこの様な所に隠れ続けるなど、けしてあってはならぬことなのだ!!」

 

 こぶしを握り締め、歯噛みする老人。

 

 「そのとおりです。貴方様こそ、大陸を統べるにふさわしきお方。天は必ずやお味方しましょう」

 

 「かっかっか!!よいぞ!実によい!!期待しておるぞ、仲達よ!!」

 

 「おまかせを。・・・張譲様」

 

 頭を下げ、拱手する、仲達と呼ばれた男。

 

 その顔には、邪悪な笑みが浮かんでいた・・・・。

 

 


 
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