<カズトside>
「え~、発表します!!」
突然の雪蓮の発言に俺は・・・。
「なぁ、ここの読みは・・・」
「そうですよ~。すごいですね、カズトさん。思ったよりに理解が早いですよ~」
華麗に無視しておいた。
あの後、俺は、今目の前にいる陸遜、真名を穏と言う子を紹介され、今の現状を教えられた。
一通り聞いた後、
「下手したら、研究どころじゃなくね?」
と冥琳に聞いたところ
「かもな」
とあっさり返された。それに加え、
「よもや、一度約束した事を破ったりはせんよな?」
と言われた。傷の手当ての借りもあるしな?とも加えられた。
俺に選択肢は、無いっぽい。
もっとも、どの陣営にいても、対して状況は変わる物でもないとも言われている。錬金術が使える以上、目立つのは必須。かと言って、隠して暮らすにしても、いろんな意味で限界があり、何時まで経っても、居つく場所は手に入らないだろうと言われた。
そして、今俺は穏の指導の下、この国の字について勉強している。言葉は通じるくせに、文字が違う。何をするにしても、おぼえていて損は無いとの事なんで、穏の時間が空いてるときに指導してもらってる。ちなみに、俺の今の仕事は、武器の練成(目立たないようこっそり少量なんだが)とか雑用である。
しかし、ここの文字は・・・。
「ふむ、はかどっているか?」
「あ、冥琳様~」
「お、冥琳。仕事の方は良いのか?」
「あぁ、一段落ついたのでな」
「冥琳も来た事なので、発表します!」
ん?空耳か?
ま、いいや。
「それで、穏?ホンゴーの調子はどうだ?」
「はい~。思った以上に理解が早いですよ~。まるで予備知識があるかのように~」
鋭いな。
「それについてんだけどさ、ここの字はシンに似ている」
「シン?かつて存在していた国の秦・・・ではないようだな?」
「あぁ、シンは、アメストリスの東の砂漠の向こうに存在している国だ」
「そこの文字と同じだと、どうおかしいのだ?」
「あぁ、少し離れた国であっても、シンとアメストリスの言語はまったくといっていいほど違う。にもかかわらず、こことまったく同じ文字」
「なるほど~。つまり、カズトさんの言う国と私達の国。それなりの交流か何か無いと変ですね~。少なくとも、私達はアメストリスという国の名を一度くらいは聞いてないとおかしいです」
「だが、そんな事実は無い・・・か。」
「んで、俺なりにここについて考えてみたんだけど・・・」
「それで? どういう可能性が現れた」
そう、俺は最初、ここは遠く離れた異国だと思っていた。だけど・・・。
「ここは、まったく違う世界なのかもしれない」
「ほう」
「あら~」
なんか、軽いノリだな二人とも。
「信じてないな?」
「いや、それ以前にだな?」
「カズトさんの存在は、遠い異国からであろうと、別の世界であろうと、はたまた天の世界からの来訪であろうと、私達にとってはそう変わりもありませんし~」
そう言われれば、そうかもな。
「しかし、こう考えると雪蓮達に保護してもらったのは正解だな」
遠い場所なら、旅をしてでも何でもたどり着く事が可能だけど、完全な異世界なら扉の研究でもしないと・・・扉か・・・。
そういえば、俺は一応、扉を通ったはずなのに、手合わせ練成ができない。あくまで、扉を開いたのも、賢者の石とは言え、通行料を払ったのもエドって訳か。
もし、真理を見ていれば、何か分かったかもしれないのにな・・・。
「ふぅ。かと言って、開く訳には行かないしな・・・」
いや、違うか。まだ開けないか・・・。一回は開かん事にはどうしようもない。しかし、全ての人間が門を開いて無事戻ってこれるとは限らない。アルがいい例だ。エドが魂を引っ張り出さなければ今頃、魂も肉体と共に門の中だ。
なにより、どこを持っていかれるか分からないし・・・。
「仕方ない。とりあえずは、目の前の事に集中するか・・・」
とりあえず、文字の勉強に・・・。この世界にも、未確認ながら妖術、導術というのがあるみたいだしな、それから探りを入れるのも一つの・・・。
「どーん!!」
なんか、変なのが机の上にのり上がって来た。
「・・・・・なんのつもりだよ、雪蓮?」
「あ~、やっと返事してくれた!」
子供かい。
「人が、勉強してる時に訳の分からん事を言ってたら、無視されるのは当然だ」
「ぶ~!」
ほんと、子供みたいだな。
「まぁ、私がここに来たのも雪蓮を連れ戻すためでもあったんだがな」
「わわ、待ってよ冥琳!重大な発表があるんだから!」
「さっさと言ってくれ、そして政務に戻ってちょうだい」
「冷たい!冥琳が冷たい!!あの、夜の閨での優しさは・・・」
「・・・戻るわよ」
「あ、嘘嘘!いたた!?髪を引っ張んないでよ~」
本当に、騒がしいよな。
「さて、では今度こそカズトの新しい名前を発表します!!」
・・・・・ちょっと待て。
「じゃじゃ~ん!コレがカズトの新しい名前よ~!!」
「ちょ、何勝手に改名宣言して・・・ん?」
雪蓮が広げた紙に書いてあった文字は・・・・・。
―北郷 一刀―
「という訳で、今日からカズトは一刀。性は北郷、名は一刀!本当は、真名とか、字とかも考えたかったけど、元々持ってない物を無理に付けるのもね?」
「ふむ、北郷一刀か。良いのではないか?前の祭殿のように、ややこしい事にならずにすむ」
「どう、カズト?駄目?」
「え、いや・・・別に・・・」
ていうか、案外内容がまともだったのに驚いた。
「いい名だ。あんがとな、雪蓮」
「へ?あ、うん・・・」
「?なんだよ?」
「えっと、なんて言うのかしら・・・。カズト・・・ううん、一刀にお礼言われるとか思わなかったし・・・」
「あのなぁ、こっちだってまともな人間だ。そっちが突拍子も無い事を言わない限り、こっちだって普通の対応をするっつーの」
「そっか・・・あ、そうだ!それから、服の寸法測らせてよ」
「なんでだよ?」
「前にも言ってたでしょ?天の御遣いは、この地で紅い衣をまとうって。用意しなくちゃいけないでしょ?」
「そう言う事か・・・」
ん~、天の御遣いになるってのは契約の一つではあるが・・・わざわざな~・・・。
・・・・・・そうだ。
「なぁ、雪蓮。何でも良いから紅い生地くれないか?紅い服でも良いから」
「へ?いいけど」
「ふむ、錬金術で作るつもりか?」
「ん、冥琳正解。ちょうどいいし、穏にも見せようか?」
「それはいいですね。楽しみです~」
そして、雪蓮は一枚の服を持ってきた。
「それ、雪蓮の予備の服じゃないの?」
「いいのよ、冥琳♪こう言う時は、自分の服を差し出す物よ♪どう、一刀?」
「べ、別にいいけど・・・」
何か照れるものがある。
「あ、照れてる?」
「て、照れてない!」
そう、誤魔化すようにして俺は懐から錬成陣のカードを出し、錬金術を発動させた。
「おぉ~、すごいです~。どんどん形が変わっていきますよ~」
穏は、初めての事で興奮気味だ。
「ああ~ん!どういう原理なのか、ぜひとも知りたいです~」
なんか、クネクネしてる。興奮しすぎなんじゃ・・・。
「っと、そうこうしてる内に完成」
そして、そこには「フラメルの十字架」を背負った赤いコートが完成していた。そう、エドの持つ物と同じ物である。ま、願掛けみたいなもんだ。決して、ペアルックとか言う発想はすんなよ。俺はいたってノーマルだ!!
「コレで良いだろ?」
「ええ、とっても似合ってるわよ一刀」
「あぁ、なかなか様になってるな」
「そいつはどーも」
おっと、結構時間を費やしたな。
「んじゃ、悪いけど俺そろそろ自室に戻るから。穏、勉強に付き合ってくれて、ありがとうな?」
「いえいえ~」
「ホンゴー、いや、北郷はこれからどうするつもりだ?」
「あ~、外で飯食ってくる。今日は、まだ何も食べてないや」
「そうなのか?もう昼は過ぎているぞ?」
「あはは、まーな」
今日は、とくにする事・・・つーか、そもそも出来る事自体が少ないから、俺ができる事が無かっただけだが・・・とにかく、ようやく自分の部屋も一通り片付いたし、久しぶりに錬金術の研究を朝からしてたしな・・・。今まで、エドの旅に同行してたから、碌に時間も取れなかったから、穏が呼ぶまで、熱中してたなぁ・・・。
「んじゃ、ちょっくら行って来る」
「あぁ」
「わたしも、行って来る」
「駄目だ」
即行で、雪蓮は冥琳に服を掴まれた。
「あう、冥琳のケチー」
「そうだ、北郷。祭殿を見つけたら、私の所に来てもらう様に言ってもらえるか」
「いいけど、なんで?今日は仕事をしてるはずじゃ・・・」
「・・・・・おらんのだ」
「は?」
「大方、どこかで酒でも飲んでいるのであろう。フフフ・・・まったく・・・!!」
こわ!
「お、おう・・・。出来る限りのことはする・・・んじゃ!」
急いで、ここ離れよ。部屋に、昼飯代を取りに行かなくちゃ。
「ちょ、一刀!?この状態の冥琳を私だけに相手させる気!?」
「さて、私もちょっと失礼しますね~。丁度欲しい本の入荷日なので~」
「の、穏まで~!?」
「雪蓮・・・何騒いでるのかしら?」
「な、なんでもないわ!さぁ、お仕事よね。私頑張る」
「あぁ、サ・ボ・っ・て・い・た・仕事を頑張ってくれ」
「うぅ・・・」
そんな会話を聞きながら、俺は急いで部屋に戻った。
しかし、祭さん。怖い物知らずだな・・・・・。
「さて・・・と」
いざ飯食おうと思って町に来たは良いけど、まだこの町に慣れてないんだよな・・・。
「どこで食うやら」
あ~、穏辺りに聞いとけばよかったな。
「おぉ、ホンゴーではないか」
・・・・・なに?
き、気のせいだよな・・・。辺りには誰も・・・。
「どこを見ておる、こっちじゃこっち」
もう一声で、場所が分かった。そこは、外に机と椅子が用意してある飯屋であった。
カフェみたいなもんか?
そして、声の主は・・・。
「さ、祭さん・・・」
「なんじゃ、その反応は。ぼぉっとしとらんで、はよぉこっちに来んか」
俺の微妙な反応に一瞬顔をしかめたが、すぐに上機嫌な顔に戻って、酒器を掲げた。
「って、うわ・・・」
見てみると、空の器と、料理が無数においてあった。
「ドンだけ飲んでんの、この人」
「ほれ、つったっとらんで、お主も座らんか」
「あ~、いや、俺まだ飯食ってなくて」
「何? まだ食べておらんかったのか? なら適当にそこにある物を摘んでも良いぞ?」
「いいんですか?」
「なぁに、足りなくなったらまた頼めばよい」
んじゃぁ、お言葉に甘えて・・・。
「って!そうだ!!冥琳が探してたぞ!!仕事さぼってなにしてんの!?」
「ごく・・・くっ・・・・・ごくっ・・・・・」
聞いちゃいねぇ・・・・・。
「はぁ・・・こりゃ駄目だ・・・」
まだ短い付き合いだけど、どういう人かは何となく分かった。
「まったく・・・」
こうなったらしゃーない。諦めて俺も食うか。
「しかし、祭さん・・・よく飲むなぁ」
「ぷはぁ・・・当然じゃ。人生の伴侶は佳き食べ物と佳き酒。そして彩りとして、少しばかりの荒事があってくれれば申し分ない。そういうものじゃろう?」
荒事・・・なぁ・・・。
思い出すのは、エドとアルたちと初めて会ったリオール。その時、俺はエドか国家錬金術師であるというだけで嫌悪をした。あいつ等が何を背負っているのかも知らずに・・・賢者の石を欲しがるのも私利私欲のためだと一方的に決め付けて・・・。
そのくせ俺は、賢者の石を世の中のために使うとかアホな事を言って、勝手に対抗意識を出し・・・その後は、監視をするとかいきがって、勝手に旅に同行したっけ。
だけど・・・いっしょにいる内に分かった。あいつ等がどういう覚悟で旅をしていたのかを・・・。
自分が間違っていたと分かった時には、すぐにあいつ等の邪魔にならないよう離れるつもりだった・・・。けど、なんか、偶然に偶然が重なって、結局一緒に旅をし続けて、気付いたら俺も、ホムンクルス達に目を付けられて・・・。
うっわ、自業自得?
「俺は、日常的な騒動なら歓迎だな。戦いとか、そういう荒事はかんべんだ」
「ふ、お主は相変わらず軟弱な事を言うのぉ」
「ま、嫌というほど味わってるからね・・・」
グリードとの戦いだって、手合わせ練成できるエドがいなけりゃ死んでただろうしな・・・。
「ふむ、なぁホンゴー・・・」
「あぁ、そうだ。俺、今日から"北郷 一刀"だから」
「何?」
「さっき雪蓮がさ・・・」
俺は先ほどの話の内容を祭さんに話した。
「ほぉ・・・策殿がのぉ・・・」
そう言いながら、祭さんは新しい酒器を出し、注ぎ始める。
「ちょ、祭さん。まだ片手にあるだろ?そんな、焦って注がなくても・・・」
「何を言う。コレはお主への祝い酒じゃ。ほれ、はよぅ受け取らんか」
「いや、前にも言ったけど俺未成年・・・」
「こっちにはそんな法律は無い」
・・・こりゃ飲まない選択肢は無いようだ・・・。
「ったく・・・強引なんだから・・・」
だけど、その酒を口に入れた途端・・・。
「ぐふっ!」
俺は吹いた。
「なんじゃ。お主、酒は飲めんかったのか」
つかこれ・・・。
「白乾児じゃないか!こんなキツイの良く飲めるな!?」
「きつい?この程度がか? しかし、その割にはこの酒のことを知っておったな?」
「あぁ、ウチの爺ちゃんが酒飲みでさ・・・。良く酒を練成させられてた」
「ほぉ・・・」
何を隠そう、ウチの爺ちゃんはシンの国からの移住者である。アメストリスにはシンの酒は一部おいてない場合があり、材料をどこからか調達しては、俺に練成を強制してきた物だ。しかし、酒まで同じとは・・・。
「くく、楽しみじゃな。おぬしに造ってもらう酒は・・・。飲んだことも無い物も当然あるであろう?」
しまった・・・ここでも、酒練成をするはめに・・・。
「ったく、飯も食ったし。俺も行くよ?」
これ以上ここに居たら、いずれ冥琳の雷の巻き添えくいそうだし。
「まあ待て。酒は無理でも、少しくらいは話に付き合ってくれても良かろう」
だけど、即行で服を掴まれた。さっきの酒の影響か、ちょっとふらついていたのに、急に引っ張られては当然・・・。
「うわ・・・っと・・・」
俺は祭さんに向かって倒れ、祭さんの胸の谷間に顔を埋める格好になってしまった。
「なんじゃ?そんなところに顔を押しつけたりして。まったく、男というのは、いくつになっても乳離れができぬものよのぉ」
「っ!どう見ても狙ってのことじゃないだろ!?」
俺は急いで、離れた。あ~、何か顔が赤い気がする。
「やれやれ。軽く引っ張っただけなのに、簡単に重心を崩しおって……お主、鍛錬が足りておらんのではないか?」
「今のは、さっきの酒の所為で平衡感覚が狂ってただけ!いつもなら、もっとしっかりと!!」
「そうか?しかしお主、こっちに来てから鍛錬の一つでもしたか?」
「そ、それは・・・」
そういえばしてない。こっちの来てから部屋の準備、文字の勉強、そして、現在の状況の把握・・・と、結構忙しかったもんな。こんなんじゃ、何かの拍子で元の世界に戻っても、ホムンクルス達と満足に戦えるかどうか・・・。エンヴィーとの化け物じみた戦いも防戦一方だった・・・。
「たしかに・・・少し怠けすぎたかもしれない・・・」
「そういう事なら、儂が相手をしてやっても良いぞ?」
へぇ・・・それはありがたい。
「俺の相手も、化け物だし。祭さんみたいな、人間離れをした人が相手をしてくれるとありがたいよ」
「誰がじゃ!儂のような可憐な乙女に向かって、なんと失礼な」
「可憐な乙女は、城壁を拳で崩壊したりしません」
「それくらい、氣と武を極めれば、誰にでも出来るわ!」
そう、強く言うと酒一気に煽った。
「まったく、その程度で化け物扱いなら、お主もであろう?」
「あぁ、錬金術の事」
「その通りじゃ」
「それを言ったら、錬金術だって誰もが使える可能性を持っているさ。だけど・・・現実はそうじゃない・・・」
「む・・・」
「何か反論は?」
「ふん、理屈っぽい事を言う男じゃ」
そう言って、また酒を飲んだ。
「まるで、冥琳みたいじゃ」
それはまた・・・って、冥琳!?
「そうだ!危うく忘れる所だった!」
一度は諦めてたけど、流石にこんなに長く酒を飲んでるとは思わなかった。
「いつまで仕事サボって、酒飲んでる気なの!?冥琳カンカンだったぞ!?」
「なに?冥琳が・・・?」
「そう!」
ようやく聞いてくれたので、いくらなんでもそろそろ仕事に戻ると言ってくれるだろう・・・と思ったら。
「ふん、冥琳と仕事が怖くて酒が飲めるか!」
「だ、だけど・・・あ・・・」
「・・・・・・っ」
ふと視線を感じ、その方角をチラリと見てみると、冥琳が仁王立ちしていた。
「(・・・ギリギリだった)」
一応、説得はしてるし、俺も一緒に飲み食いしていたけど、体裁は整っているだろう・・・。でも、祭さんをこのままにするのもアレだし、説得を続けるか。
「第一、仕事など、酒を飲みながらしたところで、どうという事あるまい。それに、あんなひよっこに何を言われようと儂は気にせんわい」
そう言って、また一口飲む。
「でも、ほら!こんな顔で怒ってたよ!?」
俺は懐から、カードを出し机の一部を冥琳の像に練成を・・・。
「お、この前のか?」
「へ?・・・あ・・・」
よ、余計なイメージが入って、顔こそ普通の怒り顔だけど、体が・・・byアームストロング少佐・・・。
「・・・・・・・・っ!!!」
冥琳の怒気が増加した。
「ふははははははは!!相変わらずそっくりじゃな!!」
祭さん!お願いだから黙って!!
「・・・・・っ゛っ゛っ゛っ゛!!!!」
・・・・・どうにも、俺も巻き込まれそうだ。
「しかし、顔がかわいくないな。どれ、儂が可愛くしてやろう」
そう言うと、どこからか筆を取り出し落書きを始める。当然、冥琳は・・・もう顔を直接見ることは出来ないや。
「そもそも周家のご令嬢は、今でこそああやってエヘンと威張っておるが、昔は泣き虫でな。イジメられているところを、良く儂が助けてやったものじゃ」
祭さんは上機嫌で、落書きを続ける。
「それがいつの間にかあの通り、偉そうな物言いをするようになってしまってなぁ・・・まったく。儂はあんなふうに育てた覚えは無いぞ!・・・良し完成「私も育てていただいた覚えはありませんが」・・・は?」
そこには、もはや原形を留めてなかった冥琳がいた。
「だ、だだだだだ誰じゃ!!?」
余りの形相に、誰か分からない祭さん。
「おやおや、祭殿・・・育てたはずの娘の顔を忘れたのですか?」
おいおい、さっきと言ってる事矛盾してるぞ冥琳。
「娘・・・生憎儂には娘なぞ・・・・・も、もしや冥琳か?」
「ふふふ・・・え、えらそうな物言いをするようになって、て、しまって、も、申し訳ありませんでしたな。こ、これからは、は、少し気をつけるようにいた・・・いたし、ましょう」
・・・・・・ロレツ廻ってねぇ・・・・・。
「のう、北郷よ・・・」
「何ですか、祭さん」
「儂等はもしや・・・虎口に飛び込んだ兎か?」
「さりげなく俺も入れないで・・・」
「さて、祭殿。おまけで北郷。そろそろ観念されましたかな?よろしければ、これから二三、お話したい事があるのですが?」
「い、いや・・・遠慮――」
「お、おまけなら見逃し――」
「出来るとお思いか?ふふふ、こんな所で像遊びとはよほど暇・・・」
しかし、冥琳は像を見た瞬間止まった。俺も気になって、像を見てると、冥琳の怒り顔の像は、上から笑顔になるように落書きがしてあった。
「ふ、気付いたか冥琳・・・。このところお前は笑顔が見られなかったからの・・・。せめて像だけでも笑顔にしたかったのじゃよ・・・」
そう、祭さんは微笑んで言った。
・・・・・・・どこまで本気なんだろう?冷や汗ダラダラだし、顔青いし。
「祭殿・・・」
しかし、冥琳は若干微笑みを出した。そして・・・
<<ガシッ!>>
俺達の腕は掴まれた。
「め、冥琳!ここは、『私も少し、大人気ありませんでした』と言って仲直りをする場面では!?」
祭さん、結構想像力豊かだな。案外、錬金術の才能あるかも。
「それはそれ、これはこれ。さて、ここでは周りの迷惑になりますから、場所を変えましょう」
「待て冥琳!離せ!離さんか!」
「さて、耳栓でも練成するか・・・」
「ええい、北郷。黙っておらんで何とかせんか!!」
「祭さんも耳栓する?どこまで意味があるか判んないけど」
「こ、この軟弱者がぁ~~~!!!!!」
さて、結局巻き込まれたなぁ・・・。そう、まるで他人事のような思考をして俺達は引きずられていった・・・。
しかし・・・俺もいい加減馴染んできたなぁ・・・。
余談ではあるが、そのまま残っていた冥琳像。ほんの僅かの間ではあるが、この街の名物となる事になる。
何故僅かな時間かと言うと、噂を聞いた冥琳が猛スピードで粉砕したからである。
あとがき
冥琳無双。
そして、穏難しいな・・・。
自分、三国志に関しては、無双シリーズをやったくらいの知識しか知らないので、基本展開はテンプラ・・・テンプレです。
SS読んでていっつも思うのは、良くこんなオリジナル展開書けるな・・・です。
いつか、ああいうのを書いてみたいとせつ願う。
あと、自分の話にシリアスも止めたら駄目ですよ、皆さん。
若干、キャラ崩壊勃発しまくりだけど、かんべんな!!
・・・勢いで誤魔化そうとしてました、すみません。見逃してくれると幸いでござる。
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コメントにあった意見の中で、いくつか答えますと残念ながら、カズトは二つ名を持ってません。国家錬金術師ではないので。
自分の血を武器にってのも、やろうと思えばできると思いますが、多分最後の手段でしょう。
そして、手合わせ練成ですが・・・作中にも書いてあるように、残念ながら今の所は、できません。
・・・・・今の所は・・・ね?