No.154653

雲の向こう、君に会いに-魏伝- 十章

月千一夜さん

十章です
今回はかなりシリアスです、ガチでww
あのお方が、ついに動き出します

PS・張三姉妹と他国武将はもうちょっと待っててくださいww

2010-07-01 22:26:27 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:35436   閲覧ユーザー数:28805

「ふむ・・・特に異常はみられないな

恐らく、疲れからくるものだろう」

 

「そう・・・」

 

 

早朝

 

御遣い殿の診察を終え俺が言ったことに、曹操殿は安心したふうに息を吐いた

その後ろでは、夏侯惇殿が嬉しそうに笑っている

 

 

「はは、愛されてるな御遣い殿」

 

 

「あはは、だといいんですけど」

 

 

言って、服を着ながら御使い殿は笑う

それから、傍らに置いてあった書簡を手に取った

 

 

「まぁ、なにもなくてよかったよ

明日には、大仕事が待ってるしね」

 

 

大仕事とは、恐らく三国会議とやらのことだろう

話を聞く限りでは、御遣い殿はその会議の場で何かを話すようだ

あの書簡は恐らく、それに関係するものだろう

 

 

しかし・・・

 

 

 

 

「わかっているとは思うが、風邪をなめてはいけない

とりあえず、今日は絶対安静だ・・・念のためな」

 

 

 

その言葉に、御遣い殿は苦笑する

しかしそう言われることがわかっていたのだろう・・・すぐに納得したように、首を縦にふった

 

 

 

 

「うん・・・りょーかい」

 

「構わないな、曹操殿?」

 

「ええ、構わないわ

一刀、今日も貴方は休みなさい

警邏のほうは凪に任せるよう言っておくから」

 

「わかったよ

悪いな、華琳」

 

「そう思うなら、明日までに治しなさい」

 

「はは、頑張ってみるよ」

 

「それじゃぁ赤、一刀のことを頼むわよ

華佗、貴方は・・・」

 

「ああ、俺は少しここで御遣い殿に療養中のことについて話していこうと思っている」

 

「任せるわ」

 

 

そう言葉を残し、曹操殿たちは部屋をあとにした

 

 

残ったのは、俺と御遣い殿・・・そして、赤殿だった

 

 

 

 

 

 

 

「さて、俺がここに残った理由だが・・・わかっているな?」

 

 

 

 

 

 

瞬間、御遣い殿の表情が強張る

だがそれも一瞬のことで・・・それは、すぐに笑顔に変わった

 

 

「やっぱり、ばれてたんだな」

 

 

「俺は医者だからな」

 

 

そう言って、お互いに笑う

 

だが、言わなくてはならない

 

聞かなければならない

 

 

 

 

 

俺は医者だから

 

 

 

 

 

だからこそ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「御遣い殿・・・君にいったい、何があったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は・・・知らなくてはならない

 

 

 

 

 

 

《雲の向こう、君に会いに-魏伝-》

十章 真実へと至る覚悟

 

 

 

「さて、明日はいよいよ会議なわけだけど・・・皆、準備の方はいいかしら?」

 

 

玉座の間、集まった者達の姿を見つめ私は言う

その言葉にまず、筆頭軍師である桂花が前に出た

 

 

「こちらの方は、もう殆ど大丈夫です

あとはあの馬鹿が上手くやれるか、ということだけですね」

 

 

あの馬鹿、とは言わずとしれた一刀のことだろう

 

明日の議題の中にある、一刀の受け持つ話について・・・といったところか

 

 

「それについては問題ないわ

一刀も、一応は終わらせているみたいだし

『武道大会』の準備はどうかしら、稟?」

 

 

桂花の話に満足し、私は稟へと視線をうつした

 

 

『武道大会』・・・今回の会議における催しの中でも、最も規模の大きなものだろう

各国の武将何人かが参加し、お互いの武をもって競い合う

 

このままでは腕が鈍ってしまうという武官(主に春蘭と霞)の声により開催を決定したものだ

 

その準備などを、私は稟に任せていた

 

だがしかし・・・

 

 

「・・・」

 

 

稟は私の声にこたえることなく、ただボ~っと視線を彷徨わせていた

どうかしたのかしら?

 

 

「稟、どうかしたの?」

 

「え、あっ・・・華琳様!? な、何か!?」

 

 

ようやく気づいたのか、慌てて話し始める稟

この様子だと、よほど何かを考え込んでいたのだろう

 

稟がこのような失態をするなんて、本当に珍しい

 

 

「落ち着きなさい、武道大会の準備について聞いたのよ」

 

「あ、はい・・・準備の方はもう万全です

問題は一切ありません」

 

「そう、ならばいいわ」

 

「はい、あ・・・あの、華琳様

ひとつ、お聞きしたいことがあるのですが」

 

「何かしら?」

 

「一刀殿の具合は、その・・・どうでしたか?」

 

「一刀の・・・具合?」

 

 

本当に・・・珍しい

 

まさか稟のほうから、このようなことを聞いてくるなんて

 

それも、本当に心配しているような声で

 

 

ふふ、なんだかんだ言って結局・・・私達は皆、あの男のことが好きなのね

 

 

「一刀なら大丈夫よ、ただの風邪らしいわ

念のため、今日も休ませたけれど」

 

 

安心させてあげたい

そう思いなるべく優しく言い聞かせる

 

だけど・・・

 

 

「そう・・・ですか」

 

稟は何故か、先ほどよりも暗い表情で・・・ゆっくりと頷いたのだ

 

 

「稟・・・?」

 

「やはり・・・あ、いえ、なんでもありません!

そういえば必要な資料をまだ纏めていませんでした・・・失礼します」

 

 

そのまま、早足で玉座の間から出て行く稟

その背中を私は、黙って見送ることしかできなかった

 

 

 

 

 

 

ズキン・・・

 

 

 

 

 

まただ・・・また、嫌な『違和感』を感じた

 

 

何かが、おかしい

 

 

 

 

 

 

「ほなら、ウチも・・・そろそろ、いこかな」

 

「真桜?

珍しいな・・・お前がそんな率先して仕事をしたがるなんて」

 

「そうなの~、いつものファッキンな真桜ちゃんはどこいったの?」

 

「誰がファッキンや!?

ちょっと、これから隊長んとこに届けなあかんもんがあんねん

せやから大将、ウチももういきますわ」

 

「わかったわ」

 

 

一礼し、玉座の間を後にする真桜

それに続くよう、皆は次々と与えられた仕事をこなすために歩き出した

 

 

ただ一人・・・

 

 

 

 

 

「あら、もしかして・・・もう仕事が終わったのかしら?」

 

「ええ、もうとっくに終わらせておいたのですよ~」

 

 

 

 

彼女・・・風だけが、この場に残っていた

 

 

 

「で、何か私に用でもあるのかしら?」

 

「用というほどのものでもないのですが・・・ひとつ、言いたいことがありまして」

 

 

この言葉に、無意識のうちに・・・私は唾を飲み込んでいた

頬を、何かが伝う

 

これは・・・汗?

 

 

「へぇ、珍しいわね・・・貴女が、私にそういうことを言うのは」

 

「そうですかね~」

 

「そうよ」

 

 

風の視線に、風の声に

私は、底知れぬ『何か』を感じている

 

 

胸が・・・痛い

 

 

「で、言いたいこととは何かしら?」

 

 

駄目・・・きっと、これを聞いたら駄目だ

 

だけど、止められない

 

何故?

 

わからない

 

なにもわからないまま・・・時だけが過ぎていく

 

 

 

 

 

二人だけの空間

 

交わる視線

 

 

 

そこで・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「華琳様は・・・真実を知る覚悟はありますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は、風の言葉に・・・今までにないほどの『恐怖』を感じたのだ

 

 

 

 

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「ふんふんふ~ん♪」

 

城内の廊下、鼻歌を歌いながら隊長の部屋へと向かうウチ

隊長に頼まれて作った『車椅子』を押しながら、ウチは軽い足取りで進んでいく

 

凪たちには悪いけど、ホンマ役得やなぁ♪

仕事や言うて、こうやって堂々と隊長の部屋にいけんやもんな

 

ほんで、隊長に褒めてもらうねん

 

 

『真桜の発明は、いつみても素晴らしいよ』ってな感じで

 

 

 

そんで、くんずほずれつってな感じで・・・

 

 

 

 

「くふふ・・・こら、今日はいっちゃうんか?いってまうんか?」

 

 

アカン、なんやニヤニヤがとまらへん

 

ああ、早く隊長に会いたい!

 

 

「隊長、まっとってな♪」

 

 

どんどんと早くなる足取り

 

広がる温かな気持ち

 

 

気づいたときには、もう隊長の部屋は目の前やった

 

アカン、妄想のしすぎで気づかんかった

 

 

「こほん、さてたいちょ・・・」

 

『なんで・・・なんでもっと早く言わなかったんだ!!!!!!』

 

「うおぅっ!?」

 

 

ウチがノックしようとした時

 

いきなし隊長の部屋から、なんや男の叫びが聞こえてきた

ウチは驚きのあまり、そのままそこに立ち尽くしてしまう

 

「な・・・なんや、いったい?」

 

 

 

『華佗・・・君ならわかってるはずだ

これは、そんな生易しいものじゃない』

 

『だが・・・!!』

 

『いいんだ、君は悪くない』

 

 

 

湧き上がる疑問

そんな中、次に聞こえてきた隊長の声に・・・ウチはさらに動揺してしまう

 

それは、今まで聞いたことがないほどに悲しげで

とても儚げな声

 

隊長のこんな声、ウチは・・・聞いたことない

 

 

 

『俺は、知っていたんだ

こうなることが、わかっていたんだ

だけど・・・俺は【こっち】を選んだ

だから、後悔なんてしてないよ』

 

『御遣い殿・・・』

 

 

なん・・・や?

いったい、なんの話や?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だから・・・俺は、消えなくちゃいけないんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は・・・?」

 

心臓が、鷲掴みされたんちゃうか思うくらい・・・胸が苦しい

 

呼吸が、上手くできへん

 

 

 

『それまで、せめて・・・』

 

『待て北郷、こやつ・・・何者じゃ!?』

 

「あっ・・・!」

 

 

 

そんな状態の中、勢い良く開かれた扉

 

見えたんは、困惑したような表情の隊長

 

 

 

「真桜・・・?」

 

 

 

 

その顔を見るだけでわかったんや

 

本気で、聞かれたくない話やったんやって

 

 

けど・・・ウチはきかなあかん

 

 

 

たとえそれが・・・

 

 

 

 

「隊長・・・今の話、いったいどういうことや?」

 

 

「真桜・・・」

 

 

 

 

 

 

『後悔』の念に押しつぶされることになろうとも・・・

 

 

 

 

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「さぁ華琳様・・・覚悟はありますか?

真実を知る覚悟が」

 

 

風の言葉

それに、私は言い表せないような恐怖を感じていた

 

何故?

 

いや、そんなことはわかっていた

 

私が恐いと思うことなんて、一つしかないのだから

 

 

それは・・・

 

 

 

「一刀のことね・・・」

 

 

 

彼・・・北郷一刀のことだ

 

 

「おかしいとは思っていたの

でも・・・私は無意識のうちに、目をそらしていたのかもしれないわ

一刀は、きっと大丈夫って

そんな保障・・・どこにもないのに」

 

 

 

 

 

風は私の言葉にふっと微笑み、それから・・・懐から、二枚の紙を取り出す

そしてそれを、私に向かって差し出した

 

私はそれを黙って受け取る

 

 

「風はお口が堅いので、勝手に人様の秘密を喋ったりはしないのですよ

だから、教えられません

 

  ですが・・・」

 

 

 

 

そこまで言って、彼女はふうと・・・わざとらしく溜め息をついてみせた

 

 

 

 

 

「自分で気づく分には、全く問題ないと思うのです」

 

彼女が指を差す

その先には、受け取った二枚の紙きれ

 

 

これに・・・真実が?

 

 

 

「その二枚の紙に書かれたこと・・・それがわかれば、もしかしたら辿り着けるかもしれません

残酷で、救いのない真実に」

 

 

 

 

 

 

 

ーそれでも・・・ー

 

 

 

 

「私は、その真実を求めるわ

後悔だけはしたくないもの」

 

「そうですか・・・」

 

 

 

そう呟き、風は・・・静かに天井を見上げる

 

その瞳に一瞬、とても深い悲しみが見えた気がした

 

 

 

 

 

 

 

「風には・・・これが限界です、お兄さん」

 

 

 

 

 

 

二人だけの、玉座の間

 

風の悲しげな呟きが、静かに響いていった・・・

 

 

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それは、警邏隊の仕事を終え・・・沙和と二人で城の廊下を歩いていたときのこと

 

ふと、視界に見覚えのある人物がはいった

 

 

あれは・・・

 

 

 

「真桜、どうしたんだこんなところで?」

 

 

「ん、ああ・・・凪か」

 

「沙和もいるの~」

 

 

沙和が元気良く声をかけるが、真桜はあまり反応しない

 

どこか、疲れているように見えた

 

 

 

「おい真桜、何かあったのか?」

 

 

そう言って、私は真桜の肩を掴んだ

そして、真正面から真桜を見据える

 

 

見えたのは・・・顔に残る、涙のあとだった

 

 

 

「ま、真桜ちゃん!?

いったいなにがあったの!?」

 

「そうだ!何があった!?」

 

 

 

そのあとに気づき、私と沙和は必死で詰め寄る

だが・・・真桜は何も言わない

 

それから・・・静かに

 

 

 

 

 

「ウチだって、わからへんよ・・・」

 

 

 

 

 

 

彼女は・・・涙を流したのだ

 

 

 

 

「え・・・?」

 

「ま、真桜?」

 

 

戸惑う私達

だが、彼女は話を止めることはない

 

 

 

 

 

「ウチだって、わからんのや

何度も何度も・・・夢やったらよかったのにって

せやけど、これは夢やないねん

そんなん・・・そんなん、信じたくない!!」

 

 

 

 

涙を流し、空に向かって叫ぶ真桜

私達は、もはや声をかけることが出来なくなっていた

 

体が・・・動かない

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたらええねん・・・ウチは、なんもできひんのか?

ウチは、ただ見てるだけしかできひんのか?

なぁ、教えてや・・・隊長ぉ」

 

 

 

 

 

動けない私達

 

泣き叫ぶ親友の姿

 

 

 

 

この日・・・私達は、初めて気づいたのかもしれない

 

 

足元にはもう、いつ崩れてもおかしくないほどに・・・いくつものヒビがはいっていたことに

 

 

 

 

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「綺麗な月だね・・・赤さん」

 

「はっ、何を言いよる

ろくに見えもせん目で」

 

「はは、痛いとこつくなぁ」

 

 

 

赤に車椅子を押してもらい、彼・・・北郷一刀は中庭にきていた

 

 

見上げた先、見えるのは美しい月

 

 

 

 

「まいったな、まさか・・・真桜が来るなんて」

 

「うむ、少し油断しとったわ」

 

 

そう言って赤は、悔しそうに舌打ちをする

そんな彼女に、彼は優しく微笑みかける

 

 

「そういえば、昨日・・・呉の人たちが着いたみたいだけど」

 

「うむ、聞いた」

 

「どうする?」

 

 

後ろを向き、赤に笑いかけながら彼は言う

赤は・・・ポリと頬を一度かくと、ふっと息を吐き出した

 

 

「約束したじゃろう・・・ワシが、見届けてやると

じゃからそれは、全てが終わってから考えることにしたんじゃ」

 

「はは・・・そっか」

 

 

赤の言葉に、一刀は笑う

それから、すっと・・・夜空にむけて、手を伸ばした

 

 

 

その先には、美しい満月が・・・

 

 

 

 

 

 

「だったら、尚更頑張んないとな

 

皆のためにも、勿論・・・赤さんのためにも、ね」

 

 

 

月の光に照らされ、彼は笑う

その笑顔が、本当に眩しくて・・・赤は、心臓の鼓動が早くなるのを感じた

 

 

 

「はっ・・・ワシのため、か」

 

 

『生意気言いおって』と、彼女は悪態をつく

 

が、言葉とは裏腹に声は明るかった

 

 

 

 

 

「頑張れよ・・・北郷」

 

 

 

ポンと、肩を叩き言う

 

だがそれにたいし、一刀は・・・申し訳なさそうに笑っていた

 

 

「ごめん、赤さん」

 

「? いったいどうしたんじゃ?」

 

「今の言葉、もっかい言ってくれるかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           ーもう、赤さんの声が・・・よく聞こえないんだー

 

 

 

 

 

あとがき

 

十章目

ほんっとうに、今回はかなりシリアスです

それも、終わりが近いからですかね

 

伏線回収まだだけどww

 

さて、今回は他の国のキャラが全く出ませんでしたね

マジ、サーセン

 

本当は桃香と雪蓮を出す予定だったんだけど、今回は見送りました

 

 

次回はマジで、かなりキャラが登場します

 

会議一日目・・・こっから一刀はどうなっていくのか?

 

華琳は真実に辿り着けるのか?

 

 

そして、迫り来る選択とは・・・

 

 

それでは、次回お会いしましょうww

 

 

 

 


 
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