ある昼下がりの午後。
執務室で休憩がてら、桃香とお茶を優雅に楽しんでいると―――ガコンッ!
「はわわ、ひっ雛里ちゃんがでっかくなっちゃいました!」
「あわわ、でっかくなっちゃいました~」
後を追うように雛里が入ってくる。
えっ、雛里?
ほっホントにこの御方が、あの雛里なのか?
思わず「なるほど・ザ・ワー○ド」してしまったけど、ウルトラ超絶スレンダー美女すぎんだろ。ほら、桃香も穴という穴からお茶吹いてるよ。ああ、見てられん。
即効魔法「モザイク修正」発動!
しかしこれ、もう愛紗とか星とかその他モロモロいらないじゃん。一気に純愛ルート確定だよ。
うっ嘘に決まってるさ、お願いだから睨まないで朱里。
ふぅぅ~。
やばい、少し落ち着くべきだ。ディス・イズ・クールダウンだ。OK、母なる海を思い浮かべるんだ。母さんはきっと俺を受け入れてくれるはずだ・・・。
「でも、どうしてそんな体になっちゃったのかな?」
桃香が悪事を働いた子どもを諭すように優しく言う。
しかし、その顔は未だモザイクの洗礼を受けている。
「あわわ、じっ実はこのアメを食べたらこうなりました・・」
雛里(大)は瞳に涙を浮かべながら、アメの入った容器を差し出す―――ってそれは!!
先の魏戦で得た戦利品「しゅぷれ~むキ○ンディ」をバージョンアップさせた、
「しゅぷれ~むキャンディ・マッ○スハート」じゃあーりませんか。
確か、もともとは紫苑が定軍山で夏侯淵を倒した際に手に入れたんだ。なんかメチャクチャ喜んでたな紫苑のやつ。でもすぐに危険物認定されて、俺直属の本郷科学部隊の手に移ったんだよな・・・・。
「あれ、ご主人様何か知ってるの。じー。」
俺の動揺を一瞬で見抜いたのか、モザイクの入り桃香が聞いてくる。
「はわわ、じー。」
「あわわ、じー。」
3人の視線が俺一点に集中する。ウホ(照)。
だが、大丈夫!7つの海を越え、古の神々と死闘を繰り広げてきた絶対強者の俺に死角はない。
「安心しろ、解決策は簡単なことだ。
雛里が食べたアメと別の色のアメを食べれ――――にゃん!?」
ドガーランシャンポン!!!!
「なっなんだ!いきなり壁がぶっ飛んだぞ!
宇宙人、未来人、超能力者の仕業か!?」
「貴様が北郷一刀だな。
この夏侯元譲、華琳様の命により貴様の首を貰いに来た。」
「ご主人様、下がって!」
モザリアンが自分の座っていたイスを構える。
体が冷たい雨に打たれたように震えている。怖いのだろう、かわいそうに。
俺は一目散にその背中に隠れる。
しかし、あの夏侯惇だと。間違ってもこんな場所でエンカウントするような敵じゃないはずだろ。少しはポッポやスライムを見習えってんだ。
「あわわ、私と朱里ちゃんが戦います。お二人は下がってください。
大丈夫です。私と朱里ちゃんなら勝てます。」
何の根拠があるのか知らないが、その恍惚な笑みから察するに、何か秘策があるのだろう。
雛里(大)の掌に怪しい光が集まり、それを朱里に向ける。
「メタルマ○オ」
未来の自分でも脳裏に浮かんだのか、朱里の顔が恐怖と涙で歪む。
「はわわ、ひっ雛里ちゃん私達お友達よね?
この前だって翠さんのもく――――――――――」カッチン!
・ ・・おいおい朱里が固まったぞ。その力や恐るべし。
そして雛里(大)は、状態異常にかかった朱里の足首を持ち、軽々と肩に掛かげる
「かつて海を裂き山を穿ち、ついには黒鎧竜でさえも打ち倒した究極の魔法剣!」
―――はわわ大剣
「夏侯惇さん、あなたにはこの蜀の地で肥やしとなってもらいます。」
なんかキャラ違くね?モザ子も多分ぽかんとしてるよ。
「ほう、ならばやってみろ女!この魏武の大剣を葬ってな!」
がきぃん、がん、ぎんぃぃん!
「くっ、この私が押されてるだと!」
つえー、もうこんなの雛里じゃねーよ!つか、さっきから朱里の顔面ばっか打ちつけてるけど、恨みでもあるの?
ぶつかり合う剣から発するすさまじい衝撃波がドカブカと鈍重な音を奏でる。
ヤバイ、部屋全体が今にも崩れそうだ。収拾もつきそうもないな。
あっそういえば、月とお茶を買いに行く約束してたんだよな。
すっかり忘れてたぜ。てへっ。
こうして今日も蜀は平和だった(完)
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成長した雛里のお話です。