No.154157

ミッドナイト†無双 魏編2 

あのさん

これは北郷一刀の最期の物語。

2010-06-29 16:58:46 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1946   閲覧ユーザー数:1717

「アシュラバスター!」

 

「ぎゃあああああああああああああーーーー!!」

「華琳様―――――!!あんたなにやってるのよ!」

 

 

―――あれから1年

 

 

魏の悪行超人として大陸中にその名を馳せた、北郷一刀にも人生の終焉の時が迫っていた。

 

「ゴッホ、ゴッホ、俺の肖像画を描いてちょゴッホ!」

ああ、また血を吐いてしまったでござる。血管に誤って筆ペンを詰めてしまった時みたいに全身が隈なく痛い。

 

「一刀っっ!!」

華琳が悲痛な声を上げる。おいおい、普段の覇王っぷりは何処にいったんだ?

でもまあ、今となってはそんなとこも愛おしいんだけど―――ッ!!?

 

「にっ、に”ゃーーん!」

ははっ、俺も潮時かな・・・。だが、まだ成すべき事がある。

 

「ハァハァ・・華琳、これを受け取って・・・くれるか。」

ベットの脇に隠しておいた包みを、そっと優しく手渡す。

 

「これは・・・確か、一刀の話に出てきたヌイグルミ?なかなか皆の特徴を射ているわね。

特にこの凛の鼻血の部分の再現率はハンパないわ。正直リアルすぎよ。」

 

そりゃそうだろ。あの鼻血シーンのために、朝から晩まで凛の顔をしつこく凝視してたんだぞ。それこそ「一刀殿、いい加減にしないと警邏の者を呼びますよ。」って120回近く言われるほどにな。

 

「・・・あれ、私の分が見当たらないのだけど。これはどういうこと?」

 

「ああ、華琳のは少しばかり特別製で時間が掛かったんだよ。

ほら、誕生日おめでとうっ!」

 

 

「いや、全然私の誕生日じゃないんだけど・・・。

まあ、ありがたく受け取る―――――って、これただの藁人形に、華琳って名札が貼ってあるだけじゃない!」

 

「失礼な、藁を編んで人の形に似せるのって、物凄ーく手の込む作業なんだぞ!」

 

「だったら、もっと別の物に力を注ぎなさいよ。

実はあなた私のことが嫌いなんじゃないの?」

 

「・・・・・・・・・。」

 

「なんとか言えーーーー!!」

 

 

 

 

「・・・なあ、華琳。最後に連れて行って欲しい場所があるんだ。」

 

 

 

 

マオウ印の車椅子に乗り、それを華琳が後ろから押してくれる。

 

街へ出るとなぜか皆が一様に顔を歪ませている。中には声を殺して泣いているやつも眼に入る。おいおい、ここはそんな湿っぽい場所じゃないはずだろ。

住人どもが昼間から酒を交わし大音声で騒ぎ、商人どもは喧しく各々の技量を競い合い、ガキどもは鼻を垂らしながら無邪気に駆け巡る。

 

そんな生に溢れた場所だろう、ここは。

だから、お願いだからそんなツラするなよ・・・お願いだから。

 

 

 

 

―――街の中心部から少し外れると、ちょっとした公園がある。

 

本来なら、この公園は区画整理の際に建築物の下敷きとなり消えていたはずだった。

しかし、それに断固反対した俺は夜中に華琳が寝静まった部屋に侵入し、耳元で呪文を唱えるように「メ○ゾーマ」と囁き続けたのである。

翌日、華琳の耳が少し焦げてたのが気になったが、無事撤回を約束してくれた。

全く、今ではいい思い出だよ。ホントに。

 

 

「ほら、一刀あそこを見て。子ども達がサッカーをしているわよ。

ふふっ、楽しそうね。」

 

ああ、余興で魏の皆に披露したちょっとした遊びが、まさか大陸中に広まるとは思ってなかったさ。そして、近頃では魏呉蜀による三国リーグなるものを計画しているとか。スポーツは国境を越えるとか言うが、ほんとに超えちゃったな。

 

だけど――――――「ぬるいわ!!!」

 

スタッ!!!

 

 

「らーらーらーらーーー!!!!!」

 

「かっ、ちょっ一刀?」

 

・・・華琳よ、引き止めたい気持ちは俺にも分かるが、だが男には例え矢ダルマになったとしても、動かなくてはいけない時があるんだよ。

 

そして、今がその時なり!

 

「どけ、子ども達ーーー!!

はりゃ、ほれ、うまうー!!」

 

全ての物体に流れている時間が停まったように、相手の動きが緩慢になる。

故に全てが読める!!

 

ガンッ、ズバババット、ドゥーンッ!!!

 

「ふははは、どーだ見たか脅威の5人抜きだぜ。

今日も明日も、俺の右足がロナ○ジーニョ!!」

 

 

「すっ、すげー。最後、空間が歪んでたよ。変な扉も見えた気が・・・・」

 

子ども達が尊敬の眼差しを向けてくる。ふふん、悪くない気分だ。

だが、俺はもう行かなくてはいけない。

生も死もない、悠久の虚無へと。

さらば、子ども達よ健やかに育て。

 

 

「ハッゲ、ハッゲ、ハーゲ○ダッツ!!!

ただいマッハ戻りマッハ華琳。」

 

俺はどす黒い血をスプリンクラーのように撒き散らしながら、光り輝くペガサスのように颯爽とその元へ駆けつける。

 

だが

 

「かっ一刀、あなた・・・」

 

 

華琳がまるで、夜中に貂蝉という名のビキニパンツのおっさんが、枕元でジッと自分を見つめているのを偶然目撃してしまったような、そんな驚愕と涙に満ちた顔で俺の体を見ている。

一体どうしたん――――――――

 

―――――――――

 

―――――

 

―――

 

 

アッーーーーーーーーーーーー!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして今日も魏は平和だった(完)

 


 
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