No.151212

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第八話

狭乃 狼さん

刀香譚、第八話です。

少し短いですが。

恋と輝里のその後のお話です。

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2010-06-17 10:56:20 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:28199   閲覧ユーザー数:23565

 

 「五斗米道?」

 

 「うむ。漢中を拠点にし、張魯という者を教祖とする、一種の宗教団体みたいな組織なんだが、彼らは医者の集団でもあるんだ」

 

 華雄の言葉を静かに聴く、一同。

 

 ななしが死んで、并州の乱を収めた一刀たちは、すぐに晋陽へと入城し、丁原を医者に見せた。

 

 しかし、その医者の答えは絶望的なものであった。

 

 ななしが使った薬はケシの一種と思しきものに、様々な薬草を混ぜ合わせた、新種の薬であるらしく、普通の医術では、延命が精一杯だということだった。

 

 それを聞いた呂布の落胆は相当なものだった。

 

 寝台に横になる母の手をしっかりと握り締め、涙を流すその姿に、皆言葉を失った。

 

 そのとき、華雄がふと思い出した。

 

 以前、華雄の主君である董卓の父親が重い病にかかったとき、それを助けた医者が話していたことを。

 

 それが五斗米道である。

 

 「彼らならば、もしかしたら丁原殿を救えるかもしれん」

 

 「・・・おかあさん、助かる?」

 

 母の手を握っていた呂布が、華雄の言葉に反応し、振り向く。

 

 「・・・可能性、というだけだが。どうだろう、劉翔。よければ私が使者を務めようか。どのみち雍州へ向かうのだし、少し遠回りになるだけだしな」

 

 「そうだね。・・・それなら、丁原さんを長安に連れて行ってくれないか?」

 

 「長安に?わざわざ病人をか?」

 

 「うん。ここでは満足に薬も手に入らないし、何より、漢中にも近いしね。あそこで太守をしている櫨植先生なら、良くしてくれる筈だよ」

 

 「なるほど、櫨植先生なら、頼りになるはずだな」

 

 一刀の言葉に同調する白蓮。

 

 「うん。どうだろう、頼めるかな、華雄さん」

 

 「むろんだ。私に任せておけ。無事に長安まで送り届けて見せよう」

 

 胸を張る華雄。

 

 「呂布さんも、もちろんお母さんについて行くだろ?」

 

 こく、と。うなづく呂布。

 

 そして、じ、と。一刀を見つめる。

 

 「何?」

 

 「・・・恋、でいい」

 

 「え?それって・・・。いいの?真名だろ?それ」

 

 「・・・ん。劉翔、おかあさんのこと、本気で悲しんでくれた。劉翔、いい人。だから、恋の真名、呼んで良い」

 

 「そっか。・・・なら、俺のことも一刀って、呼んでくれて良いよ」

 

 「・・・ん、一刀」

 

 ぴこぴこと、なぜか動く頭の触覚?のような髪。そして、満面の笑顔。

 

 (か、かわいい・・・///)

 

 その場の全員が、一瞬で堕ちた瞬間だった。

 

 その翌日、丁原と呂布を乗せた馬車とともに、華雄は旅立っていった。

 

 一刀たちは、とりあえずの代理ということで、都から新しい太守が来るまでの間、白蓮の妹である公孫越、水蓮に晋陽を任せ、幽州へと帰還の途についた。

 

 

 

 一刀たちが幽州に戻って来たその日。

 

 「じゃあ、荊州に戻るんだ」

 

 「うん。黙って出てきちゃったらちょっと怖いけど、今はあそこが私の家だもん」

 

 輝里はにこやかに言う。

 

 輝里の処遇については、晋陽にいた時にすでに決していた。つまり、

 

 無罪放免。

 

 実際に乱を仕切っていたのは、あのななしであるし、劉虞を斬ったのもななしだ。輝里自身は、結局何もしていないのである。

 

 罪に問う理由がなかった。

 

 これは全員が一致した見解であった。

 

 ただし、それを言い渡したとき、喜びのあまり、輝里が一刀に思い切り抱きついたのだが、その瞬間、桃香と愛紗が凄い顔をしてはいたが。

 

 輝里がそれを見て舌を出していたのは、さすがに誰も気づいていなかった。

 

 「先生のところに帰ったら、もっともっと勉強して、いつか必ずカズくんの力になりに来るよ。だから、それまで待っててね」

 

 「ああ、もちろん待ってるさ。次に会うときまで、元気でな」

 

 「うん!!・・・で、カズくんにお願いなんだけど」

 

 「なに?」

 

 一刀の顔を見上げ、輝里の口から出た言葉は、

 

 「今度会ったら、輝里をカズくんのお嫁さんにしてね」

 

 爆弾発言。

 

 さらに、一刀に近づいた輝里は一刀のほほに、

 

 ちゅっ!

 

 と、口付けをした。

 

 「んな?!」

 

 「ふえ?!」

 

 「な!!」

 

 「はにゃ!!」

 

 「なんだと?!」

 

 それぞれの反応。

 

 「えへへ。約束だよ!じゃあね!!カズくん!!みんな!!元気でね!!」

 

 そう言って、走り去る輝里。

 

 後に残されたのは、呆然とする一刀、鈴々、白蓮、そして。

 

 「・・・おにいちゃん」

 

 「義兄上・・・・・」

 

 背中に何かを背負った桃香と愛紗。

 

 「ま、待てこら輝里!!おまえ!!なんて置き土産を!!」

 

 はた、と一刀が背後の気配に気づく。

 

 ぎぎぎぎぎぎ、と。首を後ろに回す一刀。そこにいたのは。

 

 「グオンノスエッスオナシガーーーーーーーー!!!!!」

 

 「ドゥウェンヂュウーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 「ぎゃああああああああああああ!!!!!」

 

 「・・・・一刀、ご愁傷様。安らかに眠れ」

 

 走り去る一刀と桃香、愛紗を手を合わせて見送る、白蓮と鈴々であった。

 

 

 

 それから、約半年後。

 

 久々に北平に集まった一刀たちは、長安の恋から送られてきた手紙に目を通していた。

 

 「よかった。丁原さん、少し持ち直したそうだよ」

 

 「ほんとに?!よかったあ」

 

 「呂布も元気でやってるようだな」

 

 「また手合わせしたいのだ」

 

 手紙の内容に、皆がほっと、胸をなでおろした、そのときだった。

 

 「一刀!!桃香!!公孫賛殿!!大変です!!」

 

 突然部屋に飛び込んでくる、女性。

 

 「五月さん、どうしたんですか?楼桑村にいたんじゃあ」

 

 それは、楼桑村で留守番をしているはずの五月、簡雍だった。

 

 「それどころではありません!!都からの急使です!!」

 

 それは、驚天動地の知らせだった。

 

 

 

 

 

 

 漢、十二代皇帝・劉宏、崩御。

 

 大陸は、動乱の時へと、確実に歩み出し始めていた。

 

 

 

 

 


 
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