No.151958

真・恋姫無双 刀香譚 ~双天王記~ 第九話

狭乃 狼さん

刀香譚九話をお送りします。

霊帝の死と、そこから始まる事件。

連合編の開幕です。

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2010-06-20 16:36:36 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:28498   閲覧ユーザー数:23580

 後漢十二代皇帝劉宏が崩御した洛陽では、次期皇帝をめぐり、二つの勢力が対立していた。

 

 長子である劉弁を推す、大将軍何進派と、次子劉協を推す十常待派である。

 

 互いに相容れない両者であったが、その思惑だけは一致していた。

 

 自らが朝廷を牛耳る。

 

 故に、劉弁にも、劉協にも、皇帝としての器量があるかどうかは、何進も十常待も考えていなかった。

 

 いや、興味すら無かった。

 

 そして、ついに十常待が強硬手段に出た。

 

 何進の妹である何太后の名を使い、何進を宮中に呼び出して殺害したのである。

 

 ところが、それを聞きつけた何進派の将軍であり、長安の太守を務める櫨植の手引きで、劉弁・劉協の二人は洛陽を脱出。長安へと逃れたのである。

 

 二人を保護した櫨植は、旧来の付き合いである涼州の董卓、馬騰の二人に援兵を以来。

 

 これを受けた董卓と馬騰はすぐさま、長安に入り、二人の皇子を伴って、洛陽へと兵を進めた。

 

 十常待とその一派のものたちはほとんどが、彼らによって粛清されたが、十常待の筆頭である張譲はその行方をくらませていた。

 

 その後、十三代皇帝に即位した劉弁は、先帝である父に霊帝の号をおくり、董卓を相国、馬騰を大将軍に任じた。また、櫨植は車騎将軍に封じられた。

 

 こうして、大陸の情勢は落ち着いた。

 

 かに見えたのだが。

 

 

 劉弁が皇帝に即位して半月ほどした頃、大陸にある噂が流れ始めた。

 

 曰く、

 

 「相国たる董卓と、大将軍馬騰は、皇帝を傀儡とし、洛陽にて暴政をおこなっている」

 

 と。

 

 この噂にすぐさま反応したのが、冀州の袁紹だった。兗州の曹操とともに各地に檄文を飛ばし、董卓、および馬騰討伐を諸侯に呼びかけたのである。

 

 そしてその檄文は、一刀たち幽州勢にも届けられた。

 

 「さて、と。麗羽からの檄文だが、これにどう対応するか、みなの意見を聞きたい」

 

 北平の会議の間にて、幽州の牧に就任した白蓮が、同席する一刀たちを見渡す。

 

 并州の乱後、朝廷から死亡した劉虞に変わって、白蓮を牧に任じるとの通達があった。

 

 しかし、白蓮は一刀の方こそその位にふさわしいと、一度は辞退した。

 

 だが、その一刀本人が、

 

 「おれはそんな器じゃないよ。それにこれは勅命だろ?・・・素直に拝命しときなよ」

 

 と、笑顔で言ったのである。

 

 その笑顔に、逆らえるものなし。

 

 こうして、白蓮が幽州の牧に就任した。

 

 「・・・正直、俺も迷ってる。噂を確認するために放った細作も帰ってこないしな」

 

 一刀が白連に言う。

 

 「各地の諸侯の反応は?」

 

 「南陽の袁術に、呉の孫堅、徐州の陶謙、青州の孔融といったところが、参画を決めたそうです」

 

 そう答えるのは愛紗。

 

 「・・・つまり、洛陽の情勢だけが、掴めないということか」

 

 腕組みをする白蓮。

 

 「どうするの、白蓮ちゃん」

 

 「そうだな・・・」

 

 

 

 「なあ、白蓮。董卓さんのところには華雄さんが居たよな?」

 

 「ああ。・・・けど、それだけで判断するのもな・・・」

 

 「華雄どのを信じて西涼勢に付くのは、私心でしかないと思いますが」

 

 五月が言う。

 

 「簡雍の言う通りだと思うが?」

 

 「いや、ここはあえて私心優先でいいかもしれない」

 

 「義兄上?」

 

 「確かに私心で動くのは、将としてはあまり褒められたものじゃない。けど、それはあくまで、『普通の場合』ならだ」

 

 「どーいうことなのだ?」

 

 鈴々が首をかしげる。

 

 「二つほど気になることがあるんだ。ひとつは、例の噂が流れ始めた時期と、それが大陸中に行き渡るまでの時間。・・・あまりにも早過ぎる」

 

 「誰かが意図的に流したってこと?」

 

 一刀の言葉に桃香が反応する。

 

 こくりと頷く一刀。

 

 「もう一つは?」

 

 「・・・華琳だ」

 

 

 

 「華琳?なんでそこで華琳の名が出てくるんだ?」

 

 突然、一刀の口から出てきた友人の名に、困惑する白蓮。

 

 「確かに、麗羽なら噂の真偽なんて気にもせず、自分が名声を得られると考えたら、すぐに飛びつくのは納得できる。けど」

 

 「華琳ちゃんなら、そんなに短絡的じゃあない、ってこと?」

 

 「ああ。・・・何か知ってるのかもな」

 

 「噂を流した本人だったりとか?」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 水蓮の一言に無言になる一同。

 

 「あ、あれ?なに?あたい、もしかして的を射ちゃった、とか?」

 

 自身の発言の意外な結果に戸惑う水蓮。

 

 「ごほん!!まあ、それはともかくとして、だ。白連、今回は親友を信じてみたらどうかな?」

 

 「そうだな。・・・よし!私たちは西涼勢に付く!!兵三万でもって明朝出発。留守は水蓮と簡雍に任せる」

 

 「あいよ」

 

 「は。御武運を」

 

 そろって拱手する水蓮と五月。

 

 「一刀、桃香、愛紗と鈴々は私とともに洛陽へ。期待してるぞ、四人とも」

 

 「了解だ」

 

 「まっかせといて!」

 

 「ご期待に応えましょう」

 

 「鈴々に任せるのだ!!」

 

 

 

 それから数日後。

 

 汜水関近くに陣を張る、反西涼連合の本陣。

 

 「おーほっほっほっほ!!それでは不詳この私が、連合の総大将を務めさせていただきますわ!!」

 

 (おーおー、嬉しそうに)

 

 赤い髪に褐色の肌の女性、孫堅が、周りに聞こえない程度の声でぽつりと言う。

 

 「ところで華琳さん?一刀さんと白連さんはまだ到着しませんの?」

 

 長い縦ロールの髪に、無駄に豪華な鎧の女性、この連合の発起者である袁紹が、金髪の少女、曹操に問いかける。

 

 「・・・まだよ。そろそろだとは思うんだけど」

 

 「本当に来るのかね?その劉翔とやらは」

 

 水色の装束の男が曹操に問う。

 

 「・・・来るわ、必ず、ね」

 

 (そう、一刀は必ず来る。あの正義感の塊のような兄妹なら、民が悪政に苦しんでいると聞けば、それを捨て置く筈が無い)

 

 曹操はそう確信していた。

 

 (子供の頃から、あの二人はそうだった。ちょっとでも困っているものが居れば放っておけない。それで何度、人助けに付き合わされたことか)

 

 「しかしだ。幽州の田舎軍など、居ても居なくても大して変わるまいに。とっとと汜水関攻めを開始すべきでは?」

 

 その場に居る最後の一人、緑色の装束の男がそう意見する。

 

 そこへ。

 

 

 

 「申し上げます!!」

 

 天幕の外から、兵士の声が聞こえてきた。

 

 「何事ですの?今は軍議の最中ですわよ?」

 

 (軍議だったのか、これ)

 

 と、袁紹以外のものたちが思う中、兵士が報告を続ける。

 

 そしてその報告を聞いた途端、袁紹と曹操は愕然とした。

 

 「汜水関に新たな旗が揚がりました!!蒼地に劉の牙門旗です!!」

 

 「・・・なんですって?」

 

 「ど・・・どういうことですの?!」

 

 「なんじゃ、待ち人は敵方に付いたか。・・・振られたようだな、ふたりとも」

 

 かっかっかと、大声で笑う孫堅。

 

 (・・・一刀。そう、そうまでして私を拒むの。・・・あの時のように)

 

 肩を震わせる曹操。

 

 (・・・いいわ。なら力ずくで手に入れてあげる。この曹孟徳。欲しいものは必ず手に入れて見せる。・・・必ず、ね)

 


 
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