No.149797

真・恋姫†無双‐天遣伝‐(4)

多くは語りません。
少しづつ内容は伸びていっているような気がしないでもありません。

では行きます。

2010-06-11 22:26:04 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:13064   閲覧ユーザー数:9396

・Caution!!・

 

この作品は、真・恋姫†無双の二次創作小説です。

 

オリジナルキャラにオリジナル設定が大量に出てくる上、ネタやパロディも多分に含む予定です。

 

また、投稿者本人が余り恋姫をやりこんでいない事もあり、原作崩壊や、キャラ崩壊を引き起こしている可能性があります。

 

ですので、そういった事が許容できない方々は、大変申し訳ございませんが、ブラウザのバックボタンを押して戻って下さい。

 

それでは、初めます。

 

 

 

 

真・恋姫†無双

-天遣伝-

第三話「●馬」

 

 

 

西涼、涼州連合筆頭馬騰の居城の庭では、朝から剣戟の音が響いていた。

 

その音の主は、降臨してから一週間が経った今でも未だ『天の御遣い』では無い北郷一刀と、馬超-翠であった。

 

 

“ガキィン!”

 

「あっ!」

 

「ふぅ・・・これで俺の五戦四勝一敗、と」

 

 

銀閃を空中高く跳ね上げて、暁を翠の首筋に当てる一刀。

最も峰だが。

 

悔しそうに項垂れる翠。

一方、一刀は苦笑い。

 

それもその筈。

さっきから、薄氷を踏む様な勝利ばかり。

恐らく次からは勝てないだろう。

それが、一刀の嘘偽らざる感想だ。

 

 

「あはは、お兄様強いね~。

天の国では一騎当千の将だったりして」

 

 

庭に設置されたベンチから笑い掛けるのは、この国の将の一人、馬岱。

その真名を蒲公英(たんぽぽ)と言う。

 

翠とは従姉妹同士だが、何故か翠の事を「お姉様」と呼び慕っている。

その様子に、一刀はフランチェスカでの事を思い出して、危ない百合な関係かと勘繰ったりした。

まあ、実際にはそんな事は無く。

単純に実の姉妹の様に仲が良いだけ、だと解ったのだが。

 

話を戻す。

 

蒲公英の言葉に、一刀は再び苦笑い。

 

 

「そんな事は無いよ、寧ろ俺の居た世界―天の国では、戦いが起こる事の方が稀なんだ」

 

「えぇっ!? そんな国があるのかよ!?」

 

「ホントだよ。

最も全世界、羅馬とかの辺りまで視野を広げると、流石に戦争は起こっている場所はある。

けど、少なくとも俺の周囲ではそんな事は起きてはいないよ」

 

「へ~」

 

 

身を乗り出しながら、一刀の話を聞く二人。

翠は真剣な表情を浮かべながら、蒲公英は目をキラキラさせながら。

 

 

「じゃあさ。

お兄様ってそんな平和な国で暮らしてたのに、態々たんぽぽ達の為に此処に来てくれたの?」

 

「・・・・・・ああ、そう言う事になるのかもな」

 

 

目を変わらずにキラキラさせながら近付いてきた蒲公英の頭を優しく撫でながら、蒲公英の言葉を肯定する一刀。

 

 

「―――待ってくれ」

 

「どうしたの、お姉様?」

 

 

どこか、厳しそうな表情を浮かべる翠に、違和感を覚える蒲公英。

自分の大好きな姉は普通こんな顔はしない。

 

 

「そんなに平和な国で暮らしてたんなら・・・もしかして、北郷は『人を討った事が無い』んじゃないか?」

 

「・・・えっ?」

 

 

翠の言葉に驚いたのは、蒲公英だけだった。

一刀は、至って平静に一度頷いただけ。

 

これには二人共驚愕した。

自分達よりも強い武人である一刀が、自分達とは違い、まだ一度も人を殺めた事が無いと言うのだ。

 

蒲公英は、それを「相手を殺す必要も無いと感じられる程、強い」のだと思い。

逆に翠は、それを「相手を殺す機会を一度も得る事が出来なかった」のだと思い。

しかし二人は、その両方ともが間違いであるとは気付かない。

 

一刀は優しい。

それも、この大陸の現状を見れば、間違い無く『甘い』と評される様な優しさだ。

だが、それが武器になる。

そんな一刀が、人を殺す。

これは如何な事態を引き起こすのか。

 

馬の姉妹はまだ何も知らない。

 

 

 

 

 

 

「暇だ」

 

「母者、せめてこの書簡全てを片付けてから、そのような戯言は吐いてくれ」

 

「休の言う通りよ、碧。

貴女が目を通さねばならない案件は、それこそ山の様にあるんだもの」

 

 

所変わって、ここは西涼太守馬騰―碧の執務室。

 

執務用の机に突っ伏している碧を尻目に、スラリとした美貌の長い茶髪と眉毛を有する美青年と、朔夜がせっせと書簡を片付けていく。

 

この美青年、名を馬休と言う。

碧の三人いる子供の一人で、長男。

翠の弟の一人でもある。

 

碧は机に体の殆どを預けながら、休と朔夜から送られてきた書簡に嫌々ながらも目を通し、必要項目を書き込んでいく。

その動きは限りなく鈍い。

 

 

“ドタドタドタ・・・・・・バタァーン!!”

 

 

急に執務室の扉が開け放たれる。

その光景に、碧は眼を光らせ、朔夜は頭を抱え、馬休は大きな溜息を吐く。

 

そこにいたのは、茶のツンツンした頭髪と眉毛を持つ、見るからに元気が有り余っていそうな青年。

ただし、何故か馬の蹄の痕が顔の中心にあったり、全身が泥だらけになったり、しているが。

 

 

「お袋! すぐに来てくれ、十年、いや百年に一匹いるかいないかの最高の馬が!!

活きも良いんだ! 見てくれよ、この蹄の痕! ほぼイきかけたぜ!!」

 

 

馬鉄。

馬休の弟。

馬三姉弟の末子である。

 

鉄の報告に、碧は口元を大いに歪ませる。

政務をさぼる口実を得た喜びと、馬と共に生きる涼州の武人としての喜びが混在した笑顔だ。

 

 

「碧、政務を先に終わらせて頂戴。

(まあ、無理でしょうけど)」

 

 

諦めを抱きながらも、一応引き止めようとする朔夜。

因みに、その間も手は止まっていない。

 

当然、予想通りに碧は止まらない。

 

 

「何を言ってる!?

涼州の武人にとって、馬とは一心同体の相棒なんだぞ!

それに、あたし等の姓を忘れたかい?

あたし等は『馬』一族。

他の何者よりも、馬と共に生きてきた一族なんだ!!

良き馬との一期一会を邪魔されてなるもんかい!!」

 

「ハァ~、そうよね。

貴女はそういう人なんだもの。

いいわ、貴女の仕事は残して置いてあげるから、とっとと行ってらっしゃい」

 

「え゛?」

 

 

朔夜の妥協しない宣告に固まる碧。

しかし、これで諦める様な馬寿成では無く。

 

 

「むむむ・・・休! 都で流行ってるらしい新品の艶本!」

 

「足りんな、もう一声」

 

「ぐぬぬ・・・しょうがない!

諸葛子瑜の新作八百一本を追加するのでどうだ!?」

 

「しょうがないな、母者は。

任された、やっておこう」

 

「休ーーー!!!!!」

 

 

艶本と八百一本にあっさりと釣られた休を、声を大にして叱り付ける朔夜。

 

だが、碧と鉄はあっと言う間にその姿を消しており、休は黙々と書簡を片付けていく。

 

朔夜は頭を抱えざるを得ず、大きな重い溜息を吐きながら書簡を再び手に取った。

 

 

「碧、鉄、後で覚えてなさい・・・・・・」

 

 

怨念が籠った声で、呪詛を吐く朔夜。

 

 

「母者はともかく、鉄は多分喜ぶと思うが」

 

「―――――ハァ・・・・・・」

 

 

溜息しか出ない朔夜であった。

 

 

 

 

 

 

所変わって、此方は厩。

碧と鉄は、例の名馬を見にここへ来ていた。

 

 

「ほほう、本当に良い馬だね」

 

「だろ?」

 

 

感嘆の声を上げる碧に、誇らしげな鉄。

 

二人の眼前に居るのは、真っ白な体躯を持つ馬。

現大陸に存在する馬と比べれば、かなり大きい。

それこそ、碧の愛馬『黒鶯(こくおう)』とタメを張れる程に。

 

しかし、碧と鉄を見る目はとてもではないが友好的とは言い難い。

『それ以上近付けば蹴り殺す』とでも言わんばかりの力を籠めて、二人を睨んでいるのだ。

 

これには、二人揃って落胆せざるを得なかった。

折角の名馬なのに、人を乗せる事が出来ないのではどうしようもない。

 

 

「あー、黒鶯も最初反抗的だったけど、こいつはその上を行くねー」

 

「勿体ねぇなぁ・・・どうする?」

 

 

考え込む二人だが、突然碧が何かを閃いた様に、手を叩く。

 

 

「鉄、こいつの性別どっち?」

 

「え? 雌だけど?」

 

 

碧が何を言っているか理解出来ない鉄。

それもそうだろうが。

 

 

「よし! スゥ~~~たんぽぽ―――!!!!!」

 

 

いきなり大声で叫ぶ碧。

鉄は余りの音量に、耳を塞いでのた打ち回る。

その表情がどこかウットリしているのは、気にしてはいけない。

 

 

「ここにいるぞー!!」

 

 

これまた大声で、近くにいきなり現れる蒲公英。

しかし、それを気にした様子も無く。

 

 

「たんぽぽ、一刀と翠を呼んできな! 大至急だよ!!」

 

「は~い!」

 

 

そう言って、駆けていく蒲公英。

碧はそれを見送ってから、鉄の首根っこを引っ掴んで強引に立たせる。

 

 

「くはっ、お袋もう少し優しくしてくれても」

 

「心にも無い事言ってんじゃないよ」

 

 

ばっさりと切り捨てる。

二人は、蒲公英が一刀と翠を連れて来るのを暫し待つ。

 

暫くして。

二人を引っ張ってきた蒲公英。

 

 

「おいたんぽぽ、だから一体何の用なんだよ」

 

「だから、鉄兄ちゃんと伯母様が説明してくれるってば」

 

「やれやれ」

 

 

碧は満足気に一度だけ頷き。

 

 

「翠、ちょっとこっちに来な」

 

「? 何だよ」

 

 

翠を手招きし、白馬の前に押し出す。

 

 

『ブルルルルル!!』

 

「うわっ! びっくりした!!」

 

 

白馬は即座に威嚇し、翠は身の危険を感じ飛び退く。

同時に、翠はこの馬を自分に見せたかったのだという、母と弟の意思を理解した。

しかし、それとまた同時に、この馬とは解り合えないとも感じていた。

 

 

「あちゃー、翠も駄目か」

 

「伯母様伯母様、たんぽぽは?」

 

「鉄で無理だったんだから、あんたは最初っから駄目だと思ってる」

 

「酷い!?」

 

「アーアー、聞こえない。

・・・さて、と」

 

 

一刀を見、翠にしたのと同じ様に手招きをする碧。

一刀は苦笑しながら、それに応じた。

 

 

 

 

 

 

一刀が、白馬の前に立つ。

翠は一刀を止めようとして、碧の指示で蒲公英と鉄に止められていた。

皆が固唾を飲んで見守る中。

遂に一刀が白馬の攻撃範囲に入る。

 

翠は声にならない悲鳴を上げ、惨劇を予感して目を閉じた。

 

 

『ブルルルル・・・・・・・・ヒヒン♪』

 

「うわっ、くすぐったいな、もう」

 

「へ・・・?」

 

 

しかし、閉じた瞼の裏の暗闇に聞こえたのは、一刀の頭蓋が蹴り砕かれる音では無く。

嬉しそうに嘶く白馬と、至極普通な一刀の声。

 

恐る恐る目を開けて見れば、一刀の顔を愛おしそうに、丹念に嘗める白馬の姿。

そして、じゃれ付かれてくすぐったそうに、嬉しそうに白馬の首を撫でる一刀。

 

その光景にホッとすると同時に、翠の殺意に灯が灯る。

 

 

「「ヒィッ!?」」

 

 

翠を抑えていた蒲公英と鉄からしてみれば、堪った物では無い。

だが翠からしてみれば、怯える弟と従妹の事等どうでもいい。

 

白馬は一刀の顔を丹念に嘗めていた。

そう、「唇」の辺りさえをも丹念に。

 

何処からともなく取り出した銀閃を構え、”ザッザッ”と殺気を全開にして白馬に歩み寄る。

 

その姿は、修羅か、鬼神か。

下手をすれば、現大陸最強かもしれないと、鉄はその姿に感じた。

 

殺気に気付いた一刀は、その余りにも濃い殺意にたじたじになり、白馬は翠をこれまた濃い殺意でもって威嚇する。

 

二人の距離が後少しで一撃必殺の間合いにまで縮まる瞬間。

 

銀の閃光が奔った。

その閃光は、翠の持つ銀閃の丁度刃の中心を衝いて、翠毎吹っ飛ばした。

 

それを行ったのは、『極一閃』を構えた碧。

その顔には、怒りの表情が浮かぶ。

 

そのまま倒れている翠に歩み寄り、拳骨を作った左拳を翠の脳天に振り降ろした。

 

 

「こんっの、バカちんが!!」

 

 

そんな言葉と一緒に。

 

 

“ゴォン!!”

 

「あ痛っ!」

 

「翠、少し頭を冷やせ。

涼州の武人にとって、良き馬と良き武人の出会いは祝福こそするべきだが、嫉妬するのはお門違いにも程があるってもんだよ!!」

 

 

そのまま説教。

ガミガミと碧の口から言葉が飛び出す毎に、さっきまでも姿が嘘のように、翠が小さくなっていく。

 

その光景を見る一刀は苦笑。

白馬はいい気味だと言わんばかりに『ヒヒン』と一度嘶いたのだった。

 

 

 

―――翠への説教が終わり、碧は白馬の攻撃範囲外から一頭と一人を見る。

 

何せこの白馬と言ったら、一刀以外を一定範囲内には入れようとしないのだ。

まるで、思い人に寄り付く他の女を寄せ付けたがらない、嫉妬深き女のそれだ。

 

 

「(流石天然女殺し。

あたしや翠に飽き足らず、雌馬にまで好意を抱かせるとは恐れ入る。

物は試しと思っていたけど、まさかだね~)

しかし・・・こうなった以上、その馬は一刀の愛馬にするしかないね」

 

「ええっ!?」

 

「姉貴、往生際悪いぜ?」

 

「そうそう、でも凄いね。

お兄様、そういう星の下に生まれたのかな?」

 

 

未だに白馬の首を撫でながら、一刀は本日何度目とも分からない苦笑を漏らす。

因みに、白馬は気持ち良さそうに目を細め、一刀の成すがままになっている。

 

それを見ている翠は、今にも血涙を流さんばかりの形相で白馬を睨んでいるが、女心にとても疎い一刀には全く届かない。

 

 

「よし、そうと決まったら、名前を付けよう!」

 

「言い出したって事は、いい案があるんですね?」

 

「なんだつまらん、こういうのは先にお前等が変てこな名前出して、それをあたしが後から良い名前出して呻らせて、納得させるってのが常なのに」

 

「何そのお約束のネタ振り。

(やっぱりこの人達、どこか感性が現代じゃないか?

服とかも、この時代と比べると明らかにオーパーツのレベルだろ)」

 

「まぁまぁ、で、だ。

そいつの名前は、『白澤』でどうだ?」

 

「白澤・・・確か、徳の高い為政者の治世に姿を現す神獣、でしたっけ?」

 

「そうそう、『天の御遣い』のお前には丁度いいだろう?」

 

 

そう言って、ニヤリと口元で笑みを形作る碧。

 

一刀は一度頷いてから、白馬に向き直る。

 

 

「お前は、それでいいか?」

 

『ブルル・・・ヒン”コクリ"』

 

 

首肯する白馬。

この瞬間より、白馬は『白澤』と名を変え、『天の御遣い』北郷一刀の愛馬となったのである。

 

 

 

 

第三話:了

 

 

 

 

 

オリジナルキャラ紹介

 

 

名前:馬休

武器:蠍尾

設定:馬超の弟にして、馬騰の長男。

  涼州では珍しい文官であり、普段は朔夜と共に政務全般を取り仕切っている。

  ただし、武官としての質も高く、乗馬能力は当然高い。

  クールな性質だが、ぶっちぎりのオープンスケベで、華佗と並ぶ残念な色(モノ)男。

  カミングアウトしたバイであり、一刀の相棒の座を虎視眈々と狙っている・・・アッー!!的な意味で。

  愛読本は、諸葛瑾謹製の八百一本と、艶本。

  自室に隠す事も無く、堂々と本棚に置いてある。

  一刀の事は、一殿と呼んでいる。

 

 

名前:馬鉄

武器:斬空

設定:馬超と馬休の弟、馬騰の次男で末子。

  武官しか出来ない脳筋。

  ただし、馬や武器の良い場所が一瞬で解る、驚異的な勘を持つ。

  凄まじいまでのドM。

  翠にしごかれている蒲公英や、朔夜のトラウマ級のお仕置きを受ける翠や碧を羨ましがる位。

  馬に轢かれて恍惚の表情が出来る。

  しかも、本人はドMである事を隠そうとしない。

  また、大喰らいであり、呂布と互角位の食欲を有する。

  一刀の事は、兄貴と呼んでいる。

 

 

 

 

 

 

後書きの様なもの

 

 

時間はかかったのに、クオリティは上がっていない。

どういうことなの・・・

 

とまあ、そうぼやいた所で、今回はレス返しもします。

 

 

sink6様:男女構わず惚れられる一刀のカリスマの証明+一刀にも弟分が欲しかったんじゃ!・・・それが理由です。

 

はりまえ様:ネタバレになりますので多言は出来ませんが、華佗は登場します。

 

おやっと?様:と言う訳で出しました、貴方の好きな蒲公英かどうかは、其方の判断にお任せします。

 

 

さてさて、中々前に進まない物語ですが、次回は一刀の初陣を書こうかと思っています。

 

お楽しみいただければ、言う事無しです。

 

ではまた次回!!

 

 


 
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