緒戦の攻防から五日ほどの時間が流れた
緒戦で大敗を喫した連合軍はその兵力の大部分を担う袁紹、袁術の軍の損害が甚大であり、その建て直しに追われていた為その間は大した攻防戦をする事ができずにいた
大して董卓軍は殆どの損害を出さずに戦闘を終えていたため士気が高く、小規模な小競り合いにも快勝をしていた…
汜水関近くの平原
連合軍が董卓軍より奪った汜水関は連合軍の補給線の重要拠点となっていた
その関の近く、しかし関より見づらい位置にある平原に五千を超える旗を掲げていない騎馬の隊が、隠れながらも関を伺っていた
「…よし、奴等は虎牢関で足止めを食ってるみたいだな」
その旗のない騎馬隊を率いるポニーテイルの少女が言う
自分たちの、そしてここではない所で戦っている仲間達の作戦がうまく言っている事を確信したのかその顔には満面の笑みが浮かんでいる
「今が好機だね、お姉さま」
その少女を少し幼くした感じの少女も笑みを浮かべながら言う
「ああ…よし、お前等!!一刀たちにあの時の借りを返すぞ!!全軍、進めー!!」
少女たちは汜水関に向かう敵の部隊に向かって突撃していった…
連合軍天幕
「きぃー!悔しいですわ!!」
軍議の席で悔しがる袁紹
この数日間、毎日こんな様子なので周りの諸侯も辟易していた
「…やはり、総大将たるこの私が直接手を下したのが間違いでしたわね。総大将たるもの、後ろで皆を華麗に指揮することに専念するべきでしたわ…というわけで、今度の先陣は劉備さん、孫策さん、華琳さんにおまかせいたしますわ」
「うむ、それがいいと思うのぢゃ。後曲はわらわと麗羽姉さまに任せ、存分に戦うが良いぞ!」
袁紹、袁術が好き勝手に言う
「待ってください!先陣って言ってもどうやって攻めろって言うんですか!?」
このままでは良い様に使われてしまう事を危惧してか、劉備が必死に反論する…だが袁紹はフンっと鼻で笑って答える
「そんなものは決まっていますわ。連合の名にふさわしく、華麗で優雅に攻めるのですわ!!…嫌とは言いませんわよね?」
そういって劉備を睨みつける
連合内で立場が弱い上、それを庇ってくれていた公孫瓚がいないため、劉備はその言葉に反論できず、孫策も袁術から支援を受ける立場の客将なので言いたい事もいえず、ただ二人を睨みつけていた
しかし、今度ばかりは他人事ではない曹操がその話に割ってはいる
「ちょっと待ちなさい。自分は総大将として指揮に専念するからといって後ろに引っ込んでおいて華麗で優雅に攻めろですって…?そんなものは指揮でも何でも無いじゃない。私たちだけに関を攻めろと言うのならもっとマシな策を提示出来るようになってからにする事ね」
曹操の強い口調に押される袁紹
「うぐぐ…!このクルクル小娘は…!…まあいいですわ、策というのなら…」
「申し上げます!!」
袁紹が何か言おうとしたところで伝令が飛び込んでくる
「ええい!うるさいですわよ!!いったい何なんですの!?」
「はっ!一大事でございます!!後方の汜水関に謎の騎馬隊が出現!!我々の兵糧を根こそぎ焼かれてしまいました!!その後も騎馬隊は次々と我らの兵站を潰して回っています!!」
「な、なぁんですってーー!!」
驚愕の連絡に驚く袁紹
「…やられたわね。恐らくそれは董卓の味方でしょう。連合軍の泣き所である補給線を攻めて来るなんて…!!」
「こ、こうなったら汜水関に戻り、その騎馬隊を…」
「そうしたら奴等は、虎牢関から打って出て我々の後ろを強襲するでしょうね。だからといってこのまま虎牢関を攻めあぐねていたら我々の兵糧がなくなる…だからいったでしょう。やられた、と」
曹操がやれやれと首をすくめる
「じゃ、じゃあどうしろって言うんですの!?」
「だからいってるでしょう?私たちの兵糧が尽きるまでに虎牢関を落とす…それが出来なければ我々の負けよ」
「…き、キィーー!!なんて事ですの!!」
連合の天幕には、袁紹の金切り声だけが響いた…
「連合軍に潜んでいる物見より伝達!汜水関及び連合軍兵站部隊を謎の騎馬隊が強襲!!奴等は動けずにいるとのことです!!」
「翠たちがやってくれたな…!予想より全然早いぐらいだ!」
伝令を聞いた俺は嬉しさを抑えきれずそう呟く
これで奴等は補給がままならなくなりこちらを落とそうと躍起になるだろうがそれを凌げば奴等は自滅していくだろう
もし敵が俺たちに背を向け、翠達に当たったらこちらが打って出て追撃すればいい
「やったのですな!!一刀!!」
ねねが嬉しそうに俺に話しかけてくる
「ああ!…洛陽に伝令!我々の策は成った!!これより本格的に篭城して逆に連合を追い詰める!!」
「はっ!!」
月と詠のところに伝令を送る
「皆!!勝利は目前だ!!気を抜かずにこの戦いを乗り切るぞ!!」
「「「おおーー!!」」」
こうして俺達の士気は最大限に上がり、誰もが勝利を確信していた…
洛陽
「月!!虎牢関から伝令よ!!一刀たちうまくやったみたいだわ!!」
「本当!?やったね詠ちゃん!」
洛陽では月と詠が長安に移動するため準備を進めていた
最早洛陽の住人は全員長安に移動を開始しているのだが、それも無用だったかと詠は思う
「まあでも、洛陽より長安の方が防衛には向いているし、帝がいない今、ここに固執する必要もないわ。このまま移動の作業を進めましょう」
「うん、一刀さんたちが帰ってきたら一緒に長安へ帰れるよう頑張って準備しないとね!」
そういって作業に戻る二人だったが、その話を盗み聞きしていた影に気付く事は出来ずにいた…
「…冀州にいる張譲様に伝えろ。連合軍が頼りにならないため、洛陽に潜ませてある兵を使い董卓の首を取る」
「はっ!」
洛陽の都ではまだ、陰謀が渦巻いていた…
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董卓軍IF√第十三話です
今回は少し短めです
誤字脱字、おかしな表現等ありましたら報告いただけると嬉しいです