第一〇章「隠密」
一刀と雫は街のとある店に向かっていった。
その店の中では、昨日仲間になった楽進達がいた。
「ごめんごめん。遅くなった」
「いえ、私達も今さっき付いたばかりです」
「隊長。気にしなくていいの~」
「せやで、ほんまはうちらがせなあかんのを無理言ってやってもろてんやから」
「お兄ちゃん。この人達が昨日仲間になった人達なの?」
「そうだよ。ええ~とこの子は、俺の仲間の」
「雫の名はね蔡琰。字を文姫と言います。真名は雫って言います」
「私の名前は楽進。真名を凪と言います」
「沙和は于禁。真名を沙和って言うのよろしくなの~」
「李典や、真名は真桜。よろしゅうに」
「さて、自己紹介もすんだ事だし。お昼としましょうか、もちろん俺もちで」
「やった~~~~」
「よろしいのでしょうか」
「隊長太っ腹なの~」
「隊長おおきに」
一刀に感謝しつつ皆それぞれの好きな料理を頼んだ。驚いたのは凪が頼んだ麻婆豆腐の色だった。
「凪。それおいしい」
「おいしいですよ」
真っ赤の麻婆豆腐を食べる凪を見て雫が。
「一口貰っていいですか」
「「!?」」
「どうぞ」
雫は自分のレンゲを凪の食べていた麻婆豆腐に入れてすくい取った。
「でわ、いただきます」
パク
「・・・雫。どうだ」
「・・・・・」
「雫?」
「・・・・・辛~~~~~~~~い。み・水」
雫は火を吹く勢いで暴れだす。一刀は急いで雫に水を渡す。
「大丈夫か雫」
「し・舌痛~~い。凪さんよく食べられますね。こんなの」
「せやろ、うちと沙和も同じ目にあってんねん」
「凪ちゃんの味覚絶対におかしいの」
「そんなことはない・・はずだ」
凪は少し困った顔で言い返した。
「まぁ~。味覚ってのは人それぞれだからな。俺はいいと思うぞ」
「そんなもんなの」
「沙和は甘いもん好きか」
「大好きなの~」
「それと一緒で、もしかしたら甘い物がダメな人にとっては、沙和が食べているのが不思議なわけで、今回の凪みたいになるってことさ」
「そんなもんなの」
「せやな、うちかて、沙和の服選びに時間がかかるのも不思議だしな」
「そうゆう真桜ちゃんの絡繰だって、沙和には不思議なの」
「雫はお兄ちゃんの気の訓練法が不思議ですね」
「隊長は気を使えるのですか」
「あぁ・・使えるよ」
凪は嬉しそうに一刀に近づいた。
「できれば・・・その・・気を使っているところ私に見せてくれないでしょうか」
「凪も気が使えるの」
「はい」
「そうなの。凪ちゃんの気弾はすごいの」
「あれをくろうたら普通は気絶するで」
「そうなんだ~。雫はまだ気の使い方は教わっていないので、どれほどなのかわかりませんが」
「なに、雫は隊長に武術習ってんの」
「はい。それが雫とお兄ちゃんとの約束ですから」
「約束ですか?」
「そう、約束。雫の村が賊に襲われた時にお兄ちゃんと風さん稟さんが来てくれて賊を倒してくれですが、その時、雫のお父さんとお母さんが殺されて、お兄ちゃんがそれは自分のせいだと言って雫を城に連れてこようとしたのです。だから雫は、お兄ちゃんの部下になりたいと言って武術を習っているのです」
「すみません。つらい過去を思い出させてしまって」
「別にいいのです。雫はお兄ちゃんに会えてとても幸せなのですし。華琳さん春蘭さん秋蘭さんともであえて毎日が楽しいのです」
「そうですか」
雫の話を聞いて凪達の周りの空気が重くなった。
「はいはい。皆暗いな。凪さっさとそれ食べて警邏に行くぞ。じゃないと凪に気を見せる時間がなくなるだろう。沙和と真桜もいい加減に元気出せ」
「わ・わかりました」
「そ・そうなの。暗いのは沙和には合わないの」
「せやな、凪はようそれ食うて、街に行こうや」
たりあえず元気を取り戻した三人であったがさっきまでの勢いは何所にも無かった。
凪の食事も終え一刀は、店主にお金を払うと店を出で街を案内した。その間に陳留の警備方法や人との接し方など一通り教えて今日の警邏を終えた。
「隊長。これからどこに行くのですか」
「訓練所だけど」
「まさか、今から訓練なんてしないで欲しいの」
「せや、今日はなんかやる気でえへんしなぁ~」
「雫は逆にやって欲しいのですが」
「なに言ってんだ。今から俺の気を見せるだけだよ」
訓練所に付くと一刀は四人を少し離れさせて、日陰に気を溜めた。
「なんて気の量だ」
「あれ、凪が全力で溜めたよりも多いんとちゃうか」
「すごいの」
「・・・・」
「はぁぁぁぁぁぁ」
一刀は凄まじい速さで日陰を抜いた。日陰を抜いた瞬間膨大な量の気が白銀の刃と化して辺りにあった草花を切りはなっていった。
「どうかな。いまのが一刀流鎌鼬だけど」
「すごいです。まさかあれほどの技が出来るとは思ってもいませんでした」
「沙和もびっくりなの」
「あんなのくろうたら真っ二つやないか」
三人はびっくりしていた。一刀が強いのは昨日の戦いを見てわかっていた事だが、まさかこれほどとは思ってもいなかった。
「お兄ちゃん。雫もその鎌鼬出来るようになるんですか」
「雫も頑張れば出来るようになるはずだよ。しかし今のでも十分の一だけどね」
「あれだけの威力でまだ十分の一ですか」
「まぁね。ちょっと溜めすぎたかなって俺的には思ってるんだけど」
「隊長は何年修行をなされてこの技を会得したのですか」
「え~と、だいたい一年ちょっとかな」
「そうですか、私もまだまだ修行が足りませんね」
「俺もだよ。だから凪もしよかった空いてる時間でいいから一緒に修行しないか」
「よろしいのですか、私は隊長より弱くても」
「そんなことないよ。凪は強い子だ。それに一緒にやったほうが楽しいし」
一刀は笑顔で凪を見つめた。
「は・はい。わかりました」
「いいな~。雫も気の修行したいです」
「雫はまず、剣の修行を終えるまでは気の修行は入らないから」
「は~~~~~~~い」
この日の仕事終了。
一刀の部屋
恒例の北郷軍のみでの会議がおこなわれていた。
「それで、劉備玄徳には軍師として諸葛亮孔明と鳳統士元が配下にいるんだな」
「はい。二人とも恐ろしいほどの策士かと」
「万里ちゃんは二人とは同門でしたよね」
「はい。二人は水鏡塾では主席と次席でしたので、かなりの策士だとはわかっています」
「万里さんは二人と比べてたらどうなんですか」
「私など彼女達に比べたら月と鼈の差がありますね。唯一勝てるのは料理くらいですか」
「万里殿より上ですか。これは厄介ですね」
「そうですね~。万里ちゃんでも優秀なのにこれ以上とは」
「雫は軍略とかはわかりませんが、どうしますかお兄ちゃん」
「そうだな、とりあえず保留にしといて、張三姉妹事について語ろうか。まずは、その三人の居所だ」
「すみません。居場所に付いてはまだ」
「一つの拠点がなく移動しながらなので、掴むのはもう少し時間をください」
「どうしたもんか」。
「いっそのこと食料を奪っちゃったらどうでしょう」
「「「!?」」」
「どうしたんですか」
「その手がありましたね」
「雫。お前賢い」
「えっ!えへへ」
「ではさっそく。食料のある所を探してみます」
「頼む。風はこのまま劉備を探ってくれ。稟は大変かもしれないけど孫策と董卓の監視を頼む」
「「御意」」
「では今日の会議はここまで、解散」
四人はそれぞれ自分の部屋へと戻っていった。
「そろそろ出てきたら。そこにいるのはわかっているよ」
しかし部屋には全く反応がない。
「反応なしか、しかたがない粗行事は好きじゃないけどここはひとついくか」
一刀は右の拳に気を溜め始めた。
「一刀様。申し訳ありません。一つ報告するのを忘れて・・・何してるんですか」
稟が扉を開けて入ってきた。
「ん!いやさっきから俺の事見張っている人がいて、ちょっと挨拶しようかなって」
一刀が拳を天井に向けて振りかぶしたら、天井に穴が開き女の子が落ちてきた。
「キャッ」
「今晩は、君は誰かな」
一刀はその子に手を差し出して名前を聞いた。
「一刀様。危ないのでお下がりください」
稟はすかさず一刀の傍により忠告した。
「大丈夫だよ。その子の武器は俺が持ってるし、これ以外の武器はないみたいだから」
一刀の左手には四尺ぐらいのある刀が持っていた。
「それで、君は誰かな。隠密なら自決かもしれないけどせっかくだし教えてよ」
「・・・・拙者の名は徐晃。字を公明ともうします。拙者に気がついたのはあなた様が初めてです。いったいいつから」
「朝起きたときかな。君の気が感じられて」
「そうですか、拙者もまだまだ修行がたりませんな」
「俺もだよ。それでその徐晃ちゃんは俺になに様かな」
「実はお願いがあります」
「お願い?」
「拙者をあなた様の臣下加えてください」
「「なっに~~~~~~~」」
「ど・どうしてかな」
「拙者はこれまで自分の主を探しに旅をしておりました。そして唯一拙者の存在を感じたのはあなた様だけです。どうかなにとぞ私をあなた様の配下に」
「でも」
「おねがいします」
「・・・わかった。君を仲間にするよ」
「ありがとうございます。拙者・・いや私の真名は椿と申します。この命主にお預けいたします」
「宜しく。俺には真名がないから好きに呼んでかまわないよ。椿」
「はっ。では主と呼ばせていただきます」
「私の真名は稟です。これから一刀様の為に共に頑張りましょう」
「よろしくお願いします。稟殿」
「それじゃ、椿にはまず張三姉妹の居場所を突き止めてもらいたい」
「はっ。突き止めたしだい連絡いたします」
「たのむ。それと稟」
「はっ!」
「このことは他言無用で頼むよ」
「風達にもですか」
「頼む。張三姉妹の居場所がわかったしだいに紹介するから」
「わかりました。それと報告をし忘れていたことなのですが、涼州の方で紅い子馬生まれたそうです。母馬はその子を産んで亡くなったため不吉がられていますが」
「稟。その子馬すぐに取り寄せてくれないか」
「わ・わかりました。すぐに取り寄せます」
紅い馬といえば三国一の名馬赤兎馬あると一刀は確信していた。その名馬がもし手に入るのならいくら払っても良かった。
「それでは主。私は張三姉妹の居所を探りに行きます」
「あぁ・・出来るだけ無理をせずに。この騒ぎがすんだら華琳にも会わせるよ」
「私は隠密なのでそのような事は不要ですが」
「椿には武官としても働いてもらう。時に隠密として時に武官とて両方やってもらうよ」
「主の命なら従います」
「命令じゃなくお願いだから。それじゃ気をつけて」
「でわ」
椿は天井へと姿を消した。稟も自分の隠密に赤兎馬の入手のために使いに向かわせていた。
「稟。君には何人の隠密がいるの」
「秘密ですよ。一刀様」
「そうか。・・・稟・・んちゅ」
「か・一刀さ・・ん・・ちゅ」
「今日は帰さないよ・・ん・・ちゅ」
「うれしいです」
一刀は稟を寝台に押し立て愛し合った。
第十章 完
「第十章終了。とうとう二桁に突入」パチパチ
「それはおめでとう。しかし更新遅くないか」
「色々ありまして」
「色々ね~」
「そうですよ。一刀様。黒竜殿も大変なのですから。でも遅すぎますね」
「でも、いつも文句ばかり言ってるお兄さんとは大違いですね~」
「風。お前そんな事言うのか」
「えぇ、言いますとも。お兄さんは稟ちゃんと色々やってる間。黒竜ちゃんは頑張っているんですよ~」
「うぅぅ・・。風さん。今度何かおごります。いえ、おごらせてください」
「でしたら。黒竜ちゃんがおいしいと思う饅頭十個で」
「わかりました」ビシッ
「え~~と。今回はよくわからないので、私北郷一刀と」
「稟でこの場を終わらせます」
「それでは皆さん」
「またの機会に」
「「お会いしましょう」」
「BY]「ばい」
「いい所取りだ~~」
「風。貴方って人は」
ビユン
「「まちなさ~~~~~~い」」
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新たな仲間が加わり。その警備方法教える事になった一刀。しかしその一刀をつける人影が、そいつは味方かそれとも敵か