横ッち大学生/なのはさんsts後仕様注意
「横島さんっ」
その声はとってもとっても弾んでいた。
どれくらいって、聞いた人間がいいようの無い不安に叩き落されるくらいに。
「ほへ?なのはちゃん」
なに?とサロンのコンロで、特車二課謹製のハゼの干物なんぞを焼いていた横島忠夫は全力笑顔の少女…と言っていい年なのだろうか…にそれなりの笑顔で、だが微妙に引き攣った感じで応じた。
なんとなく、これまでの経験ともいう。
果たして彼女は子どもめいた呼ばれ方にその口元を尖らせた。
「私の方が年上なんですけど・・・・・・」
「それは知ってるけど、なーんか"なのはちゃん"なんだよなぁ。
んで?」
なんの用よ。
そんな言葉を演出するように、干物の油がぱちん、とはじける。
「お時間ありますか?」
果たして申しだされたのは、ちょっとテンション上がる一言だった。
実際逃げ腰忘れて横島が目を輝かせる。
「へ?はっ?!それは嬉し恥ずかし告白タイム?!」
実際、色々目をつぶればかわいい子なのだ。
……たとえ色んな噂や実例を目撃していたとしても。
いや、だって子持ちだし。
「なんでですか?私にはフェイトちゃんがいるのに」
「大真面目に首傾げないで、わかってるから。
御用件はなんですか?魔王さま」
「それ誰が言ってるんですかぁ」
誰が言ってるも何も、見事に彼女の「お仕事」を目撃すればそれくらいの綽名普通につく。
勿論面と向かっていえる人間なんてこのアパートに住んでる住人くらいだろうけれど。
「そりゃ勿論、魔砲の国のお姫様に」
「なんかここの人ってミッドチルダのこと誤解してるような・・・・・」
(誤解される根源みたいな子が何を言ってるんだか)
実際横島は件の「世界」のことを詳しくはしらない。
魔法文化が発展しまくり、個人で戦艦落とせちゃうくらいのレベルから精々ハゼの干物をこんがり焼く程度のレベルまで、見事なまでに実力格差社会がまかり通っているってことくらい?
もっとも建物ぶっ壊すほどの力よりは、調理時間短縮且おいしい焼き加減の方が実用性はずっと高いのだが。
「とりあえず、私の必殺技って、結界破壊属性があるんですけどっ」
果たして彼女は話題を強引に本題へ持ってきた。
それもなんだか、全然爽やかじゃない。
「物騒なこと元気よくおっしゃるなー?!この破壊王?!」
「ここのいろんな属性の能力を持ってる人がいる中で、一番"固い"結界持ってるのが横島さんだって聞いて」
「誰からの御案内?!しかもなんでオレ?!」
そりゃそうだろう。
異世界の人も彼女たちだけではない。
一口に結界と言ってもさまざまあるし、そういう意味では向上心が刺激されるのはわからないでもない。
自分には絶対無い種類の感情だがと紹介された身としては愚痴る。
彼の目標は「きれーなよめさんとはいたてきなせいかつ」である。
果たしてそんな「面倒ごと絶対NO」を隠そうともしていない彼の言い分をきいているのかいないのか、彼女の言葉はどこまでもまっすぐだ。
光だって地球上では屈折・分散するってのに。
「えーと、つまりざくっと一つ手を貸してほしいんですっ」
「目がきらっきらしてるのがこえぇえ・・・・・あのね、なのはちゃん」
「はい?」
あんまり期待しないで欲しいという感情をこめて横島は彼女に目線を合わせた。
「オレの結界だってなんでもかんでも防ぐってわけじゃないんだぜ?
実際東京中の悪霊が集まってきたのは5分ももたなかったし。魔族の攻撃なんて精々2・3回防げれば運がいい程度で」
・・・・・・・・
今更だが重ねて言おう。
彼の世界観は、特殊である。
「是非試させてくださいっ」
「え?大したことなくね?」
「横島さん、基準が絶対的におかしいんですっ」
「君には絶対言われたくないんやけどなぁ」
気づいたら干物は炭になっていました。
・・・・・・人気でなかなか手に入らないのに。もったいない。
「んじゃいっきまーす」
裏庭……といっても、いろんな意味で物騒な「訓練場」というべきか。
半ば逃げたい感情をそれでも押し殺し、横島はその手に「結界の素」ともいうべきもの、文珠を作り出し、放り投げた。
<護>
含まれるキーワードと共に。
「・・・・・・・横島さんのアレって、充分ロストロ・ギアクラスだよね・・・」
果たして付き合っているのかつき合わされているのか。
この騒ぎの原因たる彼女がその手に相棒たるデバイスを起動しているのを横目に、彼女のパートナーはキーワードに従い展開される結界への改まった感想を口にする
「ある意味自家製ジュエルシードだものね。
ただあの人じゃ、絶対危険だって思えないところが凄いけど・・・・・・
なのは、準備はいい?」
「おっけー!ねっ、レイジングハート!」
<yes,master>
物騒なコンビのやる気全開なやりとりがなんとも耳に痛い。
「いよぉーっし、いっくぞーっ!!」
「あんま張りきらんといて欲しいんやけどなぁ」
高まった魔力と展開される魔法陣を避けて横島の方に向かっていた立会人、フェイトは彼の呟きに思わず笑ってしまった。
実に彼らしいなと。
それとは対照的に、こちらも彼女らしく、ピンクとも赤とも言えない情熱的な色彩を持って高められていく、暴力的で優しい力という言語。
「んぬふふふふふ・・・全・力・全・開・・・」
「なぁフェイトちゃん、なのはちゃんイってね?
なんかヤなことあった?」
「んー、確かにちょっと、最近 使えない新人が多いって話はちらっと聞きましたけど・・・」
横島の不安がそれで解消されるとは思わないが、聞いた話をそのまま伝える。
苦りきった彼の表情が、妙に納得しているようにも見えるのは皮肉以外のなにものでもないだろう。
「パワーセーブしとるのが原因か?
まぁ保険に強化しとくかなー」
「強化?」
「今作った結界固いだけやかんな。
衝撃吸収用のを上にかぶせておこうかなと」
「・・・・・・・・・はぁ」
外に被害でても困るし、といって彼は手にあと二つ。
本来なら切り札たる文珠をストック分なのだろうが気軽に作り出す。
が。彼女の方が早かった。
「すたぁああらいとぉおおぶれいかぁさあああああああ!!!」
一直線の爆発。
絶叫と共に発生したそれは直に結界の淵にたどり着き、巨大で無茶苦茶な物理的ではない火花を発生させる。
「うぁやっべっ、洒落にならんぞアレ」
砕ける、という「事実」が発生する前に、文珠がそのキーワードを吸収し、ヒビの入った「護」のポイントへと投げつけられる。
<柔>
<補>
果たして。
「ほぇえ?!結界が延びたぁあ?!」
「ゴムみたいになってるっ、そんな非常識な」
驚く彼女たちとは対照的に、横島の顔は緊張感がない、ほっとしたものになる。
「ふひぃ。なんとか被害なしか。
・・・・・・文珠三つも使ってなんとかとか。例のデバイスってだけじゃねぇよな・・・」
感情に左右される力ほど恐ろしいものはない。
色々な意味でソレを知っているからこそ、横島は見知らぬ組織をその内心で呪った。
なんでこの娘を苛立たせた、時空管理局とやら?!
「横島さんっ」
果たしてその気になれば次元だろうが問わず発生させることができる呪いを実行に映す前に当の彼女が駆け寄ってくる。
それが「ルール違反をした自分を怒りにきた」と思ってもそれは自然で、だから横島は言い訳を先手打とうとする。
「あー、結界一枚じゃどーにも被害が、ね?」
「すごいですっ!」
「へ?」
だが予想に反し、彼女の目は輝いていた。
めがっさひかっていた。
にくしょくじゅうてきな意味で、そうじゃないのにグリーンぽいっていうか。
「横島さんの結界なら、私全力で色々できますっ」
・・・・・・・・・・
「とりあえず横島さんの結界を破るのが目標でっ!」
「笑顔で怖いコト言わないでおじょーさん?!」
「そんなっ、私感謝してますっ!
私まだまだ強くなれますっ」
それって凄いことですよねっ。
うん、すごいね。
そんな強くなって。
世界征服でもするおつもりですか?あんたは。
「楽しそうだなぁ・・・・・・、俺のせい?」
「そんなことありませんっ」
「さいですか・・・・・・で?」
なんとなく続きそうな話の、何故先を促したのか。
彼はちょっと後悔した。言った後だから、今更だけれど。
「とりあえずミッドチルダの訓練場なら、全力でやれるかなって思うんですけどっ」
「結界だけじゃなくてガチでやりあえってことですかい?!」
「はいっ!」
オンナノコにこんな申し出もらったの何時振りだろう?
ぜんっぜん嬉しいといえないけど、「いっしょにおでかけ」の申し出だ。が。
「だが断るっ!デートなら大歓迎だがなにがかなしゅーてかわいい女の子とガチバトせなあかんねんっ」
「ちゃんと非殺傷設定にしますからー 簡易保険にもいれますっ!
っていうか横島さん、うち(時空管理局)はいりませんか?」
「絶対ノー!」
っていうか保険はいるってことは殺さんでも痛い目みるってことだろー?!
・・・・・・・・・・・・・
ブログでは会話のみだったんで、地の文追加
余計なのはさんが変になった。あるぇー?
用語説明:
サロン アパート共有(個々にもあるけど余った惣菜やら野菜やらを入れて好き勝手持っていける)の冷蔵庫やキッチン、自販機、カフェスペースのある共用スペース
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※11:17 地の文追加しました
別名義ブログ(らき☆あーのとは別)のとりあえず色んなジャンルごった煮話からぽろっと一作。
一つのアパートに色んな作品の色んなキャラがすんでるというカオスものですがそんなバックグランドは今回あんまり関係ない。
もしかしたらfool~(GS×なのは)の後日談とみれるかもしれないかなって思ったけど このなのはさんそういえば冥王様年齢設定だったと今思い出す。
あれ?それって横ッちストライクじゃね?
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