一刀と璃々が城の外に出ている時に城の東屋では、羅乾と時雨に星も加わって一刀と璃々の話をしていた。
「なるほど、お二人にはそのような事があったのですか。そういえば紫苑殿からも「ご主人様は璃々にとって父親みたいなもの」と聞いたことがありますね」
「そして此処からがこの話題のみそとなると思うのだが昔璃々から聞いた話なのだが、璃々が主がまさに天へと消えていく瞬間に主を「おとうさん」と呼んだらしいのだ。主もそれが嬉しかったらしくてな宴のときに話していただいたのだ。これは恐らくなのだが、主は璃々に「お父さん」と呼んで欲しいというよりも今の璃々に「璃々にとって自分は何なのか」というのが気になさっているのだろうな」
「なるほど、そういう事ですか。確かに黄叙様はまだ一度も北郷様がお戻りになられてから北郷様を「お父さん」と呼んでいらしゃらない。この事は黄叙様も大人になられているのだから公私を分けていらっしゃるといえばそれまでですが。しかし北郷様にしては「別れる事になった娘に再会するために頑張ってきたのにやっと再会できた黄叙様にお父さんと呼んで貰えない」ということですか。確かに色々と思うところがおありでしょうな・・・」
そういって暫く三人は考え込んで辺りには沈黙が訪れた。
暫くすると時雨が
「もしかして、北郷殿は答えの先にあるもので悩んでいらっしゃるのでは?」
その言葉に羅漢と星は時雨の方を向き
「それはどういった意味ですかな?時雨殿?」
「これはあくまで私の推測なのですが、私は「自分が璃々殿の立場だったらどうなのか」というのを考えてみたのですがひょっとしたら璃々殿は無意識に北郷殿を「一人の男性」と見ていらっしゃるのかもしれません。子供の頃「お父さんと呼んでいい」と言われてからの璃々殿はそれから北郷殿を「お父さん」と見ていらっしゃったのでしょう。それが望まぬ形で別れ何年も経ってから再会した一刀殿を「お父さん」としてではなく「一人の男性」としてみている部分があるのかもしれません。ですから無意識に「お父さん」と呼ぶのを避けていらしゃるのでは?それにひょっとしたら璃々殿の初恋の方が北郷殿という可能性も。女性にとって初恋の人が父親というのも珍しくないと聞いた事もありますし」
「なるほど、十分にありえますな。璃々は紫苑の影響かどこかませていた所がありましたからな。ですがそうなるとけっこうややこしい事に」
「そうですな。もし一刀殿がそういった事にお気づきになられていたのならお悩みになられるでしょうな。娘と思っていた黄叙殿からもし本当にそういった風に見られているとしたら自分はどう接するべきかを考えていらっしゃるのでしょう。そうなるとこれは部外者の我々がおいそれと入っていける話しではなくなってしまいますな」
そういってから三人はまた「自分達はどういったことをしてあげれるのか」など話し合っていくのだった
その翌日、璃々の相談に乗ってやろうと璃々を探していた星がふと立ち止まると、ある部屋から璃々の話し声が聞こえてきたのでその部屋を覗くと
「成る程な、話は大体分かった」
「それで私はいったいどうしたら良いのでしょうか?春蘭様?」
その部屋は出産を終えて間もない春蘭のいる部屋だった。
「なるほど、璃々は春蘭に相談したか。よりによってあの春蘭にするとは。いや、むしろ他国の将である春蘭の方が相談しやすかったのかもしれんな。それにああ見えても春蘭は既婚者だしな」
中の状況が分かった星は春蘭がどういったアドバイスをするかワクワクしながら覗くのを続けた。
「・・・璃々よ。お前は既に答えが出ているのではないのか?」
「えっ!?」
春蘭の言葉に璃々が戸惑っていると
「まあ、父親と呼んでいた者と数年ぶりに会ってその者への思いに戸惑いが出てもおかしくは無いか。璃々は今の北郷に「一人の男性」を感じているのだろう?」
そう言われた璃々は顔を真っ赤に戸惑いながらも
「・・・はい、多分そうだと思います。ですが「璃々」!?」
話の途中で名前を呼ばれた璃々は真っ直ぐに春蘭の方を見ると春蘭は普段は見せないような優しい笑顔を浮かべ
「なあ、璃々。私は頭が悪いからな的確な助言はしてやれんかもしれん。だから私の経験した事を話そう。私もな時雨から告白された時は戸惑ったさ。それまでただの副官としてしか見ていなかったからな。それなのになぜかすぐに断る事が出来なかった。結局「答えはすぐでなくていいので」と言われたから華琳様や秋蘭に相談したがどちらも「それはあなた自身で答えを見つけなければならない」といわれてな悩んだ末私はある方法を取った」
「その方法とは」
「それはな、「私と戦って一本を取れれば認めてやる」と言ったんだ」
その言葉に璃々は唖然として、外からはズルンと誰かがこけた様な音がした。
「おかしな話だろう?私自身もそう思うさ。だがあの時の私はそれしかないと思ったんだ。私は根っからの武人だ。あれこれ考えても答えが出ない。だから戦う事で感じようと思ったのだ。あいつ自身を、そして自分の本当の気持ちを」
「・・・それでどうなったのですか」
その問いに春蘭は言いにくそうな顔をしながら
「恥ずかしながらな、戦ってるときのあやつの顔に見惚れてしまってな、一瞬隙だらけになったところをスパンっとやられたよ。それを素直に認められた自分に気付いたときにな「私もあやつが好きなんだ」という事に気付けたんだ」
そういった春蘭の顔はとても綺麗だと璃々は思った。
「なあ璃々よ。もし、お前も答えが出なかったら北郷と戦ってみればどうだ?もしかしたら私のように答えが出てくるかもしれないぞ。答えというのは思いもよらない形で見つかる時もあると私は思うぞ」
「・・・はい、もし答えが見付からなかったらそうして見ようと思います。ありがとうございました。春蘭様」
そうお礼を言って璃々は部屋を後にした。
「・・・聞いていたのだろう?後は任せたぞ」
その声に返事をする者は無く、ただそこを去っていく足音だけが聞こえるのだった。
それから暫くして璃々の部屋に誰かが訪ねてきた。
「はい、どなたですか?ってご主人様!?いかがなさったのですか?」
「やあ璃々、星から話があるって聞いたんだけど?」
そういわれた璃々は「星様に聞かれていた」と戸惑ったが意を決して
「あのご主人様、もしよろしければ私と手合わせをしてくださいませんか?」
「・・・いいよ。なら準備をしてくるから先に中庭に行ってて」
そういって一刀は自分の部屋に戻っていった。
璃々が中庭に着くと既にどこから聞いたのか大量の観客が集まっていた。
「・・・大方星様が言い触らしたのですね。はぁ、仕方ないですね」
そういいながら璃々は中庭の中央で準備運動をしていると
「やあ、待たしたね璃々。なぜか観客が集まっているけど別にいいか」
そう言った一刀を見て一同は愕然とした。
「ごっご主人様!?そのお姿は!?」
そういわれた一刀は、長い髪をいつもとは違う独特の結い方(いわゆる宮本武蔵みたいな丁髷)をしていつもの上着の代わりに兵が着ている鎧を着ていた。
だが皆の視線は一刀の手にしている得物へと向いていた。
「さあはじめようか、璃々」
そういって構えた一刀に合わせて璃々も構えるが内心、動揺だ押さえられなかった。
「いったいご主人様はどういった戦いをされるのですか?」
そう思わざるえないのは一刀は二振りの見覚えのある槍が握られていた。
そう『銀閃』と『龍牙』の二振りが
あとがき
さて、いかがだったでしょうか?
意外な人物に相談した璃々でしたがそれが思わぬ展開に。
次回は一刀対璃々を書いていきます。
一話で終わらせれるかな?
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魏√風END璃々編アフター 10話 「答えが欲しくて」を投稿します。
璃々ちゃんの悩みはどうしたら解決するのか。
そのあたりを暫くはメインで書きます。