「ぎゃぁ!!」
また一人、戟をふるってかかってきた黄色いのを倒す…どのぐらい経っただろうか、いい加減疲れてきた
あの人はここで敵が退くまで戦えって、命を捨ててでもわしに恩をかえせって言ってた
あの人はお腹の空いた恋と恋の家族にご飯をくれた
雨の当たらない寝床をくれた
あそこにいてねねや霞みたいな友達もできた
だから恋もお返しをしなきゃいけない
…たとえ六万の大軍が相手でも退いちゃいけない
恋は天下無双…だから負けない
半分ぐらい倒したころだろうか
とうとう黄色いのに恋は囲まれてしまった
恋の見えないところからじりじりと攻められて戟を振っても届かない
動こうにも黄色いのの死体が邪魔で動けない
あの人はもう戻ってこないのだろう
やっぱりあの人も恋がいらなくなったのかな…
疲れたし、お腹が減ってもうたってるのも辛い
もうだめかな…と諦めかけたその時…
「いよっしゃ!!北郷隊!!ウチに続けや!!れーん!!今行くでー!!」
「恋殿―!!恋殿―!!」
「華雄は外側の敵の囲いを突き破ってくれ!!北郷隊は彼女の保護をする!!」
「いいだろう!!華雄隊!!賊どもの横腹を突き破る!!かかれー!!」
二人の友達と、知らない人たちの声が聞こえた
「…なんで」
何で二人がここにいるんだろう
なんでこの人たちは…恋を、助けてくれるんだろうか……
俺たちがついた時には黄巾の軍勢が全員で何かを囲んでいるのが見えた
そこには今にも倒れそうなほど疲弊した様子の女の子が一人立っていた
「陳宮!あの子か!?」
「そうなのです!!早く助け出すのです!!」
わかってる…といいたいところだけど彼女の周りは黄巾の兵が囲んでおり、容易には近づけそうに無かった
「くっ、どうしたら」
「おいあんた、北郷ゆうたな。」
張遼さんが馬を寄せて話しかけてくる
「あんた、武の心得は?いや無くてもいい、あんなか突っ込む勇気はあるか?」
張遼さんが真剣な目でこちらを見てくる
「武の心得は一般人よりマシな程度だよ。でもあの子を放って置くつもりはない」
「ええ答えや…ほんなら北郷、あんたの隊少し借りるで。あいつら蹴散らしたるからその間に恋の奴助けたってや!」
「え?…わかった!徐栄!!張済!!今より指揮権を張遼さんに預けるから彼女に従ってくれ。彼女を助けるぞ!!」
「「御意」」
「いよっしゃ!!北郷隊!!ウチに続けや!!れーん!!今行くでー!!」
「華雄は外側の敵の囲いを突き破ってくれ!!北郷隊は彼女の保護をする!!」
「いいだろう!!華雄隊!!賊どもの横腹を突き破る!!かかれー!!」
華雄隊が敵の囲いに突撃、完全にふいを突かれた黄巾兵は簡単に吹き飛ぶ
敵の包囲の破れた穴から張遼さん率いる北郷隊がねじ込み中心までの道をこじ開けていった…
「れ、恋殿―、会いたかったですぞ!!」
「…ねね、なんで」
彼女の下に着くなり飛びついていく陳宮さんと心なしか驚いた顔をする女の子
「何でって、きみを助けに来たんだよ。ここから逃げるから急いで!!」
俺がそう言うがふるふるっと顔を振る少女
「恋、も戦う」
明らかに満身創痍な体で立ち上がる
「れ、恋殿!?なぜなのです!?」
「…霞も、ねねも、恋、助けに、来てくれた。恋に、できるの、戦うこと、だけだから」
そういって立ち上がる女の子の目は…今にも捨てられそうな子犬のような不安におびえる目をしていた
彼女の行動が自分の価値は戦うことだけだと、それをしないと自分に価値がなくなってしまう…と語っているような気がした
こんな子がそんなことを考えていると思うと悔しくて、かなしくて、
「もういいんだ、だれも君の事を捨てたりしない…見捨てたりなんてしないから。だからもう無茶をしなくてもいいんだ」
初陣のとき、月にしてもらった時の様に優しくしっかりと抱しめていた
あの時、俺が月の暖かさにふれて救われたようにこの子も救われてほしいと願いをこめて
「後は俺たちがなんとかするから…もう、休んでもいいんだよ」
最初こそ驚いた顔をする彼女だったが徐々に安心して緊張の糸が切れたのか
「…う、ん」
そのまま気を失ってしまう女の子、だけどその顔は心なしか、微笑んでいるようにも見えた
その彼女を馬にそっと乗せる…と後ろからいやな気配が
「ちんきゅーキーーック!!」
「へぶぅ!」
馬から離れた瞬間どてっぱらにキックをくらう
「いきなりなにすんだよ!いったい俺が俺が何したっていうんだ!!」
「ふん、恋殿に抱きついた罰なのです!!戦場だから手加減してやった方なのですぞ!!」
といって胸を張る陳宮…戦場だって気を使うぐらいならやらなけりゃ…ってそうだ、こんなことしてる場合じゃない
「おい、陳宮!急いでこの場を離れるぞ!!早くしろ!!」
「ねねに命令するなー!!なのです!!」
わーわー喚く陳宮と女の子を乗せて俺は戦場を離脱した
俺たちが引いた後、官軍のときから戦い続けて疲弊していた黄巾賊は華雄、張遼率いる一万の騎馬隊にまったく太刀打ちできず、さらに合流した月たち本隊によって瞬く間に壊滅させられていった…
あったかいゆめをみた
ゆめのなかでだれだかわからない人に抱きつかれたのにちっともいやな気がしなかった
ほんとうにあったかくて…優しかった
「…んどの、お…くだ…」
「れん…、…きんかい!」
どこかから恋を呼ぶ声が聞こえた
「う、ん?…ねね?しあ?」
そこにいたのは、二人の友達と…ゆめでみた、男の人だった
「恋殿―!!」
「やーっと起きたか、こんのねぼすけがぁ!!」
「やれやれ一時はどうなるかと思ったよ」
あれから本隊と合流した俺たちは少し離れた所に野営を張ったのだが彼女が目を覚まさず心配していた所だった
「どうなるかと思ったのはこっちの方よ!まったく、華雄だけならまだしもあんたまで突っ走るなんて!」
「そうですよ一刀さん!!心配したんですから!!」
詠と月に怒鳴られる
合流した直後、二人は独断先行した華雄と俺に数時間に及ぶ説教をしたのにまだ許してくれる気配がない
特に月なんて泣くわ、怒るわで最後は一緒に怒っていた詠が仲裁に入るほどだった
「おい賈詡、私だけならまだしもとはなんだ。私は考えなしに突っ走ったりなどせんぞ」
「どの!口が!いうのよ!!」
「今回もこのような事態は見逃せぬと考えた上の結果だ」
「こんの単細胞がぁ!!ちょっとは成長したかと思った私が馬鹿みたいじゃない!!」
わーわー言い争いをしている二人を眺める…と彼女がこっちをじっと見ていた
「…えーと、なに?」
「…名前」
名前?と考えてまだ彼女とはお互い自己紹介していないことに気づく
「ああ、俺は北郷一刀っていうんだ真名がないから北郷でも一刀でも好きなようによんで」
「わかった、一刀…恋は、恋」
「…それってもしかしなくても真名だよね、普通の方の名前は?」
「呂布、でも、恋って呼んで」
呂布…なるほど呂布かー…って呂布!?
「き、君があの呂奉先!?」
「…恋って呼んでっていった」
ジト目で見られる…いやいくら武将が女の子だらけだっていっても目の前の子が呂布だっていわれたら驚くなっていうほうが無理がある
「恋殿が真名を許したのですからねねも許すのです。ねねの真名は音々音なのです。音々音でもねねでもすきなほうで呼ぶといいのです!」
「う、うん。じゃあよろしく恋、ねね」
とあいさつをしていると恋が俺の方に近づいてきて…え?
「な、何をなさるのです恋殿!!」
「か、一刀さん!?」
「…あったかい」
いきなり抱きつかれた…ってちょっとまって!!
「え、いや、ちょっと恋?いきなり何を…」
俺は急いで体を離そうとするのだが、そうすると恋はとても悲しそうな顔をして
「一刀、恋のこと見捨てないっていった…嘘だった?」
そんな顔をされたらはなせないじゃないかっ…と結局恋にされるがままになる
「…やっぱりあったかい」
そういってまた笑顔になる恋……だけど俺に刺さる視線が痛い
「一刀さん、あとから詳しい話を、きかせてもらいますね?」
と物凄い凄みのある笑顔で言う月…こ、怖い!いつもの優しい月はどこに!?
「この、恋殿から離れるです!!」
「あっはっは!!恋っちは気に入った相手にはべったりやからなあ…あ、ウチは霞って呼んでくれや」
ぼかぼかと俺をなぐるねねと豪快に笑う張遼…霞さん
「いや霞さんそんな暢気な事言ってないで助けて…て痛い、痛い!!ねね頭を叩かないでくれ、って月さん!本気で怖いです!!詠!華雄!言い合いなんかしてないで助けてくれーー!!」
こうして騒がしく夜は更けていった…
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真恋姫董卓IF√本編第七話です
この話でようやくの董卓軍メインヒロインフルメンバーを登場させることができました
楽しんでいただけますと幸いです
誤字脱字、おかしな表現等ありましたら連絡いただけると嬉しいです