No.141310

真・恋姫†無双 あなたと共に

highstaさん

書いていらっしゃる方は多いですが、真・恋姫†無双の魏end後のお話です。

小説初投稿なので至らぬ点が多々あるとは思いますが、よろしくお願いします。

需要があれば続きを書きます。

2010-05-06 21:20:27 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:30788   閲覧ユーザー数:19771

 

恋姫たち~1~

 

 

「・・・一刀」

 

満月のある夜、一人の少女が首都洛陽の城壁でつぶやいた。

 

少女の名は曹孟徳こと、真名は華琳である。この少女こそ、さきの戦乱の際に「乱世の奸雄」と呼ばれ、長きにわたる戦乱を鎮めた一人にして「大陸の覇王」である。

 

「もう・・・3年になるのね」

 

しかし、その少女の背中には覇王たる覇気がまったくと言っていいほど感じられない。その後姿はまさに年相応もしくはそれ以下の「女の子」であった。

 

「・・・あなたは帰ってくる気はあるのかしらね?・・・バカ一刀」

 

覇王たる少女がなぜ、このような姿を見せるようになったのか・・・。それは、たった一人のある男の消失にあった。

 

その男の名は北郷一刀。かつて、管輅によって予言され、乱世を鎮めんとして遣わされたとされている「天の御使い」その人である。彼は彼女に拾われ、彼女の治めていた国「魏」で警備隊長をしていた。彼は、自分の国の知識を伝え、国の発展に尽くしたり、その人柄の良さから民や兵などからも慕われていた。

 

そして何よりも、彼は彼女を・・いや、彼女”たち”を愛していた。

そしてまた、彼女たちも彼を愛していた。

 

「・・・私はあんな別れは認めないんだから。」

 

少女は願う

 

「・・・だから・・・」

 

震える声で紡ぎだした願い

 

「・・・早く帰ってきてよ、一刀・・・」

 

それは純粋な・・・一人の「女の子」としての願い

 

 

 

 

 

 

 

そして、星は煌きはじめる

春蘭・秋蘭

 

ブゥンッ、ブゥンッ、ブゥンッ ・・・

 

中庭から静かな夜を切り裂く音が聞こえる

 

「ふんッ、ふんッ、ふんッ ・・・」

 

音の発生源は、片目に蝶をあしらった装飾をつけ長い黒髪をはためかせながら、大剣の素振りをしている。名を夏侯元譲、真名を春蘭といい、「魏武の大剣」「魏武の象徴」である

 

「姉者」

 

声を掛ける者の名は夏侯妙才、真名を秋蘭といい、春蘭とは双子の妹であり幼いころより主である華琳を共に支え続けた者である。

 

「ふんッ、ふ・・・ん?秋蘭か?」

 

「ああ、そうだが・・・どうしたのだこんな夜更けに剣など持ち出して・・」

 

「あ、い、いや~その、な?」

 

「・・・・・・思い出したのか?」

 

「!?」

 

元々、秋蘭には分かっていた。なぜ、姉がこんなことをしているのか。

 

なぜなら・・・・・・

 

「・・・私もそうだからな」

 

「!?・・・そうか・・」

 

「こんな日では・・・な」

 

そういって、秋蘭は空を仰ぎ見た。春蘭もつられて空を見る。

 

空には満月が輝いている。

 

「忌々しいことだ」

 

「・・・秋蘭」

 

滅多に吐かない妹の愚痴

「我らから一刀を奪って、よく顔を出せるものだな、あの月は・・・」

 

「・・・」

 

悔しそうな表情。彼がいなくなって3年経つが、未だに天への怒りが晴れることのない秋蘭。

 

 

 

 

彼女たちは華琳が一刀を拾う時に居合わせた。まだ魏という国すらない時からの付き合いであった。

 

初めは胡散臭い奴程度にしか思っていなかった。「天の御使い」として祭り上げれば、華琳の覇道の役に立つ。使えなければ、すぐに捨てればいい、としか考えていなかった。

 

しかし、思っていた以上に彼は有能だった。そして何よりも優しかった。

 

初めて男に対して真名を許した

 

初めて男に抱かれた

 

気づけば、自分たちも本気で愛するようになっていた

 

 

これからも共に歩んでいけると思っていた

 

 

しかし、現実は残酷だった。戦乱が終わり、魏、呉、蜀での3国協定が結ばれた日に一刀は消えた

 

泣き腫らした目元を隠しもせずに一刀が消えたことを話す自分たちの愛する主の姿を見て、二人とも何も考えられなくなっていた。

 

そして、一刀が消えた理由を聞かされた時に本気で気を失いかけた。

 

 

「魏武の大剣」は涙を流しながらも「私が弱かったからッ!!!!」と怒りちらす

 

妹は定軍山の一件で自分の責任だと思ってしまう

 

 

「「自分たちがもっと強ければ、一刀に余計な心配を掛けずに天の知識を使うこともなかったかもしれない」」

他の魏の将も思ったことだろう

 

 

しかし、一番強い想いがあったのはこの姉妹だっただろう・・・・・・

 

 

 

 

 

「・・・・」

 

「なぁ、秋蘭?」

 

愚痴を吐き終えた妹に姉は優しく語りかけた

 

「私は北郷が・・・いや、一刀が好きだ」

 

「!?」

 

驚いた。普段は絶対に口にしないことだ。姉が素直になれない姿を見るのもかつての自分の楽しみの一つだった。彼の前では絶対に言わなかった言葉。誰に言われても認めなかった言葉。

それを堂々という姉にただ純粋に驚いた。

 

「だからこそ・・・分かるのだ」

 

言葉は続く

 

「確かにあやつは武は大した事なかった。智も天の知識がなければそこそこだっただろう。女に対しては節操なんぞ、まるでなかった」

 

・・・姉者、言いすぎだ

 

「しかしだ!!!」

 

春蘭は声を大にして言う

 

「少なくとも、あやつは約束は守る男だ!!」

 

「・・・約束?」

 

「そうだ!!約束だ!!秋蘭は覚えていないか?成都決戦前に3人でしたやつだ」

 

「(約束?・・・・・・はッ!?)」

思い出されるのは成都決戦3日前

 

 

 

「ようやく次で最後かぁ~」

 

「うむ。華琳様の覇道ももうすぐだ」

 

「でも、呉蜀連合だろ?かなりキツイんじゃないのか?」

 

「何を軟弱なことを言っているのだ!!私にかかれば、どんな奴が相手だろうと一撃で粉砕してくれる!!」

 

「でもさ、万が一があるだろ?俺は春蘭が傷つくところなんて見たくないんだよ」

 

「////」

 

「おや、北郷。ならば私はいいのか?」

 

「そんなわけないって。もちろん秋蘭も、他の皆も傷ついてほしくないよ」

 

「ふふ、そうか」

 

「と、というかだなぁ北郷。お前こそ弱いのだから人の心配せずに自分の心配でもしていろ」

 

「ふふ、姉者は北郷が心配なのだな?」

 

「しゅ、しゅ~ら~ん」

 

「あはは、ありがとう。春蘭、秋蘭」

 

「・・・しかし、なんだな。まさか北郷がここまで一緒にいるとは思わなかったな」

 

「まぁそうだね。でも、そうか。2人とは華琳も含めて一番付き合いが長いんだよね」

 

「ふん、運だけは強いようだな」

 

「ふむ、そうなるな。ならばこそ、我らだけは何があろうとも華琳様をこれからも支えていかなければならぬな」

 

「ああ、もちろんだ」

 

「言われなくても!!」

 

 

「「「オレ(私)たち3人は華琳(様)をずっと支えていくんだ!!!」」」

「そう・・・だったな。約束をしたのだった」

 

「そうだ。だからこそ、待とうではないか。あやつが約束を果たしにくるまで」

 

春蘭の珍しく姉らしい一面に苦笑する秋蘭

 

「ふふ、そうだな姉者。だが、待たせた分は相応に償ってもらわねばな?」

 

笑顔が、声には秋蘭らしさが幾分か戻ってきている

 

「もちろんだ。待たせた分だけ叩き伏せてやる」

 

春蘭も最愛の妹に笑顔で答える

 

 

 

二人の想いは一つ

 

 

 

----------------ただ、愛する人に帰ってきてほしい--------------

 

 

 

 

星は答えるように煌きを増した

 

 
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