No.137864

真・恋姫†無双 金属の歯車 最終話

・儚く潰える悲しい物語。

2010-04-22 00:08:16 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:3462   閲覧ユーザー数:3087

―――君を連れて行こう

―――悲しみのない未来まで

―――君がくれた笑顔だけポケットにしまって

―――君を連れて行こう

―――争いのない未来まで

―――君と過ごした思い出をアルバムに残して

 

―――藤林聖子『青空になる』

 

 

真・恋姫†無双~金属の歯車~

最終話 青空になる

 

 

 蛇と狐の戦いが終結し、三国の戦いも幕が下りた。しかし正史は戦いを望んでいた。

正史は彼らの抹消を望んだ。蛇も狐も外史にはもともと存在しない。

『死に損ないが!』

「REX改・・・」

 彼らにとっては因縁の相手だろうか?逆間接の二脚兵器は、頭部から機関砲が二門露出させそれぞれ蛇と狐を狩ろうとしている。

「くっ!」

 スネークは電磁場を体の前面に発生させ、銃弾を反らす。彼はこれで殆どの攻撃をかわすことが出来るが、これは体力の消耗も激しい。加えてREX改の巨大な足が眼前に迫る。

「ちっ!」

 先のフォックスとの戦いで消耗しすぎていた。大きく後ろに跳躍し、その巨大な脚部が眼前に落ちる。

対してフォックスは強化骨格に守られているとはいえ、機関砲を受けたらひとたまりもない。少し離れた場所で必死に横走りしている。

『何をがんばっている?どうせこの世界は後一年の命だ!』

「なんだと?」

『お前達はただこの世界を延命しただけだ!残念だがその延命措置もあと一年だ!』

 二脚兵器後部のミサイルポッドが展開し八発のミサイルがスネークとフォックスに迫った。

「ちっ」

 一刀は手をかざし、電磁場を発生させミサイルを誘爆させる。

その爆発が煙幕となり、スネークとフォックスに僅かな時間が与えられる。

「フォックス、一つ突破口がある」

「なんだ?シャドーモセスのようにレドームはないぞ」

「ただ一発・・・一発が限界だ」

 二人の会話を遮るように機関砲が二人の間に割って入る。

一刀は大きく後ろに飛びながら、希望を伝えた。

「REXのコックピットに一撃を食らわせる!なんとかして隙を作ってくれ!」

 その叫び声にケインの口が大きくつり上がった。

「・・・一刀、生きてくれ」

 蛇腹剣を左手に持ち替え、まるで無策の用にREXに突っ込んでいく。

「トーレ・フォックスからの最後のプレゼントだ!俺が奴の動きを止める!」

「フォックス!」

 死地に赴く戦士の言葉だった。

スネークは思わず、フォックスに向かって手を伸ばす。

しかしそんな感傷に浸る暇はない。切り札をぶっ放すには準備が必要だった。

 

 * *

 

 フォックスはREX改にむかってまっすぐに突っ込んでいく。

『死にに来たか!?』

アシッドは機体前部に搭載された機関砲でそれを迎え撃つ。

フォックスはFPSシステムのロックを振り切り、足からREX改の下に潜り込む。

蛇腹剣が伸び、機体下部に装備してあった自由電子レーザーを破壊する。

爆風に煽られ、REX改が一歩後退する。

しかし隙はそれで充分だった。

丁度M9に専用の弾丸を装填し、いつでも撃てる体勢が整ったところだった。

一刀はM9を構え、自分の能力をその一撃に込める。

「行けぇ!」

 一刀がトリガーを引く。次の瞬間打ち出された弾丸を電磁加速させる。

そう。電磁誘導砲だ。

決死の一撃。

決死で切り開いた最後の希望は、無惨にも大型兵器の直前で大きく逸れる。

「なっ・・・」

『スネーク!電磁場防御がお前だけの物と思うな!!』

 その一言がすべてを物語っていた。

目の前の巨大兵器は、一刀の電磁場防御と同じ物を搭載していたのだ。

切り札を無くしてしまったことに呆然と立ちつくすスネークに機関砲が迫る。

「避けろぉ!」

 フォックスの叫び声に我に返り、回避行動を取るが左足と左腕に銃弾を受ける。

激痛とそのショックから思わずうずくまる。

『REXでつぶしてやる!』

 多量の出血によってスネークの意識はそこに無かった。REXの脚部は吸い込まれるようにスネークに向かっていく。

「一刀!動けぇ!!」

「・・・ケイン?」

 懐かしい声にスネークの意識が戻る。しかし左腕と左足をかすめた傷が彼の動きを、大量の出血は意識を朦朧とさせる。ぼやけた視界に写ったのはREXの足をその身一つで支えているフォックスの姿だ。

踏み潰されない場所まで移動する気力も、次の一撃を避ける体力も気力も残っていない。

「今だ!一刀、レールガンを撃ち込め!」

「なんだと・・・」

「レールガンで俺ごと撃ち抜け!」

「馬鹿なことを言うな・・・」

「天秤にかけろ!俺一人か、それともこの世界か!」

 フォックスの体が軋んでいく。全身をサイボーグ化していないのが仇となったか。

『強化骨格がどこまで持つかな!』

「撃てぇ!一刀ぉ!」

 スネークは天秤に載せることを拒み、三つ目の選択肢を選んだ。

次の瞬間、紅い目となったスネークが片手でREXの脚部を支えていた。

「破ぁ!!」

『何!』

 REXが転倒した。しかしそれと同時にスネークの左足から血が大量に流れ出る。

「一刀!」

 フォックスも満身創痍だった。各所がスパークを放っている。

「フォックス・・・俺の代わりに」

 

 

「転倒ごときで・・・」

 REXは再び起きあがろうとしているところだった。転倒は戦闘にも計器にも影響はないが、逃げられるのが厄介であった。いくら2000年後の兵器でも原始的な罠で戦闘不能になりかねない。早く起きあがりトドメを刺す必要があった。

 しかし、アシッドは遅かった。突如、目の前の装甲が融解を始めた。

「まさか熱破断ブレード・・・」

「追い込まれた狐はジャッカルより凶暴だ!」

 いくら装甲を堅牢に造っても装甲の合間は弱い。その弱点はスネークから受け取った熱破断ブレードによって穿たれ、唯一外界との接点が現れる。

「終わりだ!毒蛇!」

 ブレードを投げ捨て、蛇腹剣を差し込む。途端、REXのコックピットが解放され、アシッドが外界に投げ出される。

フォックスも振動により投げ出され、屍のように倒れ込む。もはや虫の息だ。後方の憂いを絶つためにもここでトドメを刺す。

「死に損ないが!」

 投げ捨てられたブレードを拾い上げ、フォックスに向かって走り出そうとした。しかし腹部に激痛が走りそこに目をやる。

「が・・・スネ・・・ク」

 後ろからスネークの高周波ブレードがアシッドの体を貫いていた。

「終わりだ、アシッド」

 目の前に手榴弾を落とされる。しかし形状はふつうのグレネードではない。焼夷グレネードだ。

「地獄の業火に焼かれて消えろ」

 毒蛇の断末魔が戦場に響いた。その断末魔はすべての戦いが終わった証でもあった。

 

 

「・・しゅ・さ・・・ごしゅ・・・ごしゅじん・・・」

「とう・・・か」

 視界がぼんやりしていた。すべてが虚ろに見え、発する言葉も自分が果たして正しく発音できているのかも不安だった。

次第に意識がはっきりし始め、皆の顔が分かる。

「・・・みんな、無事か?」

「この期に及んで我らの心配ですか、なんとまあ」

 星が首をすくめる。

「その憎まれ言葉が正しく聞こえているから大丈夫だ」

 しかし意識が飛ぶ寸前だ。気を強く持っていなければ、すぐに気絶するだろう。

「・・・ケインは?」

 体を起こし兄の姿を探す。視界には蜀の面子が入り、転倒したREX、炭化した兄弟、そして・・・。

「ケイン?ケイン!?」

 兄の傍らで乱世の姦雌が必死に呼びかけている姿だった。

「・・・がっ!?」

「ご主人様!?」

 立ち上がろうとするが左腕と左足に激痛が走り体勢が崩れる。激痛が走った部位を確認するが血は止まっているようだ。どうやら気絶しているときに皆が止血してくれたのだろう。今ようやく自分の手と足の血を止めているのが、今支えてくれている桃香の服の一部だと気付く。

「すまん・・・ケインのところまで連れて行ってくれ」

「ご主人様?」

 愛紗が怪訝そうな声を上げる。

「血はつながっていないが・・・兄なんだ」

 

 * *

 

「ケイン?ケイン!?」

 ケインの目は開いているが虚ろだった。徐々に心拍も弱り呼吸も少なくなっている。

「横に邪魔するぞ・・・曹操殿」

 倒れ込むように一刀が華琳の横に座り込む。

「ケイン?ケイン兄さん?」

 反応がないと言ってもいい。瞳孔も開きかけている。

「かず・・・と・・・」

「何だ?兄さん!?」

「REX・・・正史に・・・」

 一言二言を紡ぎ出し事切れるように体が動かなくなる。華琳や魏の将たちが彼に呼びかけるが反応はなかった。

しかし一刀は違和感を覚えていた。

(・・・何故だ。何でこの期に及んで正史に・・・それにREX・・・)

 何よりの違和感はケインの体から熱が逃げていかないことだった。

(まさか・・・)

 痛みを堪え立ち上がる。行き先はケインの端にあったREXの搭乗席だ。

「こいつ・・・まだ動く」

 損傷という損傷は装備だけで搭乗席も殆ど損傷していない程度だった。搭乗席が開放されたのもおそらく脱出装置なのだろう。

左手と左足を庇いながら搭乗席に乗り込みオペレーションシステムを再起動する。傷ついた体で端末を弄り、一刀はひとつの希望とも言える装置が内蔵されていることを発見する。

単独転送装置だ。

好都合ともあまりにも出来すぎた偶然だが今はそんなことに感心している暇はなかった。REXを再起動する。再び敵が動き出したと思いその場にいる全員がREXを見上げた。

「ケインを・・・乗せてくれ」

「なんですって?」

 華琳の低い声が聞こえる。

「私たちの世界・・・正史なら間に合う」

「間に合う・・・?」

「ケインはまだ生きてる。いや生きることが出来る。だがそれは外史では無理だ」

「確かにあなた達の正史の技術は進んでいるわ。けど可能性はあるの!?」

「正史でも可能性は低い。だが可能性が無いこの外史で、ただ死をこまねいているよりかは・・・」

 蛇はただ冷静にそう言いはなった。

「何よ、ずっと私の側にいるって言ったじゃない!・・・ダメよ・・・そんなの認めない・・・」

ケインは動かない。その傍らで覇王は人目をはばからず泣いていた。

 

 * *

 

「ご主人様!」

「一刀!」

 桃香と雪蓮がREXに駆け寄ってくる。

「離れろ・・・」

 再び意識が朦朧としてくる。どうやら限界らしい。

「ご主人様!約束したよね!みんなで素敵な国を作るって!みんなを笑顔にするって・・・」

 今思えば桃香が大泣きしているのを見るのは初めてかも知れない。人知れず泣いていた夜もあったが、それに寄り添おうとはしなかった。

ただ見守るだけだった。

「その・・・国に私は要らない・・・。私はこの外史の人間ではない」

「けどご主人様は私たちには必要です!」

「そうなのだ!お兄ちゃん!!」

 姉妹の言葉に後ろに座らせたケインを見る。

「済まない・・・私は私の忠を貫く。玲二も連れて帰りたかったが・・・それは叶わないようだ」

 彼の遺体は赤壁に眠っている。呉のみんなが墓を建ててくれるだろう。

だが何よりも気がかりなのは目の前のみんなだった。

「離れてくれ、みんな。私は・・・もう逝く・・・この世界にもう・・・」

 

 

―――蛇はいらない・・・。

 

 

―――優しい貴方の微笑み

―――困難な運命に立ち向かう力

―――伝えることの大事さ

―――全部、貴方にもらったから

―――儚いこの世界、貴方の手で守ったから

―――今はただ翼をたたんでゆっくり眠って

 

 桃香は始まりの桃園を模した場所で一人唄っていた。

その想いが届きますように・・・と。

 

「生きて・・・一刀様」

 

 

キャスト(敬称略)

 

オリジナルキャラクター

北郷一刀/Atomos Snake

ImageCV:宮野真守

 

ジェームス・R・伊達/Ghost

ImageCV:白熊寛嗣

 

ケイン・ウェルナー/Tre・Fox

ImageCV:大塚明夫

 

??/Acid・Snake

ImageCV:小山剛志

 

??/Magna

ImageCV:中村悠一

 

スタッフ(敬称略)

 

シナリオ設定

しがない書き手

 

演出設定

しがない書き手

 

軍事・武器設定協力

琉架

 

その他設定協力

友人N

 

オリジナルキャラクター設定

しがない書き手

脳内保管

 

スペシャルサンクス+スペシャルリスペクト

メタルギアシリーズのスタッフの皆様

恋姫†無双シリーズのスタッフの皆様

応援してくださった皆様

閲覧してくださった皆様

支援してくださった皆様

お気に入りにいれてくださった皆様

 

 

おまけ:タイトル元ネタ

二十一話 蜀漢建国  ~The Rule of Virtue~ 忘れた

 

蜀漢建国編

二十二話 七縱七禽  ~Which or Which~ 適当

二十三話 天下三分  ~The Three Kingdom~ 三国志の英訳

 

蜀漢編

二十四話 Atomos Snake ~大気的蛇~ 一刀のコードネーム

二十五話 北郷一刀 ~GENE~ MGSのサブテーマより

二十六話 加速世界 ~Made in Heaven~ ジョジョの奇妙な冒険の登場人物、プッチ神父のスタンドより

 

赤壁の戦い編

二十七話 五虎将軍  ~FOXHOUND~ 狐を狩るもの。MGSにおいて蛇一族と縁深い部隊名

二十八話 Ghost ~幽体行列~ MtG同名カードより

三十話  赤壁決戦  ~PEACE WALKER~ MGSシリーズの新作Peace Walkerより

 

新野の戦い編

三十一話 Zanzibar Land ~因縁ノ地~ MG2の舞台ザンジバーランド。MG2においてスネークとフォックスが戦った場所。

三十二話 青空になる 仮面ライダークウガED「青空になる」より

 

 * *

 

参考画像:メタルギアREX

 

 

―――そうか、雷蛇が戻ったか。

―――毒蛇も所詮その程度の奴だったということか

―――・・・なに、何れあの世界は俺たちのものになる

―――事は順調に進んでいる

―――ああ、雷蛇は遅すぎることに絶望するさ

―――ふふふ・・・


 
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