この作品は恋姫の二次創作です。
オリキャラ込みです。
初めてなので駄文です。
それを踏まえて読んでいただけると幸いです。
第19話:あさきゆめみし
白狼は修羅と化していた。
彼女の周りには既に曹操軍の兵が物言わぬ山となって積まれていた。
それだけ怒っているのである。
白狼「貴様ら……、生きて帰れると思うなよ!」
そして、その山はさらに高くなっていく……。
健「はっ、俺もまだまだやなぁ」
鎌鼬を引き連れて退却しながら、健は先ほどの行動を反省していた。
健「これじゃ雪蓮に顔向けでけへん」
亞莎「健様!」
と、そこに現れたのは亞莎であった。
袖口から彼女の「武器」が見えているあたり、戦いながらここまで来たのだろう。
健「亞莎?」
亞莎「冥琳様から撤退の指示が出ました」
健「……ここらが引き際、ってか」
亞莎「そういうことです」
健「でもそれだけなら伝令でも出したらすんだやろ、何でわざわざ来た?」
亞莎「……雪蓮様の事について、お耳に入れたいことがありまして」
健「……わかった。じゃあ白狼つれて帰るわ」
亞莎「私も行きます。白狼さんにもお伝えしなければなりませんし」
健「……そか」
亞莎の話に、最悪の事態が頭をもたげるのを振り払いつつ、白狼の元へ向かった。
白狼「もう終わりか!曹操軍の兵はやはり卑怯な手しか使えんのか!」
健「白狼!」
戦斧を振るい続ける白狼の元に、健と亞莎が姿を現した。
白狼「師父!亞莎殿!」
健「白狼、帰んで」
白狼「何を言っている!私はまだ戦えるぞ!」
健「お前が戦えても兵が付いて来れへんやろ。今は雪蓮への想いで疲れを感じひんけど、いつかその効果も切れる」
白狼「しかし!「それとも……」……」
健「お前は俺との約束、破る気か?」
白狼「……わかった」
「約束」と言われ、渋々ではあるが白狼も撤退を開始した。
その途中、呉軍から勝ち鬨が聞こえてきた。
健「……蓮華か」
これなら、雪蓮の後を……。
おっと、縁起でもない。
白狼「それで、亞莎殿。雪蓮殿は?」
亞莎「はい。雪蓮様の容態なのですが……」
神妙な面持ちで亞莎が口を開いた……。
戦が終わり、皆が雪蓮の元に戻ってきた。
蓮華「お姉様!」
蓮華はすぐに雪蓮の元へ駆け寄る。
雪蓮「蓮華……ぐうっ!」
蓮華「お姉様!?大丈夫ですか!?」
雪蓮「はは……。う、腕が、ね。毒のせいで焼けるようなの」
蓮華「爺!どうにかならないのか!」
隣で処置している老人に怒鳴る。
この人は古くから孫呉に使えている医者だ。
爺「正直に申しますと、今策様が生き長らえているのは子義様の処置と本人の生命力の賜物です。解毒しようにも、既に右腕には毒が回りすぎている」
蓮華「そ、そんな……」
皆、言葉が出ない。
今、雪蓮の命は風前の灯である事実に対して、何も出来ないのが辛い。
爺「1つだけ治す方法があるとすれば……」
??「腕を切断する、やろ?」
別方向から返ってきた声を聞いて、皆がそちらを向いた。
蓮華「健!」
そこには、亞莎と白狼を連れた健が立っていた。
健「話は亞莎から聞いた。ただ、それをすべきかどうか……って所か。じーちゃん」
爺「……その通りです」
健「……雪蓮」
雪蓮「なに……?」
健「誇りある死を望むか、生き長らえる事を望むか?」
祭「……健よ、それはどういう意味じゃ?」
健「片腕失ってでも生きるか、呉の王として死ぬか?ってことや」
片腕を失い、戦を行うことはもはや不可能。
つまり、一線を退く事になる。
そうしてでも生きる事を望むか。
それとも、最後まで皆の前で戦い、死ぬか。
そういう意味である。
思春「……お前は、雪蓮様に生き恥をさらせと言いたいのか?」
思春が震えている。
その姿からは、怒りと悲しみがごちゃ混ぜになっているのがよく分かる。
健「それを雪蓮に聞きたい。……ただな、思春」
思春「何だ」
健「生きたい、って感情は恥とちゃう。この世界の常識はまだよう分からんけど、それでも、生きる理由があって、それで生きる事を選ぶなら、それは何も恥とはちゃうで」
思春「……」
冥琳「……しかし」
と、今まで黙っていた冥琳が口を開いた。
冥琳「しかし、それでも、雪蓮は孫呉の王だ。王として、誇りを持ち、常に皆の前で勇ましくあった。最後までそうあって欲しい」
健「……それは軍師、周公謹の意見やろ?」
冥琳「……」
健「親友の冥り「そんなのっ!」……」
冥琳「生きていて欲しいに決まっているだろうっ!でも、それでもっ……」
冥琳はそのまま、健の胸で泣き出した。
健は頭を撫でながら、再度問う。
健「……雪蓮。もう一回聞く。誇りある死を望むか、生き長らえる事を望むか?」
その問いに、雪蓮が口を開いた。
雪蓮「……私は、孫呉の王よ。死ぬ事は、恐れていないわ。それが皆の糧となり、敵を砕くのなら、死を選ぶわ」
雪蓮の選択は「誇りある死」だ。
しかし、
健「……それは、孫伯符の答えやろ?雪蓮の本音が、俺は聞きたい」
健はその答えを良しとしなかった。
健「……雪蓮」
雪蓮「なに……?」
健「俺は、もう大事な人達が死ぬのを見たないねん。俺が冥琳とおるのを冷やかしたり、一刀を強引に引っ張っていったり、祭さんと酒家で飲みまくってたり……。そんな雪蓮を見てたいねん。やからこの問いをした。……でも、それでも、雪蓮が誇りある死を選ぶなら、俺はもう何も言わん」
雪蓮「……」
健「これで最後。……誇りある死を望むか、生き長らえる事を望むか?」
雪蓮「……」
重い沈黙。
ずっと続くかと思われた。
しばらくして、雪蓮がもう一度口を開く。
雪蓮「……私、は」
健「応」
雪蓮「……もっと祭と飲みたい。蓮華やシャオが成長するのを見ていたい。冥琳が幸せそうなのを見ていたい。もっと……」
雪蓮からは、大粒の涙が溢れていた。
雪蓮「……もっと一刀と一緒に、いたいっ……」
健「……決まり、やな。じーちゃん」
爺「……はい」
健「後、頼むわ。雪蓮をよろしくな」
爺「任せてくだされ」
爺の返事を聞いて、皆は処置のため、その場を後にした。
その後、雪蓮の処置は無事終了した。
片腕は失ったものの、命の危険は無くなった。
ただ、当分は安静にしていなければいけないらしい。
健「……なぁ、一刀」
一刀「……何?」
2人は、深夜の城壁の上にいた。
健「俺、アレでよかったと思うか?」
一刀「何で?」
健「……何か自分の意見を押し付けたようで……」
??「……そんな事は無い」
声のした方を2人は向く。
蓮華と冥琳だった。
蓮華「正直、私も悩んだ。お姉様には勇ましくあって欲しい。しかしその前に、私とシャオにとって、唯一の姉だからな」
冥琳「健の言葉、そして北郷の存在が無ければ、こうはなっていなかったさ」
健「そうか?」
冥琳「ああ」
一刀「……だ、そうだからさ、健。気にしなくていいんじゃない?」
健「そんなもんかね」
4人は黙って、空を見上げる。
現代の都会では見ることのできない星の数だった。
一刀「……また雪蓮と酒が飲めるまで、どれくらいかかるかな?」
冥琳「爺の言うには、体に残った微量の毒が抜けきるまでは駄目らしい」
健「じゃあ雪蓮が回復したら、皆でパーッと飲むかぁ」
一刀・冥琳「健は駄目(だ)」
健「はぁ!?」
蓮華「? 何故健は駄目なんだ?」
一刀「あ、蓮華は知らなかったっけ。実は……」
冥琳「詳しく話さんでいい!」
夜空の元で談笑する4人。
この中に再び雪蓮が戻るのも、そう遠い事ではない。
gatsu「えー、前回よりまただいぶ時間が空いてしまい、申し訳ありません」
gatsu「新生活が始まり、ようやっと一段落です」
gatsu「まぁ今月はまだまだ忙しいのですが、なんとか更新ペースを戻せるよう、努力します」
gatsu「まだまだ成長しない文章ではありますが、読んでくれることを期待してこれからも頑張っていきます」
gatsu「では、次回で」
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ずいぶんとご無沙汰してしまいました。
なんか久しぶりすぎて文章の雰囲気かわってもうてるし(汗