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『舞い踊る季節の中で』 第28話

うたまるさん

『真・恋姫無双』の二次創作のSSです。
明命√の作品となります。

河北の雄、袁紹の檄文と噂が、各地にばら撒かれる。
その檄文の内容と、雪蓮達に、一刀は・・・・・・・・・・

2010-04-09 22:47:54 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:21756   閲覧ユーザー数:15558

真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』

  第28話 ~ 策謀の渦に舞う想い -中編- ~

 

 

(はじめに)

 

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

        :●●●●

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(ただし本人は無自覚)

         気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

         神の手のマッサージ(若い女性には危険です)

 最近の悩み:最近二人の様子が変だ。無論二人と言うのは、翡翠と明命のことなんだけど、なんと言うか、

         よく分からないけど変なのが分かる。具体的に言うと、時折考え事でもしているのか、ボー

         としているかと思ったら、顔を赤くさせて、なにやら考えを振り払うように、顔だけでなく

         手足を慌てて振り回している事が多くなった。

  (今後順序公開)

 

★オリキャラ紹介:

諸葛瑾:

  姓 :諸葛    名 :瑾    字 :子瑜    真名:翡翠

  武器:"双天" 対の双剣

  武力:52(平均的な将を60とした場合)

  智力:81

  政治:89

  家事:92

  魅力:想像にお任せします(w

  焦った時の口癖:『 あうあう 』又は 『 ぁぅぁぅ 』等の類語です

  性格:基本的に温厚で、外見に反して大人の女性

     だが、焦ると地が出てしまう。(朱里と違って、自分を律しています)

     警戒心が強い性格だが、一度心を許されると、親身になってくれる。

     妹がいるため、基本的には面倒見が良く、放っておくと、食事を取るのを忘れる明命を心配してよく

     食事を差し入れていた。

     やはり、妹がいるためなのか、時折人をからかって、その反応を楽しんだり、とんでもない悪戯を仕

     掛ける悪癖もある、だが性質の悪い事に普段が完璧なだけに、周りは怒るに怒れないでいる。

     家事全般は人並み以上に出来、そこらのお店以上と自負していたが、丹陽で知り合った男性の腕を見

     て自信を喪失。 以降こっそり腕を磨いているが、全然敵わないと嘆く毎日を送っている。

     武術は好きではないが、妹達を変態共から守るため、必要最低限身に付けたもの。

     姉妹揃っての発育の悪さをコンプレックスに思いつつも、それを武器にする強かさを持っている。

     自分を子供扱いしない男性が好みだが、言い寄ってくるのは変な趣味の持ち主ばかりで、17の時、現

     実の男(変態の多さ)に愛想が付いた時に『八百一』と出会う。 以降のめり込み、妹達を洗脳する

     も、基本的には周りには秘密にしている。 そのうち執筆も行うようになり、掲載されるようになる。

     数年たった現在では、定期的な愛読者もつき『八百一』の主要作家の一人となっている。

     黄巾の乱後、作品が益々洗練され、世に愛読者を急増させる要因となった。

一刀視点:

 

 

「ん、よし入って構わぬぞ」

「あの、聞き・」

「お~い、こっちの搬入をちょっと手伝ってくれっ!」

「分かった、今行く!」

 

門兵は俺の言葉も聞かずに、階段下の別の兵に呼ばれて、駆けていく。

・・・・・・邪魔したら悪いかな、まぁ中で道すがら誰かに聞こう。

そう思い、何度か通った道を歩み始める。

 

「・・・・・・・・こういう時に限って、誰にも会わないんだよな~、いっぺん戻るか?」

 

そう思い始めた時、剣戟の音が聞こえる。

ん? 確かこっちは庭だよな。 誰か居るのかな?

とりあえず、下手な事に巻き込まれてもなんだし、ただの鍛錬だったにしても邪魔をしては悪いので、最低限で気配を周りに溶け込ます。

やがて、感じる気配の感触と、遠めに見える人影から、それが思春と分かり、

 

(孫権の鍛錬に付き合っているのか、邪魔をしたら悪いな、一段落付くまで待つとするか)

 

そう思い、思春に気づかれて、邪魔してしまわないように、もう少しだけ気配を周囲の自然物に合わせる。

 

やがて、

大人と子供の差程もある鍛錬も、終わりに見えかけたとき、

孫権の集中力が酷く乱れ、

 

ギィーーーーーッン!!

 

集中力が乱れたせいで、思春の一撃を受けきれず、剣は大きく弾き飛ばされてしまう。

 

(危ないなぁ、今のは一歩間違っていたら、大怪我だぞ。

 まぁ思春の腕なら、最悪でも腱を斬る程度で済むだろうけど、危険だった事には違いない)

 

案の定、思春はその事に気がつき、険しい目で孫権を睨み付ける。

だが、孫権も今のは自分に非があったのは分かっていたらしく、素直に謝罪する。

 

(うーん、この辺りはやはり姉妹なのか、潔いよな、そっくりだ)

 

そう思っていると、孫権達は再び剣を構え出し、

あっ、いけない目的を忘れる所だった。

俺は目的を思い出し、警戒しない程度に、周りに溶け込ませていた気配を少しずつ戻す。

すると、戻し始めてすぐに、思春は此方に気付き、その構えを此方に向け、

 

「・・・・・・・・・・貴様、いつから、そこにいた」

「んー、思春が『闇雲に切り込めば良い・・・・』と言った少し前辺りからかな」

「・・・・・・くっ、不覚」

 

(えーと、とりあえず、構えを解いてくれると、ありがたいんですけど)

 

まぁ、そんなわけで、覗き見ていた形になってしまった謝罪も籠めて、思春に軽い助言をしたのだが、逆に明命にも教えるように言われてしまう・・・・・・・・まぁ、この程度なら構わないか

 

「で、北郷は何の用で、城に来たのだ」

 

孫権が、睨み付ける様に此方を見詰め言い放つ・・・・・・・・えーと、賊に堕ちてしまった人達の埋葬や舞いの件で怒ってるのかな? それとも、孫策との膝枕の件かな・・・・・でもあれに関しては、俺は無実を訴えたいけど、きっと聞いてくれないよな・・・・・・・・

まぁ今は、とにかく孫権の質問に答えないと、よけい機嫌を悪くさせるだけだろうと、

 

「ああ、孫策達に呼ばれてね。

 翡翠の部屋に来いって事なんだけど、よく考えたら、翡翠の執務室には行った事無かったから、どうしよう

 かと思ってね。で、戻って門兵の所で聞いてこようとしたら、孫権たちを見かけたんで、せっかくだから、

 聞こうと思ってね」

「・・・・・・呆れたわ、貴方それでも軍師のつもり?」

 

と、俺の言葉に心底呆れたのか、歳相応の女の娘らしい表情と言葉遣いを見せる。

へぇー、こんな表情も出来るんだ。

いや、おそらくこれが地なんだろう、普段そうさせないのは、孫家の姫としての自尊心と、支配階級である事を自分に課しているいるのだろう。

そして肝心なのは、それを奢ることなく、民を導くために必要な事と理解している事だ。

そして、そのために研鑽する事を厭わない。確かに、自覚とその心意気だけなら、現状でも上に立つ者としては、孫策以上だよな。

孫策が自分の後継者と推す気持ちは分からないまでもない。でも・・・・・・・・・・

 

「こっちだ。付いて来い」

 

孫権は、気が緩んだことに気がついたのか、すぐに顔を引き締め、俺にそう言うと踵を返して歩いていく。

 

 

 

 

 

 

「蓮華様、どうして、蓮華様が一刀君と」

「こいつが、迷って庭をうろついて居たから、連れて来ただけだ」

 

孫権は、俺と思春を連れて翡翠の執務室に入るなり、俺に弁解の余地もない言葉を翡翠に一方的に告げた。

・・・・・・・・いや、確かに孫権にそう説明したのは俺だけど、もう少し言い方と言うものが在ると思うんですが、

とりあえず、翡翠はなんとなく此方の事情を察してくれたようで、呆れた目を向けられることなく、侍女に孫策と周瑜に俺が来た事を伝えるように申し付けた。

やがて、孫策が周瑜を引き連れて

 

「翡翠入るわよ。って、蓮華、何で貴女と思春まで、まぁいいわ。 思春分かっているわね」

「はっ」

 

孫策の言葉に、思春は、部屋を出ていき、やがて気配を消す。

なるほど・・・・・・・・まぁ、うまい事追い払うだけだろうが・・・・・・・、

思春の行動に、一応俺も、気をつけておく事にするか。

 

そう思い、とりあえず壁に掛けてある槍に向かって、にっこり微笑んだ後、両手で自分の顔を横に引っ張りながら、顔を崩してみる

 

ビクッ

 

俺の顔に驚いたのか、動揺する気配と共に、その気配の持ち主は、部屋から遠ざかっていく、

とりあえず、部屋の周辺はあの一人か・・・・・・・・もう一度確認した後振り返ると、

 

「「・・・・・・・・・・」」「♪~」

 

白い目で、俺を見詰める四つの瞳と、俺の行動を面白げに眺めている二つの瞳があった。

・・・・・・えーと、失敗しちゃったかな

 

「北郷、やりたいことは判るが、あまり奇抜な行動は控えてくれ」

「一刀君、後でどんな顔したか見せてくださいね」

「え~~、面白いじゃない、あんなふうに追い払ったの、初めて見たわよ」

 

三者三様な反応だったが、とりあえず、今の一件はそれで終わりなのか、視線で近くに来るように促される。

ちなみに、孫権は、俺の突拍子もない行動に、目を点にさせて固まっていた。そういえば孫権の立ち位置だと、さっきの顔を見られたかもしれないな・・・・・・

まぁ、常識人ほど、こういう行動には弱いから・・・・・・・・でも孫策の妹なら、こう言う事には慣れてそうな気がするんだけど・・・・・・・・俺の偏見かなぁ?

 

まぁ、とにかく話をする準備は出来た。

庭でも謁見の間でもなく、翡翠の部屋か・・・・・・・・まぁ、俺に落ち着いて話を聞いてくれ、と言うことなんだろうな。

 

「一刀、態々来てもらって悪いわね」

「俺にとって、あんまり良い話じゃないのは、呼ばれた時から分かっているよ、話を聞こうか」

「そう、なら話は早いわ」

 

孫策は、懐から書簡を取り出し、俺に手渡し俺に促す。

まぁ読めと言う事なんだろうけど、俺は、促されるままに書簡をひろげると、

 

・・・・・・・・成る程、

 

「で、孫策は、もう決めたんだろ」

「ええ、この機を逃す気はないわ

 一刀、正直に言うわ。 今回の戦に大義は無いわ、其処に書かれた董卓の悪行も、恐らく虚言いえ、一部の

 人間の一方的な言葉でしょうね」

「董卓について、何処まで掴んでいるんだ」

「董卓自身については不明だが、今回の事は恐らく、都で暴政を働いていた官共の大粛清が発端だろう。

 そして、それを面白く思わない者達が、こうして呼びかけを行った」

 

俺の質問に、周瑜が答える。

恐らく嘘は言っていないと思う。

俺の世界では董卓の暴政は有名だが、史実が本当とは限らないし、この世界が史実と同じとも思えない。

実際に違う点が多い。それでも、時間の流れを無視すれば、大筋そのものは変わっていないようだ。

だが、俺の世界の歴史を元に動くのは、やっぱり危険でしかないな。俺自身そう歴史に詳しいわけでもないし、そのとおり流れるとも限らない、半端な知識は変な先入観を与え、目や判断を曇らす事になる。

なら、俺は俺の考えのままに判断し、動くしかないか。

 

「つまり董卓のおかげで、都の民は平和に過ごしていると、分かっていて都に攻めいる、と言っているんだな」

「そうね、そう言う事になるわね。

 でも、私達はこれを利用して、力を得る絶好の機会なの。そのためには、董卓には犠牲になってもらうわ」

「孫策はその悪行に、俺にも加担しろと言うわけか?」

「貴様っ、我等を愚弄する気かっ!」

 

俺の言葉に、孫権が大声を挙げ、激昂する。

・・・・・・・・・・やっぱりな、思ったとおりだ。

俺は、短い付き合いながらも、孫権の王族としての、上に立つものとしての違和感を、確信に変えた。

そこに、

 

「蓮華っ、貴女はそこで黙って聞いてなさいっ!」

「なっ!姉様っ」

「一刀、妹の非礼は詫びるわ。 ああいう所も含めて、まだ未熟だから勘弁して頂戴」

「いいよ、なんとなく予想はしてたから、・・・・・・・・話を戻そうか」

 

孫策は妹を嗜め、俺に促されるように、そして、妹を一度見て、

それは、果たして、俺に伝える為なのか、それとも妹に伝える為なのか、

優しく、そして、毅然とした決意を籠めた声で、言葉を紡ぎ出す。

 

「悪行か、そうね。

 一刀の言うとおり、自分の利で、いいえ、そうでなくても、戦をしようなんて人間は悪人よ。

 どんな大儀を掲げたところで、民草にとっては、自分の家族を奪う憎むべき物でしかないわ。

 それを相手が無実と分かっていて、戦をしようとしている私は、とんでもない極悪人に違いないわね。

 きっと、死んだら地獄に落ちる事になるでしょうね。

 でも、それでも、今、動かなければいけないと思っている。

 私は、私の守りたいものの為に、此度の戦に参戦する決断をしたわ」

 

孫策は、哀しげに、

だけど、最後は、はっきりと、

その力強い意思を灯した瞳を、俺に向け、

自らの思いを告げた。

 

 

 

 

 

 

孫策の決意から、長いようで短い沈黙が訪れ、

やがて、

 

「で?」

 

俺の、そんな言葉がその沈黙を破った。

 

「でって、・・・・・・一刀、その返事が欲しいと言うか、できれば協力して欲しいかなぁー・・・・・・と」

 

俺の言葉が、あまりにも意外だったのか、孫策は本気で困ったような顔をして、呟いている。

うーん、こういう孫策も新鮮だが、あまりこのまま放って置いても、先に進まないので、

 

「返事も何も、俺は孫策に協力するって言ったろ。 しかも二回目は盃を交わしてまで、

 だから、俺は話しの続きを促しただけさ」

 

俺のあっけらかんとした言葉に、

ついつい笑みが零れてしまう俺に、

孫策は、やがてその言葉の意味が浸透すると共に、孫策は怒りと羞恥心で、顔を赤くしながら、

 

「一刀っ、貴方分かってて、からかったわねっ!」

 

びゅっ!

 

と、素手で俺に殴りかかってくる。

俺はそれを余裕で避わした所に、蹴激が放たれるが、室内、しかも物の多い部屋の中では、そう勢いが出るわけもなく、俺は笑みを浮かべながら、紙一重で避けてみせる。

 

「ちっ、邪魔な物が多いわね」

「たぶん、俺への対策だったんだろうけど、逆に足を掬われる結果になったね」

「煩いっ!」

 

ボッ

 

おいおい、だんだん動きが滑らかになってないか、ろくに足元も見ずに、よくあれだけ動けるものだな。

翡翠や明命の言っていた、例の勘ってやつか?

 

「皆の前で、柄にも無い恥ずかしい事言わせておいて、このっ、一発くらい殴らせなさいよっ」

「そもそも、協力するって言った、俺の言葉を信じていなかった孫策が悪いんだろう」

 

そう言いながら、俺は孫策の拳を前に出ながら避わしざま、孫策の脚を引っ掛け、軽く彼女の肩を押してやる。

 

ポスッ

 

姿勢を崩された孫策は、体勢を崩しそのまま、椅子に座り込むようにゆっくりと倒れる。

 

「少しは落ち着けって、別に孫策を本気でからかったわけじゃないさ。

 孫策がどう思っているか、この際聞きたかっただけだよ。まぁ最後のは、何と言うか・・・・何となくだ」

 

俺の言葉に、孫策は座ったまま俯き

 

「なによそれっ、だいたい、いくら約束してくれてたって、あれだけ・・・・・・傷ついていたら、

 ・・・・約束・・・・だからって・・・・・」

 

だんだん、はっきりしなくなる、孫策の言葉に、

悲しげに、震えさせる声に、

俺は、

 

「・・・・・・ごめん、俺泣かすつもりじゃ」

 

せめて、謝りたいと、近づく俺を、

震えるように、突き出された孫策の手が、俺の頭を優しく抱きしめ、

 

「ていっ!」

 

ガツンッ!

 

「がっ」「い゛」

 

掛け声とともに、至近距離で勢いよく突き出された頭突きを、避わせる術等あるはずも無く。

騙され、不意を衝かれ、頭を抑えられた俺は、まともに頭突きを喰らい、短い悲鳴を上げる。

 

「・・・・・・つぅぅ~~~~~っ」

 

まだ、目の前に星が飛んでいる中

 

「いたたたっ、でも、すっきりしたわ」

 

孫策は、自分も頭突きの痛みに堪えながら、俺とは違い嬉しそうに呻き声を挙げていた。

 

「・・・・・・こ・この馬鹿孫策、なんちゅう事を・・・・・・・・」

「ふふんだ。一刀の弱点発見♪」

 

俺の痛がる姿が嬉しいのか、それとも俺を騙せたのが嬉しいのか知らないけど、

涙目に、頭突きの痛みに堪えながら喜ぶ彼女に、俺は痛みに堪えながら、懐から軟膏を取り出し、

 

「まったく、頭突きなんかして、せっかく可愛い顔しているのに、おでこが赤くなってるじゃないか」

 

そっと、痛まないように、彼女の額に塗ってやる。

 

「か・・・かわいいって・・・・」

「明命もそうだけど、女の娘なんだから、もう少し自分を大切にしたらどうだ」

 

薬を塗り終え、手を離すと、

あれ、またなんで、顔を赤くしているんだ?

 

「一刀君、後で話がありますから、覚えておいてくださいね」

 

そこへ、翡翠の言葉に、我を取り戻したのか、すぐにいつもの顔に戻る。(ただし、額は赤いまま)

というか翡翠、なにか、怒ってませんか? すごく圧力を受けるんですが・・・・・・・・

 

「一応謝っておくよ。 元はと言えば、俺が情けない姿ばかり見せてたから、心配したんだろう。

 孫策達には、また情けない姿を晒すかもしれない、迷惑かけるかもしれない。

 でも、堪えて見せるから、乗り越えて見せるから、見守っていて欲しい」

「まったく、そんな事言われたら、何も言えないじゃない。

 一刀が遠慮するなっ、て言いたいのは分かるけど、一刀はもう少し私に優しく教えてくれても罰は当たらな

 いと思うんだけどな」

「あっ、ばれてたか」

「当たり前よ。それに、蓮華の件も含めて態となんでしょ。

 それに関しては此方から、お礼を言わせてもらうけど、蓮華の教育には、一刀も協力して頂戴よね」

「俺に教えられる事があるとは、思えないけどな」

「それでもよ」

 

そう優しい瞳で孫権を見る孫策の目は、姉のものであり、母のような慈愛に満ち溢れていた。

まったく、こういう目をされたら、多少なりとも、気に掛けないわけにはいかないよな。

 

 

 

 

 

 

「で、今度は逆、一刀はどうして、悪業だと分かっていて、賛同するのか教えて頂戴。

 戦をあれ程嫌う貴方が、それでも私達に協力すると言う理由をね」

「別に、心変わりしたわけじゃないよ。 誰が好き好んで、戦に行きたいもんか」

「なら、どうして」

「孫策と同じだよ。 今のままじゃ、守りたいものも守れなくなるのは、分かりきっているからね」

「ほう、それはどういう意味か教えてもらいたいものだな」

 

今まで、俺と孫策を見守っていただけだった周瑜が、その瞳に、冷たい光を灯して、俺を静かに、睨み付けて来た。

 

「答え合わせかい?」

「我等とは違う目を持つ、お前が、この先どのような展開を見ているのか、興味がある、では駄目か」

 

どうみても、俺を見定める目なんだけどな・・・・、

そう思いながら、一度肩をすくめ

 

「黄巾党、宮内での諍い、そして今回の出来事、もう朝廷には諸侯を抑えるだけの力がないのは明白だよ。

 ましてや、この招集を掛けた袁紹、いや袁家は、漢の忠臣とも言える名家。 それが、大義名分があるとは

 いえ、都を攻めると言っているんだ。 もはや、漢王朝の崩壊に、歯止めを掛けられる勢力は無いと言える」

「口に気をつけろ、そのような大それた事、どこで誰が聞いているか分からぬぞ」

 

等と、周瑜は俺を注意する言葉を述べるものの、止める気は更々無いようだ。

周瑜の言葉に、一応もう一度周りに注意を払ってみるが、誰もいない事を確認すると、

 

「この戦が終われば、後に来るのは群雄割拠の世の中だ。 今以上に民が暮らしにくくなる」

「それが、今回の戦に賛同する理由とどう繋がる」

「そんな戦乱の世になれば、各地で領土を求めて戦火が巻き起こり、此処だって安全とは言えない。

 そうなると道は二つ、他勢力に呑み込まれて恭順を示すか、」

「攻められても守れるだけの力を手に入れる。 無論恭順なんて選択は問題外よ」

 

俺の言葉を遮って、孫策がそう口を挟む・・・・・・・・まぁそう言うと思ったけど、

 

「となると、そうなってから動いていては間に合わない。

 それに、たとえ恭順する道を選んだところで、聞いている袁術の陣営では、生き残れないんじゃないかな、

 なら、董卓には悪いけど、今回の件を利用して、名と風評を広め、他勢力を見極める必要がある。

 いずれ来る孫呉の独立と、その後の時代を生き残り、少しでも早く戦乱の世を終わらせるためにもね」

 

俺の言葉に、何故かみんな驚いたような顔をして

 

「ちょっと意外ね、一刀の事だから、もっと綺麗事言うと思ったのだけど」

「ああ、だが翡翠の言が、ある程度本当であることも確認できた。

 たしかに、これだけでも拾い物には違いないな」

「・・・・・・一刀君」

 

中でも翡翠が、寂しさと悲しみと心配を含んだ複雑な目で、こちらを見ている。

 

「えーと、みんなが俺をどういう風に思っているのか、今ので分かったけど、

 やらなきゃやられるって、分かっていて、手を出さない程、俺はお人好しのつもりは無いんだけど・・・・・・」

 

俺の言葉に、それでも心配そうにしている翡翠に、せめて少しでも安心できるように精一杯の笑みを向けてから、孫策と周瑜に向かって

 

「さっきも言ったけど、また情けない姿を晒すかも知れないけど、俺は皆に死んで欲しくないからね、

 そのために、極悪人になる必要があるなら、それでもかまわない。

 俺の力が必要なら、幾らでも力を貸すよ。 その代わり、孫策には前にも言ったけど、皆を含めて、民が笑

 って過ごせる国を作る事、これだけは約束して欲しい」

 

明命と翡翠を、

店の仲間を、

街で知り合った人達の姿を、

孫策に連れ回されて知合った多くの人達を、

それら全員の笑顔を脳裏に浮かべ、俺は、二人にはっきりと、

孫策には三度目、翡翠と周瑜には二度目、後ろで聞いている孫権には初めての約束の言葉を、

彼女達に、俺の想いを、気持ちを告げた。

 

そうだ、今までは巻き込まれただけ、

でも、今度は違う。

自分で足を踏み入れるんだ。

 

正直あの光景をまた見るのは、戦場に立つのは、冗談じゃないと思っている。

でも、明命はその中で将として戦っている。

翡翠だって、前線ではないが、そのために戦っている。

共に孫呉の重鎮、負ければ、おそらく命は無い。

 

それに、俺が幾ら、明命達より強いと言っても、それは本当の強さとは言わない。

無為に死に命を晒す事を強いとも言わない。

本当の強さとは、怖くても、目を逸らしたくても、

それでも、目を逸らさず、歩み続ける力だと思えるから、

彼女達は、そうやって、歩み続けていると思えるから、

 

俺は、足を震わせながらでも、

這いつくばってでも、

一歩を踏み出さなければいけないと思う。

 

二人を、

 

皆を守りたいと思うなら、

体を恐怖に震わせながらでも、

犯す罪から目を逸らすことなく、

俺は、歩んでみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

  第28話 ~ 策謀の渦に舞う想い -中編- ~ を此処にお送りしました。

今回は、一刀の覚悟と決意のお話になりました。

賊討伐の時でも、似たような話がありましたが、改めてと言う事です。

雪蓮としては、あの晩約束を忘れていたわけではないのですが、一刀の傷の深さを垣間見て不安になっていたわけですね。まだまだここで語りたいこともありますが、まだ後編がありますので、残りはそこで、物語を介して語りたいと思います。

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。


 
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