No.134656

恋姫無双 3人の誓い 第六話「盗賊団との戦い」

お米さん

第六話となります。今回は少し戦闘シーンがあったりします。けどあまり期待しないでくださいね・・・。
ちょっと手違いで、ページ替えを忘れていました・・・。すみません。

2010-04-06 00:44:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2180   閲覧ユーザー数:1960

侍女に呼ばれ、城門に向かった俺達の目の前に、武装した兵士達が整列していた。

「うぉぉ・・・こりゃ壮観だな・・・」

兵士達が微動だにせず並んでいる様に、ちょっとした感嘆の声が漏れる。

「すごーい!この人達みんな、白蓮ちゃんの兵隊さんなのー?」

「もちろんさ。・・・とはいっても、本当は正規兵半分、義勇兵半分の混成部隊だけどな。」

「こんなに義勇兵が集まったんだな・・・」

「それだけ、大陸の情勢が混沌とし、皆の心に危機感が出てきているのでしょう。だが、民のため、庶人のため・・・間違った方向には行かせやしないさ。・・・この私がな。」

そう呟いた趙雲の瞳に宿る真剣な光。その光には、自信という言葉以上の強い煌きがあった。

 

 

 

 

 

その横顔は凛々しく、そして誇り高い眼差しに、思わず見惚れていると、

「・・・趙雲殿?」

愛紗も同じことを考えていたのだろうか?愛社が真剣な表情で趙雲に話しかけていた。

「ん?どうされた?関羽殿?」

「あなたの志の深く感銘を受けた。・・・我が盟友になっていただけないだろうか?」

「鈴々もおねーさんとお友達になりたいのだ!」

「ふっ・・・志を同じくする人間、考えは一緒ということか。」

穏やかな笑みを浮かべてそう言うと、趙雲は愛紗に向けて手を差し出した。

 

 

 

 

 

「友として、共にこの乱世を治めよう。」

「ああ!」

「治めるのだ!」

「あー!私も!私もだよ!」

がっちりと握手をしている三人の姿を見て、慌てて駆け寄った桃香が、自分の手を三人の手に乗せる。

「みんなで頑張って、平和な世界を作ろうね♪大丈夫!力を合わせればなんとかなるよ!」

 

 

 

 

 

「ええ、そうですね。我が名は関羽、字は雲長。真名は愛紗だ。」

「鈴々は鈴々!張飛と翼徳と鈴々なのだ!」

「劉備玄徳。真名は桃香だよ!」

「我が名は趙雲、字は子龍。真名は星という。・・・今後ともよろしく頼む。」

再びがっちりと握手を交わし、これからの友として誓い合う四人に、言いにくそうな顔をしながら、公孫賛が俺達の方へと近づいてくる。

 

 

 

 

 

「・・・私だって、救国の志はあるんだから。忘れないでくれよ!ふんっ・・・」

顔を赤くしつつ、プイッと横を向いた公孫賛の姿に、みんなが思わず噴き出した。

そんな風に会話を楽しんでいるうちに、ようやく陣割が決まった。

 

「我らは右翼の部隊を率いることになりました。新参者に右翼全部隊を任せるとは、なかなか豪剛ですな、白蓮殿も。」

「それほど期待されてるってことなのかなー?」

「そうだろうな。・・・頼むぞ、鈴々。」

「任せろなのだ!」

ドンッと胸を叩いて、自信満々にしている鈴々の頭を撫でていると、

 

 

 

 

 

「諸君!いよいよ出陣の時が来た!」

軍の先頭で公孫賛の演説が始まった。

「今まで幾度となく退治しながら、いつもに逃げ散っていた盗賊共!今日こそは殲滅してくれよう!公孫の勇者達よ!今こそ功名の時ぞ!各々存分に手柄を立てぃ!」

「うぉぉーーーーーーーーーーーーっ!」

大地を揺るがす兵士達の声を満足げに聞いていた公孫賛が、高々と剣を掲げ、出陣の号令を出した。

「出陣だっ!」

 

 

 

 

 

 

意気揚々と城門から出発する兵士達とともに、俺達も一隊を率いて移動を開始した。

そんな時俺は、ふと、こんなことを言っていた。

「盗賊相手に初陣か・・・」

「どうかされましたか?」

「いや・・・こういうの、初めてだからさ。」

自分の手の震えを見せながら、不安な心情を正直に話す。

「俺の住んでた世界じゃ、戦いなんて他人事だったんだ。なのに今、俺はその戦いに身を投じようとしてる。・・・ちょっと怖くてな。」

 

 

 

 

 

ちょっと、と強がって言ったものの、本心はものすごく怖い。

今だって、手が震え、足が震え・・・桃香達が近くにいなければ、ヘタヘタと腰が抜けてもおかしくない。

「天の世界には戦争ってなかったの?」

「天の世界っていっても、所詮は同じ人間が住むところなんだ。戦争とか、争いとか、そういうのは当然あったよ。いつも世界のどこかで戦争が起こってる。・・・だけど俺の周りは平和でさ。喧嘩ならあったけど、戦いってものは無かった。」

 

 

戦い。それは人と人とが殺し合うこと。

 

 

戦争だの、紛争だの。言葉でのみ知っていた単語が、現実となって自分の前に現れ、否応なく対峙しなくてはいけない。怖がるなってのが無理ってもんだ。

「愛紗や鈴々、桃香だって平気そうなのに。・・・男の俺が怖がってれば、世話ないよな。ははっ・・・」

 

「そんなことはありません!戦いを怖がるのは、人として当然のことですから。」

「そうだよ。戦うってことは人を傷つけることだもん。・・・本当はやっちゃいけないこと。」

「だけど不条理な暴力を見つけたら、それに向かって敢然と立ち向かうしかないのだ。」

「うん。私達だって、正直言うとちょっと怖いけど・・・でも、私達が怖がっていたら、力の無い人達を助けることはできないから。」

「強いな・・・三人とも。」

確かに、そうだ。怯えていて何もしないままじゃ、何も変わらない。でも、もし自分に何かを変える力を持っていたら、怯えず、力の無い人達の代わりに、前へと進むしかないんだ。

 

 

 

 

 

 

「なら戦うしかない、か。」

平和なときなら、偽善ぶるのもありなのかもしれないけど・・・。でも、やっぱり俺は死にたくないんだ。なら戦うしかない。

「・・・・・」

だけど・・・俺に人を殺すことができるのだろうか____________。ジッと掌を見つめながら考える。

 

 

 

 

 

「心配なさらずとも、ご主人様は私と鈴々が命に替えてもお守りいたします。」

「そうそう。だから安心するのだ♪」

「私だって頑張って守っちゃもん!」

「・・・ありがとう。」

出会ったばかりの俺を、こうも励まし、そして包み込んでくれる三人の優しさが心に染み入る。

それと同時に、もっとしっかりしなくては・・・という責任感にも似た感情が湧き上がる。

 

 

 

 

 

 

「自分で決めたことだもんな。・・・俺ももっとしっかりしないと。」

現状を認め、自ら選んだ道だ。都合のいい言い訳で心を任せていては、何かを為すことなんて出来るはずがない。

パシッと一度、頬を叩いて、弱気になった自分自身に気合を入れる。

「頼りにしてるよ、みんな!」

「ええ!我々にたくさん頼ってください。それこそ臣下としての喜びなのですから。」

「ご主人様のためなら、たくさん頑張っちゃう♪」

「鈴々がんばるのだー!」

ガオーッと鈴々が空に向かって吼えていると、

 

 

 

 

「全軍停止!これより我が軍は陣を敷く!各員粛々と移動せよ!」

本陣の伝令が、命令を伝えながら前線に向かって駆け去っていった。

「いよいよですね。」

「ああ、兵隊達の指揮は愛紗、鈴々、よろしく頼むな。」

「合点なのだ!」

「御意。では!」

ペコッと俺達にお辞儀した愛紗が、

 

 

 

 

 

「聞けぃ!劉備軍の兵どもよ!敵は組織化もされていない雑兵どもだ!気負うな!さりとて慢心するな!公孫賛殿の下、ともに戦い、勝利を味わおうではないか!」

「応っ!」

「みんなで一生懸命戦って!勝って!平和な暮らしを取り戻すのだー!」

「おおーーーーーーーーーーーーっ!」

「全軍、戦闘態勢を取れ!」

愛紗の号令とともに兵士達が抜刀する。それと同時に、

 

 

 

 

 

「盗賊達が突出してきました!」

緊迫した面持ちの伝令が、本陣に向かって疾走していく。

「全軍、一人の敵に対して、二人一組でお互い補いながら挑め!一人は防御し、一人はその隙を突いて攻撃しろ!」

「応っ!」

「いよいよ戦いの開始なのだ!みんな鈴々に続けーーーーーーーーーーっ!」

「全軍、突撃ーーーーーーーーーーーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

戦場となった荒野に、剣と剣がぶつかり合う音が響き渡る。ときおり、断末魔も聞こえてくる。その光景を目で確かめてみると、ちょうど人が切り殺されたところだった。激しい嘔吐感が襲うが、必死に我慢。

「ホントに・・・殺し合いなんだな。」

愛紗達はいつもこんな状況の中、戦っているんだよな・・・。そんな風に愛紗のことを考えていると、ちょうど愛紗の姿が目に入った。

 

 

 

 

 

「せりゃーーーーーーーーーーっ!」

ザシュッ!

「ぐぁっ!」

見てみると、愛紗の戦い方は単に切りつけているだけには見えなかった。まるで、舞いでも踊っているかのように、美しかった。

俺が愛紗に見入っていると、自然と、心に余裕が出てきた。

 

 

 

 

 

周りの兵達を見てみると、二人一組になって戦っている。一人が防御に徹し、もう一人がその隙に攻撃する_____________。

一見、卑怯なように見えてしまうけど、戦場でそんな感情は無意味だと思った。

そしてしばらく見ていると、敵の前線が崩れたのが、一目で分かった。

 

 

 

 

 

 

「よし!敵の前線が崩れた!今こそ我らの力を見せ付けるとき!」

「みんな、鈴々に続くのだ!」

周囲の兵達を勇ましく励ました二人が、前線を崩壊させた盗賊団に敢然と立ち向かっていく。それに呼応するかのように、中央と左翼の軍も突撃を開始する。

大地を揺るがす怒涛の足音。その響きは腹の奥底まで伝わってくる。

「すごいな・・・」

壮大だけど・・・でもどこか戦慄にも似た感情を覚えてしまう。

 

 

 

 

 

 

「ご主人様、まだ怖いの?」

「えっ!?」

俺の顔を覗き込んだ桃香が、心配そうな表情で俺の手を握る。

「ご主人様が、何か辛い思いをしてるんじゃないかって、そんな気がして・・・」

「・・・顔に出てたか。」

「ううん。出てはいないけど。・・・でもね、辛そうだなって思ったの。」

「・・・そっか。」

桃香の勘の鋭さに舌を巻く思いをしながら、俺は思っていたことを口にする。

 

 

 

 

 

「目の前で戦いが起こって、そして人が死んでいく。・・・そういうのを見ると、やっぱり辛いよ。」

「優しいんだね、ご主人様・・・」

「そういうんじゃない。多分・・・慣れてないだけなんだろうけど・・・」

決して敗者に同情してるワケじゃない。無限の優しさなんて持っていない。何せ、さっきまで戦っていた敵は、暴力を武器に力無き人達を殺めてきた奴らだ。

 

 

 

 

 

だけど・・・それでも人間なんだ。やっていたことの報いとはいえ、無惨に殺されていく人間を目の当たりすれば、冷静でなんかいられなくなる。そんなことを考えると、胃や胸の辺りが締め付けられるように痛い。

「辛そうだね・・・。だけどね、ご主人様。そういったもの全てを受け止めなければ、人を助けることなんてできないよ?」

「・・・そうだよな。」

全ての人を助けることなんてできっこない。なら、自分の周囲にいる。周囲にいてくれる人間を守るために、自分達は敵と対峙するしかない。

 

 

 

 

 

 

敵、味方。それは一方的な見方でしかないけれど、人はその一方的な見方でしか生きていけないのだから。

「・・・もう大丈夫だ。」

俺の手を握っていてくれた桃香に微笑みを返し、俺はしっかりと前を向いた。

人が・・・いや、敵が逃げていく。その背中に目を焼き付けるために。

 

 

 

 

 

こうして___________。愛紗や鈴々、それに星達の活躍があって、公孫賛軍は完全なる勝利を手に入れた。

 

 

 

意気揚々と引き上げる兵士達の中に、俺達は白蓮と合流する。

「完全なる勝利、だったな。いやぁ、良かった良かった~。」

「やったね白蓮ちゃん♪よっ、さすが!」

「いやいや、桃香達の力があってこそだよ。ありがとう。」

「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいな。」

お気楽な様子で会話してる二人を尻目に、

 

 

 

 

「しかし・・・白蓮殿。最近、何やらおかしな雰囲気を感じないか?」

「おかしな雰囲気・・・?どうだろう、私は特に感じたことは無いけど。」

「だが、星の言うことももっとも、。最近、特に匪賊の動くが活発化しているように感じます。」

愛紗は真面目な顔でポツリと呟いた。

「お主もそう思うのか・・・」

「ああ。ここしばらく、匪賊は増加の一方だ。その者が村を襲い、人を殺し、財貨を奪う。・・・地方ではすでに飢饉の兆候すらでている。」

 

 

 

 

 

「うむ。それと共に、国境周辺で五胡の影もちらついているという。・・・何かが起ころうとしている。そう思えるな。」

「大きな動乱に繋がるかもしれん、か・・・」

「多分・・・いや、きっとそうなるだろうな。」

俺が知ってる三国志の世界とこの世界が同じなら、きっとそうなる。そう思いながら俺は空を見上げる。

視界いっぱいに広がる蒼い空。だが俺には、大陸を覆う暗雲がその身を潜めているようにも見えた。そんな気がしてならなかった。

 

 

 

 

 

そのころ、蒼介達が戦った荒野の近くの森で、この前の斧の男とは雰囲気の違った黒装束がいた。

「へぇ~・・・あんなやつが天の御遣いねぇ・・・なんか拍子抜けだな。もっと強そうなやつかと思っていたのに。」

まるで幼子のような性格の黒装束の男______________王湾(おうわん)は腰までがっくりとしていた。でも、すぐに顔を上げ・・・。

「まぁ、今後に期待ってことで!そんじゃ環(たまき)様に報告してこよう~♪」

王湾はスキップをしながら、この前の黒装束達と同じように、消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうもお米です。今回も最後に新キャラがでてきましたね~。今後どんな展開になってしまうのやら・・・。ご感想とご指摘お待ちしています。それでは失礼します~。

 


 
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