反董卓連合で活躍した雪蓮と、袁術の仲はギクシャクしていた。元々良好とは言えない関係であったが。袁術は雪蓮を困らせようといろいろな嫌がらせを画策するがことごとく失敗していた。
そんな時、袁術軍にある情報が舞い込んだ。
それは、平原の相劉備が徐州州牧に就任するというもの。
それを聞いた袁術と張勲は就任したての頃を見計らって劉備軍に攻撃を開始することに決めた。
しかし、いざ出陣しようとする頃に新たな報告が入る。
江東の各地で農民たちによる一揆が発生しているとの事だ。
もちろんこれは雪蓮たちの仕業だ。
どうするか考えたところこれは雪蓮に討伐に行ってもらうことにして自分たちはそのまま劉備軍に攻め入ることにしたのだ。
当初の予定と少し変わってしまったが、雪蓮たちは遂に独立に向けて動き始めた。
まず袁術の命令を受けて、全軍を引き連れ江東に向けて進軍した。しかし実際に江東に行くわけではなく農民に偽装した兵を率いる蓮華たちと合流し、もぬけの殻となっている袁術領の城を落としていくという方針だ。
そして同時に桃香に書状を送った。
「はわわ! 桃香様! 雪蓮さんからお手紙が届きましゅた!」
「え? 雪蓮さんから? なんだろうなー? もしかして一刀くんのことかもっ!」
ウキウキしながら朱里から書状を受け取った桃香は、その内容を見て青ざめる。
「どうかされましたか桃香様」
「一刀くんには来てもらえないのですかな?」
愛紗と星も内容が気になるのかそわそわした感じだ。
「た、大変だよ~~! 袁術さんが攻めて来ちゃうよ!」
それを聞いた一同は驚愕する。
「ど、どういうことですか桃香様!?」
「う、うん。雪蓮さんのお手紙には袁術さんが就任したての私たちを狙って城を出たって書いてあるの」
愛紗は桃香から手紙を受け取り、内容を確認すると確かにそのような内容が書いてあった。
「どうしよう朱里ちゃん、雛里ちゃん」
愛紗から手紙を受け取った二人は作戦を考える。
「このお手紙には雪蓮さんも袁術さんの部隊の後曲に配置されているそうなので、私たちは正面からぶつかって雪蓮さんの部隊と挟撃をかけるというのはどうでしょうか?」
「えっ!? 雪蓮さんもいるの?」
雛里の策を聞いた桃香が驚く。
「お手紙にちゃんと書いてありますけど……」
「あぅ……」
攻めてくるということに慌てていたので気付かなかった桃香であった。
なぜ雪蓮が袁術軍と共にいるのかと言うと、袁術の頸をとるためだ。
「ねえ袁術ちゃん」
「なんなのじゃ孫策?」
「袁術ちゃんだけの部隊で劉備を倒せるの?」
「そんなことは当たり前じゃ! のう七乃?」
「え~。難しいですねー。もし勝ててもぼろぼろになっちゃいますね~♪」
「なんじゃと! どうにかするのじゃ七乃!」
「えー無理」
「なら私が手伝ってあげようかしら?」
「でも孫策さんには農民さんたちを討伐してもらわなきゃいけないんですよー?」
「大丈夫よ。私がいなくても心配いらないくらい強い子たちよ」
「じゃあそうするのじゃ! 妾のために働くのじゃ」
「わかったわ。ああ、私の部隊は後曲でいいわよ」
「なんでじゃ?」
「一番槍の名誉は袁術ちゃんに譲ってあげるわ」
「うむうむ。孫策もわかっとるのー」
ということがあった。
諸侯たちに侮られないために劉備軍の行動は迅速だった。
そして袁術軍は愚かだった。
奇襲のために素早く徐州入りした袁術軍だが何もせずに留まっていただけだった。
なぜそんなことをしているのか考えた劉備軍だったが袁紹の従姉妹と言うことで納得した。
そして袁術軍の一里手前までやってきた劉備軍はまだ接近に気付いていない袁術軍に、逆に奇襲をかけることにした。
「報告です! 前方一里の所に劉備軍と思われる軍勢を発見!」
斥候をはなっていた雪蓮は報告を聞いてにやりとする。
「分かったわ。兵全員に伝えて。劉備軍と激突しだい袁術軍に反旗を翻すとな」
「はっ!」
兵が去った後、雪蓮は軽く息を吐いた。
「いよいよだな」
一刀は雪蓮に声をかけた。
今回連れてきた将は一刀と明命のみ。
現在明命は見回りに出ている。
「そうね。そう思うとなんだか緊張してきちゃった」
「雪蓮でも緊張するんだな」
それを聞いた雪蓮が顔をしかめる。
「むう。私だって緊張くらいするわよ」
「ははっ。ごめんごめん。……そうだよな。故郷を取り戻すための戦いなのだから緊張くらいするよな」
「そうよ。だからこうしてやる!」
そう言って一刀を抱きしめる雪蓮はどんどん気持ちが落ち着いてきた。
「大丈夫。雪蓮なら絶対出来る」
一刀は雪蓮を抱きしめ返した。
「……そうね。桃香たちがいる。それにここにはいない冥琳や蓮華たちも私たちの勝利を祈ってるわ」
「そう。だからいつも通りの雪蓮で頑張れ!」
一刀の言葉には不思議な力があるらしく、いつも通りに戻った。
「ありがとう一刀。それじゃあ行ってくるわね」
一刀に触れるくらいの口づけをして雪蓮は天幕を出て行った。
残された一刀は顔が赤くなっていた……。
劉備軍に奇襲された袁術軍は混乱に陥っていた。
「七乃! どうして劉備軍がいきなり現れたのじゃ!?」
「……あははー。斥候出すの、忘れてたりして~」
そして今が好機と見た雪蓮は号令を発す。
「孫呉の民よ! 呉の同胞たちよ! 待ちに待った時は来た! ――――宿敵、袁術を打倒し、我らの土地を取り戻すのだ!」
おおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーー!
「全軍突撃!」
雪蓮たちは前方の袁術軍目がけて攻撃を開始した。
ちなみに一刀は、兵士数名と共に後ろに下がっている。
「報告です。孫策軍が動きました!」
「わかった。聞けい! 劉備軍の兵たちよ! 今から我らは同盟を組んだ孫策軍と共にこの地を攻めてきた袁術軍挟撃をかける! 孫の牙門旗は味方だ! 協力して桃香様を守るぞ!」
報告を聞いた愛紗も号令を発する。
この報告は袁術軍にも伝わる。
「孫策殿が我らを裏切り、攻撃を仕掛けてきます!」
「なんじゃと!?」
「あらら~。やっぱり」
「どういうことじゃ七乃!」
「だって反董卓連合の時に、劉備さんと孫策さん仲良かったみたいですしー。それにこんな機会を逃すほど馬鹿じゃありませんよー」
こうしている間にも挟撃を受けている袁術軍は逃げ出す兵も現れ瓦解してしまったが美羽と七乃は戦場を離れ二人で逃げ出していた。
「七乃~、妾は疲れたのじゃ! おぶってたも~」
「さ、さすがにそれは無理ですよ~」
近くの森に逃げた二人は小休止していた。二人とも普段から体を鍛えているわけではないので体力がすぐに尽きてしまうのだ。
そんな二人の前に雪蓮が現れた。
「きゃーっ! でたーっ!」
「きゃーっ! でたのじゃーっ!」
棒読みの七乃と本気で怖がる美羽。
「失礼ね。人をバケモノみたいに言って」
二人は抱き合い助命を嘆願するが雪蓮は却下する。
そして剣を抜いて二人に突きつけた。
「うふふっ、二人仲良く殺してあげる」
獰猛な笑みを浮かべながら二人を見下ろす雪蓮。それを見た二人は泣きだし、さらに力強く抱きしめあった。
「……な~~~んてね」
「……ほえ?」
「……はえ?」
剣を収めた雪蓮にポカンとする二人。そもそも雪蓮は二人を殺す気などなかったのだ。そもそも袁術が好き勝手出来たのも袁家と言う家のおかげなのだから、その袁家がなくなると何も出来なくなってしまうので殺す必要はないのだ。
もっとも、一刀に会うまでの雪蓮なら確実に殺していただろう。良くも悪くも一刀の影響はこんなところにまで浸透していたのである。
こうして二人は逃げ出して行った。
「はぁ~い桃香」
「一刀くん! …………雪蓮さんと明命ちゃんも!」
戦いが終わり雪蓮たちは桃香たちと再会していた。
「なんか私と明命がおまけのようね」
「そ、そんなつもりじゃないですよー」
慌てて繕うが既に遅い。
「まあいいわ。それより今回の事感謝するわ」
「そ、そんなことないですよ! 私たちも袁術さんを撃退するのを手伝ってもらったようなものですし」
桃香の器の大きさに改めて驚く雪蓮だった。
「それで雪蓮殿、袁術の頸はとれたのでしょうか?」
「ううん。逃げられちゃった」
愛紗の質問に軽く答える雪蓮。
「よろしかったのですか?」
「いいのよ。二人だけじゃ何もできないだろうし。……次に私の前に現れたら殺しちゃうかもしれないけどね」
さらりと怖いこと言う雪蓮に怯える雛里。
「雪蓮殿たちはこれからどうなされるのですか?」
「さっき蓮華たちから使者が来て、袁術の城が落ちたみたいだからとりあえず寿春城に行くことにするわ」
蓮華たちも呉の地を取り戻すことに成功していた。
「えー、もう行っちゃうんですかー? せめて一日だけでも休んで行きませんか?」
そう提案するのは桃香。視線はもちろん一刀。
「そうですね。孫呉の独立のお祝いなどをいたしましょう」
「あわわ! それがいいと思いましゅ! 皆さんも喜びましゅし」
愛紗と雛里もそれに頷く。視線は一刀だが。
「どうする雪蓮? せっかくだし俺はいいと思うけど」
「そうね。それじゃあお邪魔させてもらうわ。明命!」
「はい!」
「兵たちを纏めてちょうだい。桃香のところで宴があるとも伝えてちょうだい」
「御意!」
呉が独立して嬉しいのは一般兵も同じ事であった。
こうして桃香たちと共に本城について行った。
「お世話になったわね桃香」
城門前で挨拶をする雪蓮たち。
「いいえ。困った時はお互い様です」
「そうね。あなたたちに何かあったら何でも言ってね」
「その時はお世話になりますね♪」
固く握手をする雪蓮と桃香。
「一刀くんもまたきてね?」
「必ず来るよ桃香……お姉ちゃん」
本人の前ではお姉ちゃんと呼ぶ一刀だった。
「それじゃあちょっとだけ失礼するね!」
桃香はしゃがみこんで一刀を抱きしめた。
「うん♪ これでしばらくは大丈夫♪」
充電完了といった感じの桃香に劉備軍が動いた。
「鈴々もやるのだ!」
「ほう。ならば私も」
「わ、私もしましゅ!」
「し、しししましゅ!」
「…………恋もやる!」
「恋殿がやるのならねねもやるのですぞ!」
次々に抱きしめていく将たち。
そして最後の一人となった。
「愛紗ちゃんはしないの?」
愛紗だった。
「わ、私は人前でそのようなことなどは……」
虎牢関から帰ってきた一刀を抱きしめたのは誰だ。
「へー。それじゃあ愛紗ちゃんはなしということで一刀くんまたね♪」
「っぐ! ええいっ!」
桃香の分かりやすい挑発に乗ってしまった愛紗は一刀を抱きしめた。
「元気でね。愛紗お姉ちゃん!」
満面の笑みの一刀を見た愛紗は破顔する。
「はぁぁぁぁん」
誰よりも長く抱きしめる愛紗だった。
「一刀! …………お姉様と明命も!」
蓮華の桃香と同じような態度に思わず苦笑いする雪蓮と明命。
「……明命。私たちって何なのかなー」
「一刀様といると路傍の石と言ったところと思われます……」
さらにため息を吐く二人だった。
「ひ、久しぶりね一刀。元気だったかしら?」
もじもじとしおらしく振る舞う蓮華に返事を返そうとすると、ピンクの弾丸が目の前に飛び込んできた。
「おっねぇさまーーーーー!」
元気いっぱいで現れたのは孫家の三女、孫尚香。真名を小蓮と言う。
「シャオ! 元気だった?」
雪蓮も久しぶりに妹に会えたので笑顔で迎えた。
そこに蓮華も加わり、孫家三姉妹が勢ぞろいとなる。仲良く三人では話をしているとシャオの興味は一刀へと移る。
「あなたが天の御遣い?」
「ん。まぁそうかな?」
シャオは品定めをするように一刀を見る。
「ふーん。私の名前は尚香。真名は小蓮っていうの。シャオってよんでね♪」
「俺は北郷 一刀。……よろしく、シャオ」
「ん♪ よろしくしてあげる♪ー」
シャオとの自己紹介が終わったところで蓮華が紹介したいと言う者がいるというのでそちらに注目するとキョンシーがいた。
「この者の名は呂蒙。字は子明。……我らの新たな仲間です」
真名は亜莎という。
関羽を殺したとされる武将だった。
「刮目して見よ!」
「ど、どうしたの一刀?」
「い、いやなんでもない」
つい口に出していた一刀だった。
雪蓮は亜莎に話しかけお互いに自己紹介をした。そしていずれに夫になる予定の一刀の紹介をする。
「……亜莎、この男の子が北郷 一刀。……あなたの夫となる男よ」
「……っ!? あ、う……は、はい」
夫になる者がこんな小さな男の子と言うことに驚くのであった。
こうして独立を果たした雪蓮たちは新たな仲間を加え、いよいよ天下統一のための戦いに身を置くこととなった。
<おまけ>
徐州での一夜。
「ねぇねぇ一刀くん」
「どうしたの?」
「一緒に寝ない?」
「んー、別にいいよー」
「やった♪」
「鈴々も一緒に寝たいのだ!」
「わ、わたわたわたわたわたわた。オ―アタァ!」
「ひ、雛里ちゃん!?」
「ふむ。このような機会を逃す趙子龍ではないぞ」
「そ、そのようなことが許されるわけないだろ!」
「いいわよー♪」
「しぇ、雪蓮殿!?」
「じゃんけんで決めなさい。愛紗も我慢せずに参加しちゃいなさいよー」
「わ、私は……」
『じゃーんけん……』
『ほいっ!』
「やったー! 私は勝ったぞ一刀くん!」
ジトー。
「愛紗ちゃん……」
ジトー。
「ずるいのだ愛紗!」
ジトー。
「くやしいです!」
ジトー。
「雛里ちゃんがカッチカチだよ~」
ジトー。
「ふむ。今日のところは愛紗に譲るとしようか」
「う、うるさーい! 私はもう寝る!」
一刀を脇に抱えて去る愛紗だった。
完。
雛里ちゃーん( ゚∀゚)o彡°
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